制度的保障についての質問です
制度的保障は、制度の本質・核心を法律によって侵害させないために、制度自体を憲法上保障するものだと理解しております。
よく「制度保障は人権保障と異なるから、制度の本質を維持する限り法律により大幅な制限を行うことも許される」(高橋和之 「立憲主義と日本国憲法(初版)」76頁)ということを聞きます。 (具体例として、津地鎮祭事件判決が挙げられています)
しかし、実際上「制度の本質を維持する限り法律により大幅な制限を行う」ことによってどのような問題が起こるのかいまいち理解できません。
法治主義を認めていない日本においては、逆に制度保障を認めることによって人権が制約されるおそれがあるという風に聞くことが多いのですが、具体的にどのような人権が侵害されることになるのでしょうか? 具体的に教えていただけると助かります。
どなたか、お返事いただけるとありがたいです。
よろしくお願いします。
No.1ベストアンサー
- 回答日時:
例えば、判例によれば政教分離は制度的保障です。
したがって、政教分離は厳格に守られる必要はなく、その中核だけが守られていればいいということになります。
ということは「中核」の範囲を限定的に理解していけば行くほど、政教分離原則のもつ意味(信教の自由の間接的保障)は薄らいでいく訳です。
ここで、例えば、内閣がAという特定の宗教団体に、まさにその宗教活動を援助する目的で多額の補助金を出したとしましょう。
これが裁判になったときに、もし、「これは政教分離の中核を侵すものでない」という判決を出せば、制度的保障論が災いして国民の信教の自由が侵された(Aの優遇が承認されたという事態は、相対的に言って、A以外の宗教を信じている人たちがそれより低く扱われたことになる)事態であると言えるでしょう。
とは言え、まァ、こんなことは想定し難いですよね。
制度的保障論が、逆に人権侵害の方向に働く虞れがあるという物言いは、上述の例で示したように、理論的に言えばその通りです。
しかし、それは論理構造としてそういった危険性を内包しているということであって、結局、判例も現実の判断においては、そうはならない妥当なラインを模索していく訳です(そのために用いるのが目的効果基準〔政教分離の場合〕)。
なので、(微妙な事案はあるにせよ、)「制度的保障論が、逆に人権侵害の方向に働く」というケースのど真ん中をいくような事態は想定し難く、例を挙げても現実離れしてきます。
とは言え、もちろん、そうした暴走が無いようにするには、議論していくこと自体に意味がある訳で、憲法学者たちもそうしたつもりで議論しています。
解りにくい回答でごめんなさい。
早速の回答ありがとうございます
非常にわかりやすく、やっと疑問が解けました。
>Aの優遇が承認されたという事態は、相対的に言って、A以外の宗教を信じている人たちがそれより低く扱われたことになる
というように、抽象的なレベルで「人権が侵害される」という話だったのですね。 確かに、仰る通り、現代の日本では制度保障によって大きな人権侵害が起こることはあまりないと思いますが、理論的にはありうることですね。
No.2
- 回答日時:
学説上一般的に「制度と基本権が一定の緊張関係を示すような形になる場合」(憲法・芦部著引用文)が想定されています。
今日世界的に話題になっている事例としてヨーロッパの公立学校でイスラームのスカーフ着用を禁止するか議論がなされています。規制推進派は、政教分離を根拠とし、規制反対派は、信教の自由を根拠としています。
我が国では、モデルケースとして剣道実技拒否事件最高裁判決H8・3.8(学生側勝訴)が挙げられています。ちなみにこの判例は学説上支持されています。
このように政教分離規定を制度的保障と解する(判例及び多数説?)なら、制度と人権の緊張関係が生じることがあります。
蛇足ですが、本来、制度は人権に奉仕するべきものであって対立すべきものではありません。加えて、政教分離規定と信教の自由の関連性が必ずしも密接であるとは言えないと思います。したがって、政教分離規定を制度的保障と解するのではなく、国家の堕落を防止するための禁止規定と解するべきであると個人的には考えます。
詳細は基本書などでご確認ください。
遅れてしまいましたが、回答ありがとうございます
イスラムのスカーフ着用を認めるべきか、それとも政教分離を貫いて認めないとすべきか、とうことを考えれば、まさに人権と政教分離が対立する場面ですね。
あれから、基本書も読み込み、自分の中でも納得することができました。
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