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- 回答日時:
まず、金属の融点はざっくり言えば結合を構成する電子の数で決まります。
アルカリ金属は完全に閉殻したアルカリ金属イオンを原子1個あたり1個の電子で
繋いでいるような形になっています。これに対して、その隣のアルカリ土類金属では
原子1個あたり2個の電子が繋いでいます。そのため、アルカリ土類金属はアルカリ金属より
融点が高くなっています。また、金属原子の半径が大きくなると最外殻の電子軌道の
電子密度が下がり、結合が弱くなるために融点が下がる傾向があります。(例外有り)
融点が高い金属は遷移金属元素に多く見られますが、これは遷移金属のd軌道の
電子が多いために結合が強くなりやすいという理由が挙げられます。もうひとつの理由として、
このd軌道というのは電子が密集した部分とまばらな部分があり、隣接する原子の
電子が密集した部分同士で結合を作ることによって、結合の電子密度が上がります。
これによって遷移金属の中でも、特に6族元素の周辺は高い融点を示します。
d軌道の電子が増えて閉殻に近づく(11族周辺)と、今度はd軌道内で電子対を作れるように
なるので金属結合に使われる電子が減少し、融点が低くなってくる傾向にあります。
13~15族の典型金属元素も同様に、p軌道の電子が増えて閉殻に近づくために
結合に使われる電子の数が減って融点が下がる傾向があります。
ただし、例外が2つあります。
ガリウム(融点30 ℃)と水銀(融点-38 ℃)です。
ガリウムの固体は複数の結晶構造が入り混じった構造をしており、
原子間の距離(=結合距離)が短いものと長いものが混ざっています。
長い結合は切れやすいため、低い融点を示す原因になっています。
水銀や原子番号が1小さい金は、相対論効果という現象によって特殊な性質を示します。
原子中の電子は、エネルギーが低い(=内側にある)軌道から満たされていきますが、
原子番号が大きくなるにしたがって原子核の電荷が大きくなるために
原子核周辺の存在確率が特に大きいs軌道の電子は軌道が収縮し、
電子が光速と比較できるくらいの速さで運動するようになります。
光速に近い速さで運動する物体の質量は相対論によって増大するため、
電子の質量は増大します。質量の増大によって、本来電荷のみによって収縮する以上に
軌道が収縮し、s軌道の電子は原子の内側に隠れてしまうことになります。
さて、水銀の電子配置は [Xe] 4f14 5d10 6s2 ですが、このうち最も外側にあるはずの
6s軌道の電子が内側に隠れてしまうため、水銀の最も外側にある電子軌道は
4f軌道と5d軌道になります。そしてこの軌道は両方とも閉殻しているために、
自由電子を出すことができず、原子間の引力が極めて弱い(希ガスに近い)ために
水銀は常温で液体、しかも沸点も異常に低いという非常に珍しい性質を示します。
余談ですが、水銀よりも原子番号が1小さい金は、希ガスに似た性質である水銀から
電子を1個剥ぎ取った電子構造をしています。そのため、ハロゲンに似た性質を示します。
金が酸化されにくい(=電子を剥ぎ取られにくい)という性質はこれに由来しています。
さらに電子を放出しやすい金属であるセシウムを金と1:1で混ぜて融解すると
合金ではなく、金化セシウムというイオン性の化合物を生じます。
この回答へのお礼
お礼日時:2015/04/08 17:28
大山田花子さん
丁寧なご回答ありがとうございます。
遷移金属は、d電子も金属結合に寄与するのですね!なるほどです!
また、金属結合の電子にも"電子対"という状態があるのと、それになると金属結合には寄与しない
ということも初めて知りました。(これは、そうゆうものであると覚えるしかないですか?)
あと、水銀と金の特性を説明できる理論、すごく面白いですね!
ありがとうございました!!
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