電気化学でのコールコールプロットの参照電極に関して教えて下さい。
手元にある「電気化学測定法の基礎」という本の中で
Ag/AgCl電極は応答速度が比較的遅く高速サイクリックボルタンメトリーなどでは他の電極と組み合わせる必要がある、というようなことが書かれてあるのですが、これは本当なのでしょうか?
応答速度が遅いのだとすると、コールコールプロットでもその遅さが高周波領域に影響して来そうな気がするのですが、大丈夫なのでしょうか?
実際のコールコールプロットを測定結果を見てみるとAg/AgCl電極と飽和カロメル電極を見かけますが、特に参照電極に工夫をこらす必要はないということなのでしょうか?
また、コールコールプロットに限らずとも高速サイクリックボルタンメトリーに適した応答速度の速い参照電極を教えて頂けますでしょうか?
よろしくお願い致します。
No.1ベストアンサー
- 回答日時:
3極での測定なら,本来は関係ないんですけどね.
まあ,安心のための方策の一つとして,通常の参照極と並列に,白金電極をコンデンサを介して接続するという技もあります.あんまり有名ではないですがw
回答ありがとうございます。
手元にある「電気化学測定法の基礎」という本にも同様の本が書かれています。
でもこの方法はおかしくないですか?
例えば500mV vs Ag/AgClでのコールコールプロットをとりたいとして、
周波数によっては500mV vs Ptを見ていることになるわけですよね?
それだと測定したい電位でのインピーダンスを測定出来ないのではないのでしょうか?
それと3極での測定なら,本来は関係ない、というのはどういうことなのでしょうか?
例えばAg/AgCl電極を2つ用意してそれぞれテスターに接続したとします。すると0mVになるわけですが、通常、一瞬ではそうならず少しタイムラグがあると思います。
ということはコールコールプロットのようにある電位に固定して、その周りでAC変調する場合には問題にならないけれども、
高速サイクリックボルタンメトリーのように電位を高速で変えていく必要がある場合にはAg/AgCl電極の電位が追随してこないので問題になるように思うのですが、どう思われますでしょうか?
No.5
- 回答日時:
> 電位という意味での領域なのか、周波数という意味での領域なのかどちらなのでしょうか?
周波数の問題ではない,という話をしているんですが...
> 酸化還元の起きる電位に合わせたときに高次高調波がでやすいという意味で良いのでしょうか?
ファラデー電流は,原理的に電位変化に対して線形に変化しませんよね.というだけです.
インピーダンス測定では,このひずみ分を無視する,あるいは無視できるくらいに微小な変位に対して測定する,ということですが,それにしてもわざわざ歪ませるような条件を設定するのは,無用な誤差等を招くだけなので,ポテンショの制御系を介して電位を変調して,出てくる変調電流に現れる歪みは無視して解析するんです.
No.4
- 回答日時:
> つまり、制御部を通して変調をかけることは対極で変調をかけるのと等価であるということを仰りたかったのですね。
一部はそうですし,一部は違います.
参照極に直接電位をかけないという意味ではそうです.しかし対極電位に単純に変調をかけるのでもだめなのです.理由は以下に.
> ・「対極に対して正弦波で振っても,参照極から見ると正弦波の変位がかかっていないということになるのです.」
> というのは、どこの部分の応答速度が律速となって起こるのでしょうか?
これは律速とかの問題ではありません.ふつうの直流的な挙動を見るときでもそうですが,作用極電位を参照極に対して 0.1 V 動かすとき,作用極-対極間にかかる電位差は 0.1 V 動いているわけではありません.ここを何V動かしたらどうなるかはわからないけれど,とにかく動かしてみて参照極に対して 0.1 V 分ずらす,というのがポテンショスタットの動作です.これは,電気化学系が非線形だから必然的におこる話です.だから,作用極-対極間の電位差を正弦波で変調するというのでは根本的にダメなのです.ただし,変調が小さく2次以降の項を小さくできるようにすれば,この問題の影響は小さくできます.
> ・上記の質問に関連してなのですが、100kHzとか高周波になると、正弦波の変位がかかっていないということは理解出来ますが、100mHzなどの低周波では
> 参照極から見た正弦波の変位がかかることになるわけですが、その境目というのは何によって決まるのでしょうか?
ということで,この問いについての答はありません.
> ・「とくにファラデー電流が流れている領域はそれが顕著になります.」
> この「領域」というのはどういう意味での領域のことでしょうか?作用極の電位が本来ならファラデー電流が流れている電位にある領域という意味でしょうか?
直流的な意味での電流電位特性に非線形性が著しく現れるのはファラデー電流が流れるときです.なぜなら電流電位特性を支配する因子,電荷移動速度の Butler-Volmer の関係や溶存種の拡散過程など,は,すべてが電位や時間に対して非線形だからです.
ありがとうございます。
出来れば、その「領域」の定義を教えて頂けないでしょうか?
電位という意味での領域なのか、周波数という意味での領域なのかどちらなのでしょうか?
酸化還元の起きる電位に合わせたときに高次高調波がでやすいという意味で良いのでしょうか?
よろしくお願い致します。
No.3
- 回答日時:
> 私はコールコールプロットで変調をかけるとは、この図の上図の場所を変調するものだと思っていました。
それで正しいです.
> 下図の変調の仕方には何かデメリットがあるということなのでしょうか?
通常は微小変位だし,高調波は無視して解析するのでどちらでやっても大差はありません.しかし,電気化学系はそもそも非線形な系なので,ポテンショスタットの制御部を通して変調をかけるのと,対極で変調をかけるのでは,実際に作用極にかかる電位の変位に微妙な差が出ます.要するに対極に対して正弦波で振っても,参照極から見ると正弦波の変位がかかっていないということになるのです.とくにファラデー電流が流れている領域はそれが顕著になります.ですから,理屈上は上図のように電位制御用の端子から変調をかけるべきなのです.
たとえば第二高調波ボルタンメトリのように非線形性を真っ正面から利用するような場合は,どうしても「参照極」に対してきちんと正弦波の摂動をかける必要があります.この場合は対極に対して摂動をかける回路はそもそも使えません.
ありがとうございます。
つまり、制御部を通して変調をかけることは対極で変調をかけるのと等価であるということを仰りたかったのですね。
ただ、どうしても分からないことがまだあります。
・「対極に対して正弦波で振っても,参照極から見ると正弦波の変位がかかっていないということになるのです.」
というのは、どこの部分の応答速度が律速となって起こるのでしょうか?
・上記の質問に関連してなのですが、100kHzとか高周波になると、正弦波の変位がかかっていないということは理解出来ますが、100mHzなどの低周波では
参照極から見た正弦波の変位がかかることになるわけですが、その境目というのは何によって決まるのでしょうか?
・「とくにファラデー電流が流れている領域はそれが顕著になります.」
この「領域」というのはどういう意味での領域のことでしょうか?作用極の電位が本来ならファラデー電流が流れている電位にある領域という意味でしょうか?
No.2
- 回答日時:
そもそもポテンショスタットというのは,参照極の電位は「見ている」だけで,電圧をかける対象ではないのです.電圧は,対極と作用極の間にかけ,ここを変調するのです.なので,参照極の「応答」もなにも,参照極自体は電極反応とは関係ないのです.
大昔,ブリッジとかを使っていた時代は,作用極と参照極の二極でセルを組み,ここに交流をかけるしかなかったので,参照極の応答速度は周波数応答に決定的な問題になったのです.これもバイアスのかけられるブリッジであれば,作用極と対極でブリッジを組み,電位をモニタするためにべつに参照極を用意することで,測定操作は多少面倒ですが,交流回路から参照極を外すことができます.現在でも,通常のポテンショスタットでは応答がついてこられないような高周波領域では,適用範囲の広いLCRメータを使って,このような逃げ方をしないといけない場合もあります.が,そういう極端な高速事象は,イオン拡散などの遅い現象が全体を支配しがちな電気化学系では,あまり研究されないという側面はあります.
今はポテンショスタットの電位を直接変調し,出力電流の交流分をフィルターしたり,あるいは直接数値的に相関分析にかけることができます.この場合は,ポテンショスタット自体の応答速度の方が問題であって,やはり参照極は直接は関係がありません.
参照極に対して交流的にショートパスを作るのは,むしろノイズや高周波領域でのインピーダンス低下等によって,ポテンショスタットや交流応答解析の動作安定に寄与すると,私は理解していますが.
ありがとうございます。
回答の意味を確認させて頂きたいのですが、
http://imagepot.net/view/125034705653.jpg
私はコールコールプロットで変調をかけるとは、この図の上図の場所を変調するものだと思っていました。
そうではなくて下図のようにカウンターの前を変調するのが正しいのでしょうか?
確かに下図の場所を変調するというのであれば、参照電極の応答速度は必要ありませんし、ポテンショスタットのフィードバックの時定数は長くても問題にならなくなると思います。
「今はポテンショスタットの電位を直接変調し,出力電流の交流分をフィルターしたり,あるいは直接数値的に相関分析にかけることができます.」
回答の中で「今は」と仰っていますが、今は下図のような変調ではなく上図のような変調を行うのが主流となっているということなのでしょうか?
その理由は何なのでしょうか?
下図の変調の仕方には何かデメリットがあるということなのでしょうか?
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