先日京都の宮津へ向かう途中、長源寺というお寺を見かけたので参拝してきました。
そのお寺は癌封じの寺として信仰されているそうです。
なんでも平安時代に文徳天皇の第一皇子・惟喬親王が皇立継承に敗れて出家後、この土地(出野)を訪れた際に、村人たちに癌封じの秘法を伝承したという伝説があるそうです。
皇位継承争いというのは、藤原良房(娘=藤原明子 孫=惟仁親王)と紀名虎(娘=紀静子 孫=惟喬親王)がいずれの孫を立太子させるかで争った事件のことですね。
この勝負は紀名虎が負け、名虎の孫の惟喬親王は皇太子となることができませんでした。
惟喬親王が法輪寺にこもって虚空蔵菩薩から漆の製法を授かったとか、木地師の祖であるという伝説は聞いたことはありますが、村人に癌封じの秘法を伝承したというのは初めて聴きました。
癌についてウィキペディアで調べてみると次のように書いてありました。
漢字の「癌」は病垂と「岩」の異体字である「嵒」との会意形声文字で、本来は「乳がん」の意味である。触診すると岩のようにこりこりしているからで、江戸期には「岩」と書かれた文書もある。有吉佐和子の小説「華岡青洲の妻」には、乳がんを表す「岩(がん)」ということばが頻出する。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%82%AA%E6%80%A7% …
より引用
(1)癌について記された江戸時代以前の日本の史料はありますか。
(2)長源寺では7月第一日曜日に観音祭りを行っており、癌封じの祈祷、癌封じ茶やそうめん流しなどがふるまわれるそうです。
惟喬親王が伝承した癌封じの秘法とは、祈祷、癌封じ茶、そうめん流し(単なる接待?)などだと考えられますが、祈祷はともかく、なぜお茶やそうめんが癌封じに効果があると考えられたのでしょうか。
(3)奈良の大安寺では癌封じに効くものとして「ささ酒」を授与していましたが、なぜ「ささ酒」が癌封じの効果があるなどと信仰されているのでしょうか。
(4)その他、癌封じに効果があると信仰されているものをご存じであれば教えてください。
たくさん質問してしまってすいません~。
わかるものだけでも回答いただければ嬉しいです。
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
追記します。
(2)癌封じとしてのお茶と流しそうめん
お茶は12世紀に栄西が大陸から持ち帰って広まりました。
当時から万能薬として伝わっており、そこからきているの
ではないでしょうか。
尚、お茶の効用として実際に癌に効果があるといった研究
結果もあるそうです。治癒が見込めるかどうかは別問題だと
思いますが。
(3)ささ酒(笹酒)について
大安寺の紹介にこうあります。以下抜粋です。
こういった「あやかり」的なものはよくありますね。
>光仁天皇は不遇な白壁王時代に、しばしば大安寺の竹林にて
>浄竹を伐り、酒を注いでお召しになり、中国の故事にいう
>「林間酒をあたためる」風流を催されて無病息災を保たれました。
>実に六十二歳という当時破格の高齢で帝位につかれ、七十三歳まで
>在位されたのです。この帝にあやかって悪病難病を封じ、健康に
>過ごそうと催されるのが笹酒祭りです。
(4)その他の信仰について
上記(3)の事例では「高名な人物が難病に冒されることなく天寿を全う
できた」という言い伝えからきています。
実際に癌と思われる症状が治ったという伝説からきているものでは、
長源寺と同平安期に建立された、湯殿山信仰をもととする「金錫山
地蔵寺」の「延命の水」などがありますね。
あ、現代のあやしい信仰宗教団体とかは別ですよ。同様に「飲む
だけで癌が治る奇跡の水」がペットボトル1本数十万円なんてよく
聞きますよね。
学生時代に宗教学もかじりましたが、信仰の芽生えとは超自然的な
現象など目に見えないものを畏れ敬うアニミズム的な原初の感覚から
きています。何を感じて信じるかは結局人それぞれです。
癌センターのお医者さんなども化学療法以外の方法については、
否定も肯定もしない方が多いそうです。
回答ありがとうございます。
平安時代に疫病が流行ったとき、空也が病人に皇服茶をのませたという話が京都の六波羅蜜寺に伝わっていますね。
おっしゃるとおり、お茶が普及するのは12世紀に栄西が大陸から持ち帰って以降だと思うので
空也の伝説は六波羅蜜寺の近くの栄西が開山の寺・建仁寺の影響を受けて後世に創作されたものじゃないかと考えています。
お茶が万能薬とか、笹酒が光仁天皇が長寿であったのにあやかるものだというのは、なるほどと思いますが
もう少し、ストレートかつダイレクトに癌に結びつく説明はないのだろうか、と思うのです。
お茶が万能薬だというなら、他の病気にご利益があるとしてもいいのに、なぜ癌なのか。
光仁天皇が長寿であったというのなら、他の病気にご利益があるとされていてもいいのに、なぜ癌なのか。
また、なぜ笹酒なのか。
考えすぎなのかもしれませんが。
他の質問で、猿丸神社はなぜ瘤取りの神とされているのかについて質問しましたところ
http://okwave.jp/qa/q8236223.html
猿=去る、丸=瘤だと回答してくださった方がありました。
これは大変ストレートに瘤取りと結びつきます。
「金錫山地蔵寺」の「延命の水」について教えてくださってありがとうございます。
さっそく調べてみました。
この寺も癌封じのお寺として信仰されているんですね。
湯殿山って即身仏で有名なところでしたっけ?
なんでもあのあたりは水銀土壌で、水銀の防腐作用で即身仏になりやすいとか。
また水銀はかつて不老長寿の薬とされていたと聞いたことがあります。
すると延命の水とは水かね、水銀のことだったりして。
それがどう癌と結びついたのか気になります。
もちろん、不老長寿から癌除けに結びついた可能性もありますが。
>現代のあやしい信仰宗教団体とかは別ですよ。同様に「飲む
だけで癌が治る奇跡の水」がペットボトル1本数十万円なんてよく
聞きますよね。
あはは~。
そういえば、ときどきそんな話を聞きますね!
だけど水銀のむよりは健康によさそうです。
>癌センターのお医者さんなども化学療法以外の方法については、
否定も肯定もしない方が多いそうです。
なるほど。
「患者よ、癌と戦うな」という本がベストセラーになったこともありましたね。
No.4
- 回答日時:
そうめんについてこんな記事がありました。
●七夕は「そうめんを食べる」って知ってた?
http://blog.goo.ne.jp/oshiete_watcher/e/80b2268c …
>平安時代の書物(『延喜式』)に、七夕にそうめんを食べると大病に
>かからないと書かれ、宮中で食べられ一般に普及したと伝えられています
大病=癌ということなんでしょうね。
ということは振る舞いではなく、癌封じとして
理由があって食べていることになります。
(振る舞いも込みだとは思いますが)
おお~、何度も何度も何度も何度もありがとうございます!
大感激いたしております!
そうめんは癌封じのためのものだったんですね。
そうめんの発祥の地は奈良県桜井市で同市にある大神神社では
そうめんの価格を決める神事を行っているそうです。
大神神社の御祭神・大物主が癌封じの神だということなのかも。
そういえば惟喬親王を祀る京都の玄武神社に三輪明神が祀られていましたね。
何か関係あったりして。
No.3
- 回答日時:
(2)について洩れがありました。
そうめんは檀家さんや参拝者への振舞いが
恒例となったものと思います。
何度も回答ありがとうございます。
質問たててからいろいろ調べたのですが、観音祭は7月第一日曜日で七夕に近く、それで回答者さまがおっしゃるように
檀家さんや信者さんがふるまってくださっているのかもしれませんね。
なんでも七夕にはそうめんを食べる習慣があるとかで。
七夕と癌に何か関係があるのかな、と思ったりもしましたが
よくわかりません。
何度も詳しく丁寧な回答を下さいましてありがとうございました。
とても楽しく学ばせていただきまして、感謝します!
No.1
- 回答日時:
(1)についてのみ。
以下が参考になります。
http://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrde …
http://www.eisai.co.jp/museum/curator/column/120 …
癌という病名が登場した最初の文献としては以下が確認されて
いるようです。いずれも江戸時代前期の頃のもので、医療記録
ではなく研究書や辞典的なものとなります。
・1666年 合類医学入門
・1686年 病名彙解
平安時代の文献にその症状から癌であろうと判断できる記述は
見受けられるものの、癌という病名は使われていないはずです。
同年代の中国の宋代(960年 - 1279年)では該当する病名がすでに
使われていたようですが、日本国内にはまだ伝わってきていません。
仰っている伝説は癌という単語が一般的なものとなった19世紀
以降から「内容的にそうだろう」と紐づけられた(解釈された)
ものではないでしょうか。
尚、華岡青洲は江戸中期の医師で世界で初めて全身麻酔による
乳癌摘出手術を行い「病名:「乳巖(乳岩)」として記録を残して
いますが、医療記録として「癌」の文字が最初に登場するのは、
佐藤泰然が順天堂で1843年に行った乳癌摘出記録となります。
以降、癌という言葉が一般的なものとなっていったようです。
回答ありがとうございます。
平安時代に文徳天皇の第一皇子・惟喬親王が癌の秘宝を伝授したといいますが、平安時代に癌という病気が認識されていたのかと疑問に思ったので質問させていただいたしだいです。
貼ってくださったリンク、大変参考になりました。
>ガン(悪性新生物)」は、エックス線写真などの技術がなかった当時には、体内の様子がよくわからず、診断がつかなかった。例えば胃がんは胸・腹の痛む「癪」、食道がんは、リストにはないがむせんで胸がつかえる症状の「かくの病(膈噎;かくえつ)」、舌がんは舌のできものである「舌疽(ぜっそ)」の中に含まれていたのではないかと思われる。当時はがんで死亡する前に、感染症などで命を落とす方が多く、よく知られた病気ではなかったようである。
とありますね。
惟喬親王の伝説は回答者さまが指摘されるとおり、癌という単語が一般的なものとなった19世紀
以降から「内容的にそうだろう」と解釈されたものだと思います。
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