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その男は確かにに笑っていた。
 丸刈り頭に鉢巻きを結び、黒ぶち眼鏡の奥の決して大きくない目をさらに細くしながら、その男は笑っていた。窮屈そうな学生服を纏ってはいるが、どう見ても学生と言うにはかなり董が立って見えた。
 テレビ画像に写っていた彼は、この一年昼夜を問わずに猛勉強に明け暮れ、この春に見事に最高学府への切符を手に入れた喜びを、全身を使って表現していた。
 彼は確かに笑っていた。彼はその手を堅く握り締めながら、一所懸命笑っていた。しかも握り拳を左右に震顫させながら、一所懸命笑っていた。
 
 さて、人間は掌を固く握り締めたまま、本当に笑うことができるのか、否か。
 皆様は如何お思いでしょうか。ご意見を賜りたく、ご無礼仕ります。

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A 回答 (16件中11~16件)

 「言葉は流れるべきではない、嵌めこまれるのだ」というジャン・コクトーの言葉があります。

ある観念を鮮明に照らし出す、ピントの合った言葉を探すのには確かに時間がかかります。察していただいて嬉しいです。実際、べらべらしゃべるように書く文章なら短時間にいくらでも書けます。消されちゃったスレッドの「いやいやいやいや、どもどもどもども、はいはいはいはい」なんての、あれだけ書いても30分かかってないですから。(お読みになってないかもしれませんが。)

 それはさておきまして、回答No.4の解説に参りました。明敏なy2a2さんにはもちろんご理解いただいているでしょうが、「文学に文学をもって答える」形では必ずしも分かりやすくはないと思いますので。
 「男」の心情を理解するのに用いた手法はテツガクでもシンリガクでもありません。単なる「文章読解」です。

 まず彼の人物像をプロファイリングします。時代設定が不明ですが「テレビ」があることからそんなに昔のことではないことがわかります。遡ってもせいぜい70年代。そういう時代に照らして「丸刈り頭に鉢巻き」「黒ぶち眼鏡」「学生服」というファッションはかなり大胆です。ここから「身なりに気を使わない人物」という線が浮かびます。この場合、別のことにすべてを集中していたからでしょう。受験勉強。「昼夜を問わずに猛勉強に明け暮れ」とありますので。
 さらに「董が立って見えた」「最高学府」との箇所があります。「最高学府」は普通に考えれば東大。彼は東大にこだわって何年も浪人している「多浪くん」です。
 まとめますと、「年齢二十代後半、男性。プライドが高く、自己の才能に見合う最高学府への進学意欲が義務意識と化している。そこにすべての意識を単線化し、他のものを顧慮することなく努力を重ねてきた自負があり、多くのものを犠牲にしてきたという思いが潜在意識に鬱積している」といったあたりになります。

 続いて、見事「最高学府への切符を手に入れた」際の彼の心情です。
 彼の「最高学府」への愛は「修正不可能な愛」、すなわちストーカー的に固着した執着心です。そこに合格すること「だけが」彼の目標であり、生きがいでした。他には何も要らなかった。これだけあればよかった。
 で、合格。苦労の度合いがある程度までであれば「今までの苦労が報われた、よかった」と素直に感じられもしましょう。しかし彼の場合、そのために犠牲にしたものが多すぎました。労苦の時が長すぎました。その果てに得た「合格」。しかし彼の心は奇妙な虚脱感に満たされているのです。
 「こんなものなのか、こんなものなのか、もっとうれしいはずなのに」
 焦燥があります。あれだけ苦労した、なのにこんなものなのか。もっと喜んでいいはずだ、自分には喜ぶ充分な資格がある。いや、喜ばなければならない。
 こうして笑うことが「義務」になります。テキストでは「全身を使って」「手を堅く握り締めながら」「一生懸命」「握り拳を左右に震顫させながら」…ときて、最後にダメ押し的に「一生懸命笑っていた」が繰り返されています。
 すなわち、彼のその時の心情はこうです。笑ってよい、喜んでよい状況であることはアタマで理解しているものの、笑えない喜べない自分を見出しており、しかも笑えぬ理由喜べぬ理由も何一つ見出せないことから言い知れぬ焦燥感に突き動かされ、「笑わねばならぬ」と自らに強いているのだ、と。長年の労苦が、彼に笑い方を忘れさせたのです。だから彼は心から笑っているわけではなく、かなり無理な演技をして笑っているのです。それがあの「力一杯の笑い」です。

 ということは…「人間」に「合格」するには、彼はもう少し勉強しなきゃいけないだろうな、という考えから、最後の4行は書きました。
 ところで、これは何かの小説が元でしょうか。それともy2a2さんが実際にテレビでご覧になった情景を描写されたのでしょうか。後者であれば、y2a2さんの筆力はたいへんなものです。今さら言うのもおこがましいことですが。
 これからも「作品」を楽しみにしております。今後ともよろしく。
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この回答へのお礼

 やはり隊長の洞察力はすばらしい!(プロファイリング打率80%)
 あの拙い文面から、よくぞそこまで彼の正体を見破るとは、正しく恐れ入谷の鬼子母神。
 中でも、彼の進学への義務意識、虚脱感、焦燥感へと移り行く心理分析のくだりは、読む者を魅了せずにはおかない説得力があります。
 彼は残念ながら最高の最高学府への挑戦には夢をかなえることができませんでしたが、それなりの最高学府には見事合格することができました。彼の過ごしてきたその道程の一挙手一投足を多くの方が見守り、そして合格の朗報を目にした時、躊躇なく祝福を与えました。

なせばなる なさねばならぬ なにごとも
ナセルはアラブの大統領(いつの時代のこっちゃ?)
 
 彼の偉業を通じて我々はそう実感させてもらいました。感動を与えてもらいました。

 実は、今回の例示の行動は、彼がその合格の喜びをようやく自分の事として十分噛み締めた後に散見されたものでした。彼の置かれた立場を思うとき、ご指摘のような心の葛藤がおそらく存在していたのではないかと思い、質問をさせていただきました。
 喜び、そしてなんの緊張もない真の笑いとは、かくも儚く過ぎ去っていってしまうものなのでしょうね。ありがとうございました。
                参考URL http://www.ntv.co.jp/denpa/                                                            平成の戯作者(談)

お礼日時:2001/05/19 16:21

y2a2さん、はじめまして。

y2a2さんの隠れファンだったmori0309です。

今回の質問も、、、す、す、す、すばらしいですね。
何と言う、タイトルと内容の妙。絶品と思います。「人間合格」とは・・・ククク
いったいy2a2さん以外の誰がこういうオモシロイことを考えるでしょう。

日ごろの緊張やストレスがほんとに癒されます。こころがなごみます。ニコニコ。
感謝です。

おっと、いけない。ちゃんと質問に回答しないと削除の憂き目にあいますね。

1.宝くじに大当たりして、誰にも言わずにおこうと思ったときとか
2.同僚の誰よりも早い昇格の内示をもらって「まだ口外するな」と言われたあととか
3.ひそかに好きだった異性が実は自分に気があるということをはっきり知ったときとか

こーゆーとき手を握りしめて、人はニヤニヤ・ニタニタ・ニコニコするんではないでしょうか。
(やりぃ。やったぞぉ。どんなもんだい。オレってなんてスゴイんだろ。オレの天下だい)

うーん、ご質問の学生君の笑いとはちょっと違いますね。

> 掌を固く握り締めたまま、本当に笑うことができるのか

私の結論。本当に笑うことはできないんじゃないかなあ。おかしみを感じて大笑いする
ことは、ひとつの愛情表現でもあると思うので。もっとも自然で、人を融和させる。

「勝利」や「成功」や「合格」を握り締めたままの、他者のいない「快心の笑み」という
ヤツはどうもブキミです。

うーん、やっぱりご質問の学生君の笑いとは違いますね。(質問文の味がありすぎです)
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この回答へのお礼

 平素はひとかたならぬお引きだてに預かり、厚く御礼申し上げます。また、mori0309様の玄関先に当店の広告まで掲げていただき、お礼の申し上げ様がございません。
 また、この度は生々しい実例に対して鋭い洞察力をもってご解析いただき、ふむふむそうかなどと一人納得させていただきました。重ねてお礼申し上げます。
 人間として、失格しないようにとばかりに気をつけることが果たして良い事なのか、否か。時にすべてに弛緩された自分をさらけ出し、本当の笑顔を取り戻したいと思う今日この頃です。ご回答本当にありがとうございました。

お礼日時:2001/05/17 23:05

 男は知っていた。


 今この瞬間が随喜すべき時であると。おのれの才能、おのれの努力に比して受くるに相応しい栄誉の瞬間であることを。
 ならば笑わねばならぬ。笑うべき時であるが故に。
 人が如何なる時に笑うべきか、それを知るに男は充分に人生を学んでいた。だが、笑うべきと彼が理解するその瞬間、自身笑うことに非常な努力を要するまでに笑い方を忘れていると自覚するには、男はあまりにも若すぎたのであった。
 だが、笑わねばならぬ。笑うべき時であるから。
 その時にすら、彼の心には「努力」なる金言があるのみだった。

 あるいは。
 男は芯から笑う心をいつか、取り戻すやも知れぬ。
 だが。
 それを持たぬまま、窮屈な緊張を他に認められることなく笑う術を、身に付けるやも知れぬ。
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この回答へのお礼

 大変ご多用中の折、ご登場のリクエストにお応えいただき誠にありがとうございます。旦那のご回答は勘考の時間と文字数は反比例するとの推察を致しましたが、如何でしょうか。哲学なる思考のすばらしき饒舌なご見識に費やす時間以上に、この愚問にお掛けいただいた貴重な時間を思うとき、あな、もったいなき事かなと思わずにはいられません。
 ご回答を幾度か読み返し、かかる気分に陥りました。さすが、するどい!
 緊張なき笑いのある世界の構築にどうかお力をおかしください。

お礼日時:2001/05/17 22:43

ケース1:「笑い過ぎたらあかん」


彼は確かに喜んでいた。これまでの人生で体験したことがないくらい
喜んでいた。喜び過ぎてどう対処していいのか困るほどに、喜んでいた。
あまりに喜んでいたので、彼はこんなに喜んでもいいんだろうか?
と自問自答するに至り、結果
「そこまで喜ぶのは恥ずかしいことなのではないだろうか?」
と思い至った。なので、喜びを必死にかみ殺していた。
つまり彼の固く握りしめた拳のなかには彼の
「精一杯喜んでいる姿」が握りこまれているのである。


ケース2:「ちきしょう、こんなに苦労させやがってぇぇ~~」
彼は怒っていた、人生の大事な期間をこんなことに費やしてしまったことに。
思い描いてみれば、あんなことやこんなこと、それからそれから.....
とまぁ、そんな具合に、1年間の苦労が憎しみを伴って走馬灯のように
グルグルと脳裏をかすめていく。ちきしょう、苦労させやがって、と
腹の中で彼は呟いた。その瞬間に彼はその苦労から自分が解放されたこと
を知るのであった。気がつくと口の端がゆるみ、笑い顔になっていった。
しかし、拳にはまだ、怒りがにぎりこまれていた。


PS.ケース3以降はまたそのうち。つーか、文章考え込みすぎて疲れました(笑)
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この回答へのお礼

毎度お立ち寄りいただきましてありがとうございます。お疲れのところ大変恐縮です。
 ご提示のケーススタディーはほんの序の口であろうと拝察仕りましたが、お疲れがとれましたら是非またお出でくださいまし。楽しみにお待ち申し上げております。(笑顔)おっつけふくろうの旦那もお見えになるころだと思います。詳しいお話はまたいずれ。まずは取り急ぎご挨拶まで。

お礼日時:2001/05/16 21:41

うぅ~ん。

どうだろう・・・・・漫画なら苦笑いしながら掌を固く握り締めるシ-ンを目にしたことはありますが・・・・同時には起こらないように思います。いくらか時間差があり笑うのが先か掌を握り締めるのが先かはわかりませんが一瞬どちらかの動作が先に起こりつづいて次の動作が起こるそして、それ以降は継続することもできる。脳内の伝達信号は傍目からはわかりません。外見だけで判断した場合、見ようによっては同時におこっているように見えているだけのことではないでしょうか。痛みなどの場合は、同時にあっちもこっちもに痛みを感じることはなかったんじゃないですか?『痛い』という感覚は痛みがある一ヶ所に向かって(一番痛いと感じるところ)働きますよね。

ところで、質問タイトル『人間合格』とありますが、私の解釈の仕方が間違っていたら読み飛ばしてください。ここできかれていることは、質問文にある彼の『笑う』『掌を固く握る』この動作から観て、彼は人間として合格だということをおききなのですか?わたしは、そのように読み取ったのですが・・・・行動主義心理学的なことかなと・・・???いつものトンチンカンな回答になりますが・・・

何かの本でこんな文章を目にしたことがあります。

『自分のしていることが好きだと確信できればできるほど、
       別のやりたいことがどんどん抑制されていってしまう。』

彼は、ひとつの目標(大学入試合格)をもっていたそして、受験、結果めでたく合格!ひとつ目標が達成された----目標を達成したことに対して喜んだ、その気持ちが『笑う』という表現つながった。しかし、人のこころの中にはたくさんの思いがあり、『笑っている彼』が真に喜んでいると、とってしまってよいのだろうか?こころの状態はとても複雑、単に『笑っている』=『喜んでいる』と、安易な判断をつけるのはどうかとおもう。げんに、彼の掌は固く握り締められていたこの仕草もとりようによれば、人のこころの中にあるたくさんの思いの中のひとつの現われとも見ることができるのではないでしょうか?『つぎに、失敗したらどうしよう~』これから先への不安なおもいからきているのかも?成功したことに酔いしれてそこで留まってしまっては、思考停止です。『失敗したらどうしよう~』そこで、失敗したくないから考えますよね、失敗しなくてすむ方法をそれでも失敗するかもしれませんが、それがまた経験となって思考停止せずに失敗から何かを学び取れます。----人として成長していきます。

しかし、人は喜びに酔いしれていたかったりします。いまの現状(目標達成=成功)に満足してたほうが、少なくとも新たに何かに挑戦したとき、失敗したときのリスクを背負わずにすみますから、新たな目標を抱くことは同時に不安を抱え込むことになります。新たな目標をもつことを抑制する気持ちが、ますます強くなることも確かです。

彼が人間として合格かどうかはいまはわかりませんが、可能性は秘めているように思います。
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この回答へのお礼

littlekisssさん、またお目にかかれて?大変嬉しく思います。(いつもの顔文字がないので、まだ怒ってらっしゃるのかな?ちょっと心配。)
 ご回答ありがとうございました。いろいろな分析をしてくださって、とても為になりました。
 私自身もやはり同時には難しいのではないかと思います。掌を握るのには少なからずある程度の緊張が必要だと思います。(でも、グーしか出せないどらえもんも笑ってるしな~?(^ ε ^)o ぐー)
 質問タイトルにはそんな深い意味はありません。(でも、存在するからには何か別の意味があるのかもしれませんね。【謎】)
 シリアスモードのお答えもかっこいいですね。

お礼日時:2001/05/16 06:48

手のひらを堅く握り締めたまま、笑うことってあると思います。



滅多にないと思いますが、自分の気持ちを抑えて笑う時など、人間は我慢の
反動で拳を作るのではないでしょうか。

特に泣きたいたい時とか、腹が立っている時に、感情を抑えようと思って、
手を拳にしませんか!?
私はそういう時があるので、こう思ったのですが。
私だけかも・・・ ( ̄― ̄°)
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この回答へのお礼

 早速にご回答ありがとうございます。
 感情を抑えながら笑う場面は?・・・笑っちゃいけない situation で笑いを堪える時などでしょうか。
 大笑いしている時にはみんなどうしているんでしょう?

お礼日時:2001/05/15 22:34

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