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No.2
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こんにちは
『土佐日記』の注釈書や、古典全集等の注釈を見ると、「藤原のときざね」について、説明を省いたり、「詳細は不明」とするものが多く見られます。しかし、1/3ほどが「在庁官人か」としています。「在庁官人か」の論拠は確認してはいませんが、下記の筋立てで大筋で間違いはないと思います。
ところで、『土佐日記』で、土佐の大津から船出するまでに、具体的な人名、官職名で表記されたものは4名います。「藤原のときざね」「八木のやすのり」「講師」「(主の)守」です。
「八木のやすのり」は、「この人、国にかならずしもいひつかふものにもあらざなり。」としています。つまり、「この人は、国衙で特に召し使っている者でもないということです。」くらいに訳せます。
「講師」は平安時代時代に、令制国に一名ずつ置かれた僧官で、国分寺の住職。
「主の守」=朝廷から令制国に派遣される国司の長。なお、国司は四等官で、上位から守(かみ)、介(すけ)、掾(じょう)、目(さかん)の四階級に分かれます。なお、『国司補任』では、紀貫之の後任の土佐守を、『外記補任』を根拠として、元・大外記で従五位下の島田公鑑としています。
これらをまとめると、京より下向した新任の土佐守、土佐国の宗教界のトップ、在野ではあるが土佐国の有力者となります。そして、文中の「知る知らぬ送りす。」「上中下、酔ひあきて」「ありとある上下、童まで酔ひ痴れて、」という表現を考えると、前土佐守の紀貫之は、土佐国の全ての階層の人々に惜しまれ、見送られたとする情景を描いた-事実かどうかは別にして-と考えられます。とすると、「藤原のときざね」は何を代表するかです。注目するのは、「八木のやすのり」の身分についてだけ説明があることです。逆に考えれば、官にないのは「八木のやすのり」だけなので特記したと考えられます。そうなるとあと残るのは、土佐国の在庁官人(郡司の可能性もありますが)ということになります。
ところで、新任の守を国境で迎える時の儀式に「境迎(さかいむかえ)」があります。京から下ってきた守は、国境前で、正装・帯剣し、国境内には在庁官人が徒列、まず神宝が入国し、次に守が入国、在庁官人のあいさつを受けることになります。ここにあるのは守・在庁官人・神宝(宗教)の三つになります。
そのように考えると、「藤原のときざね」は在庁官人を代表していたと考えられます。
では、在庁官人とは何かといいますと、ウィキとは少し違いますが、令制国の国衙(国庁。現在の県庁のようなもの)で、収税・警察軍事・雑務などの国衙・国務の実務を分担し、下級役人を監督する国衙の役人。現在の上級地方公務員のような存在で、国守(国司)により任命されました。この内、現地の土豪層の出身者が在庁、中央の官人系統の者が官人とされました。親子など代々在庁官人を受け継いでいくものも多かったとされます。中央から派遣される国司は在国しないことも多く(目代以下の受領の側近が下向することも多かった)、国衙の実務は在庁官人(と目代以下)により運営されていることが多かった。
この在庁官人の任命は国守なので、守と在庁官人は上司と下僚の関係ということができます。貫之と藤原のときざねも同じ関係だっただろうことになります。
なお、在庁でなく、郡司という考え方もできるのですが、郡司は平安時代になると影響力を徐々に失い、在庁官人が令制国の実務の担い手になりますので、在庁の可能性の方が断然高いと思います。
新任の守、在庁官人、僧官、在野の人が揃うことにより、「知る知らぬ送りす。」「上中下、酔ひあきて」「ありとある上下、童まで酔ひ痴れて、」という構成が完結することになります。
在庁官人
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%A8%E5%BA%81% …
以上、個人的な論証ですので、参考程度に。
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