市販のAMラジオ用のループアンテナには大別して二種類あるようです。
(1)巻き枠を作ってその外側に集中的にコイルを巻く
(2)巻き枠を作ってその内面までびっしり巻く
(説明が下手で申し訳ないですが、昔のスパイダーコイルをイメージしていただければ幸いです)
同じ外径、巻数のとき、どちらが感度が良いでしょうか?
電波を受ける面積としては後者の方がはるかに広くなるわけですが、
電波の到来方向は平面方向に最大感度があるわけだから関係ないかな?(どちらも同じ?)と考えています。
理論的なご説明をお願いします。
(製作上は(1)の方がはるかに楽なので、悩んでいます)
No.1
- 回答日時:
"同じ巻き回数"であれば、平均直径の大きい (1) です。
・巻き回数でなく同じ線材の長さで巻けるだけ巻くだとほぼ同じかな?
ついでに:
---
◆(A)カップリング回路がない場合(アンテナコイルのLがそのまま同調回路の一部の場合)
(1)のように同直径で集中して巻くと巻線間のストレーキャパシティが
無視できないほど増加し、帯域がナローになってきてしまいます。
これは特に沢山巻きたい(感度を稼ぎたい)ときにシビアになってきます。
中波AMラジオ放送は 522kHz~1602kHz と下限周波数の3倍強もの広範囲にわたるため、
L に余計な固定 C が付いているとバリコンの容量変化をもってしても
可変範囲が全域に確保できなるからです。
・解決のためにアンテナコイルからタップを複数引き出し切り替えて使うことがあります
一方、スパイダーは巻線間のストレーキャパシティが減少するので、帯域がブロードになります。
このため、感度とストレーキャパシティの低減(=広帯域化)を両立することができ
このため自作AMラジオのアンテナとしてよく見かけたわけです。
---
◆(B)カップリング回路がある場合(アンテナコイルのLが同調回路と分離してる場合)
(ミニ)コンポなどの外部AMラジオアンテナ端子が該当します。
同調回路は内部にあり、外部RF入力との間は疎な結合になっているので
帯域の可変については影響はありません。
ただし、ストレーキャパシティの容量の大きさによっては周波数ごと(または全体)の
感度の違いとなって現れてきます。
(A)にくらべてそれほどシビアではないと思うので、ミニコンポなどの
外部アンテナ用であれば製作が楽な(1)のタイプでも良いと思います。
2つ作って比べてみるのも楽しいですよ :)
この回答への補足
ご回答有難うございます。
>"同じ巻き回数"であれば、平均直径の大きい (1) です。
理論的根拠をご提示ください。
(わたしは「スパイダー型の方が空間占有面積が広い」という形で意見提示をしています。このことは無関係でしょうか?)
No.2
- 回答日時:
有限長ソレノイド(コイル)のインダクタンスは次の式で表されます
L = K・μ・N^2・S / l
K:長岡係数, μ:透磁率, N:巻数, S:ソレノイドの断面積, l:ソレノイドの長さ
どちらも空芯コイル (フェライトバー等を使用していない)なので透磁率μ=1.0で同一。
長岡係数 K は参考URLをご覧ください。
(1)(2)ともにアンテナの外直径 0.50[m]、巻数を20[回]、長さを 5.0[mm]、
ワイヤの線径 0.20[mm] とします。
(1)は終始直径 0.50[m] なので、断面積 S = 0.063π[m^2]
(2)は巻き始めから巻き終わりまで 0.50[m]~0.30[m] に単純に直線的に直径が変化しているとみなし、
等価直径 0.40[m] とし、断面積 S = 0.040π[m^2]
L を計算すると、
(1)0.690 [mH]
(2)0.530 [mH]
となり、(1)のタイプのほうがインダクタンスが大きく、有利となります。
>(わたしは「スパイダー型の方が空間占有面積が広い」という形で意見提示をしています。このことは無関係でしょうか?)
見た目的にかさばっているほうが一見間口が広く見えそうな感じはしますが、
インダクタンスや長岡係数の式も捨てて もっと単純に考えても
(1)と(2)では 磁界を横切る線の長さ が
(1) 0.50×π×20 = 31[m]
(2) 0.40×π×20 = 25[m]
と (1) のほうがより長く磁界を横切っており、平たく言うとより多く電界に
変換できるので感度が高いと言えます。
No.1 の回答で
>・巻き回数でなく同じ線材の長さで巻けるだけ巻くだとほぼ同じかな?
と書いたのは、この意図です。
参考URL:http://www-lab.ee.uec.ac.jp/vlab/bridge/nagaoka/ …
この回答への補足
再度にわたり丁寧なご回答有難うございます。
また、インダクタンス計算式までわざわざご提示いただき誠に有難うございました。
ところで、お言葉を返して恐縮ですが、わたしはインダクタンスそのものは単に共振に必要な要素であり、この大小は感度とは無関係ではないかと思っております。
単にインダクタンスを上げたいならコアを使用することで簡単に目的は達成できますが、これで感度が上がるといった話は聞いたことがありません。
> (1) のほうがより長く磁界を横切っており、平たく言うとより多く電界に変換できるので感度が高いと言えます。
この解釈は正しいと思います。
しかし、それならわたしのいう「スパイダー型」は、「より広い範囲で電界を横切っている」ということになるのではないでしょうか?
(線よりも面)
ご意見をお待ちしております。
No.3
- 回答日時:
AMラジオ用の(マイクロ)ループアンテナにご興味があり、これは自明な磁界型アンテナで
あることからインダクタンスの大小について説明すればご理解いただけると思い、
簡単のためにも説明を浅くしましたが、ではもう少し掘り下げてみます :)
>ところで、お言葉を返して恐縮ですが、わたしはインダクタンスそのものは
>単に共振に必要な要素であり、この大小は感度とは無関係ではないかと思っております。
いえ、残念ながらその認識は半分誤りで半分正解です。
このアンテナは電界型ではなく【磁界型】です。
このアンテナコイルは磁界を捕捉し電界に変換するのが第一の作用で、
共振回路としての性質(LC共振の Q による電圧利得効果)は二次的な作用になります。
つまり二つの作用を持っています。[※1]
・入るものが入ってこなければ 利得があっても出力は出てこないです
[※1] No.1 の◆(B)カップリング回路がある場合 においてあげたようにアンテナ自体を
共振させずに使うこともあり、この場合磁界を補足する作用のみで使用します。
ミニコンポにこのタイプがよくあります。カップリング回路(の内側または
カップリング回路自体)の同調回路で共振させて Q を稼ぎ、アクティブアンプを併用して
利得を稼いでいるのでアンテナ自体がLC共振していなくてもOKなのです。
・アンテナは共振してるとは限りません
例)マグネチックループアンテナ (このマイクロループアンテナの兄弟)
ヘリカルアンテナ(但し径がλのもの。非共振・進行波型アンテナ)
>単にインダクタンスを上げたいならコアを使用することで簡単に目的は
>達成できますが、これで感度が上がるといった話は聞いたことがありません。
感度があがりますよ。
現にラジオに用いられているフェライトバーアンテナは、小さなコイルでも
フェライトコアを使用し高μ(高透磁率)とすることで"高効率"(=高感度)で
磁界を拾うとともに、中波帯の周波数に適切なインダクタンス( L を大きくする
ことで C が過大に大きくならずにすむ [※2])を得ることを両立しています。
一挙両得です。
[※2]共振周波数 f = 1 / ( 2π・sqr(L・C) ) より。
同じ周波数であれば L を大きくすれば C が小さくてすむ。
では、式を交えてもう少し掘り下げて詳しく:
◇変数の定義
Em:空芯コイルの誘起電圧の最大値[V]
Emr:共振した空芯コイルの誘起電圧の最大値[V]
Emc:共振したコア入りコイルの誘起電圧の最大値[V]
Eo:その地点の電界強度の最大値[V/m], アンテナの実効高:he[m]
N: コイルの巻数, A: 実効面積[m^2] λ: 受信する電波の波長[m]
Q: 同調回路の利得, μe: コアの実効透磁率
◆空芯コイル・同調(共振)なし の時の誘起電圧 【共振してなくても作動します】[※1]
Em = Eo・he
he = 2π・N・A / λ
∴Em = Eo・2π・N・A / λ … (1)
さて、ここの N・A (コイル巻数 × 実効断面積) がおそらく疑問↓の肝心な点です。
>しかし、それならわたしのいう「スパイダー型」は、「より広い範囲で
>電界を横切っている」ということになるのではないでしょうか?(線よりも面)
この式ではコイルの直径は終始一定であると仮定していますが、言い換えると
「巻数 × 1巻あたりの断面積」です。
はい。【1回コイルを巻けば、その内側の面がすべて磁束の捕捉対象になります。】
・おそらく、電磁気に関してこの認識がないため ご質問と補足に至ったのではないかと思います。
感覚的に分かり易いようまた具体的に数字を埋めてみましょう:
ちょっとスカスカなアンテナになりますが、
たとえば 直径 1.0m (→ 0.5×0.5×π=断面積0.25π) を 5回巻けば
N・A相当 は 0.25π+0.25π+0.25π+0.25π+0.25π = 1.25π (= 5 × 0.25π)
一方スパイダー形は、1ターンごとに直径が変動していますから、
たとえば 1.0m 0.8m 0.6m 0.4m 0.2m 相当の均等ステップの 5巻であれば、
N・A相当 は 0.25π+0.16π+0.09π+0.04π+0.01π = 0.55π となります。
・結局、「同じ巻数」だと実効的に磁界を捕捉する面の合計が小さくなるので
スパイダー型が不利となります。
では引き続いて:
◆空芯コイル・同調(共振)あり の時の誘起電圧 【共振してれば電圧は Q倍!】
(1) と共振の原理により、
∴Emr = Eo・Q・2π・N・A / λ … (2)
はい、共振していれば感度は Q 倍です。
◆コア入りコイル・同調(共振)あり の時の誘起電圧 【コアのμによりμ倍!】
(2) と 定義(磁束密度B = 透磁率μ・ 磁界強度H ) より
∴Emc = Eo・Q・μe・2π・N・A / λ … (3)
はい、フェライトコアを入れると感度はさらに μe 倍です。
・ただしコアにより増えた L は C の調整(減少)によって
再び共振状態(同じQ)にあるものとします
---
今回の説明でご理解いただけましたでしょうか。
ここからさらに なぜなぜをもう一段掘り下げると、もうマクスウェルの方程式
(電磁場の基本)にたどり着いてしまいます :)
マクスウェルの方程式については長ーくなるのでこの参考URLをご覧ください :)
→http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%AF% …
またバーアンテナについて、空芯状態(本質的に今回のアンテナと同じもの)から
フェライト入りまで動作の絵とグラフ等が入っていて理論的かつ視覚的にも
分かり易いサイトをあわせてご紹介します:
→http://www.ndxc.org/tech/ (Technical Review for DXing)内の
→http://www.ndxc.org/tech/horibapdf/021102-001.pdf (フェライトバーアンテナについて(PDF))
ここでは中波用アンテナの製作ほか各種アンテナ等について沢山詳しく紹介
されていますのでさらに製作の上で参考になるかもしれません。
長々と失礼いたしました。
参考URL:http://www.ndxc.org/tech/horibapdf/021102-001.pdf
この回答への補足
素晴らしいご回答を重ねて有難うございました。
「磁界型アンテナ」で検索するといっぱいかかってきました。
基本から勉強し直したいと思っています。
最後にひとつお尋ねしたいのですが・・・
>2つ作って比べてみるのも楽しいですよ :)
いろいろ作って比較してみたいと思っていますが、どういう条件で比較すればよいかと悩んでいます。
アマチュア無線のアンテナであれば、整合をとることが必要条件で、整合さえとれば「同一条件」と考えてよいわけですが(指向性の問題は除く)、このような非整合型のアンテナでは「同一条件」という絞込みが難しいように思います。
どのような基準で良否を判定すればよいでしょうか?
単にAMラジオにつないで出力レベルを測るだけではあまりにもお粗末、と思うのですが如何でしょうか?
No.4ベストアンサー
- 回答日時:
疑問が解決したようでなによりです :)
一応2アマなので、私もかつて作っては試しを良くやりました。
(コールは書けません 個人情報記載扱いで削除されちゃうので)
送信用だけでなく受信用もいろいろ作りました。受信用のが多かったかな。
>いろいろ作って比較してみたいと思っていますが、どういう条件で比較すればよいかと悩んでいます。
そうですね、確かに厳密に定量的な測定をしようと思うとそれなりに計器や雑多な高周波(無線)に関する知識も必要になってきます。
でも、まず最初は定性的な測定からでも良いのではないでしょうか。
--このアンテナだと遠方のラジオがよく聞こえる、こっちだとよく聞こえない。
でも後者のほうがノイズは少なくてどうやら指向性も緩やかのような -- など。
・2つのアンテナを切り替えながらモニタ/測定していれば、
電離層の伝播状況等 ざっくり同一環境下での測定と見なせます。
近距離の放送局だと製品ラジオのAGCが飽和してしまってアンテナの入力が
多少変わっても区別が付かないので、できるだけ弱めの でもきちんと識別できる
放送局を「マーカー」として自分なりの基準局にしておくと良いです。
・昼と夜で伝播状態が違うので 昼用と 夜用(結構遠距離の局)をピックアップします
自作アンテナ+製品ラジオの鳴り具合にあきたら 次へ :)
定量的測定のための簡単な超簡易測定器(プローブ)の作り方を:
RF IN OUT
○----->|-+-+---●
| |
= Σ
| |
○----------+-+---●
GND GND
左上から
・検波用ダイオード(高周波用の低ドロップ電圧のゲルマニウムがよい 定番だった 1N60…はもう廃盤か、、高周波用で低ドロップなら何でも可 1N****等)
・セラミックコンデンサ 0.01μF [表記103] とか適当に
・抵抗 (10~100kΩ 高めがいい):絵がズレてるかもしれませんが、ダイオードのカソードにコンデンサと抵抗を並列にGND間につなぎます。カソードはそのまま出力端子。
ようするにこれは 検波回路 でラジオの基礎です。
左側をループアンテナ等、右側にデジタルテスター(デジタルマルチメータ)。
同調回路はないので、飛び込んできたRFは何でも検波しちゃいます。
が、共振(Q倍)しておらず弱いのでアナログだと針がピクリともしないかも。
クリスタルイヤフォンかアンプ内臓スピーカをつないでアンテナを回してみてください。
近距離にAM放送局があれば何か聞こえるかもしれません。
ピクリともガリともせず挫折しかけたら、このサイト等もごらんください:
http://homepage2.nifty.com/minaken/ham/radio.htm
たとえば「AM検波回路のバージョンUP」の回路を参考に、
・同調回路
・検波を倍電圧に
しちゃいます。もうラジオですね。イヤフォンはポータブルプレイヤーで
使っているようなマグネチック(32Ω等の低インピーダンス)ではなくクリスタル
イヤフォン(100kΩ位)でないと鳴りづらいです。
いっそアンプ内臓スピーカにつないでもよいです。
アンテナの向きと同調回路を調整してマーカ局を選んでください。
(とりあえずこの簡易ラジオで聞こえるものでOK)
決めたら、イヤフォン/アンプ内臓スピーカを外し、テスターをつなぎます。
さぁ、これでマーカ局として選んだ周波数の簡易電界測定器です :)
他の基準と公正していないので絶対値測定ではなく相対測定になりますが、
一応定量的に数値化できますよ :)
・入力電界は不明なものの、アンテナと同調回路により生じた電圧はれっきとしたものです
手製アンテナの相対比較には結構十分かもしれません。
もの足りなくなったら、高周波(or低周波)増幅1段つけてみるなどの応用や、
どうもお手製ラジオもどきはうまく動かんという時はラジオキットの流用、
100円ショップのラジオをばらして流用なども。
よりステップアップしたい場合は、いくつか参考になる書籍や雑誌を
手にして、高周波用の測定器や周波数カウンタの入門レベルのものを
いろいろ検討のうえ購入してみるのもよいです。
アンテナ作りにはまるとディップメータ(共振周波数を確認する測定器)が面白いかもしれません。
ではでは 良きカット&トライ を :)
数度にわたり丁寧なご回答有難うございました。
磁界アンテナといえば、JA6HWさんがだいぶ研究をしておられましたね。
ずいぶん昔に読んだのであらかた忘れていましたが、回答者さんのおかげでもう一度読み直してみようかと、今CQ誌のバックナンバーを探しています。
わたしの最も関心のあるのはマイクロウエーブです。
(プロではありません。アマです。(-_-;))
一応8GHzまで測定できるトラジェネ付のスペアナと、(自作ですが)5GHzまで測定できるSWRブリッジを使って、製作や測定を楽しんでいます。
孫が年頃になったので、中波ラジオくらいから手ほどきをしてやろうかと思ったのが、ループアンテナに関心を持ったきっかけです。
ただ、作って聴いてみるだけではあまり勉強にならないので、測定の楽しさも一緒に教えてやろうかと思い、いろいろと小うるさい質問をしました。
くどい質問にも関わらず、丁寧なご回答をいただいたことを感謝しております。
ダイオード検波器に関心を持った時期もありました。
特に微小電圧(3GHz,1mVクラス)の検出、(検波器の)入力インピーダンスは何によって決まるか、測定可能な最低周波数とパスコンの関係、等いろいろデータを取りました。
しかし、スペアナを持ってからはこれらのデータは全く不要になりました。(-_-;)
また機会がありましたらいろいろご教示ください。
ご回答有難うございました。
重ねて御礼申し上げます。
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