
No.3ベストアンサー
- 回答日時:
GaAs基板に 1 μm の酸化Si(SiO2)をプラズマCVD法(基板温度300℃)で成膜したときクラックだらけでしたが、真空蒸着(基板非加熱)ではクラックが入りませんでした(経験談)。
クラックが入る主な要因は
(1) 膜と基板の熱膨張率差
(2) 成膜時の温度
(3) 膜のヤング率
(4) 膜の引っ張り強度
(5) 膜と基板の密着性
です。熱膨張率差が大きいと、成膜時の温度から室温に戻したときの熱応力が大きくなり、クラックが入りやすくなります。正確に言えば、基板の熱膨張率を αs [1/℃]、膜のそれを αf [1/℃] 、成膜温度を Tg[℃]、室温を Ta [℃] とすると、成膜後に室温に戻したときに膜が受ける熱応力 σ [N/m^2] は、基板の厚さが膜よりはるかに大きい場合、
σ = E*(αs -αf)*(Tg - Ta)
で表されます。ただし、E は膜のヤング率 [ Pa = N/m^2 ]、σ の符号は、膜が圧縮応力を受けるときを正とします。膜のヤング率(縦弾性係数)が大きいほど(硬い膜ほど)応力が大きくなります。普通、Tg > Ta なので、αs > αf ならば圧縮、αs < αf ならば引張り応力となりますが、クラックが入るという現象は、膜が引張り応力を受ける場合ですので、原則的には、αs > αf の場合はクラックは発生しません。ガラスは一般に金属や半導体よりも熱膨張率が小さいので、αs < αf となって、膜は引張り応力を受け、クラックが発生しやすくなります。
膜の最大引っ張り強度(それ以上の応力で膜にクラックが発生する)を P [ Pa = N/m^2 ] としたとき、クラックの発生する条件は
σ = E*(αs -αf)*(Tg - Ta) > P
となります。実は、この式は、膜厚で平均した平均熱応力での話なので、厳密には膜の厚さ方向の熱応力分布を考える必要があります(そのため、上式には膜厚が出てきません)。
膜厚が大きいほどクラックが入りやすいというのは、膜厚が厚いほど膜の応力が大きくなるからです。材料力学のテキストを見れば理解できると思いますが、「梁」を曲げたときの梁の応力分布は、梁の中立面を境に、引張り応力と圧縮応力に分かれます。梁の凹んだほうが圧縮、凸側が引張り応力を受けますが、その大きさは中立面の厚さからの距離に比例します。成膜後に室温に冷却するときに、膜は引張り応力を受け、基板は圧縮応力を受けますが、基板のほうがはるかに厚いので、基板が大きく湾曲することはなくて、結果的に室温まで冷却したとき、基板上の膜側が凸になるように基板(梁)が湾曲したような状態になります。したがって、膜の表面に近いほど引張り応力が大きくなります(応力は中立面(基板の中)からの距離に比例)。したがって、厚い膜ほど表面からクラックが発生しやすくなります。
膜と基板の密着性が悪いと、基板と膜の界面位置での応力(膜表面より小さい)によって、膜が基板から完全に剥離してしまうので、クラックというより、膜が剥離してしまいます。
最初の経験談に戻りますが、真空蒸着でクラックが入らなかったのは、(Tg - Ta) が小さかったからです。ガラスは一般的にほとんどの材料と密着性が悪いので、間に、密着性の良い薄い膜(TiやSiNなど)をはさんだりすることがあります。
No.2
- 回答日時:
まず第一に膜の内部応力の増加。
更に薄膜の場合、下地(この場合はガラス基板)の面情報を拾っているのでクラックが入らない。厚味が増すと膜材料の性質が出てくる。次に成膜の際に膜に内部応力を高くする物質を吸収?していないか。(コンタミ、ガス、その他)
お探しのQ&Aが見つからない時は、教えて!gooで質問しましょう!
このQ&Aを見た人はこんなQ&Aも見ています
-
電子書籍プレゼントキャンペーン!
最大2万円超分当たる!マンガや小説が読める電子書籍サービス『Renta!』で利用できるギフトコードプレゼント実施中!
-
応力と凸凹
物理学
-
剥がれにくい金薄膜を作成する方法
物理学
-
表面粗さ RaとSa の数値が大幅に異なる要因について 同一サンプルを非接触で測定した結果において
工学
-
4
SiO2と金属の密着性について
物理学
-
5
結晶粒径と抵抗率の関係について
その他(教育・科学・学問)
-
6
XPS(ESCA):Ga2p1/2,3/2、この1/2,3/2とは?
物理学
-
7
薄膜の歪みについて
物理学
-
8
アセトン→エタノール→純水の洗浄
化学
-
9
銀ペーストについて教えて下さい。
その他(自然科学)
-
10
応力による力のベクトルについての質問です。 ガラス基板に酸化物薄膜を成膜したときに引っ張り応力なら下
物理学
このQ&Aを見た人がよく見るQ&A
人気Q&Aランキング
-
4
角型鋼材の耐荷重算出計算式
-
5
せん断力、せん断応用力、せ...
-
6
アイボルトにかかる荷重を力学...
-
7
ピースに掛かる応力計算
-
8
鋼板の曲げ応力について
-
9
形鋼の溶接強度の計算方法
-
10
応力と表面力の違い、また座標...
-
11
最小主応力にとは
-
12
有効せん断面積
-
13
ボルトのオネジとメネジの接触...
-
14
許容応力について
-
15
山形鋼の強度
-
16
τ ←この記号について教えてく...
-
17
なぜ、鋼材の許容引張応力は許...
-
18
フレミングの左手の法則(ロー...
-
19
薄鋼板の許容応力度
-
20
クエット流れ
おすすめ情報
公式facebook
公式twitter