サイトでは、丁寧な説明がなされており、ありがたいですが、なお、分からない部分があります。
貯蓄ー投資=輸出等ー輸入等(このさい、政府部門を除く)の恒等式が成り立つことは理解しました。
しかし、この4つの変数とも、それぞれの要因で変化します。Sは高齢化で低下し、Iは投資環境や金利水準で変化します。輸出等は国際競争力で変化します。輸入等は原油価格の動向で変化します。
そうしますと、例えばの話、「高齢化で貯蓄率が下がる一方、投資環境が好転して貯蓄超過が縮小するけれども、原油価格が下がりかつ輸出競争力がついて、経常収支の黒字幅は拡大する」ということはあり得ないのでしょうか?ないとすると、なぜでしょうか?また、そうであれば、経常収支の変動を、4つの変数の動きそれぞれから説明するのは、無理があるというか、空しいのでしょうか?
No.8ベストアンサー
- 回答日時:
ANo.7への補足です。
>また、そうであれば、経常収支の変動を、4つの変数の動きそれぞれから説明するのは、無理があるというか、空しいのでしょうか?
・この質問への回答はANo.7の最後の部分で説明したつもりですが、もう少し敷衍しておきます。貯蓄超過=経常収支黒字という恒等式は、いろいろなシナリオの整合性をチェックする、たとえば、あなたのストーリー「高齢化で貯蓄率が下がる一方、投資環境が好転して貯蓄超過が縮小するけれども、原油価格が下がりかつ輸出競争力がついて、経常収支の黒字幅は拡大する」が可能かどうかをチェックするためには有益ですが、それ以上ではありません。質問のような状況のもとで、ANo.7で私があげた2つのケースは起こり得るケースの2つの例にしかすぎません。どのケースが起こるのか、何が起きるかを知るためには、4つの変数がどのように互いに関連し合っているのか、あるいは経済全体の変数とどのように関係しているのかについてのモデル(理論)が必要です。このモデルには、貯蓄超過=経常収支黒字という恒等式が組み込まれていることはいうまでもありません。なお、この分野は、国際マクロ経済学、あるいは開放経済マクロ経済学などと呼ばれ、こうした問題を扱っていますので、関心がおありなら、これについて書かれた教科書を覗いてみたらいかがですか?
・ANo.7の訂正。貯蓄関数は利子率と所得等の関数として表わすことができ、所得を横軸に、貯蓄を縦軸にとると、右上がりの曲線で表わされる。貯蓄が増えるということは、貯蓄曲線が上に(あるいは左に)シフトすることを言い、同じ所得水準のもとで、より多く貯蓄されることを意味します。「貯蓄のパラドックス」を説明したときに、貯蓄が増えることを「貯蓄曲線が右にシフトする」と書きましたが、「左へシフト」するの間違いですので、そのように訂正してください。
No.7
- 回答日時:
>、「高齢化で貯蓄率が下がる一方、投資環境が好転して貯蓄超過が縮小するけれども、原油価格が下がりかつ輸出競争力がついて、経常収支の黒字幅は拡大する」ということはあり得ないのでしょうか?
・結論を先にいうと、「あり得ません」。理由は、「貯蓄ー投資=輸出等ー輸入等」は、定常経済であれ、成長している(あるいは変動している)経済であれ、どの経済でも成立する恒等式だからです。(成長がある経済では成り立たないなどと主張している人がいますが、ナンセンスです)。質問のような状況のもとでは、「貯蓄超過が縮小する」(つまり、恒等式の左辺のほうが小さくなる)という結果が間違っているか、「経常収支の黒字幅が拡大する」(つまり、恒等式の右辺が大きくなる)という結果が間違っているか、あるいその両方とも成立しないかの、いずれかです。
・経済学で一番基本的なことの一つは、たとえば需要曲線(需要関数)なら需要曲線をとると、需要曲線のシフトと需要曲線上の動きを混同しないことです。ですから、需要の増加とは、需要曲線が右にシフトすることを意味しますが、その結果として需要量が増加することにはかならずしもならない、ということです。マクロ経済学を勉強したことがあるなら、「貯蓄のパラドックス」という言葉を聞いたことがあるでしょう!貯蓄が増加することはかならずしも貯蓄量が増加することにはならない!別の言葉でいうと、貯蓄関数が右にシフトしても(貯蓄性向が高まっても)、均衡において貯蓄量が以前より増えることにはならないのです。
・あなたが仮定するように、高齢化で貯蓄率(貯蓄性向)が下がっても、投資環境が好転して、投資量が増え、輸出競争力がついて輸出量が増えるなら、所得が拡大して、(所得の関数である)貯蓄量が以前より大きく増えて、貯蓄超過が(縮小するのではなく)拡大するということが十分にありうる。この場合には輸出拡大にともない右辺の経常収支の黒字幅は大きくなるかもしれないが、左辺の貯蓄超過が拡大するので、恒等式の両辺は相等しくなる(あるいは等しくなるまで所得が拡大する)のです。あるいは、あなたが想定するように、所得が拡大しても、高齢化による貯蓄性向の低下は大きく、貯蓄超過が縮小するかもしれない。その場合には、輸出量は拡大しても、所得拡大による輸入の拡大のほうが大きく、たとえ輸出量が拡大したとしても、黒字幅の拡大ではなく、むしろ縮小という現象が起きているはずです。その結果、恒等式の両辺は相等しくなるのです。いずれにしても、恒等式の両辺の一方が拡大し、他方が縮小するというこはあり得ないのです。
・以上のように、貯蓄、投資、輸出、輸入といった項目は互いにまったく他から独立に決定されているのではなく、上の例では所得がそうであったように、共通に影響を与える変数が存在し、貯蓄超過=経常収支がつねに成り立つようにそうした変数の水準が調整されるのです。こうした変数を内生変数と呼びますが、マクロ経済の内変数には所得、輸出価格、輸入価格、利子率、為替レートなどがありますが、これらが複雑に絡み合って、貯蓄量、投資量、輸出量、輸入量を決定します。
No.6
- 回答日時:
経済というのは、作って、分配して、使う活動です。
まあ今回は作ると使うということだけに集中しましょう。
もし輸出輸入がなければ、作る量=使う量となるのは分かりますよね?
幾ら120需要があっても、100しか作れなければ、100しか使えません。
作った100のうち80を消費し20貯蓄した場合、20しか投資できません。
したがって、貯蓄=投資となります。
しかし国内で作った以上に国外から輸入をすれば貯蓄以上に投資ができます。
国内で100作り10外国から輸入すれば国内で80消費し20貯蓄した場合、30投資ができます。
これらを自動的に結びつけるのが価格です。
国内で100しか作れないのに120需要があった場合、価格が上昇することで国内の需要を押さえ込みます。
その上で
>例えばの話、「高齢化で貯蓄率が下がる一方(略)
この話は勘違いをしてます。
GDPの恒等式では経済成長を取り扱いません。
経済はある一定期間の結果だけを見るのです。つまり止まった経済世界の中で、どのように富が生産され、分配され、消費されているのかを分析するためのツールなのです。
そして、これに絡んで「高齢化で貯蓄率が下がる一方、投資環境が好転して貯蓄超過が縮小するけれども、原油価格が下がりかつ輸出競争力がついて、経常収支の黒字幅は拡大する」ことはありえます。
しかしそれは去年のGDPの恒等式と今年のGDPの恒等式を見比べた時の結果として現れるものです。
つまり、高齢化で消費が拡大、投資が増大、原油価格低下のため輸入が減少、国際競争力増大→経常収支が黒字拡大
この場合、経常収支赤字要因:消費の拡大、投資の拡大
経常収支黒字要因:原油価格の低下による輸入現象、国際競争力増大とは生産力増大(GDPの単純増加)
これで経常収支赤字要因<経常収支黒字要因となれば当然経常収支は去年よりも黒字化します。
(実際そうなれば高齢化で消費が増えても貯蓄は増加するだろうけど)
ですので、質問者さんはGDPの恒等式は止まった経済を分析するツールだということ、また要因は大雑把に見ても、貯蓄(消費)、投資、税、政府支出、輸入、輸出の6つの要因がありそれぞれが個々のベクトルを持っていることを意識するとよいかと思います。
No.5
- 回答日時:
基本的なことが誤っていると思います。
GDP=消費+投資+政府支出+純輸出=消費+税+貯蓄
↑
この数式を入れ替えると、貯蓄ー投資=輸出等ー輸入等(このさい、政府部門を除く)の恒等式が成り立つ。(変数を調整しています)
つまり、この数式は、GDPというフローの概念(1年間の経済の動きのみを反映)から作られた公式です。
そこで、「高齢化で貯蓄率が下がる一方」と書かれていますが、これは、日本経済が右肩に下がる前提と考えておられるのでしょうか?それとも、貯蓄を「フローではなくストック」として捉えているのでしょうか?
もし、ストックとして貯蓄をたら得ているのなら、それは誤りという事になります。これがまず第一点。
それから、第二点目なんですけど、国内の景気動向とかんがいの景気動向が重要な鍵になってきますので、まず、変数を見る時は、その辺から分析してみたらどうでしょうか?基本的に消費性向や貯蓄率というのは目先的には、変わりません。変わるのは、国内外の景気動向です。その辺の動向を注視しながら、国内外の経済政策を鑑みて、変数がどう変化するのか?考えてみると分かりやすいと思います。
No.4
- 回答日時:
もうひとつ補足すると
金利水準や貯蓄選好など需要と供給に影響する要因からマクロ変数の変化を説明するのと、
恒等式S-I=X-Mに表される依存関係を考えるのとは異なる視点として整理すべきだと思います。
需要と供給は、価格や金利が与えられた下での「意欲」の段階にある量です。
意欲される需要と供給が一致するように価格や金利が変動するという考え方が市場均衡の理論です。
他方、恒等式S-I=X-Mは、一定期間内に実現される生産、所得、支出が一致することの当然の帰結です。
一定期間内の生産と取引を記録して4つの変数の値を求めると、恒等式を満たすわけです。
したがって、質問にある諸々の要因を考慮して市場均衡の理論に従い均衡での需要=供給を求め、その通りに生産と支出が達成されたとするなら、導き出されるS, I, X, Mはやはり恒等式を満たすでしょう。
No.2
- 回答日時:
> 例えばの話、「高齢化で貯蓄率が下がる一方、投資環境が好転して貯蓄超過が縮小するけれども、原油価格が下がりかつ輸出競争力がついて、経常収支の黒字幅は拡大する」ということはあり得ないのでしょうか?
もしそうなった場合、貯蓄率が上がったとしても所得が増えて貯蓄そのものが増えるか、過去の在庫が減るか(つまりマイナスの投資)のいずれかになります。
> ないとすると、なぜでしょうか?
簡単に言えば、投資には「意図せざる在庫増減」、つまり売れ残りも投資としてカウントされるためです。
簡単に、一種類のもの、例えばパンしかないとしましょう。このパンは労働だけで作られるものとします。
また、パンの価格は1個100円で固定しましょう。
するとパンを100個作ったとすれば所得は全員合計で10000円になります。
ここで、10000円のうち8000円を消費するとしましょう。この場合、2000円は貯蓄になります。ここで、作ったパンは20個あまっています。貿易がある場合、5個を輸入して10個を輸出したとすれば、輸出-輸入は500円となります。
この時、国内には95個(100+5-10)のパンがありそのうち80個が消費されたので、15個、すなわち1500円が投資ということになりますから
2000-1500 = 1000-500 (=500)
となり、貯蓄ー投資=輸出等ー輸入等が成り立つことが分かります。
今、貯蓄率が落ちたとして、例えば9000円が使われたとしましょう。貯蓄は1000円です。すると、残ったパンの量は95個のパンがあり、90個が消費されるため、投資は500円となります。ここから
1000-500 = 1000-500 (=500)
となり、やはり貯蓄ー投資=輸出等ー輸入等が成り立つことが分かります。
輸出入が増減した場合も全く同じように考えれば成り立つことが分かります。
No.1
- 回答日時:
恒等式が成り立つということは、「高齢化で貯蓄率が下がる一方、投資環境が好転して貯蓄超過が縮小するけれども、原油価格が下がりかつ輸出競争力がついて、経常収支の黒字幅は拡大する」ということはあり得ないということです。
例えば、
1 貯蓄性向が下がる一方、投資意欲が高まると、金利が上昇し、I=Sが成立するところで均衡します(簡単化のため閉鎖経済とした場合)。
2 輸出が増え、輸入が減って黒字幅が拡大すると、それは自動的に貯蓄の増加か、または投資の減少(在庫調整など)となります。
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