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特許事務所勤務です
「一行記載」ということについて
意味がわからず困っています。
具体的にどういうことかわかる方がいたら
教えてください。

A 回答 (1件)

弁理士です。



「一行記載」とは、明細書作成者又は発明者の頭の中で生じた記載であって、実験による裏付けがないものです。

例えば、「温度は、110~120℃が好ましい。この場合、変換効率が非常に高くなるからである。」のような記載が実施形態中にあるとします。

本来であれば、110℃、120℃の実施例と、109℃、121℃の比較例を準備して、変換効率に大きな差異があることを実証できれば最高です。ただ、現実には、実験のリソースは限られているので、あらゆる実験をすることはできません。そこで、温度条件については、115℃で固定して、ただ、実施形態中には、上記のように記載します。

上記の実施形態中の記載のように、実施例による裏付けがない記載を「一行記載」といいます。
審査官は、実施例・比較例で実証されている効果は尊重してくれますが、一行記載で記載された効果は無視する傾向が強いです。
一行記載は、発明者又は弁理士の頭の中だけで生じた記載なので、実際にそのような効果が得られるかどうかわからないからです。仮に、効果が予測できるのであれば、予測可能な効果なので、進歩性主張の根拠にはなりません。

つまり、効果による進歩性主張には、効果が予測不可能であったことの主張を盛り込む必要がありますが、一行記載は、効果を予測して書くので、「予測不可能」という主張と相容れないものとなります。

ただ、顕著な効果による進歩性主張は難しくても、一行記載による限定内容を引例に導入することには阻害要因があって容易ではないという主張による進歩性主張は可能です(電気機械系の進歩性主張の方法です)。

つまり、化学・バイオ系では、一般に、進歩性主張は、(1)阻害要因の主張、(2)顕著な効果の主張の両方をおりまぜて行いますが、一行記載に基づいて反論にする場合、(1)の阻害要因の主張のみで戦うことになります。
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この回答へのお礼

早速の回答ありがとうございました。
一行記載について大変よくわかりました。
長文による回答に感謝いたします(__)

お礼日時:2011/05/23 22:08

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