No.3ベストアンサー
- 回答日時:
こんにちは。
#2です。回答をお読み頂き、ありがとうございます。
>このようなことを説明するのにどのような実験が行われるのですか?
そうですね、
このようなものは世界中の学者さんたちがありとあらゆる実験によって積み上げてきたものですから一概には何とも言えないのですが、脳のそれぞれの機能といいますのは概ね以下のような方法によって明らかにされます。
「解剖学的手法(組織の位置や神経接続)」
「組織破壊実験(動物の神経や脳の一部を切除する)」
「非破壊検査(MRIなどの撮像装置を使って観察する)」
「伝達物質の化学的性質(神経伝達に使われる物質を調べる)」
昔、「ワイルダー・ペンフィールド」というお医者さんが患者さんの脳に電極を刺しましたら、見えない物が見えたり聞こえない音が聞こえるといったことが起こりました。そこで、色々なところに電極を刺してみますと、大脳皮質の細かい部分が我々の身体の様々な感覚と繋がっていることが分かりました。この領域が、大脳が感覚入力を受け取る「感覚野」ですね。
右目左目、右耳左耳、また嗅覚からの入力、体性感覚野は受け持ちが広く、指先の感覚から裏の痒みまで我々の身体の様々な表在感覚や内臓感覚と事細かに繋がっています。
これと同様に、運動野といいますのは身体に運動命令を出す領域であり、身体の様々な筋肉とどのように接続しているのかも特定されました。これにより、大脳皮質の司る身体機能に対しましてはかなり詳細な「感覚地図」や「運動地図」が作られました。人間に近いサルの脳などを使って一つひとつ丹念に調べたんでしょうね。このようなものは解剖学的手法による「刺激実験」です。
このように、大脳の領域ではそれぞれの役割が決められており、これを「脳の機能局在」と言います。このため、感覚野や運動野のように特定の役割を持たない大脳の他の領域を「連合野」と呼ぶようになりました。大脳皮質連合野はその位置によって「前頭連合野」「側頭連合野」「頭頂連合野」に分かれます。そして、このように特定の機能を持たない連合野では記憶や思考などの作業が行われているのではないかと考えられています。
視覚野といいますのは視覚情報を受け取る機能を持っているわけですが、ここには更に細かい受け持ちのあることが分かりました。
ここには直径1mmに満たない小さな「コラム(細胞集団)」が整然と配列されており、その一つひとつが「色」や「形」「傾き」などといった細かな「図形の特徴」と対応しています。これを視覚野コラムの「選択的反応特性」といい、それぞれのコラムは視覚情報の中に自分の受け持ちの特徴があったときにだけ反応を発生させます。これにより、「受け取った画像の中にはその特徴がある」という信号が視覚連合野に送られることになります。
例えば「+」という図形では「縦線」と「水平線」のコラムが反応します。同様に「×」という図形を見ますと「右45度」と「左45度」という信号が発生します。これ以外のコラムは情報を受け取っても反応をしませんので、ここではその図形の特徴だけが整理されていることになります。これが「知覚処理」ですね。同様に聴覚野には「音の高さ」「大きさ」「長さ」などに反応するコラムがあります。
昔はこのようなことをサルの脳に電極を刺して調べたのですが、現在ではfMRIの性能が上がり、普通にしているひとの脳内で直径1mmのコラムの反応を外から観察できるまでになりました。このような装置とコンピューター解析技術を用いた手法を「非破壊検査(非侵襲脳イメージング法)」といいます。つまり、脳に穴を開けないということですね。実際の実験ではサルにコンピューター・ディスプレイの図形を見せて反応場所をマッピングしていくといったことが行われました。
前回答では、我々が「認知・識別」を行うためには感覚情報と記憶情報で答え合わせをしなければならないと申し上げました。ですが、感覚野ではそれぞれのコラムの選択的反応特性によって記憶との照合なしでも「特徴の抽出」を行ってしまうという神経配線が組まれています。このため、認知というのが記憶情報との比較であるのに対しまして、入力情報だけで特徴の識別を行ってしまうというのが認知とは異なる「知覚処理の性質」ということになります。但し、ここではそれ以上の判定はできません。
では、より高度な「認知」が連合野で行われるのであるならば、感覚野からの神経接続はそちらに繋がっていなければなりません。解剖して調べてみますと、果たして視覚野からの神経連絡は「側頭連合野」と「頭頂連合野」の両方に繋がっていました。
「組織破壊実験」といいますのは動物の脳を切除するだけではなく、傷害を受けた患者さんの症例によっても脳の機能を特定することができます。
視覚野の機能が正常であるにも拘わらず、「側頭葉」に傷害を負った患者さんの場合、見えることは見えているのだけれど「何が」見えているのかが分かりません。これに対しまして、「頭頂葉」の損傷ですと「どのように見えるのか」が理解できません。このようなものを器質性の「認知障害(認知症)」と言います。
このため、視覚野から二つの連合野に接続が分岐しているのは、
「側頭連合野:形態認知(何が見えるのか)」
「頭頂連合野:空間認知(どのように見えるのか)」
このように、我々の脳内では「形」と「位置関係」の認知が別々の場所で行われているからではないかと考えられるようになりました。そして、別々に行われる「形態認知」と「空間認知」、この二つの認知結果を統合するのがどうやら「前頭連合野」ではないかということになります。
大脳皮質内でこのような感覚野や連合野などを結ぶ連絡路を「皮質内接続」といいますが、運動神経や感覚神経などの末梢神経系とは違い、こちらはたいへん細かくて複雑です。MRIでもそこまで詳細に観察することはできませんので、お医者さんたちは現在でも顕微鏡や染色薬などを使って根気良く調べています。
この知覚情報に対して何が見えているのかという判断を下すためには記憶情報との照合が必要になります。このため、視覚野との接続を持つ側頭連合野と頭頂連合野の後部外縁は「視覚前野」という役割を持ち、視覚記憶といいますのはその周辺に保持されるのではないかと予測されています。そして、近年ではここで行われる情報の照合には「作業記憶(ワーキング・メモリー)」という新しい概念が設けられており、我々の脳内では、これが外部環境と内部記憶を結び付る機能と解釈されています。
神経細胞同士の信号連絡に使われる「神経伝達物質」は接続先を調べるだけではなく、相手の神経細胞に対してその化学的性質が活性に働くか抑制に働くかによって機能が異なります。
脳内で知覚や記憶などの情報伝達では主に「Gul(グルタミン酸):興奮性」「BABA(γアミノ酪酸):抑制性」などが使い分けられています。それぞれが「+-信号」に対応しますので、Gulの投射が繋がっていればそれは活性接続と特定できます。
では、「注意」や「意識」といいますのは、これは脳全体の覚醒状態によるものですから、ここでは何か特定の情報がやり取りされているというわけではではありません。このようなものは「修飾系伝達物質の脳内広域投射」によって制御されています。
「伝達物質の修飾作用」といいますのは、情報を送るのではなく、その神経細胞の働きを強めたり弱めたりするということです。良く知られているのは「青斑核A6番」から中枢系広域に一斉投射される「NA(ノルアドレナリン)」です。
このNAは興奮性であり、投射を受けた組織は活性化され、情報伝達が活発になります。「注意状態」といいますのは知覚系が活性化されるということです。ですから、NAが分泌されませんと、目では見えても頭には入りません。更に、大脳皮質の連合野や海馬の働きが活性化されますと、思考力や記憶力も高まります。
「意識」というものがどういうものなのかはまだはっきりと分かっていませんが、少なくともこれが発生するためにはNAの広域投射によって脳の覚醒状態はある程度亢進されていなければなりません。ただ、このまま緊張状態が続きますと必ず疲れますので、我々の脳は「5-HT(セロトニン):抑制性」によって必ず安静状態に戻るようになっています。
このように「修飾系伝達物質」といいますのは脳内広域に働くものですから、その分泌を調べれば脳がどのような状態であるのかが分かります。実験方法としましては、ネズミを使って脳から抽出するとか、尿や血液中の伝達物質、あるいはその代謝物質の濃度を測るといったものがあります。また現在、伝達物質の機能解明では「アゴニスト(作用剤)」や「アンタゴニスト(阻害剤)」など薬物を用いた実験が盛んになり、その機能が阻害されたらどうなるかといったことが次々と確かめられています。そして、このような研究の成果は精神安定剤など実際の治療薬としても使われるようになりました。
申し訳ございません、お礼が遅くなりました。非常に参考、勉強になりました。また機会があればよろしくお願いします。ありがとうございました。
No.2
- 回答日時:
こんにちは。
この場合の認識とは「対象認知の結果が意識に上る」ということになります。
我々の脳が感覚情報を識別するためには、
「知覚情報(外部入力)」と
「記憶情報(内部情報)」
この両方を使って答え合わせを行う必要があります。
この作業を「認知」といいますが、大脳皮質がこれを行うためには必ずや脳内に「注意」や「意識」が発生しなければなりません。このため、対象認知の結果は必然的に意識に現れ、自覚されることになります。そして、我々はこの自覚を「認識する」と呼んでいます。
目や耳から入った感覚情報は、まず大脳皮質の入り口である「感覚野」に入力されます。視覚情報は「視覚野」、聴覚情報は「聴覚野」というそれぞれの窓口があります。そして、この「感覚野」では「知覚処理」という過程において色や形、音の大きさや長さといった「情報の特徴整理」が行われます。
このあと知覚情報はその先の「感覚連合野」に送られるわけですが、我々の脳が外部情報を知覚処理し、大脳皮質に招き入れるために必要なのが「知覚系の注意状態」です。そして、特徴の整理された知覚情報はそれぞれ「視覚連合野」「聴覚連合野」で短期記憶として一次的に保管されるわけですが、この大脳皮質が認知作業を行うために感覚連合野内で一次保持される短期記憶を特に「作業記憶(ワーキング・メモリー)」と言います。これにより、連合野では脳内に保管されている過去の学習記憶と比較するための外部情報が感覚記憶として短期保持されることになります。
大脳皮質の学習記憶といいますのは、そのほとんどが「長期記憶」として保管されており、「記憶の想起」、即ち記憶回路に反応が発生しなければ認識することはできません。
では、例えばその知覚情報が「Aという特徴を持つ情報」であるならば、大脳皮質ではこれを基に記憶情報の検索が行われます。そして、脳内に一致する学習記憶があるならば長期記憶回路に反応が発生し、それが作業記憶(短期記憶)として一時的に連合野に引き出されます。
連合野では、このようにして一時的に短期保持された「外部情報(感覚情報)」と「内部情報(記憶情報)」の答え合わせを行うわけですが、このような複数の作業記憶を保持するときに発生しているのが「意識」です。
そしてこれにより、
「それはAである」
「それはA以外である」
「それはA以外でもない」
といった「認知結果」が自覚されるわけですが、
これを「認識」に置き換えますと、
「前に見て知っている」
「前に見たものと違う」
「今までに見たことがない」
といったようなことになるのではないかと思います。
但:ご質問は、どのようにして認識しているのか? ということですが、現在のところ説明の可能なのはここまでです。
最初に述べましたように、認識とは認知結果の自覚であります。
上記説明の通り、我々の脳はAという入力に対してAという記憶が一致するならば答えをYESと判定することができます。これはコンピューターでもできることです。ところが、この判定結果がどうして意識に上り、何故、自覚されなければならないのか、このようなことは残念ながらまだ解明されていません。ですから、どのように「認知・識別」しているのかと言いますならば幾らでも説明することはできるのですが、「脳はどのようにして認識しているのか」ということになりますと、厳密にはまだ科学ではきちんと説明することができないです。歯痒いと思われるかもしれませんが、この辺りは一応頭に留めておいて下さい。
この回答への補足
ご回答ありがとうございます。
もしご存知なら是非とも教えていただきたいのですが、
>目や耳から入った感覚情報は、まず大脳皮質の入り口である「感覚野」に入力されます。視覚情報は「視覚野」、聴覚情報は「聴覚野」というそれぞれの窓口があります。そして、この「感覚野」では「知覚処理」という過程において色や形、音の大きさや長さといった「情報の特徴整理」が行われます。
このあと知覚情報はその先の「感覚連合野」に送られるわけですが、我々の脳が外部情報を知覚処理し、大脳皮質に招き入れるために必要なのが「知覚系の注意状態」です。そして、特徴の整理された知覚情報はそれぞれ「視覚連合野」「聴覚連合野」で短期記憶として一次的に保管されるわけですが、この大脳皮質が認知作業を行うために感覚連合野内で一次保持される短期記憶を特に「作業記憶(ワーキング・メモリー)」と言います。これにより、連合野では脳内に保管されている過去の学習記憶と比較するための外部情報が感覚記憶として短期保持されることになります。
このようなことを説明するのにどのような実験が行われるのですか?
No.1
- 回答日時:
外部からの情報は、脳の中で過去の経験や、それらから推測される事柄を総合して、判断するのではないでしょうか。
同じ刺激でも、その場の状況や年齢等により、いつも同じ反応をするわけではないですよね。
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