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直流機の電機子鉄心は鉄損を少なくするため、厚さ0.35mm~0.7mmの電磁鋼板(けい素鋼板)、または無方向性けい素鋼帯の積層鉄心からできていますが、
(1)電磁鋼板の厚さ0.35mm~0.7mmはどう決められた値ですか。
(2)鋼板と鋼帯は何が違いますか。また無方向性は何のことですか。電磁鋼板の方は方向性はありますか。
(3)鉄心を積層にするのが渦電流を小さくするためだと思いますが、積層しても平面が大きいので渦電流は積層鋼板の厚さ方向ではなく面全体に流れることは考えられないですか。積層鋼板の原材料を粉状に粉砕して、その粉を何らかの方法で鉄心形状に加工することはできないでしょうか。
以上、しつこくて申し訳ないが、1つだけでもいいので、ご教授よろしくお願いいたします。

A 回答 (1件)

(1)電磁鋼板の厚さ0.35mm~0.7mmはどう決められた値ですか。


理論的には,周波数,材料の透磁率と抵抗率から決まる「浸透深さ」から決まります。
高周波交流磁束を鉄心に通そうとすると,
渦電流に邪魔されて,磁束は鉄の表面だけを流れ,
内部に染み込むことができません。
磁束が染み込める深さを「浸透深さ」と言います。
この浸透深さより内側の鉄は磁路として役立たないので,
浸透深さ程度以下には鋼板を薄くする必要があります。

実用的には,磁気的な性能に対して,
製作の手間および占積率のバランスかと思います。


(2)鋼板と鋼帯は何が違いますか。また無方向性は何のことですか。
 電磁鋼板の方は方向性はありますか。

電磁鋼板には方向性と無方向性があります。
方向性鋼板は圧延の時の工夫で,結晶の方向をそろえてあります。
ある方向には磁束を通しやすく鉄損も少ないが,
それと直交した方向では磁気的性質が悪化します。
磁束が通る方向が決まっている場所,
例えば変圧器の鉄心には方向性電磁鋼板を使います。

磁束が通る方向が決まっていない場所,
例えば回転機の回転鉄心などでは,
方向性鋼板のメリットを活かせないので,
無方向性電磁鋼板を使います。

鋼板と鋼帯の違いはよく分かりません。
鉄鋼メーカから機器メーカへの鉄材が,
平面板で入る場合と,巻ロールで入る場合の違いかな?




(3)鉄心を積層にするのが渦電流を小さくするためだと思いますが、
 積層しても平面が大きいので渦電流は積層鋼板の厚さ方向ではなく
 面全体に流れることは考えられないですか。

積層鉄心に交流磁束を流すとき,その方向に大原則があります。
「磁束は鉄板の面に平行に流せ。面に垂直に出入りする磁束は流すな」

面に平行した交流磁束が作る渦電流は,その磁束を囲む経路,
すなわち鉄板の表面を端から端へ流れ,裏面を端から端へと一周します。
この電流経路は長いので電気抵抗は高くなりますが,
囲まれる磁束は厚み分だけなので比較的小さく,渦電流を流そうとする起電力はわずかです。
結果として,渦電流は抑えられます。

しかし,面に垂直に入射する交流磁束があると,鉄板の面内を堂々と渦電流が流れます。
これでは積層鉄心にした意味がなくなります。

回転機の鉄心では,磁束が積層鋼板の面に平行に流れるように,磁路を作ります。
ただし,鉄心の端などで,鉄板の面に垂直な漏れ磁束が発生することがあります。
これは鉄心端部を加熱する原因となり,注意して対策している例があります。



>積層鋼板の原材料を粉状に粉砕して、その粉を何らかの方法で
>鉄心形状に加工することはできないでしょうか。
フェライトとかアモルファスとか新しい磁気材料はあります。
磁気的な性能はよいが,機械的強度の問題を抱えた材料です。

フェライトは鉄化合物の粉を陶器状に焼き固めたイメージです。
高周波特性が良いので,高周波トランスの鉄心に使われています。
飽和磁束密度が低い点,機械的強度が弱い点が問題です。

回転機に使うとなると,固定子鉄心ならなんとか使えるとして,
回転子鉄心では,機械的強度が問題になりそうです。
研究段階の試作例はあったかと思います。
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この回答へのお礼

ご回答大変ありがとうございました。とても勉強になりました。何番の回答でも私にとって大変いい知識源です。特に、浸透深さは今まで聞いたことがない概念です。それを知ってとてもよかった。ありがとうございました。

お礼日時:2012/07/04 20:27

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