こんにちは。
例えば,一般市民(住民)が国や地方自治体から何らかの不法行為(被害)を受けたとします。
その際は,被害を受けた住民は,国等に対し,不法行為の不作為のための行政訴訟(不法行為差し止めのための民事訴訟もありますがそれは別として)及び被害に対する損害賠償を求めた民事訴訟を提訴すると思いますが,両者の原告(当事者)適格に違いはあるのでしょうか。
例えば,飛行場と居住地のように,損害を与える施設と居住する「距離」によって,民事訴訟は認められるが,行政訴訟は認められないとか。
行政事件訴訟法は民事訴訟法の特別法であることは認識しているのですが,いまひとつすっきりしないところがあるので,ご回答いただければ幸いです。
No.4ベストアンサー
- 回答日時:
民事訴訟の原告適格は、給付訴訟で言えば、「自分」が請求権を有していると主張していれば、それで原告適格は認められます。
反対に言えば、「他人」が請求権を有しているが、その他人のために、あるいはその他人に代わって、自らが原告となって訴えを提起したというのであれば、原則として原告適格は認められません。ですから、施設から距離が何百キロ離れていようが、原告は被告に対して損害賠償請求権を有していると主張していれば、他の訴訟要件が欠如していない限り、適法の訴えですから、訴えの却下判決(訴訟判決)ではなく、最終的には、本案判決をします。訴訟判決は、本案である請求権の存否について判断しませんが、本案判決は、原告の請求を認容するか、あるいは棄却する旨とする判決なので、本案の請求権の存否について判断したということになります。
一方、行政訴訟の原告適格は「法律上の利益を有する者」に該当するかどうかの問題ですから、原告が「自分は法律上の利益を有する者」であると主張したからといって、当然に原告適格が認められるわけではありません。
明快なご回答をいただき,有難うございました。
給付訴訟以外の,例えば原子力発電所の運転差止(確認)訴訟の場合の原告適格も,同様に考えてよろしいと思います。
よく理解できました。
No.5
- 回答日時:
原発か。
わしも最近は興味のある分野と思うておる。結論から言えば、原発の差止は、行政訴訟の差止め(行政訴訟法3条7項)であっても、民事差止&仮処分(民法709、民事保全法23条1項)でも可能であるし、どちらも現実に訴訟提起されている。
原告適格については、「NO2」のお礼にあるとえおり、質問者のご理解でよろしいと思う。原告適格は民事の方は、人格権基づく不法行為差止になるのだだが、結構「なんでもあり」なところが多く、本案で勝てるかは別として、はっきりいえば言ったもん勝ちでほとんど認められるものと思っていい。行政訴訟の原告適格は伊方原発の判例のとおりである。
ただ、争い方が若干異なる
行政事件は、原発の運営を許可した大臣や知事の処分を取り消すものであり、被告は処分庁たる知事になり、訴訟では、知事のなした処分が法律の許可要件(原子炉等規制法第23条など)を満たしているか、権限逸脱濫用(30条)がないかを争うことになる。
一方、民事差止めは、行政庁の許可処分は適法であることを前提としつつ、電力会社の日々の民事行為である事業そのものを差止めさせるのじゃから、被告は電力会社であり、本案要件は、不法行為の要件、つまり、権利侵害と、注意義務違反(予見・結果回避義務違反)を争うことになる。
再度のご回答,有難うございました。
なぜか最近は,原発訴訟の場合,民事・行政とも様々なバリエーションの訴訟がされています。
前者の場合は,以前は設置許可取消訴訟くらいだったのに,最近は「定期検査終了証交付差止」(でしたっけ?)といった極めてマニアックなものが,後者は再稼働禁止とか永久運転停止差止とかが起こされており,なんでもありという感じですね。
ただ正直な感想として,原発のような巨大かつ複雑な技術およびエネルギー政策が絡むものの是非を,裁判官が判断できるのか,少し疑問です(賛成派,反対派の立場を超えて)。
PS
最近,どこかの原発訴訟で,マグロだかなんだかの原告適格が否定されましたね。
これも個人的感想ですが(気持ちはわからないでもないが),そういうことで,裁判が遅延したりするのは,訴訟経済の観点からは良くない気がします。
No.3
- 回答日時:
事件番号 昭和60(行ウ)7
事件名 原子炉設置許可処分無効確認等請求事件
裁判年月日 平成12年03月22日
裁判所名 福井地方裁判所
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid …
民事での請求の判決文はこれ↑
控訴審については、民事での訴えを取り下げているようです。
-以下、判決文より-
第三章 差止請求権の根拠
第二 当裁判所の判断
一 人格権に基づく差止請求について
個人の生命、身体が極めて重大な保護法益であることはいうまでもなく、個人の生命、身体の安全を内容とする人格権は、物権の場合と同様に排他性を有する権利というべきであり、生命、身体を違法に侵害され、又は侵害されるおそれのある者は、人格権に基づき、加害者に対し、現に行われている侵害行為を排除し、又は将来生じる侵害を予防するため、侵害行為の差止めを求めることができると解するのが相当である(最高裁判所大法廷昭和六一年六月一一日判決参照)。
再度のご回答有難うございます。
民事の場合は,実質的な損害が問題になるため,裁判所が判断する際には,あまり距離云々は関係ないような気がするのですが,難しいですね。
No.2
- 回答日時:
>両者の原告(当事者)適格の違い
行政訴訟法の原告適格は、行政事件訴訟法9条にあるとおりである。民事差止め、損害賠償は709条の訴訟物について終局判決を得るに足りる利益(当事者適格)を有するかで判断される。それぞれ原告適格の要件が異なるので、多少原告適格に違いが生じうる場面はあると思うが、気にするほどの違いはないと思う。
ただ、行政事件訴訟法の原告適格は、原告に損害が生じているか否やを検討することなく、9条によって定められた要件を具備するか否やの純粋な法解釈によって決め、反面、民事訴訟は、原告に権利侵害が実際に生じているかという実質的判断をする必要がある。このような違いは存する。
それよりむしろ、問題は処分性のほうじゃろ。
>飛行場と居住地のように,損害を与える施設と居住する「距離」によって,民事訴訟は認められるが,行政訴訟は認められないとか。
有名な大阪空港事件においては、民事差止めは認められないとされた。この理由は、原告の問題ではなく、いわゆる航空行政権は、国又は公共団体が公権力の主体として、直接、国民の権利義務、または、その範囲を確定する行政庁の「処分」にあたるから、民事訴訟を跳ね除けたのであって、原告適格が争点となっているわけではない。
もう一度、この点を確認しておくれ。
早々のご回答,有難うございました。
例えば,今話題の原発についていえば,行政の場合はある程度,距離によって原告適格が絞られていますが(最高裁:58キロは認める,地裁:95キロは認める,100キロ超えは認めない),民事は場合はケースバイケースか距離によって限定されていないような気がします。
その辺が私のモヤモヤの原因かもしれません。
No.1
- 回答日時:
>>不法行為の不作為のための行政訴訟(不法行為差し止めのための民事訴訟もありますがそれは別として)
これが何のことを指しているのかよくわからないのですが、、、
行政が、執るべき予防措置を講じない場合、その措置を執るように「義務付け」を求めることができます(行政事件訴訟法37条ノ二)。
この場合、37条ノ二3項に、「法律上の利益を有する者に限り、提起することができる」としています。
損害賠償を求める民事訴訟におけるものは、もちろん被害を受け、『請求権のある者』が提起できるものです。
行政訴訟の方は原告を制限する規定を設けているので、原告となるものの範囲が狭くなるように感じますが、実質的には、民事訴訟の方が、原告となることができる者の範囲が狭くなるように思います。
民事の場合は、被害を受けた本人、その相続人、法定代理人がなることができますが、行政事件のほうは、『法律上の利益を有する者』ですので、範囲は広いように思います・・・
早々のご回答,有難うございました。
例えば,平成4年9月22日の「もんじゅ」最高裁判決でも,住民側の原告適格について,行政・民事双方の原告適格が判断されたのですが,行政に比べ民事についての判断が明確でなかったもので・・・・
もう少し勉強させていただきます。
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