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アルファベットの発明は必然か

手元の書物には「アルファベット文字が独自に発明されたのは人類史上、ただ一度だけだ」との主旨の記述があります。これはすべてのアルファベット文字の源流はシュメール文字にある、といっているのだと思います。
素人考えでは表意文字を発明するのは極めて自然な発想だし、音節文字を発明するのも自然な発想に思えます。しかし、音素文字は発想に飛躍があり、極めて人工的で不自然な気がします。アルファベットは、もしかするとシュメールに人類史上、不世出の大天才が出現したことによる偶然の産物で、この人物が出なかったら今日の地球上にアルファベット文字は存在しなかったのではあるまいか、などと考えます。これは妄想で、そんなことはなく、いずれは何処かでアルファベットが誕生したと考えるのが自然ですか。

よろしくお願いします(もう、3年も前に言語学者の名前を教わっていて、本当は啓蒙書を読めばよいのですが私の読書量では中々順番が来ません。ついついこうして断片的質問を多発することになります)。

A 回答 (4件)

「音素文字と音節文字に関して」の後続ではなく、


この質問が本丸とみての、回答です。

最初に優れた音素文字が誕生した地域は、偶然ではありません。
アジア・ヨーロッパ・アフリカの多くの異なる言語が交わる地で
最も文字の進化が加速される可能性のある地域でしょう。本件には
直接関係ありませんが記録媒体パピルスも近くで発明された。
アイスランド島のように孤立した地域では、言語もほとんど変化
しません。文字も同様です。
さらに有利だったのが、意味がほとんど子音だけで決まるセム語
があり、そこに文字が生まれたこと。ヒエログリフでは、表意に
加えて、表音的な用法も生まれ、しかも、それは、子音音素のみ
にあてられた。その表音思想を受け継いだフェニキア文字では、
音素文字となったが子音字のみであった。対等な母音文字は、
現在のセム語系のアラビア語やヘブライ語でも生まれず、補助的
な母音記号も、初学者向け程度で、実使用はほとんどない。
(セム語母音には、品詞とか時制とか文法的に重要な機能あり)
ギリシャ文字になって母音字が使われ、原則すべての音素を表記
する文字体系となった。
まとめると、母音の重要度の低い言語から母音を無視した文字が
生まれた。母音を必要とする言語に応用されて母音字も生まれた。
バラバラに生まれたため、子音+母音で一文字の音節文字ではなく
アルファベットができた。必然かどうかは別にして最も確率の高い
条件の地で生まれた。ただ、「人類史上、ただ一度」は、大げさ
で、試行錯誤で成功例が残ったと考えるのが妥当でしょう。

別の地域の観点から。
50音図の元になったサンスクリットは、デーヴァナーガリー文字
で表され、音節文字と音素文字の中間的なものです。基本文字は
「ア・カ・サ・タ・ナ・・・」のようなもので、母音a を含んで
ます。[ケ]は、「カ(→e)」のように変母音記号で表す。母音を
消す記号もあります。私の知る子孫のネパール語の単語例を
bhetnu (会う,訪れる) は「バ(→e)タ(-a)ナ(→u)」で表す。
(表示できない文字・記号なのでイメージです)
音節文字でも母音を消す記号があれば音素表現ができます。それが
効率的な音素文字に進化するのには時間がかかるでしょう。
アルファベットが生まれた地域がなければ、音素文字は、数百年
千年単位遅れたかもしれません。

日本語にも音素文字はあります。「ん」「ン」です。これらは、
他のカナに比べて数百年遅く生まれました。それまで音としては
あったのに表記されてなかったのです。頭に「ん」のつく漢字が
なかったからです。日本語では、外来語レベルで母音を伴わない
子音のみを表す表記を必要としない音声構造なので、他に v「ヴ」
くらいでしょうね。外国語との接触によって進化していくものも
多いのです。
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この回答へのお礼

この質問と対である、もう一つの質問へのご回答と相俟って、とてもよく分かりました。
アルファベットの発明は偶然か必然かを言えば、必然であること。その困難さの程度を言えば、多言語が交流し合う条件の下で長い年月を掛けて完成すること。いずれにしても第一級の発明らしいと思うことにします。

後半の
>>別の地域の観点から。<<以降は、今日只今の私には少し難しかったですが、参考にして下さる方々も多いことと存じます。「ん」と「ヴ」の件はよく分かりました。

お蔭様で何時かはっきりさせたいと思っていた疑問が解決しました。
有り難うございました。7/4(日)中に、これと大きく矛盾する回答のない限り締め切ろうと思います(もう一方も気分としては解決していますが、行き掛かり上、7/7(水)までは残しておきます)。

お礼日時:2010/07/04 01:05

詳しくもなんともありませんがちょっと気になったことがあります.


セム語のなかまでは
・子音の並びにがおおまかな意味を与え, その間にはさむ母音によって詳細が決まる
という特徴があったかと思います. で, 実際セム語系の多くでは
・「文字」は子音字だけ (母音は子音字に添える記号で表す)
だったような.
そう考えると, 音素文字が「何らかの分析の結果作られた」とする代わりに「本質的に子音だけ書けば意味が通るのでそれぞれの子音を表す文字を作った」と考えることはできないでしょうか.

この回答への補足

これはお礼欄を埋めた数日後に記しています。
NO.4を拝読した後で読み直すとNO.3は当初の読後感よりも一層、大事なご指摘のように思えてきました。

お礼欄の3の記述は、もしかするとお気持ちと完全には噛み合っていなくて、掠った程度なのかもしれないと危惧しています。
>>本質的に子音だけ書けば意味が通るので<<
この部分を軽く読み流しすぎていたかな、と反省しています。張り合いのないことで失礼しました。7/4(日)記。

補足日時:2010/07/04 00:44
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この回答へのお礼

お尋ねの件に答える前に質問文の出所を整理しておきます。

1.
資料は、ジャレド・ダイアモンド著 倉骨 彰=訳『銃・病原菌・鉄』下巻です。P.70、P.29、P.30から要所を抜粋します。
・~。アルファベット文字に関しては、まったく独自に発明されたのは、人類史上、一度だけである(P.70)。
・世界に何種類もあるアルファベット文字も、おおもとの発明は一度だけで、残りはすべて模倣であると思われる(P.29)。
・アルファベット文字は…中間省略…セム語を話す人びとのあいだで誕生している(P.30)。
・アルファベットの歴史は、エジプトの象形文字にまでさかのぼることができる(P.30)。
・しかし、エジプト人は、単子音を表すアルファベットだけを使うという方向には進まず、~(P.30)
・~、これを実際に行ったのは、エジプトの象形文字に通じていたセム語族の人びとである(P.30)。

上記を参考にして質問文を作るとすればシュメールは出て来ない筈です。しからば質問文に何故、シュメールが登場してしまったのかを記します。

2.
3年ほど前にも言葉の歴史に触れた書物に出合っています。その際、「ヒエログリフには音素文字が混じっていて、それはシュメール語に萌芽が見られる」との曖昧情報が刷り込まれたものと考えます。主題が文字ではなく道具の発明が話題であるP.70の一言と3年前の刷り込み情報を組み合わせて質問文を作成した結果、シュメールが登場してしまった次第です。
音節を音素にまで分解出来ると気付くのは並外れた異常な能力で、人類史上、唯一度(唯一人?)しか出現しなかったのはもっともだと、私は妄想しています。明覚の五十音表、ハングル、注音字母等々、みなアルファベットの認識がないと発明できなかったと思いますが、多分考え方がインド経由で伝わっていたのではないかと推測します。

さて、お尋ねの件です。
3.
>>「本質的に子音だけ書けば意味が通るのでそれぞれの子音を表す文字を作った」と考えることはできないでしょうか<<
この考え方は念頭になかったので意表を衝かれました。この考え方は、例えば母音が10、子音が30あると気が着いた後でも、人類はそれらの40の韻を表す文字を発明し難くて、唯一セム語使用圏だけで子音を表す文字のみが創案されたという推測ですよね。言われてみれば、そうかも知れません。

質問文投稿時には、そういう考え方は全く欠落していました。私の考えは次のようなものでした。
アルファベットが発明され難かったのは、そもそも一つの音節を子音と母音に分解できるという認識をもてなかった結果として自動的に、それらを表す文字も発明できなかったのではないかというものでした。もしも、子音と母音という認識があれば、比較的容易にアルファベット文字を発明できたのではないかという推理です。即ち、子音と母音をはっきりと認識したのはセム語使用圏の誰かであったのではあるまいかという推理でもあります。P.30の記事に拠れば幾つかの音についてはエジプト人も子音と母音の認識があったものと推測します。

言語学の上からはどちらの可能性が大なのかNo.4以下に期待します。

このところ幾つか言語学入門みたいな質問をしていますが、言語学という認識があるのやらないのやら判断し難い回答が続いていました。はっきりと言語学を意識した回答に出合えて嬉しいです。
有り難うございました。

お礼日時:2010/06/30 06:35

 #1です。



>>ジャレド・ダイアモンド著者の論に従うと(多分ですが)シュメールでの考え方がペルシャ、インド、中国、韓国へと伝播したのであって音素の概念がインド、朝鮮で独自に発案されたことはない。また、セム語、ヒエログリフにも音素文字が混じっているが、これもシュメールの影響であって独自の発想ではない。こういうことなのだと思います。

 ご教授ありがとうございました。そのうち拝読しようと思います。
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この回答へのお礼

啓蒙書なので専門書志向の方に合うかどうかは分かりません。
質問文の冒頭部分は当該書籍のP.70、5行目の他、P.29の後から4行目にも同趣旨の文言があります。

質問文に「シュメール」が2箇所に登場しています。
前者の「シュメール文字」は「セム語」で、後者の「シュメール」を「セム語圏」で置き換えて読んで頂く方がよいのかな、と思い直しています。これに伴い、NO.1のお礼文中の「シュメール」も「セム語」で置き換える前提で読んで下さると有り難いです。
いずれにしても、質問の焦点が変わるわけではありません。
少々横着な考えですが、回答下さるかたは言語学に通じておられるので、質問文に不可解な点があれば修正して読んで下さるものと思います。

有り難うございました。

お礼日時:2010/06/28 21:11

いつも優れた質問をしていただいてありがとうございます。



 アルファベットのような「音」単位の書き方は、「ただ一度だけ」発明されたのかどうか知りませんが、梵語の文字は「音」単位ですし、朝鮮語(ハングルは大韓民国ができた1940年代よりだいぶ前からありますから)のハングルは「音]単位の要素を「音節」単位に纏めたもので、辞書にハイフンを入れて音節の切れ目を示している英語などに比べると、だいぶ進んでいるように見えます。

 世界中の文字の歴史を調べた事はありませんが、「ただ一度だけ」とはまだ言い切れないように思います。
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この回答へのお礼

話の出所は
ジャレド・ダイアモンド著 倉骨 彰=訳『銃・病原菌・鉄』下巻です。此処で、誰かに最近教わった書籍です。正しく読めているかどうか判りませんが、私の理解するところを記します。

著者の論に従うと(多分ですが)シュメールでの考え方がペルシャ、インド、中国、韓国へと伝播したのであって音素の概念がインド、朝鮮で独自に発案されたことはない。また、セム語、ヒエログリフにも音素文字が混じっているが、これもシュメールの影響であって独自の発想ではない。こういうことなのだと思います。

人の会話を聞いて、音は音素にまで分解できるという発想がどうして生まれるのか、並の天才の成し得る業なのか、大いに疑問で質問文の妄想になる訳です。
有り難うございました。

お礼日時:2010/06/27 12:15

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