夏目漱石に子規の画という文章があるのですが、
https://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/795_ …
最後の「淋しさの償としたかった。」について、これは
誰の、あるいは何の、どのような淋しさを、どのようにして償いたかった
と言っているのか、分かりやすく解説していただけないでしょうか。
漱石の言いたいことを、平明な日本語に翻訳して教えてほしいです。
ちなみにこの箇所は令和三年度の東京大学の入試問題にもなっています。
https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400160384.pdf
No.1
- 回答日時:
一素人としては、こういう質問に答えるのは勇気が要りますな。
(笑)自信はありませんが「償い=自分の淋しさに対する埋め合わせ」と解釈しました。
(字数制限が無い場合)
俳句において子規は写生主義であって、題材を才能の赴くままに捉えて表現する能力を持っていた。
しかし、最後に自分のために描いた絵においては、上手く描こうとする努力が空滑りしていて、そこに下手さが如実に表れてしまっている。
どうせ下手な絵になるのなら、見たままをそのまま描く彼本来の写生主義を大いに発揮させてやりたかった。
その結果としての下手さであったなら、私が感じる淋しさの埋め合わせにもなったことであろう。
(字数制限が有る場合)
見たままをそのまま描く彼本来の写生主義を大いに発揮した結果としての下手さであったなら、私が感じる淋しさの埋め合わせにもなったことであろう。(私が感じる淋しさも多少は薄らいだことだろう)
ありがとうございます。つまり、
誰の=漱石の
どういう淋しさ=漱石の感じている淋しさ
償う=薄める
という読み方なのですね?
漱石の淋しさ、なのでしょうか?
東大の設問を見ると、子規の画から、淋しさ=子規の淋しさと読解させたがっているように思えてならないのですが、いかがでしょうか?
(1),(2),(3)はいずれも、わざわざ言い訳までして下手な絵を寄越してくるくらい子規が淋しかったことに気付かせる問題になっています。
償うも、淋しさをやわらげるのような意味とせず、もっと辞書通りの意味として
子規が淋しい思いをしていたのにあまり気付いてやれず申し訳ないことをしたた、
という心情から償いという単語が出てきた、とは、考えられないでしょうか?
No.3
- 回答日時:
#1です。
なかなかの人情家とお見受けいたします。(笑)
たしかに、背景としては、漱石の、そういった心情はあったでしょうね。
子規の絵を単に評するためにこの一文を書いたわけではないでしょうから。
いわゆる「忸怩たる思い」はあったのだろうと思います。
もうひとつの可能性として付記しようかと考えたぐらいで、その点はまったく否定しません。
また、設問が「どういう意味か」ではなく「心情を説明せよ」であることからすれば、おっしゃるように「子規の淋しさと読解させたがっている」のかもしれません。
ただ、私としては、あくまで文筆家としての漱石に敬意を払う形で解釈しました。
自らの淋しさが薄まったことであろうよ・・・と述懐することで、その紙背に余韻を残すテクニックとでも言いましょうか。
また、「自分の償いとするために、子規にこの拙な所をもう少し雄大に発揮させ(ればよかった)」という内容にしてしまうのは構文上の無理があるかなとも思った次第。
しかし、「心情」なので、あなたの解釈のほうが正解かもしれないですね。
「淋しさに気づいてやれなくて後悔する気持ちが表れていますね?」
と尋ねたら漱石はなんと答えたでしょうか。
「何を言っとるかね。私はそんな柔な人間ではないわ。子規は最後まで自分の本来を貫き通せなかった馬鹿な奴だと思っているぐらいじゃよ。」
などと言って、いきなりすっと立ち上がり書斎に引っ込んでしまう。
そんな漱石を見て、鏡子夫人が神妙な面持ちで後を追う・・。
どうもそんな光景が浮かんでなりません。(笑)
たしかに、拙な所をもう少し雄大に発揮させて、というのも本当に意味不明で、私には何が言いたいか分かりません。
子規の拙な所をもう少し見たかったという方向の文であることは間違いないでしょうが、しかし、
拙なる魅力や才能を大輪へと開花させたかったとか、写生主義の雄大な結実を見たかった、と読むのはいかがなものでしょう。
子規が拙なる方面でも大家となっておれば、この下手な絵の価値も改まり、漱石の淋しさも薄まる…?
無理がないでしょうか?
東大の設問を補助線として、画の淋しさ=子規の淋しさと考えると、
子規の画に拙を見つけて失笑したか感服したかは今は議論しない(これ…失笑したということなのでは?)。子規にも生真面目で不器用な面があったということが本当に興味深いのだ。
しかし、下手な絵とはいえいくらなんでもこれでは淋しすぎる。ずいぶん淋しい思いをしていたようだ。
できることなら、子規が生真面目で不器用な部分をもう少し無邪気に発揮できるようにしてやりたかった。それを笑ったり認めたりしてやりたかった。
淋しさがいくらか紛れたかもしれないのに、気付いてあげられなくて申し訳なかった。
と読めてしまうのですが…。
No.4ベストアンサー
- 回答日時:
「淋しさの償いとしたかった」の「淋しさ」は漱石の淋しさではなく子規の病床での淋しさであり、「償い」は漱石の償いのようにも読めますが、これは「あがなう」に近く「埋め合わせ」という意味だと考えられます。
従って、「拙」をもって「子規の淋しさの埋め合わせとしたかった」と漱石が考えたということになります。
自分の「拙」(拙さや弱さ)を認めようとしない子規は、一方では孤独を抱きながら死と向き合っていた。子規が描いた画からは、完璧に見えた子規に「拙」であることの魅力があふれており、「それに早く気付き共有できれば、子規の孤独の慰めになったのではないか。」と漱石が考えたということになります。
2021 東大 第四問 夏目漱石「子規の画」
https://ameblo.jp/sorawotobumogura/entry-1271526 …
を参照しましたが、他の下記回答も同主旨と思いますので参照下さい。
河合塾
https://kaisoku.kawai-juku.ac.jp/nyushi/honshi/2 …
代々木ゼミナール
https://sokuho.yozemi.ac.jp/sokuho/k_mondaitokai …
■
ありがとうございます。
回答者様のお考えは私の読解に近くとても参考になりましたが、なぜ河合と代ゼミの回答が同趣旨なのかはよくわかりませんでした。
どこからどう考えても河合も代ゼミも誤答でしょう。
東大が冒頭部分で漱石が子規を偲んでいる文章だと書いているのに、哀惜だの追慕だなどと言い換えただけのものが答えになるわけがない、と思いました。
アメブロはかなりいい線いってますが、
「彼の孤独な死との闘いの慰めになったのではないかと申し訳なく思っている」
などと書き換えた方がいいかもしれません。
No.5
- 回答日時:
#3です。
わたしの表現力不足で、意図が上手く伝わっていなかったようなので、再チャレンジしてみましょう。
子規に対する漱石の評価は、
《子規は人間として、また文学者として、最も「拙」の欠乏した男であった。》
に如実に表れていると思います。
『だから、この絵についても彼本来の写生主義に基づいて《省略の捷径を棄すて》ずに描けば良かったのだ。』
と考えたのでしょう。しかし、
『《几帳面な塗抹主義を根気に実行》してしまったため(だろうが)、《拙の一字はどうしても免まぬかれがたい》という状況を招来してしまった。』
『どうせ《拙の一字はどうしても免まぬかれがたい》という結果になるのなら、せめて《省略の捷径》という自分本来の写生主義に忠実になることで《この拙な所をもう少し雄大に発揮させて》やりたかった。(そうしてほしかった)』
『そうすれば、仮にその絵が「拙」だったとしても、彼は自分本来を最後まで貫き通した(雄大に発揮した)ことになる』
『であるから、このように子規が《この拙な所をもう少し雄大に発揮》してくれていたら、「死の間際に余計な努力をして自らの長所を自ら捨て去ってしまって・・・」という私が感じた淋しさの埋め合わせにもなったことだろう』
No.7
- 回答日時:
#5です。
それにしても、
河合の
<拙という新たな可能性を様々な面で開花させてほしかった>
という「解答」は納得いきませんなあ。
アメブロの
<子規が描いた画からは、完璧に見えた子規に「拙」であることの魅力があふれており、>
という箇所も作品内容と矛盾があるでしょう。
《やむをえず省略の捷径を棄すてて、几帳面な塗抹とまつ主義を根気に実行したとすれば、拙の一字はどうしても免まぬかれがたい。》
という箇所は漱石の本音であるはずですからね。
代ゼミの
<形見の絵がいっそもっと拙ければ~~と述べることで追慕の思いを込めている>
という解答は、わたしの意図と極めて近いように思います。
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