No.3ベストアンサー
- 回答日時:
siegmund です.
hagiwara_m さん:
> ファン・リューエンの定理を分かりやすく言えば、
> 速度と直交するローレンツ力は仕事をしないので、
> 磁場によって自由電子系の運動エネルギーが変化することはなく、
> したがって磁化率も生じないということだと思いますが
【A】それは違います.
ローレンツ力が仕事をしないのはその通りですが,
これから導かれることは,
「磁場が時間的に一定であれば電子のエネルギーは不変」ということであって,
《磁場の強さを変えたとき》にエネルギーが不変と言うことを意味しているわけではありません.
実際,磁場をゆっくり増加させたとすると,
はじめのサイクロトロン半径と最後のサイクロトロン半径は当然異なります.
すなわち,電子は螺旋軌道(半径が小さくなる方向に)を描くわけで,
この間は電子の速度と磁場とは直交していません.
したがって,磁場は電子に対して仕事をします.
ひもにおもりをつけて振り回して円運動をさせている状態で,
ひもを巻き取るときの話と全く同様です.
【B】それでは,van Leeuwen の定理の内容はどういうことか?
van Leeuwen の定理は
「古典力学の枠内では,自由電子系の自由エネルギーは磁場に依存しない」です.
一見,【A】の話と矛盾するようですが,【A】の話は特定の一粒子状態の話,
van Leeuwen の定理は《自由エネルギー》に関するものです.
運動量 p (ベクトル量)のとき,電子の運動エネルギーは p^2/2m です.
磁場が存在すると,(古典的)解析力学で知られているように,
p が p-eA/c に置き換わります.A はベクトルポテンシャル.
統計力学で分配関数(状態和) Z を求めるときに,
磁場ゼロなら exp(-β p^2/2m) を p に関して積分します(β=1/kT).
積分範囲は -∞ < p_x < ∞,など.
磁場があるときには上のように p が置き換えられるわけですが,
これは p の原点を eA/c だけずらせば磁場のない時と同じ積分になってしまいます
(積分範囲が -∞ < p_x < ∞ なので,端の効果は出ない).
したがって,磁場があってもなくても Z は同じで(磁場によらない),
Z から導かれる自由エネルギー F も磁場によらない,というわけです.
【C】それでは,一個の電子のエネルギーが変化するのに(【A】),
Z が変化しないのはどういうわけか?
統計力学では多粒子を考え,その間にエネルギー交換を許す極めて弱い相互作用が
あるというのが前提です.
したがって,磁場の強さが変化すれば,
変化したあとの状態の分布がボルツマン因子に従うように各状態の実現確率の
再編成がおこなわれます.
さらに,(必要ならば)熱源との間にエネルギーのやりとりがあります.
こういうわけで,電子1個の話(いわば断熱されている)と
分配関数の話は大分様相が異なるのです.
【D】量子力学だとどうちがうのか?
量子力学では【C】の p 積分が exp(-βH) (H はハミルトニアン)のトレースに
なるのはご承知の通りです.
基底を H の固有状態に選べば Σ exp{-βE(i)}を計算すれば良いのですが
(E(i) は i 状態のエネルギー),
磁場を変えたときは問題がおこります.
磁場を変えると,H が変化するだけでなく,固有状態の波動関数も変化してしまいます.
そういうわけで,古典力学の時のように変数変換で磁場変化を吸収することはできません.
まさに,これは量子力学的効果です.
p と A とが一般に非可換であるためと解釈することもできます.
> χ(L) = -(1/3)χ(P)
> が成立つのは真の自由電子系の場合で、
> 一般の物質の場合は、個々に検討する必要があると思います。
それはおっしゃるとおりです.
前の回答(この回答も)全部自由電子の話です.
一応,断るべきでしたかね.
No.6
- 回答日時:
siegmund です.
No.3 の【A】でちょっと書き損ないました.
> この間は電子の速度と磁場とは直交していません.
> したがって,磁場は電子に対して仕事をします.
は
「この間は電子の速度とローレンツ力とは直交していません.」
したがって,ローレンツ力は電子に対して仕事をします.
と修正します.
蛇足ですが...
磁場は(例えば z 方向),電子の運動は xy 平面ですから,
磁場と電子の速度はいつも直交しています.
ローレンツ力は円運動の中心方向に向いていますから,
半径一定であれば速度(接線方向)とローレンツ力は直交します.
しかし,螺旋運動で半径が段々変化していくと,
速度に半径方向の成分も現れ,この成分とローレンツ力は同じ方向です.
No.4
- 回答日時:
私はあまり難しいことはわかりませんが、「磁性」金森順次郎著の
本(参考にしてください。)に割りと物理的なことが書いてあって、
それをもとに回答します。
一個の電子に磁場をかけると、サイクロトロン運動をしますが、
この運動による磁化は磁場と逆方向を向いています。
つまり、反磁性が生じます。ところが、多数の電子からなる自由
電子系の場合は、単純ではありません。
単純に考えると、多数の電子がサイクロトロン運動をして、
やはり反磁性になりそうなものですが、試料の壁に当たるような
軌道をもつものは、常磁性の寄与をし、反磁性を打ち消してしまいます。
その結果、磁性はなくなってしまいます。これがvan Leeuwen の定理
で、古典論での話です。
量子論的に考えた場合、磁場をかけるとランダウ準位という離散的な
準位が出てきます。サイクロトロン運動が離散的なものに限られると
いうことだと思います。これは古典論ではありえないことですね。
この準位に、自由エネルギーが最小になるように電子が配分され、
連続準位との違いが出てきます。
その結果、反磁性が生じます。これがランダウ反磁性です。
No.2
- 回答日時:
便乗質問になってしまうかも知れませんが、前から感じている謎の点に一言触れさせて下さい。
siegmundさんが出されているファン・リューエンの定理を分かりやすく言えば、速度と直交するローレンツ力は仕事をしないので、磁場によって自由電子系の運動エネルギーが変化することはなく、したがって磁化率も生じないということだと思いますが、量子力学を取り入れたとき、この論理のどこに本質的な変更が生じるのでしょうか。たいていの本は「量子力学の効果」と冷たく言い放っていて、ちっとも分かった気にさせてくれない-と思うのは私だけでしょうか。
(ご質問者の方にとって余計なことでしたらスミマセン.)
また、つけ足しですが、
> χ(L) = -(1/3)χ(P)
が成立つのは真の自由電子系の場合で、一般の物質の場合は、個々に検討する必要があると思います。
No.1
- 回答日時:
自由電子系に一様な弱い磁場をかけると,電子の波動関数は磁場がゼロのときとは異なります.
いわゆるサイクロトロン運動をするのですが(量子的サイクロトロン運動です),
この運動による磁化は磁場と逆方向を向いています.
すなわち,自由電子系に磁場をかけると磁場と逆方向の磁化を生じます.
これが,ランダウ反磁性です.
ランダウ反磁性は純粋に量子力学的効果で,
軌道運動に対する磁場の効果がベクトルポテンシャルを通してハミルトニアンに
含まれると言うことから来ています.
古典的な扱いでは電子の自由電子の軌道運動が磁性をもたらさないことが
ファン・リューエンの定理(ボーア=ファン・リューエンの定理と言うこともある)
として知られています.
なお,電子はスピンを持っていますので,磁場とスピンの相互作用からも磁化が生じます.
こちらはパウリの常磁性(磁場方向に磁化が生じる)です.
ランダウの反磁性磁化率をχ(L),パウリの常磁性磁化率をχ(P)と書きますと,
χ(L) = -(1/3)χ(P) の関係があります.
負号は反磁性と常磁性の違いを表しています.
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