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泉鏡花の外科室が大好きで、今から15年位前に映画化された時も映画を鑑賞したのですが、理解力の無さゆえに何点か質問質問があります。皆さんのご意見をお聞かせ下さい。

(1)貴船伯爵夫人の手術を高峰医師が受け持ったのは偶然でしょうか?
あるいは医師にずっと秘めた想いを寄せていた婦人の要望だったのでしょうか?

(2)麻酔無しと言う無謀な手術を高峰医師が了解したのは、婦人の恐れている「眠り薬のせいで自分の秘め事を言ってしまうのが怖い」と言う内容が自分への想いであると多少は分かっていたからでしょうか?

(3)最後に婦人の言う「でも、あなたは、あなたは、私(わたくし)を知りますまい!」という台詞から、婦人は高峰医師も自分の事を想っている事は全く知らなかったと言う事でしょうか?

(4)「痛みますか」
「いいえ、あなただから、あなただから」
と言う手術中の会話や、医師の前で胸をはだけた時に婦人の頬が染まるなど、ある意味言葉にハッキリ出すよりも官能的な告白に思えるのですが、婦人の旦那さんを始め、手術を鑑賞していた周囲は何も感じる部分は無かったのでしょうか?

(5)医師の持つメスに自分の手を添えて胸を掻き切るという婦人の行為は何を表すのでしょうか?ずっと想っていた医師に再会でき、思い残す所無く命を絶ったと見て良いのでしょうか?

宜しくお願いいたします。

A 回答 (2件)

ご質問の内容によっては、「どうともとれるもの」がありますね。



(1)貴船伯爵夫人の手術を高峰医師が受け持ったのは偶然でしょうか?
あるいは医師にずっと秘めた想いを寄せていた婦人の要望だったのでしょうか?

これなんか、特にそうです。
偶然とも、要望ともとれます。本文中に書かれていないので。

(2)麻酔無しと言う無謀な手術を高峰医師が了解したのは、婦人の恐れている「眠り薬のせいで自分の秘め事を言ってしまうのが怖い」と言う内容が自分への想いであると多少は分かっていたからでしょうか?

わかってないと思います。詳細は(3)の回答参照。

(3)最後に婦人の言う「でも、あなたは、あなたは、私(わたくし)を知りますまい!」という台詞から、婦人は高峰医師も自分の事を想っている事は全く知らなかったと言う事でしょうか?

知らなかったと思います。
夫人と医師については、物語の最後に一目惚れを描くエピソードがあります。観念小説であることと当時の鏡花の他作品(夜行巡査など)を考慮しても、物語がたいへんドラマティックであることがわかります。そうであれば、互いに知り合いで長い間密通をしていたとするよりも、植物園での一度の出会いだけで恋に落ちて、手術室で再会するとする方が解釈としてスムーズではないでしょうか。
と、すると、お互いの片思いですから、知るわけはないですね。

(4)「痛みますか」
「いいえ、あなただから、あなただから」
と言う手術中の会話や、医師の前で胸をはだけた時に婦人の頬が染まるなど、ある意味言葉にハッキリ出すよりも官能的な告白に思えるのですが、婦人の旦那さんを始め、手術を鑑賞していた周囲は何も感じる部分は無かったのでしょうか?

二人の世界を描くのが中心の作品ですから、感じる感じないの問題ではないかと。

(5)医師の持つメスに自分の手を添えて胸を掻き切るという婦人の行為は何を表すのでしょうか?ずっと想っていた医師に再会でき、思い残す所無く命を絶ったと見て良いのでしょうか?

「秘密」を暴くことはすなわち死ぬことを意味しているかと思います。
思い残すことがないと言うよりも、必然的なものとして自殺があったのではないでしょうか。現に、その後、医師も自殺しています。


ただ、この回答は私個人の一意見なので、小説ですからなんとでも読みようがあると思いますよ。理解力云々ではないと思うので、お好きに読めばいいのではないでしょうか?
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この回答へのお礼

nomori様。ご回答頂き有難うございました。「外科室」は短い小説で、詳細が書かれていな部分もあるため、何通りかに解釈できる部分があって悩んでいましたが自分の感じるように好きな解釈で読んでいきたいと思います。「どうともとれる」から想像がふくらんで余計にドラマチックになる部分もあると思うのでそこを楽しみたいと思います。本当にご回答、有難うございました。

お礼日時:2009/03/14 02:21

先日、別質問で樋口一葉の作品について回答をしましたが、この泉鏡花の文章も またなんとも耽美なまでに味わいの深いもので、こういう作品は、読後しばし、最上のごちそうをいただいたような気分に浸らされます。

内容そのものだけではなく、文章じたいを味わい尽さずにはおけない魅力があります。

ところで、私の亡き母も生前、泉鏡花の作品が好きだと もらしたことがありました。
今朝、私は久しぶりに、元気でシッカリしていた頃の母を思い出して泣いてしまったところでしたが、この御質問を拝見して、もう一つ、母から聞かされた話が よみがえりました。

まだ親元にいた独身の頃の母をもらいたいという望みが かなえられず、青年が自ら命を絶ったという知らせも記憶に新しいまま、十代で最初の結婚をし、なかなか子が授からないうち、ある病を得て、緊急に外科的処置をしなければならないということになり、その時点では、まだ進行が初期の段階であったので、とにかく切ってしまいましょうということになったそうです。
ところが生来の病弱と些かの特異体質であった母には、麻酔を施すのが大変危険を伴うことであったので、医師も思案のあげく、母の覚悟のうえで、まさに「麻酔なしで」胸部にメスを(普通のそれとは違う特殊な形状のものだったそうですが)入れることになりました。

…母が我に返ったとき、医師の白衣のボタンは殆どが引きちぎられていたそうです。
とても貴船伯爵夫人のようにはいかなかったようですね。
それでも、若かったお陰もあってか、傷痕は目覚ましく回復していったそうです。
そうして平常の生活に戻り、主婦としての日々の家事にいそしんでいた或る日のこと、かつての手術を担当した若い医師が、突然に母を訪ねてきたことがあったのだそうです。


(1)貴船伯爵夫人の手術を高峰医師が受け持ったのは偶然でしょうか?
あるいは医師にずっと秘めた想いを寄せていた婦人の要望だったのでしょうか?

断定できるような記述はないようですね。ですが、病を得た夫人が、これ幸いとばかり?高峰医師の勤務先を調べさせたうえで、彼を主治医として、また執刀を依頼したのではないかということは考えられます。

(2)麻酔無しと言う無謀な手術を高峰医師が了解したのは、婦人の恐れている「眠り薬のせいで自分の秘め事を言ってしまうのが怖い」と言う内容が自分への想いであると多少は分かっていたからでしょうか?

オペを繰り延べる猶予は許されないという医師としての冷静な判断からであることは、作中の高峰医師のせりふに表現されていると思います。
個人的な経験から、全身麻酔で うわ言をもらすというのはないだろうと思うのですが。。。

(3)最後に婦人の言う「でも、あなたは、あなたは、私(わたくし)を知りますまい!」という台詞から、婦人は高峰医師も自分の事を想っている事は全く知らなかったと言う事でしょうか?

全く、かどうかは、なんとも言えないでしょうね。いきなり手術に及ぶというのも考え難いですし、執刀前の何日かは、診察と事前の準備にかけていたであろうと思いますので、その間に、些かなりとも交情の兆しはあったかもしれません。
またぞろ個人的な経験ですが、私が手術したとき、おせわになった部長先生のことを思い出してしまいました。実は惚れておりまして(笑)

(4)「痛みますか」「いいえ、あなただから、あなただから」
と言う手術中の会話や、医師の前で胸をはだけた時に婦人の頬が染まるなど、ある意味言葉にハッキリ出すよりも官能的な告白に思えるのですが、婦人の旦那さんを始め、手術を鑑賞していた周囲は何も感じる部分は無かったのでしょうか?

空気、でしょうかね。敏感な人もいれば鈍感な人もいるでしょう(笑)
作中の語り部のように、初めて両人が出会ったときの経緯を知っている者であれば、ははあ、と容易に思い当たるのかもしれません。

(5)医師の持つメスに自分の手を添えて胸を掻き切るという婦人の行為は何を表すのでしょうか?ずっと想っていた医師に再会でき、思い残す所無く命を絶ったと見て良いのでしょうか?

そうとったとしても間違いではないだろうと思います。いずれにせよ、断定はできませんし、その要もないことでしょう。各人それぞれに見合った汲み取りかたをすればよいのだと思います。
頑なに麻酔なしの執刀を望んではみたものの、実際、始まってみれば言語を絶する痛みのはずですし(無粋なことを申せば、だいたい、このような状態で、まともにコトバを発することができるものか、はなはだ疑問ですが)夫人としては、思い人の「忘れません」という一言を得た瞬間に気は済んで、あとは強烈な痛みから逃れるに、ひとおもいに彼の手にかかって死ぬのを選んだということかもしれません。
「私を殺して」というエロチシズムというのかマゾヒスティックというのか、いやはや壮絶な耽美ぶりです。私には、とても真似できない(笑)
「八百屋お七」というのを連想してしまいましたが、現代のわれわれと違って、身分制度の厳しかった時代は、結婚も恋愛も個人の自由にしてよいものではなかったそうですし、それだけに純粋な恋情の思いの激しさも、こんにちの私たちの想像以上のものがあったかもしれません。


樋口一葉の『十三夜』も対比的な手法が用いられていましたが、当該作品も、前半部は、いわゆる、やんごとなき上流の人々特有の話しかたが描かれ、後半部では、庶民どうしの落語のような漫才のような語り口が描かれていますね。そして、その やりとりのなかで、上流の貴婦人と、そうではない一般の女性たちとの比較も男性視点から痛烈なまでに(笑)なされています。

いまどきは絶えて聞かれないような単語が いくつか出てきて、辞書をみても分からないものがありましたが、
それにしても「姫(ひい)」だの「御前」だの、貴婦人が、いわゆる下々の者に対しては、素っ気ないまでに男コトバのようなサバサバした受け答えをする反面、改まったコトバで応対するときには、なんとも言えない独特の優美さを漂わすのに思わず ため息が出ましたが、後半部の庶民の掛け合い漫才のようなセリフには、女性に対するキツ~い品定めぶりとともに苦笑してしまいました。
こういうところも泉鏡花という人の、さすがに単なるベタベタした耽美派ぶりにとどまらない辛辣さを垣間見させて、オモシロいな~と思います。
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この回答へのお礼

noname002様。ご丁寧なご回答を有難うございました。お母様に関する素敵なお話もそれこそ小説の中のお話のようです。とても魅力的なお母様なのですね。身分の差があり、行動や結婚、恋愛などにおいて自由が無かった時代ですので、秘めた想いは純粋で深い物なのだと思います。今は自由に恋愛できる時代なのに、貴船婦人と医師のようにただただお互いを想うような恋愛にものすごく憧れます。以前は、外科室の舞台でもある小石川植物園の見える位置に住んでいました。一葉も文京区にゆかりのある人なので、彼女の作品も読んでみようと思います。婦人のようにはいかないとしても、男性が近づき難い、良い意味での凛とした女性を目指したいです。ご回答、本当に有難うございました。

お礼日時:2009/03/14 02:02

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