弁論主義のところを勉強しているのですが、次のような判例があります。この判例で原告は勝訴できたのでしょうか?この判例から何を学ぶべきでしょうか?
不動産の所有権移転経過の認定について弁論主義違反の違法があるとされた事例
要旨:原告らが、係争不動産は原告らの被相続人乙が甲から買い受け乙の死亡によつて原告らが共同相続したものであると主張して、右不動産の所有名義人である被告に対し、共有持分権に基づき各持分に応ずる所有権移転登記手続を求め、これに対し被告が、右不動産は被告の夫丙が甲から買い受けたものであり丙の死亡によつて被告がそれを相続取得したものであると主張したにとどまる場合において、裁判所が、右不動産は乙が甲から買い受けたのち丙に死因贈与したものであるとの事実を認定し、原告らの請求を排斥するのは、弁論主義に違反する。
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- 回答日時:
最高裁昭和55年2月7日の判決(民集34巻2号123頁)ですね。
最高裁民事判例集に掲載された判例については,最高裁判所判例解説という本が一番重要です。これは,その事件を担当した最高裁判所調査官が書いたものです。これを読めば,その事件の問題点や,従来の判決との関係,その判決の意義などが解説されています。ただ,ちょっと難しいかもしれません。
他には,ジュリスト717号69頁,ジュリスト743号143頁,別冊ジュリスト77号162頁(判例百選)などに判例評釈があります。こちらの方が読みやすいかもしれません。
もっと簡単には,判例タイムズ(412号)や判例時報(960号)の囲みのコメントを見て下さい。
ともあれ,この判例で,旧来の判例であった大審院昭和11年10月6日判決(民集15巻21号1771頁)が判例変更されています。
この判例では,少なくとも,不動産の所有権の移転が,甲→乙なのか,甲→丙なのかが争われている事件で,甲→乙→丙という事実を認定することは,乙→丙の事実については,主張されていない事実を認定したもので,弁論主義に反するということになるわけですね。
この判例では,当事者の勝敗を決する最も重要な事実関係は,仮に証拠から当事者の主張しない事実が認定できるとしても,裁判所はその事実を認定してはならない,ということになるわけです。
そのようなことは,当事者が争点として予想しない事実を認定するもので,不意打ちだということですね。
なお,この判例の事件は,高裁に差し戻され,そこで被告が,「乙→丙の死因贈与」の主張を追加したところ,「乙→丙の生前贈与」の事実が認定されて,また最高裁に上告され,今度は,被告の事実上の主張(多分,準備書面には記載があるが,判決には引用されていない主張)及び弁論の前趣旨からすると,死因贈与の主張には生前贈与の主張も含まれていたとして,上告棄却(被告勝訴)となったようです。(判例時報1046号41頁)
ご回答ありがとうございます。とてもわかりやすい説明で、感心しております。
>死因贈与の主張には生前贈与の主張も含まれていたとして,上告棄却(被告勝訴)となったようです
そのような経緯をたどっていたとは知りませんでした。判例の背後にあったことがよくわかりました。
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