「被上告人らの先代は、自作農創設特別措置法に基づいて政府から本件土地の売渡を受けたもので、その無効であることを知らず、右売渡によってその所有権を取得したものと信じて以後その占有を継続していたというのであるから、被上告人らの先代は右処分以来本件土地を所有の意思をもって占有していたものということができ(る)」(最判昭和44年5月22日)
については、下記のとおりに解釈してよいでしょうか。
ご教示よろしくお願いいたします。
記
国は、「自作農創設特別措置法」という法律によって、地主から農地を半ば強制的に買い上げて、それ(その農地)を安価に小作農に売り渡すという事業を実施し(農地解放)、これによって、小作農であった「被上告人の先代」は、国から農地を購入し、占有して営農していた。
ところが、当該農地については、建設大臣が、都市計画上、公園と決定したことで、その売買が無効ということになった。
ちなみに、この「都市計画上、公園と決定したこと」については、まだ、外見上、児童公園の形態を具備させておらず、公用開始行為はなく、まだ、公物とはなっていないが、将来そうなることが予定されているもの(予定公物)であった。
これについて、裁判所は、「被上告人の先代」は、「国から農地を買った(売買行為をした)」「『当該売買には、有効であり、その所有権は自分にある』と信じることに過失は無い。」「当該農地を、『所有の意志を持って占有していた』と言える。」とし、「売買は無効だったかもしれが、『被上告人の先代』は、平穏・公然・善意・無過失で所有の意志を持って占有していた。」のだから、「取得時効の成立」という被上告人の主張を認めた。
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
引用されているフレーズについては、「所有の意思をもって占有していた」(自己占有)ということを認定しているだけで、「平穏・公然・善意・無過失」なんてことは一言も言ってないでしょう。
判決文を読む限り、これは判決理由中の「所有の意思を持った占有とは認められない」という上告人側の主張について触れた部分の一部であり、この主張に対してのみ判断を行なっているものです。
「平穏・公然・善意・無過失」だったかどうかは争点にはなっておらず、したがってその点については最高裁は判断をしていないと思われます。
(原文)
「同第三点について。
取得時効の要件としての所有の意思の有無は、占有の根拠となつた客観的事実によつて決定さるべきところ、原審の確定するところによれば、被上告人らの先代は、自作農創設特別措置法に基づいて政府から本件土地の売渡を受けたもので、その無効であることを知らず、右売渡によつてその所有権を取得したものと信じて以後その占有を継続していたというのであるから、被上告人らの先代は右処分以来本件土地を所有の意思をもつて占有していたものということができ、これと同旨の原審の認定判断は、正当である。
原判決に所論の違法はなく、論旨は採用するに足りない。」
なお、裁判所HPに掲載されている判決要旨には、
「旧都市計画法(大正八年法律第三六号)三条に基づき建設大臣が決定した都市計画において公園とされている市有地であつても、外見上公園の形態を具備しておらず、したがつて、現に公共用財産としての使命をはたしていないかぎり、民法一六二条に基づく取得時効の成立を妨げない。」と記載されています。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid …
つまり、この判決のポイントは、
「公共用財産については、原則として時効取得の適用がないものとされているけれども、現に公共用財産としての使命をはたしていない限り、市有地であっても、取得時効は成立する」という点なのではないですかね。
この回答への補足
以下の解釈でよいでしょうか。
当該農地については、建設大臣が、都市計画上、公園と決定したことで、その所有権は国から公共団体に移転していたのであるから、「被上告人の先代」と国の間でなされた当該農地を目的とする売買契約は、無効である。
当該農地は、所有権が公共団体にあるので、公物である。
公物については、原則として時効取得の適用がないが、「予定」公物であれば、まだ、公物としての使命をはたしていないので、取得時効の適用があり、当該農地の場合は、これ(予定公物)にあたる。
よって、当該売買契約は、無効であるが、当該農地については、当該「被上告人の先代」による取得時効は成立する。
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