プロが教える店舗&オフィスのセキュリティ対策術

以下の罪責について構成要件、違法、有責の観点から論ぜよ、という問題なのですがどう論ずればいいのか教えて下さい。
過失傷害罪・傷害罪・暴行罪・不処罰かどれかの立場をとって、説明していただけるとありがたいです。

問題・Xは深夜の繁華街でAが友人Bに素手で殴りかかろうとしているのを目撃した。XはBを助けようと思い、とっさにそばにあったビール瓶を手にとって、Aの手を狙ってなげた。しかし瓶がそれ、Aには命中せずに、たまたまその場を通りかかったCの顔面にあたり、Cは重傷を負った。Xの罪責について論ぜよ。

A 回答 (2件)

変な問題だな。

ってのはね、日本の法律で罪責を論じるなら「構成要件、違法、有責の観点から」に決まってるから。それ以外の理論ははっきり言えば「まったく相手にされない」からねぇ。

要するに、
1.Xの行為は何とか罪の構成要件に該当する。
2.Xは友人を助けようとしたのだから違法性を阻却する可能性がある。
3.違法性を阻却しない場合に、Xの責任を阻却する可能性はないのか。
って順で述べろってことだよ。

で、だ、これはAに対する罪責とCに対する罪責を分けて考える必要がある。
だから、

>過失傷害罪・傷害罪・暴行罪・不処罰かどれかの立場をとって、説明していただけるとありがたいです。

そりゃ無理だ。だって、Aに対する罪責とCに対する罪責の両方を検討しなけりゃいけないんで、単純に何罪と一つに決めることはできんもん。

1.構成要件該当性
まず、ビール瓶を人に向かって投げるのは、暴行の一種。だから暴行罪の実行行為性はある(ちょっと注意しないといけないのは、まるでノーコンでCに当たった場合に、Aに対する暴行の実行行為は認められないという問題があること)。Aは怪我してないので、暴行罪の実行行為性の認定だけで良い。一方、Cに投げたつもりはなくても、人を狙って投げた上に現にCに瓶が飛んでった以上、Cに対する暴行罪の実行行為性は問題なく認定できる。更にCには怪我をさせたんだから、傷害結果が生じている。その上で、投げたビール瓶がCに当たって怪我をしたんだから因果関係もある。
そこで問題は、Xに故意があると言えるのか。即ち、Aに対する暴行の故意があることからCに対する暴行の故意があると言えるのかということ(実は傷害罪においては、判例に従えば、故意の内容として「暴行の認識だけで足り、傷害結果に対する故意を要しない」という特殊性がある。だから、判例に従うなら、傷害の故意を検討する必要はない。ちなみに傷害未遂罪という犯罪はない。暴行によって傷害を生じなければそれはただの暴行罪である)。Cに対する暴行の故意を認めなければ、Cに対しては(重)過失傷害罪しか成立しないことになる(「重過失」かどうかも一応評価の問題として検討の余地がある。気付かない振りでいいと思うけど(笑))。これはいわゆる方法の錯誤の論点で、狙いが外れて別の客体に結果が生じた場合に、故意をどう捉えるかという話。
さて、判例の考え方を採れば、およそ人に対して暴行を加える意図で暴行を行ったのだから故意はあるとなる。そして、AとCの両方について故意を認める(もっとも、先に述べたとおり、「まるでノーコン」だった場合には、そもそもAに対する暴行自体がないとなり、故意以前の問題となる)。よってCに対する傷害罪の構成要件該当性を認めることができる。なお、Aについては、問題からは必ずしも明らかではないが、おそらく暴行罪の構成要件該当性を認めて良いだろうね。そこら辺は、Aをかすめたのかまるで的外れなのかによるということは気を付けないといけない。

2.違法性阻却事由の問題って言うか正当防衛の成否
次に、XはBの身を守るために暴行を行っている。とすれば、正当防衛になって違法性を阻却するのじゃないかという話になる。で、正当防衛の要件を検討するけど、ここでAに対する暴行とCに対する暴行の両方をそれぞれ検討する。
Aに対しては、AがBに殴りかかろうとしているのだから「急迫」「不正」は問題なかろう。「自己または他人の権利」も良いだろう。「防衛するため」も良いだろう。問題は、「やむをえず」のところだ。素手で殴りかかろうとした人間にビール瓶を投げるのは必要性、相当性を満たすのか、だ。これは評価の問題だから好きにすればいい。満たすとすれば、正当防衛、満たさないとすれば、過剰防衛。判例では、必要性、相当性は「結果の大小で決まるものではない」ことは気をつけないといけない。だから、たとえ結果が生じていないとしても、過剰防衛となることがないとは言えない(素手で殴りかかってきた相手に包丁を振り回して追っ払ったとして、相手に当たっていないとしても、過剰防衛とする余地はある。ちなみに素手の相手を包丁で脅した事例で正当防衛を認めた判例はある)。まあ、正当防衛でいいと思うけどね。よって、Aに対する暴行罪は違法性を阻却し、成立しない。で、この段階でもう責任は論じる必要がない。
次にCに対してだけど、Cはなんら「不正」の侵害を行っていない。だから正当防衛にはならない。そこでどう考えるか、だけど、有力な見解は二つ。おそらく判例も採っているであろう立場としては、誤想防衛説。もう一つは、緊急避難説。誤想防衛説を採れば、責任の問題として論じることになるが、緊急避難説を採ると、緊急避難の法的性質をどう捉えるかによる。
で、緊急避難説を採って法的性質を違法性阻却事由とすると、緊急避難の要件に該当するのかを検討することになる。問題になりそうなのは、過剰避難になるかもしれないことくらいだけど、緊急避難となれば、違法性または責任を阻却して犯罪不成立。過剰避難だと「傷害罪」となって刑の減免になる(誤想防衛説に立つと、過失犯になるところが違う)。責任阻却事由とするなら、責任の問題として論じるけど、中身は一緒。

3.で、責任。
誤想防衛説に立てば、誤想防衛として責任故意を阻却するかという話になる。誤想防衛となるなら、故意を欠くから過失傷害罪と言いたいところだけど、誤想防衛は法律の錯誤として故意を阻却しないという立場もある。そうすると、傷害罪が成立するという結論も採れる。


と書いたが、普通は、
(1)Aに対する罪責の構成要件該当性->違法性
(2)Cに対する罪責の構成要件該当性->違法性->責任
という順で検討するんだよね。ただ、この問題だと、AとCのどちらに対して故意を認めるかという論点があるんで、セオリーどおりに書く場合、判例通説が書きやすいと思うよ。
    • good
    • 1
この回答へのお礼

ありがとうございます!
刑法初心者の私にも非常にわかりやすかったです。
なんとか書けました。
こんなわかりやすく丁寧に教えて頂いて本当にありがとうございました。

お礼日時:2009/12/03 10:24

XのAに対する行為…傷害未遂←緊急避難


XのBに対する結果…過失傷害(回避可能性)or傷害(未必故意)

あとは、「事実の錯誤」あたりを熟読してください。
    • good
    • 0
この回答へのお礼

ありがとうございます。回避可能性と未必故意がよくわからないので調べてみます。

お礼日時:2009/11/28 19:13

お探しのQ&Aが見つからない時は、教えて!gooで質問しましょう!