梶井基次郎の「檸檬」の冒頭には、 「えたいの知れない不吉な魂が私の心を始終圧へつけてゐた。 焦燥と云はうか、嫌悪と云はうか――酒を飲んだあとに宿酔があるやうに、酒を毎日飲んでいると宿酔に相当した時期がやってくる。それが来たのだ。」
とありますが、「酒を毎日飲んでいると宿酔に相当した時期がやってくる。」という文に困っています。
この文は「酒を毎日飲んでいると二日酔いと同じくらいの苦しみ(焦燥や嫌悪)をもたらすようになった」と解釈したらいいのでしょうか?
皆さんのご意見をお聞かせてください
よろしくお願いします!
A 回答 (2件)
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No.2
- 回答日時:
それは比喩の反復だと思います。
直喩を隠喩で繰り返しているわけです。まず、「酒を飲んだあとに宿酔(ふつかよい)があるように」は直喩でしょう。しかし、それに続く「酒を毎日飲んでいると」は隠喩でしょう。退廃的な日々を送り、気ままに音楽や詩に酔いしれて、ということだと思います。
そのときは気分が良いのですが、やがて必ず焦燥感がやって来て、いたたまれなくなる。これをたとえたのが「宿酔」という隠喩でしょう。
なぜ、直喩を隠喩でわざわざ反復するかといえば、クラシックの曲(あるいはジャズ)が旋律を変奏しながら何度も繰り返すように、反復が美を生む表現技法だと考えられます。
この『檸檬』は、やさぐれた孤独な若者の、行き当たりばったりの断想のように見えて、実は技巧が凝らされた文章です。「丸善の棚へ黄金色に輝く恐ろしい爆弾を仕掛けて来た」なんて、水際立って鮮やかなモチーフではありませんか。
ご存知のように、丸善は洋書や高級輸入雑貨の最大手でした。殿様商売というか、大学教授のお客でさえも素っ気なくあしらうような感じがあったそうです。私の行ってた大学の先生が、電話で発注したら、役所のたらい回しみたいな応対をされたと、愚痴を言ってました。もう何十年も前の話ですが。今みたいにアマゾンなどで洋書が溢れかえっている時代ではありませんでした。
そりゃインテリ崩れの梶井基次郎も爆破したくなるっちゅうねん。と、あの先生も共感しながら読んだことでしょう。
No.1
- 回答日時:
> この文は「酒を毎日飲んでいると二日酔いと同じくらいの苦しみ(焦燥や嫌悪)をもたらすようになった」と解釈したらいいのでしょうか?
【同じくらいの】とお書きですが、同じでは無いのです。
二日酔いは、一晩酒を飲んだ翌朝の話。しかし本文では【酒を毎日飲んでいると】とあるので、積み重なりに重なっているのです。単なる二日酔いとは言えない、もっとずっと重たい何か。
その、ずっと重たい何かは、【えたいの知れない不吉な魂が私の心を始終圧へつけてゐた。 焦燥と云はうか、嫌悪と云はうか】に繋がります。
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