酢が肉を柔らかくするのはなぜなのか調べていると、酸による効果だということが分かりました。
1、酸性下において肉自身のタンパク質分解酵素が活性化し、筋繊維を分解するのでやわらかくなる。
2、結合組織のコラーゲンは酸によって分解されるので、加熱するとゼラチン化が促進される。
1について、酵素は加熱により失活すると思うので、調理前に酸性にするべきですか?
2について、タンパク質は酸ではなくアルカリで分解すると習った記憶があります。コラーゲン部分のみが酸で分解されるのでしょうか?また、肉は酸でもアルカリでも変性しますよね?酸またはアルカリによるたんぱく質の変性とコラーゲンのゼラチン化は全く別の話ですか?
No.5ベストアンサー
- 回答日時:
補足、承りました。
#4他です。>これを牛肉や豚肉で行うのは邪道ですか?
おそらく、鶏むね肉で得られる効果はないでしょうね。鶏むね肉だけに知られている下処理で、鶏もも肉では必要とされていない工程です。普通に調理してパサパサなので行われるわけで、それが無い食肉では効果は得られないでしょう。しつこい感じといった逆効果ということすらあり得ます。
また、衣をつけて揚げるから揚げやチキンカツでは、鶏むね肉であっても、砂糖+塩水には漬けない人が多いようです。これは、衣で閉じ込めるだけでなく、油が加わることもあって、パサパサににくいからかと思います。
>調理前に赤ワインに漬ける時間は長ければ長い程効果的なのでしょうか。
おそらく逆効果です。特に漬け込むワインの量が多いときはそうなります。確かに酸で被膜を作って食肉からの香味や旨味溶け出しを防ぎ、アルコールによってワインの香りが食肉に入って行きますが、やはりアルコールによるワイン側への溶けだしは長時間でははっきり表れてきます。
牛肉は香味成分が特に大事な食肉ですから、ある程度ワインが染みたら取り出すべきでしょう。しかし、これは漬けたワインを使わないで焼く場合です。
漬けたワインごとシチュー等として煮こむのであれば、焼く場合より長めに漬けこんでも、食肉の良さが失われるというわけでもないでしょうね。煮込み用の肉は硬い部位でもありますので、染みこみも遅いことが多いでしょう。
私は圧力鍋は使わないので、うっかり普通の煮込む感覚で調理をすると失敗するということは知りませんでした。100度以上の調理になる圧力鍋では、その温度に応じた調理法が大事なようですね。
とても詳しく丁寧な回答ありがとうございました。すべてのお言葉を今後の料理に活かしていこうと思います。胸肉の下ごしらえについても勉強になりました。牛肉料理ももっと美味しく作れるように日々勉強していきたいと思います。
本当にありがとうございました。
No.4
- 回答日時:
補足、承りました。
#3です。>イオンの反発以外にも「等電点より酸性またはアルカリ性では、タンパク質自身の水分を保持する力が増す」というのは間違っていますか?ご存知であれば教えてください。
そこはまだ分かっていない、という認識です。
硬さというよりパサパサ感を防ぐ経験的知識として、食塩と砂糖を溶かした水に浸けておくというのがあります。どうしてもパサパサ感がある鶏むね肉に有効な方法です。
砂糖はイオンになりませんから、砂糖そのものが水分子を引きつけることだと考えられます。たとえばジャムや羊羹は、そうして食品を保湿しつつ、雑菌に水分を与えないようにして保存性を良くしています。
問題は食塩です。それ自体が水分保持もするし、その際はイオンに分離もします。どちらの働きで、鶏むね肉がしっとり柔らかく調理できるか、実はよく分かっていません。
さらに、そうした働きを酸、アルカリに求められるかどうかは不明です。酢漬けは味と保存性として用いられてきました。野菜の保存法であるピクルスはそうです。さらに独特の味わいもあります。
肉を直接に柔らかくするのでしたら、よくパイナップルが用いられます(パパイアはあまり知りません)。ステーキの上に生のパイナップルを載せたりします。これはパイナップルの酸ではなく、タンパク質分解酵素の作用です。
牛肉を赤ワインに付け込む下処理は、酸性によって表面を固めて中の水分を逃がさないためだということは申し上げました。その肉をステーキとして焼くのであれば、高温に熱したフライパンであることが大事です。
これも、肉の表面を焼き固め、つまりタンパク質を変性させ、水分が逃げないようにするためです。水分と共に旨味が逃げるのは「肉汁」ということで知られています。出てしまった肉汁は、ソースに利用したりします。
余談ですが、突飛な料理で、ステーキ肉を圧迫しながらゆっくり熱して、肉汁を徹底的に絞り出して使い、肉は捨てるなんてあって、びっくりしたことがあります(よく考えるとスープを作っているのと似ているようにも思える)。
酸やアルカリが、肉内部の保湿に直接作用があるかないかは、いわゆる試験管の中で作用が認められるとしても、私のつたない知識の範囲ではですが、調理レベルで明示的には検証されてはいないようです。
この回答への補足
素晴らしい回答ありがとうございます!とても勉強になります。
保水性に関しての確かな事はまだ明らかにはなっていないのですね。いずれにせよ、肉が酸性になれば保水性が増してコラーゲンの分解も進むという事で納得できました。
砂糖と塩を溶かした水で胸肉をジューシーに仕上げる方法は、私も以前にテレビで見たことがあります!パサパサ感を抑えるという事は、水分を含ませて柔らかさを持たせる感じなんですかね。これを牛肉や豚肉で行うのは邪道ですか?
また、調理前に赤ワインに漬ける時間は長ければ長い程効果的なのでしょうか。あまり長過ぎると浸透圧やらの影響が出て来ますか?
圧縮しながら焼く技法ですが、圧力鍋による過度な加熱もそのような仕上がりになる気がします。角煮を作るのに30分加圧したところ、パサパサでスカスカのスポンジのような肉になりました。
No.3
- 回答日時:
補足、承りました。
#2です。>ちなみに、オイルが肉を柔らかくするのはなぜでしょうか?
タンパク質自体には作用しないはずですが、外部的には表面を覆う保水効果(調理時に乾燥しにくい)、内部的には霜降り肉と同様の効果(脂肪間がずれやすい等の構造の弱さ)かなと思いますが、私でははっきり分かりません。すみません。
この回答への補足
補足への回答ありがとうございます。
肉の脂と溶け合ってほぐれるのですね。「肉に油を塗るとコラーゲンの溶出量が増える」と書かれたサイトがありました。コラーゲン部分に対して何かしらの作用があるようです。オイルマリネ、是非とも試してみようと思います。
度々申し訳ありません。肉の保水性に関してNO.1様の回答への補足と同じなのですが…
イオンの反発以外にも「等電点より酸性またはアルカリ性では、タンパク質自身の水分を保持する力が増す」というのは間違っていますか?ご存知であれば教えてください。
No.2
- 回答日時:
食肉については複雑です。
調理面からみると「死後硬直」「熟成」ということがあります。牛肉ですと、タンパク質がアミノ酸に分解するのを待つわけです。これは柔らかくなることにもなります。http://www.gourmet-meat.com/unchiku/jukusei.html
マリネでも、酸だけでなく油の効果もあり、以下のような研究があったりします。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110007058133
実は柔らかくするためだけなら、別の方法を用います。生のパイナップルの酵素ブロメライン、パパイアの酵素パパインはタンパク質を分解します。これらでは、タンパク質であるゼラチンを溶かすので、ゼリーが作れず、加熱して酵素を無効化するか、寒天で代用します。
そのゼラチンはコラーゲンから作るわけですね。肉の硬さを担うコラーゲンは、酸で分解されます。タンパク質の多くは酸で固まります。ちなみにアルカリで分解するので、弱アルカリ性である石鹸は、皮膚や髪を洗ったら、きちんと洗い流さなければいけません。牛乳にレモン汁を入れると固まるのが、酸性によるタンパク質変性の一例です。
コラーゲンだけは酸で分解するわけです。このことを風味も含めて経験的に使われているのが、たとえば肉の下処理に使う酒の種類です。赤ワイン、白ワイン、日本酒に牛肉を漬け込むと、赤ワインだけが味が良くなります。
これは、アルコールは香味成分を溶かし出す力が強いのですが、牛肉は香り成分の多さが風味の特徴となっています(対照的に鶏肉は旨味成分が多い)。赤ワインは酸性度が他より強いので、まずそれで肉の表面を固めるため、香り成分があまり溶け出してきません。白ワインや日本酒では酸性度が不充分で、アルコールに香りが逃げてしまいます。
その他、肉の保水ということもあります(漬け込む液体の塩分や糖分なども影響してくる)。
もし、調理して柔らかく、美味しくするということであれば、酸・アルカリ以外の要素も大きいことは注意しておくべきかもしれません。
この回答への補足
回答ありがとうございます。コラーゲンは酸によって分解されるのですね。
マリネについてもとても勉強になりました。シチュー肉は赤ワインで漬けておきますが、ほかの酒とは違った効果があるのですね。
ちなみに、オイルが肉を柔らかくするのはなぜでしょうか?
No.1
- 回答日時:
【1について、酵素は加熱により失活すると思うので、調理前に酸性にするべきですか?】
肉全体が酸性になるのに時間もかかりますし、加熱中にも酵素活性は上がります(至適温度によりますが)ので、もちろん先に酸性にしておくほうが良いでしょう。
【2について、タンパク質は酸ではなくアルカリで分解すると習った記憶があります。】
強アルカリ下では、ペプチド結合が切断されて分解されます。
強酸性下でも、加熱(120度6時間など)によって同じく結合が分解されます。
(ここでいう「強」というのは、とてもじゃないけど口に入れられないレベルです。)
しかし、”酸で肉を柔らかくする”という意味は、タンパク質をアミノ酸に分解している、という意味ではないでしょう。
硬い筋繊維同士の結合を少しゆるめてやって、そこに水が入り込むことで柔らかくなるのです。
(その時に、酵素的には一部タンパク質は分解はしていると思いますが)
そこをお間違えのないように。
今さら聞けない肉の常識 第38回
<肉を軟らかく調理する>
(2)マリネード処理すると軟らかくなる理由
http://www.agr.okayama-u.ac.jp/amqs/josiki/38-96 …
こちらにほぼ、知りたいことが書かれてあります。
【コラーゲン部分のみが酸で分解されるのでしょうか?】
【また、肉は酸でもアルカリでも変性しますよね?酸またはアルカリによるたんぱく質の変性とコラーゲンのゼラチン化は全く別の話ですか? 】
筋繊維の「等電点」「水素結合」「保水性」などをキーワードに勉強してみてください。
それでもよくわからなかったら再度ご質問ください。
この回答への補足
詳しい回答ありがとうございました。サイトもとても参考になりました。
>硬い筋繊維同士の結合を少しゆるめてやって、そこに水が入り込むことで柔らかくなるのです。
「イオンの反発で筋線維が押し広げられ、その空間に水分が保持される」という事ですね。
保水性についてですが、イオンの反発以外にも「等電点より酸性またはアルカリ性では、タンパク質自身の水分を保持する力が増す」というのは間違っていますか?
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