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トルストイ『アンナ・カレーニナ』の冒頭に、「復讐は我に任せよ。我は仇を討たん」という聖句が引用されていたと思います。
ずいぶん昔、高校生のときに読んだのですが、ふと、結局この聖句と中身との関連は、どうだったのだろうと思いました。
下記サイトでは、ちょっと触れているようですが。
http://sakubun.blog.ocn.ne.jp/blog/2010/01/post_ …
もう少し詳しくわかる方、教えていただけませんでしょうか。
No.1ベストアンサー
- 回答日時:
このエピグラムの解釈はいくつかあります。
まず押さえておいた方がいいのは、作者であるトルストイは、非常に倫理的な人であり、厳しい道徳観のもちぬしだったということです。「女の使命は子を産み育てること」という理念を持っていて、そのことは、たとえばチェホフの『かわいい女』を高く評価し、『犬を連れた奥さん』を厳しく批判したことにも見て取れます。
それを考えると「復讐」の対象となる行為をなしたのは、主人公のアンナであると考えるのが、妥当なところではないでしょうか。その上で
> 「復讐は我に任せよ。我は仇を討たん」
という言葉は誰に向けられているのか。
この作品の舞台ともなっている上流社会、アンナを疎外し、同じ部屋にいることすら厭うような人びとに向けられている、という解釈が一般的であるように思います。冒頭にあるように、すべての家庭は「それぞれに不幸」であるがゆえに、誰もアンナを裁くことができない、という意味である、と。
あるいは、ウラジミール・ナボコフは『ロシア文学講義』の中で、このエピグラフを以下のように解釈しています。
「この言葉に含まれる意味は何か。一つには、社会にはアンナを裁く権利はなかったということ。もう一つは、アンナにはその復讐心に燃えた自殺によって、ヴロンスキーを罰する権利はなかったということ。」(小笠原豊樹訳 p.188)
「復讐心に燃えた」という箇所に、もしかしたらひっかかりを覚えるかもしれませんが、ナボコフはこのあと、きちんと読解をしてくれています。アンナの最後の日の「意識の流れ」がどのようになっているか、ナボコフのうっとりするほど見事な講義を読むと、原作が二倍にも三倍にも豊かなふくらみをもってくると思います。興味がおありでしたらぜひ、ご一読を。
No.2
- 回答日時:
確かに聖書からの引用なので「聖句」ではあるのでしょうが、一般にはいわゆる「エピグラフ」と呼ばれる巻頭引用句ですから、それ自体をあまり深く考えるには及ばないでしょう。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%94% …
とりわけ聖句の引用の場合はその文句だけでなく、その章文全体が暗示されているとみるべきでしょう。
この場合は素直に、「愛には偽りがあってはなりません。」という言葉から始まる「キリスト教的生活の規範」(「ローマの信徒への手紙」12-9~21)を指しているのでしょう。少なくとも直前の「できれば、せめてあなたがたは、すべての人と平和に暮らしなさい。愛する人たち、自分で復讐せず、神の怒りに任せなさい。」(同書12-18~19)という箇所は、そのまま作家の信ずるところなのだと思われます。
この作品の素晴らしいところは、遥かなる大地の描写であり、そしてそこで生き生きと息づいている人々の姿を描いている箇所ですね。そこには文字通り「怠らず励み、霊に燃えて。首に仕え…希望をもって喜び、苦難に耐え忍び、たゆまず祈る…」(同書12-11~12)、そのような「平和に暮らす人々」の息遣いが聞こえてきます。
個人的には広大な原野を駆け抜ける競馬の場面に来ると、つい胸躍らされてしまっています。
章ごとにエピグラフがあったりする場合は、深い関連性はあまり考えませんが、一冊の本の最初に短く引用されているだけなので、よほど重要なのかなと思ったりしていました。
確かに、そのようなエピグラフとしてみれば、厳密になる必要はないのかなと思いました。ありがとうございます。
直前の聖句や、章の内容がそういうのだったんですね。非常に参考になりました。ありがとうございます。
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