
ホログラフィック宇宙論とは、誤解しているかもしれないことを恐れずに言えば、宇宙はある現象の境界面、二次元面上に蓄えられた情報、または、そこから三次元空間に投影されたホログラムである、とする理論と言えるかと思います。例えば、宇宙膨張速度が光速に達した境界面、宇宙の地平面(線)上に書かれた情報が宇宙である、または、ブラックホールの事象の地平面上に蓄えられた情報がホーキング放射等のメカニズムにより三次元投影されたのが宇宙の事象である、となりましょうか。
この理論に対する素朴な反論があります。
⓵宇宙の境界面から内側の三次元空間に情報が投影されているとするなら、投影している媒介粒子ともいえる存在があるはずだが、それは超光速で運動することになる。例えば、タキオンとか。そのようなものが存在し得るか?
②ブラックホールの事象の地平面上の情報が宇宙という事象の発信元とすると、しかし、外部の観測者にとって、ブラックホールになりつつある重力崩壊を起こしている天体は、その強大な重力による時間の遅れ効果で、その縮退はどんどん、ゆっくりとなり、事象の地平面の形成には無限の時間がかかることになる。つまり、事象の地平面からの三次元投影も無限遠の時間の彼方ということになる。
③②に関連して、ブラックホールは重力崩壊している天体にとってすらも、遂には形成されないという可能性も0ではないのでないか?という疑問がある。未だ知られていない縮退圧を及ぼす現象が存在するなら、ブラックホールに非常に近くはあってもそのものではない段階で重力崩壊が停まることになるかもしれない。
④さらに、二次元情報を三次元現象に投影するメカニズムそれ自体は、二次元情報でなくそれから独立して、三次元現象としてその存在が前提されている必要があろう。ホログラム投影する何らかの媒介粒子を含めた機構までが二次元情報化されてしまっているなら、結局、三次元投影する手段は何か?ということになってしまう。また、ブラックホールにせよ、宇宙の地平線にせよ、ブラックホールとか膨張する宇宙自体は、三次元的な現象であろう。つまり、何らかの三次元現象がなければならないことに変わりはない。しかし、そのような三次元現象を前提とするなら、最初から三次元現象(厳密に言えば、時空連続体の四次元となるのだろうが)として宇宙があるとする方が、概念の節約にもならないだろうか?
ここで、③の可能性に捕捉すると、ブラックホールが存在しないなら都合の良い理論もあることはあります。(ただし、存在しないといっても、遠方からの観測では、ブラックホールとして扱っても、近似的にかまわない天体はあるでしょう。例えば、重力レンズ効果とか重力波の検出において)
それは、ブラックホールの情報パラドックスとシミュレーション仮説です。
情報パラドックスは、ブラックホールに落ち込んだ物体の持っていた情報にはアクセスできなくなってしまうことから、量子論の情報保存の原理に違反するのではないかという問題ですが、ブラックホールができないとなれば、この問題は解消します。
また、シミュレーション仮説は、この宇宙が超AIとも呼べる機構によってシミュレートされた仮想世界ではないかという仮説ですが、ブラックホールをシミュレートしようとすると、中心部の重力無限大、物理法則崩壊の特異点をシミュレートせねばならなくなる。また、事象の地平面は重力崩壊した天体にとっては形成されていることになりますが、その立場からして、外部の時間は無限大の速さで経過することになります(事象の地平面は時間の経過が無限にゆっくりとなるから)。故に、仮説が正しいとなると無限変化速度の現象をシミュレートすることになるという難問に至ります。ですが、これら諸問題も解決することになります。
しかし、事象の地平面の点については、事象の地平面と同様の効果を持つ現象がほかにも存在する。それは、光子。光子は時間経過が0となるから、光子にとっての外部の現象はどんなにゆっくりとした変化であっても0秒で起こるため、やはり、無限の変化速度を持つことになります。それだけではない。光子にとって、宇宙は体積0の点に収縮したものになる。点状の宇宙で起こる無限の変化速度の現象。どうやってシミュレートすればよいのか、至難の業という言葉ではとても足らないでしょう。
以上からすると、ホログラフィック宇宙論もシミュレーション仮説も、それほど見込みは大きくないと判断するのですが、事実はどうなっているでしょうか?
ここまで長くなってしまったので、悪乗りして、もう少し、補足させてください。
情報宇宙論とでも呼ぶべき理論があります。「この宇宙の根本は情報であり、物質・エネルギーは付属物に過ぎない」という主張。そこから、さらに「宇宙自体が情報であり、全事象・現象は全て情報である」とまで突き進んだ考えもあるようです。ここでいう情報とは具体的にはどんなものか、という点が気になりますが、大雑把に言えば、コンピュータで扱う0と1の記号の組み合わせパターンのようなものとここでは前提します。しかし、だとすると、地球種知性体つまり人類がこの情報宇宙論を理論モデルという情報として展開している事実が問題となるのではないでしょうか?宇宙自体が情報だとして、その中の情報の一形態である人類が自分たちを含む宇宙を情報として記述する。とするなら、その記述情報中に宇宙が含まれてしまうことになり、その理論モデル宇宙の中にこれまた情報としての宇宙を記述しようとする人類の活動が符号化されて存在し…とどこまでも続いてしまいます。
こんなのは、机上の理論に過ぎないと批判されるかもしれませんが、前提条件として、宇宙を例えば0と1の符号のパターンと等価としていますから、これは根本的に重要な視点でしょう。
また、全てが情報、を認めるとすると、結局、物質もエネルギーも情報となり、ただパターンが異なるだけとなるから、殊更、物質・エネルギーと情報とを区別してどちらがメインでどちらがサブなどと分ける必要などない。ただ、情報種類が違うだけとして、今まで通り、進めばよいとならないでしょうか?また、少し弱い情報宇宙論、つまり、物質・エネルギーは情報の付属物だという説ですが、それなら宇宙には情報(少なくとも純粋な情報)ではない現象があることを認めていることになる。例え、主でないとしても、情報だけではやはり、宇宙は成立しないことにならないか?ということです。
少しだけの補足のつもりが、結構長くなってしまいました。が、ホログラフィック宇宙論もシミュレーション仮説も情報宇宙論も、確かに事実の一面を表しているところはあるでしょうが、額面通り受け取ることは難しいのではないでしょうか?
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