もし、日本国内で下記のような事例が起こったらAは刑事罰の対象になりますか?
工事現場でAには全く責任がないトロッコが暴走
このままではトロッコが数十名の作業員に突っ込み、多数の死傷者が出ることは客観的に必至
Aは線路を切り替えて暴走トロッコを別経路に向かわせることが可能な状況
しかし、別経路には作業員が1名だけいて、経路を変更するとその1名の死傷は必至
作業員に連絡する時間も手段もなく、Aはトロッコの経路を変える以外の手段がない
多数の作業員を助けることを優先し、1名が死傷することは承知の上で経路を変更
その結果、多数の作業員は助かり、経路を変更した先の作業員1名は死亡
日本の刑法では、Aはどのようになるのでしょうか?
No.4ベストアンサー
- 回答日時:
Aは、別路線の作業員が死亡することが確実であることを知って路線を切り替えたので、故意の殺人罪(刑法199条)が成立します。
しかし、刑法37条の適用により、罰せられない場合があります。条文を見てもらえれば分かるのですが、37条が適用される条件としては、(1)自己または他人の生命などに対する現在の危難を避けるために、(2)やむを得ずした行為であって、(3)これによって生じた害が避けようとした害の程度を越えなかった場合、という3つが挙げられます。
(1)については、Aは、現在の路線の先にいる多数の作業員の生命が今にも失われようとしている危険(危難)を避けるため路線切り替えを行っているので、条件を満たします。
(2)については、路線を切り替えることでしか多数の作業員を救えない状況なので、やむを得ない行為だといえます。
(3)についても、Aの路線切り替え行為によって死亡する人数は、それをしない場合に比べて少ないので、条件を満たすと考えます(ただし、ここは人によって意見が分かれるところです)。
よって(1)(2)(3)の条件をすべて満たすので、刑法37条の適用により、Aは殺人罪の処罰を免れることになります。
形式的に考えると、Aには原則として殺人罪が適用されますが、それが刑法37条によって処罰されない、という流れになります。
ご回答ありがとうございます
まずは殺人罪、次に37条で無罪になる可能性がある(ならない可能性もある)という感じでしょうか
参考になりました
裁判の結果はさておき、自分がAの立場でどう行動するかは大いに考えてしまいます
No.5
- 回答日時:
他の方がおっしゃってるとおりですが,
「日本の(現在の)刑法では,Aはどのようになるのでしょうか?」
と考えたとき,
日本は,「裁判員裁判」ですからね。これがAに対する殺人事件として審理されるのであれば,裁判員の判断としては,おそらく,Aは無実でしょう。
ちなみに,1審の判断は,よほどの問題がない限り,2審(裁判官のみ)で変更すべきでないとの最高裁判例ができているので,2審で逆転判決がでる可能性もなく,その後の最高裁も,上記のとおり既に判例は出ておりますので,
Aの無罪は確実・・・と思います。
もっとも,1審で有罪となれば,話は別でしょうけどね。そんなことにはならないと思いますけど。
No.3
- 回答日時:
この問題は、考え方によって何通りもの回答があります。
理屈の上ではそうなんだけどちょっと納得いかないなぁ、とお感じになるでしょうが、殺人罪が成立するとして、拙いながらも回答します。
Aには殺人罪(刑199条)が成立します。
Aは、トロッコの暴走それ自体については故意・過失ともにないので、数十人の作業員が死亡しても本来なら罪に問われることはありません(刑38条(1))。
ところが、この現場ではトロッコの経路を変更することが可能でした。
トロッコの経路を変更した先に誰もいなければ何の問題もなかったのですが、この事例では、一人の作業員がいます。
Aは別経路に一人作業員がいることを認識していたにもかかわらず、数十人の作業員を助けるために、本来なら助かるべき作業員の生命を犠牲にするという明確な意思をもってトロッコの経路を変更しました。
トロッコの経路を変更した時点でAには殺人罪の故意と実行の着手が認められ、作業員の死亡という結果を惹き起こしたのですから当然に殺人罪の構成要件に該当します(刑199条)。
他人のための緊急避難(刑37条(1))については認められません。死亡した一人の作業員の生命は、本来死亡する運命になかった以上完全に保護されるべきであり、数十人の作業員の生命も保護に値するが、振りかかる運命を転嫁して、完全に保護されるべき生命が適法に奪われることは認めるべきではないからです。
ご回答ありがとうございます
まずは殺人罪が適用されるのは確実
争点は、緊急避難を適用すべきか否か
回答者さまは否という考えですね
参考になりました
No.1
- 回答日時:
日本では刑法上の緊急避難に沿って、裁かれると思います。
「刑法上の緊急避難
刑法における緊急避難は、人や物から生じた現在の危難に対して、自己または第三者の権利や利益(生命、身体、自由、または財産など)を守るため、他の手段が無いためにやむを得ず他人やその財産に危害を加えたとしても、やむを得ずに生じさせてしまった損害よりも避けようとした損害の方が大きい場合には犯罪とはならない(違法性が阻却される)というものである。日本では刑法37条1項本文に規定されている。
もしも生じてしまった損害が避けようとした損害よりも大きければ情状によって刑が減免されうるに過ぎない。これを過剰避難(かじょうひなん)といい、同項但書に規定されている。
以下、緊急避難の概念を、具体例を挙げて説明する。
船が難破して乗客のAとBが海に投げ出された。そこに一人ならつかまって浮いていられるが、二人なら沈んでしまう程度の大きさをした舟板が流れてきた。この板につかまって救助を待つよりほかに助かる術は無い。二人はこの板につかまろうとしたが、AはBを蹴り離して溺死させ、その後Aは救助された(いわゆる「カルネアデスの板」)。
Aが道を歩いていると、鉄パイプを持った暴漢に突如襲われた。Aは逃げたが追いつめられ、やむを得ず赤の他人であるBの家へ無断で侵入し、ここに隠れて難を逃れた。
心臓発作を起こし路上で倒れたB。通りかかったAが救急車を呼ぶ一方で閉胸心臓マッサージを施したが、余りに強く押したのでBの肋骨にひびを入れてしまった(応急処置)。
Aの行為は、通常ならば殺人罪や住居侵入罪、過失傷害罪として罰せられる。しかしこれらの行為は、生命身体という正当な利益が危険に晒されており、その危険を回避する手段が他に無いためやむを得ずしたものである。そして、生命身体への侵害を回避したことによって生じる損害の方が小さいか少なくとも同等であるので、Aの行為は緊急避難であるとして犯罪にはならないこととなる。
この緊急避難と似た概念として正当防衛がある(日本の刑法36条1項)。正当防衛も緊急避難も、本来なら処罰される不正な行為であっても一定の理由がある場合には例外として刑事責任を問われない、という点は共通している。しかし以下のように異なる点もある。
まず緊急避難は危険を回避するために他の手段が無く、やむを得ずした行為でなければならない。これを補充性の要件という。上記2の例で考えてみる。仮に交番がすぐ近くにあってそこへ逃げ込むことができたのに敢えて暴漢に立ち向かったとする。この場合、正当防衛が成立する余地はある。しかし交番へ逃げ込むという他の手段があるのに敢えてBの家に上がり込んだのであれば緊急避難は成立しない。
また、危険が回避されたことで得られた利益とそれによって侵害されてしまった利益を比較することが要件になっているのも正当防衛にはない特徴であり、これは法益均衡の要件といわれる。例えば子犬に追いかけられただけなのに他人の家へ勝手に上がり込んで難を逃れるというのは緊急避難とはならない(但し犬嫌いの人もいる事から、過剰避難として情状が考慮される余地はある)。
このように、一般にいって緊急避難の方が正当防衛よりも成立するための要件が厳しい。これは緊急避難が利益侵害とは無関係の者の利益を犠牲にして危険を回避する制度である点に起因する。ここに正当防衛と緊急避難の本質的な差異がある。以下の例でその点を説明する。
Aが道を歩いていると、突然日本刀を持った暴漢が襲いかかってきた。そこでAは空手を駆使して反撃し、これを撃退した。
Aが道を歩いていると、突然日本刀を持った暴漢が襲いかかってきた。ひ弱なAは立ち向かうことができず、近くにあったBの家に逃げ込もうとした。しかしBは不在だったので勝手に屋内へ侵入して電話を使い、警察へ通報して難を逃れた。
Aの行為は、1では正当防衛、2では緊急避難であるとして犯罪は成立しない。1の例のように、正当防衛は侵害者の違法な侵害行為に対して直接反撃することより生命身体や財産などの正当な権利を防衛するものである。言い換えれば、侵害行為と防衛される利益の間には「不正」対「正」という関係がある。これに対して2の例のような緊急避難は、侵害とは関係のない第三者に対して損害を転化することで危難を回避し、正当な権利への侵害を免れるものである。ここでは緊急避難行為によって侵害される権利と緊急避難行為によって危難から逃れた権利はどちらも正当なものであるから、両者には「正」対「正」の関係があるといえる。であればこそ緊急避難を容易に認めるべきではなく、要件が厳しくなっているのである。
また、正当防衛の前提である「不正の侵害」は人間でなければすることができないと考えられているため、例えば襲ってきた飼い犬を撃退した場合には正当防衛ではなく緊急避難の問題となるとされている(いわゆる対物防衛の問題)。
なお、日本の刑法上の緊急避難には、「前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。」(刑法37条2項)と言う規定もある。警察官や自衛官、消防吏員は、危険を前にしてもぎりぎりまで踏み留まり、市民が退いたのを確認した上で避難する義務があるのである(その代償として万一の場合は殉職となる)。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B7%8A%E6%80%A5% …
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