これは私が受けた相談事案です。
私の知り合いの事業所ですが、障害者を雇い入れた。この障害者、健常者よりあきらかに労働能力がおとっており、事業所としてはとても最低賃金以上をしはらうことはできない。そこで、最低賃金法には「減額特例」という制度があり、この制度の適用を受ければ、最賃以下の賃金で雇うことがみとめられる、ということで、その申請書類を役所に提出した。
で、結果は申請がみとめられたものの、申請書類を役所に提出した日からではなく、提出した日から10日ほど経過した日から認める、というもので、しかも、提出した日から認められる日の前日までの期間について、認められない理由が付記されていなかった、ということです。
なお、提出した日から10日ほど経過した日から認めることになったのは、役所部内で申請書類が審査決定されるには当然時間が必要であり、部内で決済された日を許可開始の日とする、というふうに厚生労働省の処理マニュアルにはなっている、ということです。
で、事業所としては申請書を提出した日から許可開始の前日までは、最低賃金以上の賃金を支払わなければならない、ということになるので、この処分は不服ということで、最終的には司法審査にもっていきたい、という相談をうけたわけです。
じつは私、この処分をした役所に在籍しており、それで相談をうけたわけですが、私のしらべたところ、「(最低賃金の減額の特例)(最低賃金法第七条 使用者が厚生労働省令で定めるところにより都道府県労働局長の許可を受けたときは、次に掲げる労働者については、当該最低賃金において定める最低賃金額から当該最低賃金額に労働能力その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める率を乗じて得た額を減額した額により第四条の規定を適用する。
一 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者 以下略」 というのがその根拠条文ということだそうですが、私、この条文を読んで、なぜ申請のあった日から許可しないのか理由がわからない、申請のあった日から許可してなんのさしつかえがあるというのか、むしろ、申請から許可までの期間をおくと、その間は最低賃金以上を支払うのが相当、と判断した理由をしめさなければならないではないか、と考えるわけです。
で、私の質問は、理由を付さずにおこなわれた不利益処分が司法審査にもっていかれた場合、無効という判決が下されるのではないか(もちろん、許可した部分については有効でしょうが)、さすればもう一度処分をやりなおさなくなるのではないか、ということです。
理由を付さずにおこなわれた不利益処分が無効となる場合および、理由の追加付記によって補完が可能となる場合について教えてください.
No.1
- 回答日時:
この問題には詳しくありませんが、気になった点だけ。
「不利益処分」と質問者さんは言っていますが、
文面を読む限り、「申請に対する【処分】」ですよね?
不利益処分というのは、極アバウトにいえば、
既存利益を剥奪する方向にする場合の処分をいいます。
行政手続法上、申請に対する処分と、不利益処分とは、
異なる概念ですので、区別してください。
おそらく、今回のケースは、
申請に対して処分を下すにあたり、事情をくんで、
(行政庁に許される裁量の範囲内で)附款をつけただけだと思います。
なお、障害者を雇い入れるに当たって、申請者は、
某かの優遇を受けていないかについても、思いをはせてください。
それとの調整規定もあるかもしれませんので。
この回答への補足
08/12/05/23;19「理由がしめされずにおこなわれた申請不許可の不服申し立てについて」の回答3のaoismileさんの以下のコメントについて、この欄でおこたえします。
前回の質問と、大幅に立場が異なっているのではないでしょうか?
> じつは私、この処分をした役所に在籍しており、それで相談をうけたわけですが
両者の質問を見比べる限り、あなたの方が不適切なことをし、
その責任を免れることに血道をあげているだけのように感じられますが。
私は厚生労働省の出先機関である某地方労働局の一職員であることを明言します。で、aoismileさんは、私自身が職務に関してなにか重大なミスをおかし、その後始末やもみ消しのために、必死に工作をしているのではないか、と推理されるわけですね。蟹は甲羅に似せて穴を掘る、といいますが、人間は自分がそういうたちばにおかれたらそういう行動をするであろうという場合、他人の行動も、自分がするような理由でやっているのではないかと推測しますね。ところが、自分はそういう行動はしない、あるいはとてもそんなできない、というようなことについては、他人がそういう理由で行動しているのではないか、とおもいつくことができるでしょうか?具体的にいうとこういうことです。aoismileさんが厚生労働省の一職員であったとします。で、その職務中にミスをおかした。そのミスを訂正するために行動をおこす、これは当然のことであり、aoismileさんもそうされるでしょうし、私もそうします。
ところが、そういうことではなく、厚生労働省がミスを犯していることにきづいた、つまり、現在、部内で決済された日を許可開始の日としている(当然、申請日より、何日かあとになる)のは法解釈をあやまっているのであり、申請の時点で許可基準に該当するとみとめられれば、申請日を許可開始の日とするのが正しい法解釈なのだ、とaoismileさんは確信された。ところが、aoismileさんはそういう場合に対応すべき地位あるいは職責にあるのではなく、組織の末端にあって、そういう間違いを訂正できる権限ある地位でもなければ、そういう職責をおっているわけではない。そういう場合、aoismileさんはどういうふうに行動しますか?本省のミス、私には関係のないこと、と放置しますか。それとも、このあやまりを正すためなにか行動しなければならない、と思いますか?aoismileさんが、私には関係のないことであっても、あやまりであれば、放置できない、という人であれば、「ひょっとすると、この質問者もそういうことでやっているのではないか」と推理することもできるのではないかと思うのです.
で、私が一職員として、法解釈をあやまる、という本省の行政庁としての致命的なミスをたださねばならない、という心境、これはaoismileさんはじめ、この問題に興味をもたれる方が、「申請の時点で許可基準に該当するとみとめられれば、申請日を許可開始の日とするのが正しい法解釈なのだ」と確信できなければ、私の心境が理解できないとおもいますので、このことを説明します。なお、本稿回答者3への私のコメントもあわせておよみください。
以下、髪数がたりませんので、08/12/05/23;19「理由がしめされずにおこなわれた申請不許可の不服申し立てについて」の回答3のaoismileさんの回答への補足のところでつづけます。
No.3ベストアンサー
- 回答日時:
最低賃金の減額特例申請に対する処分は、行政手続法で言うところの「申請に対する処分」なので、「不利益処分」とは違います。
行政手続法の第8条で、理由を示す必要があるのは「申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合」となっており、今回の場合は理由を示す必要はありません。行政処分に不服がある場合、不服申立てをする方法と行政訴訟を提起する方法がありますが、不服申立ての場合裁決や決定で処分を変更することができる一方、行政訴訟では訴訟類型の関係上「処分の取消し」をすることしかできないので、その場合は処分のやり直しが必要になると思われます。
争う方法としては、ほかに、減額特例の許可日以前に余計に払わなければならなかった分について国に損害賠償を求める方法、許可日以前の分についても減額後の額しか払わず、最低賃金法違反で刑事訴追を受け、法廷で「申請日を許可日にしないのが違法なので無罪である」と主張する方法などがありうるかと。
最低賃金の減額特例について、申請を受けて調査官が対象労働者の労働実態を調べ、決裁を受けることになると思いますが、調査以前の労働実態までは把握できないので、遡及的に申請日を許可日とするのではなく、決裁の日を許可日としても不合理ではない…… と、個人的には思います。
この回答への補足
>申請を受けて調査官が対象労働者の労働実態を調べ、決裁を受けることになると思いますが、調査以前の労働実態までは把握できないので、遡及的に申請日を許可日とするのではなく、決裁の日を許可日としても>不合理ではない…… と、個人的には思います。
では、調査以前の労働実態が把握できる場合、つまり申請日あるいは雇い入れ日から、その労働者の作業能率とか労働実態が把握できる場合には、申請日を許可日としなければ、不合理になる、と思われませんか。回答者さんは「調査以前の事実が正確に把握できるか」、という事実認定の問題と理論の問題を混同しておられるのではないでしょうか。
なお、休業補償給付申請などでは、療養のため休業が必要であったかどうかの事実認定は調査以前、つまり休業開始の時点にさかのぼっておこなっており、で、休業開始の時点にさかのぼって給付がおこなわれるわけです。むしろこれが通常のケースです。
それと回答者さんは、こういうケースと混同しておられないでしょうか。
ボイラー使用許可申請などの場合、使用許可されるまではボイラーを稼動することはできません。だから、ボイラー稼動開始を通知することができる日、つまり決済日を許可日として、使用許可何年とするわけですね。申請の日を許可日とすると、申請の日から許可日までの間が申請人の損になるからです。
また、調査中つまり、ボイラーの実地検査により不具合がみつかり、是正指導の結果審査基準がみたされ、決裁の日が許可日とされる、というケースもあります。
同じように減額特例申請で、実態調査中、許可基準をみたしておらず、是正指導の結果審査基準がみたされることとなった、という場合もおこり得るとおもいます。回答者さんはそういう事例を想定して「遡及的に申請日を許可日とするのではなく、決裁の日を許可日としても不合理ではない…… 」といっておられるのではないでしょうか。
なお、現実問題として、事業所が障害者等を雇用するにあたってはたいへん慎重で、正規の契約までに実習(養護学校在籍中とか)とか研修(授産施設入所者)とかの名目で、雇用前に実地の作業をおこなって、本人の作業能率等が確認され、賃金額の合意がなされてから雇用されるのが通例、という事情も申し添えます。
>行政手続法の第8条で、理由を示す必要があるのは「申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合」となっており、今回の場合は>理由を示す必要はありません。
事業所としては申請した時点からの許可をもとめているのですから、部分的に拒否する処分となり、拒否する部分については理由を示す必要があるとかんがえられませんか。
決裁の日を許可日としても不合理ではないと確信している場合は、今回の場合は理由を示す必要はないと断言できますが、遡及的に申請日を許可日としないと理論的にはまずいのではないか、と感じれば、この処分は部分的拒否処分であることがはっきりするはずです。
>行政訴訟では訴訟類型の関係上「処分の取消し」をすることしかでき>ないので、その場合は処分のやり直しが必要になると思われます。
行政訴訟が提起され、処分の取消し判決が出たとします。厚生労働省の処理マニュアルでは、部内で決済された日を許可開始の日とする、というふうになっているわけです。すると、調査にあたっては、申請の時点で許可基準に該当したか、という観点から調査していないわけです。すると、判決の効力は提起されたその案件のみか、すでになされた全処分についておよぶものか、また処分のやりなおしだけでなく、調査事態をやりなおせ、ということにはならないでしょうか。
以上について再度コメントいただければさいわいです。
>減額特例の許可日以前に余計に払わなければならなかった分について国に損害賠償を求める方法、許可日以前の分についても減額後の額しか払わず、最低賃金法違反で刑事訴追を受け、法廷で「申請日を許可日にしないのが違法なので無罪である」と主張する方法などがありうるか>
と。
非常にすぐれたご指摘とかんがえます。コメントありがとうございました。
No.5
- 回答日時:
ご質問の許可は講学上の「行政行為」の一類型です。
「行政行為」の効力の発生について、塩野宏『行政法1』(有斐閣, 1991)は、次のように述べます。
「行政行為によって権利変動が生ずるのは、相手方に対して行政行為の効果ないし効力が発生することを前提とする。そしてそれは、特段の定めのない限り、意思表示の一般原則に従い、行政行為が相手方に到達した時である。つまり、相手方が現実に了知し、または相手方の了知しうべき状態に置かれた時である。」
「これに対し、効力の発生時期について法律が特段の定めを置いているときには、これに従う。」(p.127)
最低賃金法第7条の許可については、効力の発生時期に関する特段の定めは置かれていませんから、原則に戻って、許可が決定されて、相手方に伝えられた時点に効力が発生することになるでしょう。
したがって、現行法の下で、申請日を許可日とすることはできません。
申請者側として主張しうるのは、申請時に、許可日が申請日と違う日になるという説明がなかったという点程度でしょうか。
なお、申請から許可まであまりに長い期間がかかると申請者に不利益が生ずるので、行政手続法では、標準処理期間を定めるよう努力義務を課しています。
立法論として、申請の事由が生じた日から許可日までの申請者の不利益を何らかの形で補填すべきではないか、ということはあるかもしれませんが、最低賃金法の趣旨からして、賃金の減額をさかのぼって認めるという形でそれを実現するのはきわめて難しいと思います。
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