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- 回答日時:
δ(デルタ)関数は最初、電気工学から理論物理学の門を叩いた物理学者ディラックが導入しました。
例えば電磁気学の多くの式は、電荷密度の分布という概念に支えられています。電荷の元は電子で、それはもちろん密度ではありません。しかし目に見える物体は滅茶苦茶に沢山の電子を含んでいるので、体積当たりの電荷密度という考えを使っても、非常に良い近似が可能です。
(密度でない)点電荷に対するクーロンの法則はご存知と思うのですが、帯電した物体から生じる電場を計算するには、物体内の全ての電子に対してクーロンの法則を適用し、電子の数だけ足す必要があります。このとき個々の電子を扱うのではなく電荷密度の概念を用いると、計算の見通しが非常に良くなります。
それで電磁気学の基本式は、電荷密度の概念に基づいて定式化されました。ところが個々の電子(密度でない電荷そのもの)を扱う必要も、やっぱりあるのですよ。しかし電子のような「点電荷」は電荷密度の概念上では、体積0に0でない電荷量が集中したものなので、点電荷の電荷密度は無限大になって、電磁気学の基本式の適用がかなり面倒になります。
δ関数導入以前にはこういう場合、点電荷である電子の位置はとりあえず除外し、基本式から必要な解を求めていました。でも解の原因である電子を考慮に入れていないので、この解には不定性(曖昧さ)がありました。
不定性(曖昧さ)を除くためには、電子の位置まで解を延長し、うまく電子の点電荷量と辻褄が合うように「接続条件」を定める必要がありました。
ディラックは上記のような計算において、点電荷の無限大密度をもし仮に使用したら、無限大密度は常に積分の中にしか現れない事に気づきます。電子の電荷量はふつうeで表されるので、それを体積0で割った密度e/0を、e/0=δ(s)(無限大)と書く事にします。sは電荷eを持つ電子の位置です。
※本当は、こんな計算はやっちゃいけなんのですけどね(^^)。
実際に考えてみると意外な事に、δ(s)の積分に関して、
∫δ(s)dV=e,sは積分領域Vの内部にある (1)
などは明らかです。ここで∫δ(s)dV=eの意味は、体積Vの中に電子が1個しかなかった時、その体積内の全部の電荷密度を合計したみたら、それは電子の電荷eに等しくなったという式です。当然ですよね?。それしかないのだから。
同様に、
∫δ(s)dV=0,sは積分領域Vの外部にある (2)
も当然です。体積Vの中は空なのだから。
ただし(1)(2)より体積Vとして、電子の位置sを含むいかに小さな体積を取っても、(1)が成り立ちます。おおざっぱに言えば、位置sのみ含む大きさ0で体積でも、(1)が成り立ちます。その意味でδ関数の積分は異常ですが、非常に明解です。
数学的には∫δ(s)dV=eではなく、
∫δ(s)dV=1,sは積分領域Vの内部にある (1’)
の方が便利です。このとき(1)は、
∫eδ(s)dV=e∫δ(s)dV=e,sは積分領域Vの内部にある
と書けば良い事になります。
ディラックはまさに(1’)と(2)を、そのまま理論物理の中に持ち込みました。しかし持ち込んでも何の役にも立たたなければ(1’)と(2)は、「無限大を強引に積分してみせただけ」の数学的には破綻している、取り扱い危険物にしか過ぎません。
そうではなかったのは、(数学的根拠はないが)(1’)と(2)さえ認めれば、
∫f(x)・δ(s)dV=f(s),sは積分領域Vの内部にある (3)
の数学的証明は、けっこう簡単だったからです。
(3)がなぜ重要かというと、先に述べた「接続条件の結果」というのが、(3)の右辺そのものだったからです。みんな「接続条件の計算」に(3)のような単純さを望んでいたのに(意味を考えると、当然そうなると思えるのに)、誰も上手く定式化できませんでした。なのでδ関数は、かなり急速に受け入れられました。だって便利なんだもの・・・(^^;)。
とは言え正しい結果を出すのなら、それを正当化する必要があります。それをやったのがシュワルツの超関数理論です。それを(改良?)したのが、佐藤超関数です。
δ関数は今では、電磁気学や量子力学などの理論物理の世界だけのものではありません。土木工学の分野にだって浸透しています。
点電荷を1点に集中した無限大の電荷密度と考えるように、1点に集中した構造物に作用する外力を土木工学では、無限大の荷重密度とみなし、集中荷重と呼びます。土木工学の基本式の多くは、荷重密度を基本としているからです。
で、δ関数との実際上の付き合い方なのですが、以上の経緯から明らかなようにδ関数は、実用的に使うためにこそ導入されました。
なのでシュワルツの超関数を知らなくても、(1’)と(2)と(3)さえ押さえておけば、実用的には十分だったりします・・・(^^;)。
No.2
- 回答日時:
物理学の考察も興味深いのですが、
数学としての回答も書いてみます。
1. 「デルタ関数」は、関数ではありません。
2. 積分変換の核として、
∫δ(s-x)f(x)dx = f(s) を表現するために使います。
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