No.1
- 回答日時:
質問の意味が良くわかりませんが...
そもそも熱力学関数は何を指していますか?U, H, F, Gを指すのですか?
質問者さんが「エネルギー」と書かれているものが、内部エネルギーを指すなら、U=U(S, V)で、T=∂U/∂Sとし、F=U-TSとおけば(ルジャンドル変換)、独立変数の一つはSからTに変わりF=F(T, V)を得ます。この量(Helmholtzの自由エネルギー)は、U, H, F, Gを特に熱力学関数というのならば、これも熱力学関数です。また全微分の形(dF=-SdT-pdV)に書けるので状態量です。
回答ありがとうございます。熱力学関数とはそこからすべての熱力学の量が導けるという意味で、U,H,F,Gなのですが、Uは変数の選び方によって状態量にも熱力学関数にもなりうる多義性が疑問でした。田崎晴明先生の「熱力学 現代的な視点から」の257ページの「たとえば、エンタルピーというひとつの物理量には、いくつかの物理的な意味を持つ単なる状態量H(T,V,N)としての側面と、系についてのすべての情報を持った完全な熱力学関数H(p,S,N)としての側面がある。これは、熱力学の興味深い特徴である」のところを読んでの疑問です。
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
もっともな疑問ですが、良い本ならそのことがちゃんと説明されていると思います。
もう一度読み直して自分で具体的な例を作って理解してみると良いと思います。因みに力学でもハミルトニアンはH(p,q)と書かないと力学関数になりません。H(dq/dt,q)では駄目なんです。===============================================
vlaskoさんが言っているように
E(S,V)=E(S(T,V),V)=E(T,V)
「注」最後のEはSのTとVをあからさまに書き下して、エネルギーをあらためて温度とVの関数と見なすといういみであって、E(S,V)のSをTに置き換えるという意味ではない。)
ですからエントロピーを温度と体積の関数としてみればどちらもEは同じ値を与えます。しかし熱力学関数といった時には、それから熱力学の全てが分るというものですから注意が必要です。違いはなにか? それはエネルギー関数の中に、TとVの特別な組み合わせが存在して、それをS(T,V)と書きますが、その量を通して温度に依存する事をおさえてると一つ情報が増えます。そのS(T,V)と単なるV (E(S,V)にあらわれるV)をゴチャゴチャにしてしまうと情報が減ります。
具体的にはTは
T=dE(S,V)/dS (全て偏微分の意味です)
を通して定義されますが、EをS,Vの関数と見てSを残しておくと
dE(S,V)/dV=-P
と圧力がわかりますが,SをTとVで書くと、SからくるV依存性ともともとのVがゴチャゴチャになって圧力が求まりません。そこでS=S(T,V)の形を具体的に知っているとその関係式からTをSで表してS(T,V)から来るV依存性を取り除けるので圧力が求まります。つまり
E(S,V)と書く事=E(T,V)とT=T(S,V)という温度をS,Vで表す情報の二つを知っている事
な訳です。もともと温度とはT≡dS(E,V)/dE なのでSを知っているとTは分りますが、TからSは再校正できないわけですから、何かをTで表すと情報が失われます。
ただしヘルムホルツの自由エネルギーでは
S≡-dF(T,V)/dT
というふうに今度はSが定義です。こちらではFをSで表すと情報が失われます。
解答ありがとうございます。丁寧に説明されているので大変参考になり助かりました。SからTは求まりますがTからSは求まらないのは知りませんでした。熱力学の細かいところはまだまだですね。教科書はそろそろ清水明先生の「熱力学の基礎」というのが出るそうなので楽しみにしています。「量子論の基礎」は大変よい教科書でした。ところで力学関数という単語は何を意味しているのでしょうか?駄目というのはハミルトニアンを一般化座標とその微分であらわすと質量が入ってないので不完全ということですか?
No.3
- 回答日時:
No.2様の回答をみてご質問の意味にようやく気付きました。
既成概念にとらわれて理解できませんで検討はずれなコメントで失礼しました。要するに、Uの完全微分を
dU=(∂U/∂T)vdT+(∂U/∂V)tdV (v, tはそれぞれV、T一定の意味)
と書けるのに、なぜSとVを変数にとらないと熱力学ポテンシャルにならないか、という意味ですね。
私の理解(といっても教わった話に過ぎませんが)は、熱力学ポテンシャルは特定の変数の組に対して不可逆過程発生の尺度となる、というものです。
dS=dQ/T(可逆)、dS>dQ/T(不可逆)で
dS=dQ/T + dQ'/T (1)
と書いてdQ'を非補正熱とClausiusが呼んだことはご承知ですね。
dQ'は非補正熱といっても外界から熱が来た、とか外界へ流れたとかではなく、系内の不可逆過程により生ずるので、”熱”でなくてもよいものです。
以上より閉鎖系での変化では
dU+pdV=TdS-dQ'
となります。ここでS, Vが一定ならば、
dQ'=-dU>0
従って、SとV一定条件での不可逆変化がエントロピー増大が内部エネルギーの減少に一致します。逆に内部エネルギーが一定である限り、不可逆変化は起こっていないということです。ですからUはS, Vに関する熱力学ポテンシャルとなります。同じことはS, pならHに、T, VならFに、T, pならGにいえます。
丁寧な解説をどうもありがとうございます。不可逆過程かどうかから熱力学ポテンシャルとしての内部エネルギーの変数依存性を評価できるんですね。ところで最後の「従って、SとV一定条件での不可逆変化がエントロピー増大が内部エネルギーの減少に一致します。逆に内部エネルギーが一定である限り、不可逆変化は起こっていないということです」と、「ですからUは熱力学ポテンシャルであること」とのつながりがよくわかりません。前の文の何がUが熱力学ポテンシャルであることを保障するのでしょうか。もしよろしければ教えていただけませんか。
No.4
- 回答日時:
質問されたので答えておきます。
ハミルトニアンはH(p,q)というふうに(一般化)運動量pと座標変数qで表さないと情報が失われてしまいます。つまり
dq/dq=dH(p,q)/dp........(1)
dp/dt=-dH(p,q)/dq..........(2)
何ですが、一般化運動量pは座標の時間微分dq/dtとどう関係しているかわかりません。その関係を与えるのが(1)式です。簡単なデカルト座標の場合には
p=mdq/dt=mvですが、そうでない場合もあるわけなのでハミルトニアンをpとqで書いておかないと解析力学での運動方程式(1)、(2)が使えません。例えば(1)式はdq/dtをpとqで表す式ですが、これを解いて運動量pを位置とdq/dtで表すことも可能です。(簡単な場合には良く知るp=mdq/dtになります。)
そこでハミルトニアンを単なるエネルギーだと思ってpをdq/dtとqで書いたものを代入してしまうと関数としての値は同じでも
H(p,q)=H(p(dq/dt,q),q)=H(dq/dt,q)
(最後の式はpをdq/dtとqで表してHをdq/dtとqだけの関数にする)
と書くともう運動方程式(1)、(2)が立てられません。なぜならハミルトニアン形式は全てをp、qで書く理論ですから。dq/dtで書いてしまうとまずいんです。
まさに熱力学でのSをT、Vで書いてE(T,V)と書くと情報が失われるのと同じです。
なるほど。イメージのわきやすい力学だとそういうことになるのですね。わざわざ丁寧な解説ありがとうございました。たいへん参考になりました。確かに情報が失われていますね。
No.5
- 回答日時:
質問者さんからご質問が御座いましたので回答いたします。
何か私は程度の悪いNoiseを出しているようで済みません。そんなに大したことを言っておりません。体積一定で断熱系では自発的、不可逆的に起こるのはUが減少する向き。最後にdU=0でU最小になる。
圧力一定で断熱系では自発的、不可逆的に起こるのはHが減少する向き。最後にdH=0でH最小になる。
体積一定で等温系では自発的、不可逆的に起こるのはFが減少する向き。最後にdF=0でF最小になる。
圧力一定で等温系では自発的、不可逆的に起こるのはGが減少する向き。最後にdG=0でG最小になる。
以上の主張をする根拠がdQ'=-dU>0, dQ'=-dH>0, dQ'=-dF>0, dQ'=-dG>0などの式で、このとき自ずと変数の組み合わせもきまります。こうした主張ができるゆえにこれらを熱力学的ポテンシャルと呼ぶ、と理解しております。
また、もしUの独立変数をSからTに変えるときにdU(S,V)/dS=TとU=U(S,V)からSを消すやり方だと、もとの関数に対して接線の勾配情報だけ使うになるので、情報が減って積分定数分の不定性が入るので不可となり、もとと同値の情報を持つ式にするには、接線の勾配とy切片の関係式(接線で包絡線をつくりもとの関数を表す。)を作る必要がありますが、これがルジャンドル変換で、今の例の場合Fが出てくることはよくご理解の通りです。
丁寧な解説どうもありがとうございます。熱力学ポテンシャルの意味がよくわかりました。熱力学は変数がたくさん出てきてまだ自分の中で整理ができていません。参考になり助かりました。
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