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当時30歳の私は5歳年下の彼女と出会いました。

東京の音大のピアノ科を出て、街の音楽教室で子供~大人を対象にピアノを教えていました。
軽くカールのかかった栗色のセミロング、楽譜を見つめるときの澄んだ大きな瞳、細くて長い指・・・

私は仕事帰りの時間を使い、大人の為のピアノレッスンに通っていました。
そこで彼女が担当している教室で出逢ったのです。
肝心のピアノはなかなか上達せず、万年劣等生でしたが、レッスンの合間に私が山の話(大学では山岳部でした)をしてあげると微笑みながらいつも興味深く聞いてくれてました。

それから、時々外でお茶を飲んだり、一緒に演奏会や食事にいったりしました。
今でもよく覚えていますが、夏にはよくつばの大きな麦わら帽子に白いワンピースを着てたっけ。清楚で上品でとてもよく似合っていました。そして、私を見るときのはにかんだ笑顔がとても愛くるしくて。

自分は子供のころからとても恥ずかしがり屋で人前で演奏するのが嫌だった、けれど大学時代にはじめて音楽の本場ヨーロッパに行き、街の空気に触れた瞬間から考え方が変わったと、つまり何と言うか日本ではいまだに敷居が高く特別なモノ扱いするクラシック音楽ですが、本場では市民の生活に馴染み溶け込んでいて違和感がない、そんな伝統・文化の素晴らしさをじかに体で感じ、あらためて演奏と教える使命感みたいなものに目覚めたと言ってました。

彼女との交際は約2年続きました。
私は心から彼女を愛し、彼女も応えてくれました。本当に夢のような日々でした・・・

ある日・・・
「好き。でも、私はあなたとは結婚できないの。ごめんなさい・・・」
まさに青天の霹靂。「他に誰か好きな人でもいるのか?僕のこと嫌いになったの?」何度、理由を聞いても首を横に振り、それ以上は答えてくれませんでした。うつむいた横顔から大粒の涙が落ちました。

やがて、彼女は仕事を辞め郷里に帰っていきました。

時は流れ、つい一カ月前のことです。
休日、たまたま入ったCDショップのクラシックコーナーでピアノ曲を探していたら、斜め前に一人の若い女性がいて、一枚のCDを手に取り裏面の曲目解説を見ている様子。

よくある光景です。が、ちょっと気になりもう一度目線を向けました。
と、その瞬間、私は息が止まるかと思いました。
「あ!彼女だ・・・」
勿論、実際にはそんなわけありません。
出逢ってから30年近く経っているのにあの時のままの彼女がいるなんて。
でも、よく見るとまさに彼女!
軽くカールのかかった栗色のセミロングに白っぽいワンピース。
そして顔、体型、全てが彼女そのものです。
やがて、CDを元に戻すと彼女は店のエスカレーターを降りて行きました。
我を忘れてすぐに後を追って声をかけようとしましたが、止めました。
(他人の空似だ。実際、話しかけたとして何と言うのだ?向こうは、何この人?ナンパ?と思われるのが関の山・・)

その日は帰ってからもずっと彼女のことが脳裏に焼き付いて離れませんでした。

それから数日後。
調べ物があって街の図書館に行った時のこと。
書架で本を探していると横で配架をしている職員の女性がいました。どうしても見つからないので仕方なくその人に聞くことにしました。
「すみません、こういう本なんですが・・・」
「はい、何でしょう・・・」
彼女の顔を見て、またしても心臓が止まりそうに!
何と、CDショップで見かけたあの彼女ではありませんか。
まさに「事実は小説よりも奇なり」です。

彼女は図書館の職員として働いていました。
そして、ここからが重要なのです。
その女性の苗字が(首に下げたネームから)、例の彼女と一緒なのです。(苗字が一緒とは、つまり離婚して元の姓に帰った、又は未婚の母?しかし、単に顔かたちがそっくりで苗字が同じというだけで実の母娘と確信したのは、よくよく考えればその時よほどインスピレーションが働いたのでしょうね)
顔が瓜二つで、その上、苗字まで一緒。年恰好が25歳位となれば、考えられることはただ一つ。
そう、彼女の娘。私は確信しました。
つまり、彼女はその後結婚し、やがて子供が産れた。母親似の可愛らしい女の子はすくすくと成長し、長い歳月を経て今再び私の前に現れた。

私は、はやる気持ちを抑えることが出来ませんでした。

そのあと、カウンターで本の貸出し手続きをする際に丁度、配架を終えて戻って来た彼女に、
「先程はありがとうございました。おかげで探していた本が見つかりとても助かりました」
「それは、お役に立てて良かったです」彼女は頭をちょこっと傾げにっこりと微笑み返しました。後ろで結んでいるセミロングの髪が揺れました。
(何と、笑い顔まで瓜二つじゃないか!)

そこで、わざとオーバーに彼女のネームに眼をやり、
「○○さんといわれるのですね。あの・・・すみません、大変失礼ですがお母様(○○さん)はお元気でいらっしゃいますか・・・?(例の彼女の下の名前をはっきり言いました)」
その瞬間、娘(?)は眼を見開いて私をじーと見ました。
それほど大きな声を出していませんし、すぐ隣でも別の職員が利用者相手に本の貸出し業務の最中でしたから話の内容は他の人には聞こえていません。

驚いた彼女に間髪入れず、確信に満ちた口調で続けました。

「いえね私、実は昔、あなたのお母様にピアノを習っていたんですよ。とても丁寧に教えて頂いて・・・もっとも私は練習嫌いでちっとも上達せず、お母様とおしゃべりばかりでしたがね、ハハハ・笑。しかし、見れば見るほどよく似ておられる。あのね、少し前にCDショップではじめて御姿を見たときには同一人物かと思いましたよ!」
ここまで話すともう相手にとって私と昔の彼女との繋がりを説明するには決定的だと思いました。私がどこの誰だか分からない者ではなく確実に自分の身内と過去に何らかの接点があった人間だということ。ピアノ講師と一生徒。そこから多少は逸脱していたかもしれないけれど・・・まあ、一応の安心感を十分彼女には与えました。

やがて、彼女が
「そうなんですか、母は・・・」
と言いかけ、(勿論、ここは図書館であり彼女の職場でもあるからお互いに場をわきまえた簡潔な言葉のやり取りしか出来ないのは重々承知です)
「もう、いません」
そこまで話すと彼女は急に隣の職員の女性とカウンター上の書類に目をやり仕事の話を始めたので、私はこれ以上居てはいけないと思い、軽く頭を下げ、本を持ってその場を去りました。

その後、本を返しにもう一度行きましたが丁度、非番の日なのか館内を見渡しても彼女の姿はありませんでした。

今、こうして思うのですが、

本当はあの娘に聞きたいことは山ほどあります。が、しかし最後にポツリと言った言葉を思い出すと、それはもう聞いてはいけないと思うのです。というか、あの娘さんに会うことさえもう止めた方がいいかと思います。おそらく過去に母親と何らか繋がりのある人間に会うのは辛く、また、甚だ迷惑かと。
これ以上、いらぬ詮索など止したほうがいいのかも知れません。(そっとしておいてあげるのが一番)

拙い長文お読み頂き誠にありがとうございました。
ご感想・ご鞭撻などありましたらお寄せ頂ければと思います。

A 回答 (6件)

これだけの長文は、質問ですか?。


それとも、小説の一部ですか?。
結局は何を言いたいのですか。
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質問は、この創作への感想でしょ。



駄文。
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この回答へのお礼

ご回答ありがとうございます。

駄文・・・まさにその通りです。文才のかけらもないのについダラダラととりとめも無く、つい物語風になってしまい・・・創作と思われたのですね。
ご鞭撻頂き感謝します。

お礼日時:2015/08/10 13:29

この物語の続きを読みたいです。



私の場合には、腐れ縁という名で当事者と出会ったことですが・・・逢ってはならなかった結幕が待っていた・・・。


1億の人口がいれば 1億の偶然がある。

>「もう、いません」

これが全てでしょうね。

愛娘が、母から過去を聞かされていることは当然でしょう、
しかし、そこに瓜二つだからとてあなたが入り込む余地はないはずです。

あなたとは何の縁もないその娘さんであればなおさらのことです。

ただ、別れた時にその人が身ごもっていたのであればいざ知らず・・・。

探さないほうが無難だと思います・・・あなた自身のためにも。

そのように解釈します。
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この回答へのお礼

ご回答ありがとうございます。

ご回答者さまの場合はお会いになったのですね。

この物語の続きを読みたいです・・・実はこの話には「後日談」があるのです。
今はちょっと気持ちの整理ができていないので、追ってお話したいと思っています。

お礼日時:2015/08/10 13:06

事実は小説より奇なり!と言われていますが、彼女のお嬢さんに巡り合ったのは、偶然なのか、天国の彼女からの引き合わせなのかはわかりませんが、貴方にとっては、ハッピーな事であったのではないかと推察しています。



そして、貴方の思慮ある態度にも敬服しています。

過去の美しい思い出は、知りえぬ現実的な中途経過がないだけに、一層輝きは増して来ます。
また、美しき思い出は、そうっとご自分の記憶の中に留めておけば、きっと、生涯の宝物になると思います。
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この回答へのお礼

ご回答ありがとうございます。

お褒め頂き、恐縮です。
知りえぬ現実的な中途経過がないだけに、一層輝きは増して来ます・・・本当にそうですね。過ぎ去った日々の大切な思い出、そして宝物としてそっと記憶の片隅にしまっておきたいと思います。

お礼日時:2015/08/10 00:27

訳ありの別れ…偶然の出会い…小説ならば、先が気になる所です。



ですが、現実は現実的な答えしかない気がします。

娘さんの口ぶりでは、もう母親は亡くなっているのでしょう。

小説ならば、その後母親のことを調べていくと、当時の彼女の秘密が分かる。

最後にお墓参りに行って、涙を流して祈る。


そこで終わり…小説ならば。

現実はそこから何事も無かったかのように時が流れる。
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この回答へのお礼

ご回答ありがとうございます。

小説ならば・・・書きながら昔のことが次々と頭によみがえり、何だか小説風になってしまいました。すみません・・・

お礼日時:2015/08/10 00:10

恋人にまともな理由も告げず去っていく無責任な女などクソですね。


彼女はあなたのことを対等な人間だと思ってなかったということです。
人間扱いされてなかった。
それだけ。
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この回答へのお礼

ご回答ありがとうございます。

お礼日時:2015/08/10 00:02

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