逮捕または起訴されると懲戒免職等の懲戒処分が認められることについて
ある刑事事件で無罪判決の確定した元被告人が、捜査に違法があったとして国家賠償請求を起こしたというニュースが流れました。表向きとしては、例えば違法な自白強要がなされた、その精神的苦痛に対する慰藉料料を請求するとかいったことなのでしょう。しかしそれが真の趣旨であれば、有罪も無罪も関係ありませんから、判決確定を待つ必要などないはずです。実際の趣旨は、「自分は無実なのに、違法な捜査のおかげで身体拘束されて刑事裁判につきあわされて、たくさんの経済的不利益を受けた。どうしてくれる?!」といったものなのではないでしょうか。
ところで、少なくとも我が国においては、無罪推定の原則が、憲法上も刑事訴訟法上も確立しています。無罪推定の原則とは、狭義には刑事訴訟における立証責任の問題で、被告人は当初無罪と扱われ、検察官が有罪であることを証明して初めて有罪判決が下されるということです。そして広義には被告人は、有罪判決が確定するまでは、国は被告人を有罪ではなく無罪として扱われなければならない(ましてや起訴されてもいない単なる被疑者についてはなおさら)ということです。
確かに、無罪推定の原則は、本来直接的には国(行政機関や裁判所等)を拘束するものであり、私人を直接拘束するものではありません。
しかし上述の通り、裁判所は無罪という推定から刑事裁判を始めるのですから、当然無罪判決が下される可能性もあります。つまり、逮捕されようと、起訴されようと真実はよく分からないのであり、その人が犯罪を犯したということは全くできません。可能性なら、誰にでもあります。
したがって、企業の従業員が逮捕されたとしても、あるいは起訴されたとしても、企業に懲戒免職等の懲戒処分を認めるのは、おかしいのではないでしょうか?もちろん当該企業が、確かにその従業員はそのような懲戒処分に値する行為を行ったと証明するなら別ですが、このような罪状で逮捕された・起訴されたというだけで懲戒免職を認めるのは問題があるのではないでしょうか?なるほど従業員が殺人で逮捕されたりすれば、その企業に対する信用が低下するかもしれません。しかし逮捕・起訴されただけでは有罪とも無罪ともさっぱり分からない(どちらかと言えば無罪と推定されている)のですから、信用できないと考えるのは早計であり、間違いではないでしょうか。
冒頭述べたような訴訟が起きるのは、無罪判決を得てもそれまでに受けた不利益が不可逆的・致命的で大き過ぎるという背景があると思います。裁判所は逮捕・起訴されたことのみを理由とする懲戒処分を民事訴訟で否定して、無罪との推定を受けているはずの被告人の受ける不利益を、最小化すべきではないでしょうか?
No.1ベストアンサー
- 回答日時:
> 企業の従業員が逮捕されたとしても、あるいは起訴されたとしても、企業に懲戒免職等の懲戒処分を認めるのは、おかしいのではないでしょうか?
その通りだと思います。
この事件の場合、私はこんな悪いことをしましたと告白しています。
企業は、それが違法かどうかに関係なく、逮捕されているか起訴されているかに関係なく、本人の告白を元に、自社の取り決めた規則にによる懲戒処分を行うことをおかしいとは思いません。
No.3
- 回答日時:
>司法が追認していないのなら、企業がみんな続々懲戒解雇するわけないじゃありませんか。
やれば裁判起こされてひっくり返されることが分かっていることは、ある程度名のある企業はしませんよ。いや、だから大半の企業はやっていませんよ。
名のある企業で有罪前に懲戒免職にした例があるのならソースをお願いします。
普通は起訴段階で休職、有罪が確定してから懲戒免職です。
>法理論的に無理ですよ。条件付きで法律行為した訳でもありませんし。逮捕・起訴自体が会社の名誉を汚す、みたいな論理で懲戒を司法が認めているのです。これがおかしいと私は思うのです。
そんな論理を司法が認めてるわけないでしょう。
有罪判決が出ても解雇権が認められなかった判例すらあるというのに。
http://www.srup21.co.jp/room/advice82_3.html
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しかし、通説・裁判例は、起訴の事実だけで起訴休職にすることはできず、起訴によって企業の対外的信用が失墜し、職場秩序に支障が生じるおそれがあるか、または従業員の勾留や公判期日出頭のために、労務の継続的給付や企業の円満な遂行に支障が生ずるおそれがあることを要すると解しています(土田「労働契約法」404頁、同書に引用・東京地判昭61.9.29、東京地判平11.2.15、福岡高判平成14年12.13)。また、起訴休職処分が要件を充たして有効であったとしても、休職期間の途中において保釈や一審の無罪などによって要件を充たさなくなった場合は、復職措置をとらなければならないとされています(菅野和夫「労働法第八版」425頁)。
-------------------
起訴段階では休職扱いにすることすら合理的な理由が求められているし、
無罪になれば復職措置をとらなければいけないというのが司法判断です。
思い込みの情報に頼らずもうちょっと周りの意見に耳を傾けることをお勧めします。
No.2
- 回答日時:
>したがって、企業の従業員が逮捕されたとしても、あるいは起訴されたとしても、企業に懲戒免職等の懲戒処分を認めるのは、おかしいのではないでしょうか?
別に国が認めているわけではないのですが、
有罪判決が出る前の早計な懲戒処分は違法になる可能性が高いですから、
それを社会に周知徹底させておくべきでしょうね。
>冒頭述べたような訴訟が起きるのは、無罪判決を得てもそれまでに受けた不利益が不可逆的・致命的で大き過ぎるという背景があると思います。
まあ賠償金というのはそういうものですからね。
被害無くして賠償金は発生しません。
ただ、無罪になった場合に懲戒解雇って撤回されないんですかね?
少なくとも労働者が訴えれば確実に懲戒無効の判決が出るはず。
解雇権の行使には合理的な理由が必要ですから、無罪になった人間に解雇処分は無理です。
もちろん拘留期間中の不利益は当然ありますが、
社会復帰出来ないなどの致命的な打撃を受けるというのは都市伝説のような気がします。
マスコミによって名前が知られるので精神的な風評被害はあるでしょうけどね。
もう一つ言えば、有罪になる前に簡単に名前を出すマスコミにも問題がありますよね。
この回答への補足
>>別に国が認めているわけではないのですが、
司法が追認していないのなら、企業がみんな続々懲戒解雇するわけないじゃありませんか。やれば裁判起こされてひっくり返されることが分かっていることは、ある程度名のある企業はしませんよ。
>>ただ、無罪になった場合に懲戒解雇って撤回されないんですかね?
法理論的に無理ですよ。条件付きで法律行為した訳でもありませんし。逮捕・起訴自体が会社の名誉を汚す、みたいな論理で懲戒を司法が認めているのです。これがおかしいと私は思うのです。
>>社会復帰出来ないなどの致命的な打撃を受けるというのは都市伝説のような気がします。
二度と社会復帰できない訳ではありませんが、逮捕前に元通り、とはいかないのが日本の社会なんです。
>>もう一つ言えば、有罪になる前に簡単に名前を出すマスコミにも問題がありますよね。
私はこれは問題ないと思うんですよ。だいたい、名前なんて法廷を傍聴すれば分かります。秘密でも何でもありません。むしろマスコミは、無罪推定の原則の精神に則って、一方からの情報に偏ることなく実名報道して欲しいです。
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