A 回答 (8件)
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No.8
- 回答日時:
> 分解のしやすさということでいえば炭酸ナトリウムは「炭酸カルシウムと同じ程度だが少し起こりやすい」と考えていいようです。
いいえ。炭酸ナトリウムは炭酸カルシウムより分解しにくいです。
■900℃でどれくらい分解するか。
CaCO3のCO2解離圧が898℃で1atmになるということは、熱力学的には、この温度でCaCO3の50%が分解するということです。
一方、Na2CO3の融点は1bar(≒1atm)のCO2下で851℃ないし855℃です。
http://staff.aist.go.jp/tanimoto-k/HP_MCFC/alika …
http://deepblue.lib.umich.edu/bitstream/handle/2 …
この温度では、ほとんどNa2CO3は分解していません。
http://dx.doi.org/10.1021/j150524a011 によれば1200K~1400K(900℃~1100℃)で、Na2CO3の1%くらいが分解するとのことです。
■600℃くらいはどうか。
JIS K8005に容量分析の標準物質として使う炭酸ナトリウムの乾燥方法が記載されているのですけど、それによると「600±10℃で約60分間加熱した後、デシケーターに入れて放冷する。」とあります。容量分析の標準物質ですから、乾燥後の純度はどんなに悪くとも99.9%より高くなければなりません。つまり、このような加熱をしてもNa2CO3の熱分解の程度は0.1%を超えることはない、ということが分かります。
一方、炭酸カルシウムについては580℃付近から熱分解が始まる、という報告があります。
http://www.enomae.com/publish/pdf/ThermalDecompo …
この報文のFig.5に示されているCaCO3の熱重量曲線(TGカーブ)は、それほど珍しいデータではありません。
シュウ酸カルシウム一水和物は
CaC2O4・H2O → CaC2O4 → CaCO3 → CaO
のように段階的に熱分解するので、熱重量分析(TGA)のデモンストレーションによく使われます。
https://www.google.co.jp/search?q=CaC2O4+TG
検索結果のTGチャートをいくつか眺めると、どのチャートでも、だいたい600℃からCaCO3の熱分解が始まって800℃で終わっていることが分かると思います。
■教科書的にはどうか。
海外のサイトになりますが、教科書的には
Na2CO3やK2CO3は熱分解しにくい物質の代表例で
http://www.nuffieldfoundation.org/practical-chem …
CaCO3は強熱すれば熱分解する物質の代表例のようです。
http://www.nuffieldfoundation.org/practical-chem …
■理論的にはどうか。
CaOの方がNa2Oよりも格子エネルギー(静電エネルギー)が大きく、また、CaCO3の方がNa2CO3よりも格子エネルギー(静電エネルギー)が大きいことは、素朴に考えても分かると思います。ナトリウム塩では陽イオンの数がカルシウム塩の倍になるので、陽イオン間の反発が大きくなるからです。では炭酸塩と酸化物の格子エネルギー差はどうなるか?ということを考えると、少し定量的に考える必要があります。
定量的に格子エネルギー差を見積もるにはカプスティンスキーの式を使います。
http://en.wikipedia.org/wiki/Kapustinskii_equation
いま、ナトリウムイオンとカルシウムイオンのイオン半径が等しいとすると、
Na2CO3ではν=3,|z+|=1,|z-|=2,
CaCO3ではν=2,|z+|=2,|z-|=2,
で、他のパラメータは共通なのでNa2CO3の格子エネルギーはCaCO3の格子エネルギーの3/4倍になります。
同様に、Na2Oの格子エネルギーはCaOの格子エネルギーの3/4倍になります。
ですので、炭酸塩と酸化物の格子エネルギー差も3/4倍になります。
つまり、
Na2CO3 -> Na2O + CO2
という熱分解で生じた静電エネルギーの落ち込みは
Ca2CO3 -> CaO + CO2
という熱分解で生じる静電エネルギーの落ち込みの
3/4倍になるということです。ですから、
熱力学的に考えると熱分解する温度はナトリウム塩の方が高くなります。
--------------------
不安定という言葉を不用意に使うと誤解を招く恐れがある、ということについては了解しました>#7さん
> 「分解しない」のではなくて「分解しにくい」というのが結論ではないでしょうか。
そうですね。このQ&Aの回答1~3にもそう書いてありますね。
> Na2CO3 → Na2O+CO2
> の反応で生じたNa2Oがケイ酸分と反応してガラスになる
CO3^2-から解離したO^2-が二酸化ケイ素表面のケイ素原子を攻撃して、
…SiOSi… + O^2- -> …SiO^- + O^-Si…
のようにSiOネットワークを二段階で切断する、と考えるよりも
CO3^2-が直接、二酸化ケイ素表面のケイ素原子を攻撃して、
…SiOSi… + CO3^2- -> …SiO^- + O^-Si… + CO2↑
のようにSiOネットワークを一段階で切断する、と考えた方が素直なんじゃないかなと私は思います。炭酸ナトリウムと二酸化ケイ素からケイ酸ナトリウムが生成するときと同じ機構で反応が進むのではないでしょうか。
Na2CO3 + SiO2 → Na2SiO3 + CO2
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/6106806.html
> 「融点は851℃だが400℃付近からCO2を失う」と書かれています。
何かの間違いじゃないかと思うのですけど、「やたらと長時間だったり」するのかもしれません。「炭酸ナトリウムは『炭酸カルシウムと同じ程度だが少し起こりやすい』」の根拠は、私も探してみたのですけど、理化学辞典のこの記述のほかは何も見つけられませんでした。
再々度のご教示ありがとうございます。
教科書にも、化学I・IIの新研究(三省堂)にも、アルカリ金属の炭酸塩は、分解しないと、理由もなく記述してあったのは、専門家の間でも、結論が出てないからかなと、思いました。
たくさんのサイトを教えていただきありがとうございました。
No.7
- 回答日時:
「分解しない」のではなくて「分解しにくい」というのが結論ではないでしょうか。
高温にすれば分解します。むちゃくちゃ高い温度でなければだめだということではありません。炭酸カルシウムの熱分解は「むちゃくちゃ高い温度で」とは言いません。それと同じような温度です。
NaHCO3が低い温度で分解するので違いが目立つのでしょう。
分解のしやすさということでいえば炭酸ナトリウムは「炭酸カルシウムと同じ程度だが少し起こりやすい」と考えていいようです。決め手がCO3^2-の中の結合の切り替えにあるからでしょう。静電エネルギー(イオン結合に関係する部分のエネルギー)はよる分の大きさについてはCaO,CaCO3の方がNa2O,Na2CO3よりも大きいでしょう。
CO3^2- → CO2+O^2-
この変化が共通です。これに大きなエネルギーが必要になります。
CaCO3 → CaO+CO2
この熱分解は800℃ぐらいから目立ってくるようです。
理化学辞典には898℃で解離圧が1atmになると書かれています。
(こういう数値は通常CaCO3,CO2,CaOの3つの物質の閉じた系を設定して考えているものです。その系での平衡状態を考えています。日常的なイメージの開放系ではありません。融点が1339℃というのもそういう閉じた系での話です。化学辞典(東京化学同人)ではその温度で102.5atmと書かれています。)
理化学辞典、炭酸ナトリウムの項に
「融点は851℃だが400℃付近からCO2を失う」と書かれています。
炭酸ナトリウムはガラスを作る時の原料になります。
ソーダガラスのナトリウム源は炭酸ナトリウムです。
Na2CO3 → Na2O+CO2
の反応で生じたNa2Oがケイ酸分と反応してガラスになるというのは教科書にも出てきているのではないでしょうか。実験室で使うガラス棒は加熱するとNaのオレンジ色の炎色反応が見られます。
Na2Oは不安定な物質であるというのはやはりおかしいです。
熱力学データでは安定な物質であるか不安定な物質であるかは判断できません。2つの平衡状態でのエネルギーを比較しているだけだからです。その平衡状態の移り変わりについては何も言っていません。
ウィキで見るとNa2O,Na2O2の生成エンタルピーは -416kJ/mol、-515kJ/molであるとなっています。確かにNa2O2のほうが低いです。でも低いほうの物質しか存在しないのではありません。
CO2とCOとを比べると当然のことながらCO2のほうが低いです。しかしだからと言って「一酸化炭素は不安定な物質である」と言えばおかしくなります。一酸化炭素は安定な物質です。保存中に勝手に変化してしまうということはありません。酸素と混合しても火をつけない限り反応しません。CH4とCH3OHで比べても同じです。CH4は安定な化合物です。
※一酸化炭素中毒を2CO+O2→2CO2の反応が起こりやすいからであると考えている人がいるようですが、これは誤りです。
※NOの生成エンタルピーが正であるからと言って勝手に分解してしまう(2NO → N2+O2の反応が勝手に起こる)と考えるのは誤りです。
※加熱すればNa2O2,NaO2は分解してしまうのですから熱分解を考えているときにはNa2Oだけが存在するというになります。
※化学便覧には生成エンタルピーの値、標準エントロピーの値、生成ギブスエネルギーの値の表があります。
再度のご教示ありがとうございます。
専門家の間でも結論が出てないから、教科書にも、化学I・IIの新研究(三省堂)にも、アルカリ金属の炭酸塩は、分解しないと、理由もなく記述してあったのかなと、思いました。
化学辞典(東京化学同人)を読んでみます。
No.6
- 回答日時:
> この数字で見るとどれも常温では安定な化合物です。
> Na2Oが一番安定です。
いいえ。常温常圧では、Na2Oが最も不安定な物質です。
NIST Chemistry WebBook http://webbook.nist.gov/chemistry/
に記載のデータを使うと、298Kにおける反応
Na2O + (1/2)O2 -> Na2O2
Na2O + (3/2)O2 -> 2NaO2
のギブスエネルギー変化ΔGを計算することができて、どちらの反応もΔG<Oになります。これは常温常圧ではNa2O,Na2O2,NaO2のうちでNa2Oが熱力学的に最も不安定な物質であることを意味します。
高温になると、気体が発生する方向に反応が進み易くなるので逆向きの反応が起こります。つまりNa2O2もNaO2も熱分解してNa2Oになります。
> 炭酸カルシウムCaCO3は熱分解します。
> CaCO3 → CaO+CO2
> 比べるとしたらこの反応ではないでしょうか。
> Na2CO3 → Na2O+CO2
比べるとしたら、同じ周期のNaとMg、あるいはKとCaの方がよくないですか。
> 融点はほとんど違いません。イオン結合の強さにはあまり違いはなさそうです。
CaCO3は、ふつうは、融解する前に分解するんじゃないかなと思います。825℃は分解温度ではないですか。
> 生じた物質の静電エネルギーの落ち込みが大きいので(b)に必要なエネルギーを十分にカバーできたという風に理解できることになります。
はい。アルカリ土類金属(Mgをふくむ)炭酸塩の分解温度がMg<Ca<Sr<Baの順になるのは、生じた物質の静電エネルギーの落ち込みがMg>Ca>Sr>Baの順で小さくなるから、という説明がしばしばなされます。
それと同じように、アルカリ金属炭酸塩の分解温度を説明するためには、生じた物質の静電エネルギーの落ち込みが(b)に必要なエネルギーをカバーできないくらい小さいことをうまくいえるといいです。ですけど、誠実に答えるとかなり難しい話になるんじゃないかなと思います。
おおざっぱに言って、熱力学的な答えは
(I) アルカリ金属炭酸塩が安定だから、
(II) アルカリ金属酸化物が不安定だから、
のどちらかしかないと思うんですけど、#3では(II)を選びました。
理由は
■アルカリ金属の水酸化物が熱分解しない。
■アルカリ金属の酸化物は、高校の化学実験室では見ることがない。
■見ることができたとしても、混合物の形としてである。
■他の金属ではなかなか見られない、過酸化物イオン、超酸化物イオンの塩が得られる。
ということが(II)で説明できるからです。
物質の安定/不安定というのは相対的なものですから、(I)についても言及すべきだったのかもしれませんが、(I)を強調することによる(学習上の)メリットというものが思いつかなかったので、触れませんでした。
なぜアルカリ金属酸化物A2Oが不安定なのかを説明しないと、説明したことにはならないだろうと言われればそのとおりなのですけど、誠実に答えるとかなり難しい話になるだろうなと考えて#3ではお茶を濁しました。ごめんなさい。
再度のご教示ありがとうございます。
ギブスエネルギー変化という言葉を初めて知りました。勉強になりました。物理を勉強した後に、もう一度考え直して見ます。
確かに、物質の安定性は、相対的だから、ある物質は不安定であると決めつけるのは誤りだなと反省しました。
No.5
- 回答日時:
ウィキでNaの酸化物を調べてみました。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%85%B8%E5%8C%96% …
Na2O(酸化ナトリウム Na^+と酸化物イオンO^2-のイオン結合性物質)
融点 1132℃、沸点(1950℃で分解)
Na2O2(過酸化ナトリウム Na^+と過酸化物イオン(O2)^2-のイオン結合性物質)
融点675℃、沸点(分解)
NaO2(超酸化ナトリウム Na^+と超酸化物イオン(O2)^-のイオン結合性物質)
融点551℃、沸点(分解)
この数字で見るとどれも常温では安定な化合物です。
Na2Oが一番安定です。
「炭酸ナトリウムが熱分解しないのはNa2Oが安定ではないからである」という説明に疑問を感じます。
炭酸カルシウムCaCO3は熱分解します。
CaCO3 → CaO+CO2
比べるとしたらこの反応ではないでしょうか。
Na2CO3 → Na2O+CO2
CaCO3 融点825℃、 沸点(分解)
ウィキ
>加熱することにより酸化カルシウムと二酸化炭素に分解する。
二酸化炭素の解離圧が1気圧に達するのは 898 °C である。
Na2CO3 融点851℃、沸点1600℃
融点はほとんど違いません。イオン結合の強さにはあまり違いはなさそうです。
どちらの反応もCO3^2-の中のCとOの結合を切る必要があります。このエネルギーが大きいのではないでしょうか。これを熱分解が起こるかどうかはこのエネルギーをカバーするだけの静電エネルギーの低下が生じるかどうかです。
エネルギーに3種類あることになります。
(a)元の物質の中のイオンとイオンの結合引き離す・・・・・静電エネルギー
(b)元の物質に含まれているイオン内部の結合を切ってつなぎかえる・・・・・結合エネルギー
(c)生じた物質の中に新たに生じたイオンとの間の静電エネルギー
CaCO3とNa2CO3で比べると(a)はあまり大きな違いがありません。(b)は同じです。(c)が大きく異なります。生じる物質はCaOとNa2Oです。
CaO 融点2572℃、沸点2850℃
Na2O 融点1132℃ 沸点(1950℃ 分解)
融点はCaOの方が1400℃ほど高いのです。
生じた物質の静電エネルギーの落ち込みが大きいので(b)に必要なエネルギーを十分にカバーできたという風に理解できることになります。
こう考えるとNaOHは熱分解しないがCa(OH)2は熱分解をするというのも同じように考えていいということになります。
2OH^- → O^2-+H2O
CO3^2- → O^2- +CO2
結合を切って裸の酸化物イオンO^2-を作るというのがむつかしい(=かなりのエネルギーを必要とする)変化だということです。
NaHCO3の熱分解はそれに比べるとおこりやすい変化だということになります。
2HCO3^- → CO3^2-+H2O+CO2
NaHCO3は水中だと常温でも分解し始めるようです。65℃以上になると分解が速くなるそうです。
どなたか補足していただけるとありがたいです。
物質の安定性を決める原因は複数あるのかなというのが、今のところの結論です。物理を学んだあとに、もう一度勉強してみます。
ありがとうございました。
No.3
- 回答日時:
アルカリ金属の炭酸塩が熱分解しないのは、アルカリ金属の水酸化物が熱分解しないのと同じ理屈です。
炭酸塩が熱分解すると、金属酸化物が生成します。
MCO3 -> MO + CO2
アルカリ金属の炭酸塩A2CO3も熱分解すると、アルカリ金属酸化物A2Oが生成します。
A2CO3 -> A2O + CO2
ですけど、A2Oが不安定なので、アルカリ土類金属や遷移金属の炭酸塩に比べると、熱分解しにくいです。
同じ一価金属の炭酸塩でも、炭酸銀は熱分解します。
Ag2CO3 -> Ag2O + CO2
これはAg2Oが比較的安定な化合物だからです。
なぜアルカリ金属酸化物A2Oが不安定なのかは、私には分からないです。ごめんなさい。
わかりました。ありがとうございました。
不安定な物質には、変化しにくいということですね。
アルカリ金属の酸化物が、不安定な理由は勉強してみます。
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