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ヘルメス主義について調べているのですが、歴史的な観点から解説をお聞きしたいです。
あまり参考文献等もなく困っています。

ヘルメス主義について調べてみますと、まずどこのサイトでも開祖はヘルメス・トリスメギストスで、彼はアトランティスの司祭だった、そしてエメラルドタブレットがどうのこうの・・・と触れられています。
私が知りたいのはこんなことではなくて、現実の歴史に照らし合わせてヘルメス主義がどのような発展を辿ってきたかを具体的に知りたいのです。

開祖がヘルメス・トリスメギストスだなんていうのはどうでもいい情報で、実際にはどのような人物がこの思想をまとめあげていったのか、歴史的にヘルメス・トリスメギストスの名が登場するのは何世紀ごろの話なのか?
この思想の発展にはユダヤ教徒は関係があるのか?

他にもエメラルドタブレットの初出について、またこれがピラミッドの中で見つかったという尾ひれが加わったのはいつ、誰が言いだしたのか?

そしてこれについても伺いたいのですが、グノーシス思想とヘルメス主義は共に発展してきたのでしょうか?

調べても全然情報が出てきません。ヘルメス主義の実像とは一体どういう物なのでしょうか。詳しい方よろしくお願いします。

A 回答 (4件)

まえおきさせてもらうと、歴史的、に対象を捉えることと、実像、を問うことは違う。


糸をみることと、織り柄を見ることくらい違います。
ちょうど最近、そんなことがわからない人が、
案の定、歴史的にという言葉をやすやすと見落として、対象の内容の同定と混同していたので
話がまったく通じないということがありました。

質問者さんのこの質問はじつはかなり面白いです。
だから慎重に考えをすすめてもらえればもっと面白くなると思う。

さて、「ヘルメス思想」とこのQ&Aサイトを検索して、既に掲載されている回答を見てみましたが、
〈錬金術の思想的、宗教的位置づけ〉という質問と、
〈近代科学の祖、および、宗教に関する質問〉という質問がありました。

どちらも同じ方がベストアンサーを取っていて、よくざっくりとまとめてあるので、
わたしは、グノーシスの件についてだけお話ししようと思います。
グノーシス主義は紀元2~3世紀のローマを中心とした運動ですが
グノーシス主義の思想がグノーシスで、こう呼んだ場合、かなり広い思想傾向を指して
マニ教やカバラを含むことになるので、注意が必要です。

最初にグノーシスをヘルメス思想と関連付けた張本人と言ってよい人物は、3世紀ごろのローマ人司祭ヒッポリュトスです。
グノーシス主義者をギリシアの叡智のエピゴーネンに位置付け、異教徒とか無神論者とみなして攻撃するのが目的でした。
グノーシス論駁の流れには、異端視のほかにもうひとつ強力な論陣かあって、
2世紀のリヨンの司教エイレナイオスによる、聖書を誤読しているというものです。
グノーシスをめぐる宗教学的論争というのは、それ以来ずっと、おもにこの2つの意見の対立の構図で成りたっています。
そして、20世紀になって発見されたナグ・ハマディ文庫から定着したイメージも見過ごせません。

グノーシスは掴みがたい思想で、千の頭を持つとまで言われたことがあります。
グノーシス主義者は、旧約聖書の神をすでに悪意ある偽りの神であるとして否定し、地上の魂についての概念を持ち、"言い表せないもの"と"沈黙"が"充満"しているという"上なる世界"を説きました。おびただしい寓意を使うのが彼らのやりかたでした。
そして何よりもキリストの人間としての属性を認めず、十字架に架けられた肉体をキリストそのひとであるとはみなましませんでした。
彼らは結婚についてもも出産についても懐疑的でした。また、知る者は初めから知る者である、という階層的な考えを持っているので、初期キリスト教の素朴さとはまったく異質です。

1世紀ごろの活動家であるシモンやその弟子がサマリアの出身であることからユダヤ教が身近であるのも確かですし、2世紀までには、パシレイデスやヴァレンティノスの活躍をみても、知的エリートの教養であったギリシャ・エジプトの思弁的な哲学が骨の髄までしみこんでいたのは確かです。
ナグ・ハマディで発見された文書群は、4世紀にコプト語へ翻訳されたものであることがわかっていますが、農民による発掘から司祭の手で古美術商に渡り、古美術商を転々としたあとコプト博物館に保管され、一部はユング研究所に保管されたりしていたために、かなり順序や状態が損なわれてしまいましたが、わかっているだけでも12冊52編から成り、大部の重要文献です。
ナグ・ハマディ文庫からは、甚大深遠な教義を理論的に解説するために、中期プラトン主義や新プラトン主義を利用している様子が多々読みとれました。つまりヘルメス思想の足跡は確かめられるわけです。

グノーシス主義は基本的にはキリスト教のなかに起こった運動であり、天地創造の解釈が問題の要なので、ヘルメス思想とは並走している独立した運動だと言うべきでしょう。ただ、新プラトン主義はキリスト教に弾圧され、エジプトとギリシャの知の遺産はキリスト教によって後世に続く道を分断されてしまったので、キリスト教会から離れた知識人の中にしか継承されないのです。グノーシスという知的に高度な一派からは、そのことが、とてもよくわかるのです。
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この回答へのお礼

丁寧な回答ありがとうございます。
挙げていただいた質問を両方とも拝見し、「錬金術の思想的、宗教的位置づけ」のベストアンサーの方がヘルメス思想について書いていましたが、しょっぱなからしてヘルメスが4300年前に実在したという時点でその出典が示されていません。私もそんな話は聞いたことがないので、この手の話で今まで私も苦労してきたのですが、回答者様の指摘の通り、現実の歴史的事実(いつ、だれが、どのように)ではなく、神話・伝説的な伝承を歴史的事実と誤認してそれを話す人がいるので、ますます話が複雑になってきます。

現実的にはどんな神話・伝説・神秘思想にも、それを考え出し、書き記して、思想を継承し発展させてきた人がいるわけで、当然特定の思想が今ある形をとっているのも、それが生まれたときから今ある形だったわけではないので段階的に発展してきた過去があります。
もう一つ重要なのは因果関係で、どんな思想も孤立して発展してきたわけではなく、他の様々な思想との関係の中に発展してきているので、この思想のこの考え方はこれこれに由来しているという分析も必要かと思います。
その点でヘルメス思想というのは私にとってカバラやグノーシス以上に参考資料がなく実像がつかめない存在なので苦労していますが、もっと調べていこうと思います。

お礼日時:2013/09/30 21:41

ネットで少し検索しましたが、



ヘルメス主義の世界観
http://www2.plala.or.jp/Rosarium/indigo/herm/her …

あたりが簡潔にまとめられて、わかりやすいかと思います。

なのですが、
 秋山さと子著
 ユングとオカルト
 講談社現代新書
から、ヘルメス主義の説明の箇所を引用します。

─────────
ヘルメス文書
グノーシス主義の各派は、多かれ少なかれユダヤ・キリスト教の伝統とかかわりながら、正統の教義からは大きく逸脱し、特にユダヤ教に対しては、反撥する傾向が強いものが多い。しかし、同じ地代のエジプトで生まれながら、明らかにユダヤ・キリスト教徒は出所の違う教説を唱える一派があった。それがヘルメス・トリスメギストス、すなわち「三重の偉大なるヘルメス」と呼ばれる伝説的な人物をめぐる宗派であった。
この宗派の人々が、聖書の創世物語を知っていたことは疑いがないし、その点ではユダヤ・キリスト教の影響がまったくないというわけではないが、エジプトの神とトート神とギリシアのヘルメス神が同一視されたヘレニズム時代の混合的で超越的な雰囲気を伝える一種の宇宙的汎神論でを持っていた。
彼らの説く感覚的なものと霊的なもの、身体と精神をわける徹底的な二元論は、グノーシス主義とも近いが、キリスト教やプラトン主義の枠組みともよく合致する。そして、ここからいわゆる錬金術が発展するのである。
トート=ヘルメス、またはヘルメス・トリスメギストスが説いたとされる文献は、一時は二万巻近くあったという。しかし、現在残されているのは、わずかの錬金術に関する文献と、その精髄を集めたものとされる。いわゆる『ヘルメス文書』のみである。
この文献それ自体は、どちからといえば、新プラトン主義的な思想に基づいているが、しかし、その中には、まごうことなき反宇宙的なグノーシス主義の雰囲気がみられる。。。。


ポイマンドーレス
(略)
こうして彼が姿を変えると、眼前に無限の眺めが展開し、あらゆるものが〈光〉となるが、しばらくすると《闇〉が垂れ下がってきて、恐ろしげで忌まわしく、とぐろを巻く蛇のように見えた。この〈闇〉はやがて湿った自然(フェシス)のようなものに変化し、火のような煙をだし、名状しがたい哀訴の叫び声のようなものを発していた。〈光〉から聖なる〈言葉(ロゴス)〉が出て自然に乗ると、火が自然から跳び出し、空気がこれに続いて、火からぶら下がっているようになったが、土と水はその場にとどまって互いに混じり合い、土と水は区別できなくなった。
そしてポイマンドレースは、あの光こそお前の神なる私であり、闇より生まれた自然より以前から存在する。そしてヌースから出た輝ける〈言葉〉は〈神の子〉である、と告げる。そして私は自分の精神の中に、光が無数の力となり、果てしない宇宙となり、火が強力な力によって包み込まれ、統制のものに各自の位置を保ったものをみる。
。。。
─────────

あまり引用すると、怒られてしまうので、
もしも興味がございましたら、この本を購入するなり、図書館で探し出すなりなさって、読んでくださいませ。

なお、〈ヌース〉とは《知性》のことです。

これを読んだ限りですと、
新プラトン主義の開祖・プロティノスの《流出説》に非常によく似るように思えます。
そして〈光〉と〈闇〉の二元論は、ゾロアスター教の影響なのでしょう。また、ゾロアスター教の《ズルワーン》思想の創世神話にも非常によく似ているように思えます。


流出説
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%81%E5%87%BA% …
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この回答へのお礼

詳細な回答ありがとうございます。
引用文を読むと、なかなか複雑ですね。グノーシス主義、新プラトン主義、ヘルメス主義、そしてカバラもありますが、どうも関係性がよくつかめません。
回答ありがとうございました。

お礼日時:2013/10/02 20:32

なるほど。


イェイツはお好きですか?
ロンドン大のルネサンス史家でウォーバーグ研究所の至宝というべき女傑ですが、わたしはGiopdano Bruno and The Hermetic Traditionという著作を英語で輪読したことがあります。フランス語で議論しながら英語で読むのが相当しんどかったのと、最後の方は飛ばし読みになってしまったので、たいした感想は言えませんが、3世紀のラクタンティウスによって、続いて4世紀のアウグスティヌスによって、ヘルメス・トリスメギストスが実在らしく権威づけられたり批評されたりしたことや、17世紀カゾボンによる年代同定による批判が、いかに重要とはいえ同時にいかにささいなことであるかが、よくわかる本です。
トリスメギストスがいなくともヘルメス思想があるという事実の、歴史における「糸」と「織り柄」のすべてが書かれている良書だと思います。あなたの知りたいことはそこで見つかるのではないでしょうか。

これの訳書が最近出たのには驚きました。翻訳はたいへんだっただろうと思います。
「ジョルダーノ・ブルーノとヘルメス教の伝統」フランセス・イェイツ著、前野佳彦訳 工作社 2010年
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この回答へのお礼

度々の回答ありがとうございます。
このような本があることを初めて知りました。内容が回答者様の言う通りならまさしく私が求めていたのもこのような本であると思います。
アマゾンで見たら値段が高かったのですが図書館等でさっそく読んでみるつもりです。ありがとうございました。

お礼日時:2013/10/02 20:20

 こんにちは。



 アウグスティヌスは ヘルメス文書から 次のようなくだりを抜き書きして ヘルメス・トリスメギストスの思想を批評しています。
 まづは 偶像の神々は 人間がつくったものだというくだりおよびそのような偶像崇拝は滅びるであろうと予言するところです。あらかじめ言えば 最終の結論としては その思想を批判しています。

 ▲ (ヘルメス文書より) ~~~~~~~~~~~~~~~~~
 われわれの論議は 人間と神々との関係 協力関係について明らかにするであろうから アスクレピオスよ 人間の能力と力とを知れ! 主または父 ないしは最高の存在者である神は 天界の神々(* bragel.註 =天使)の創造者であるが それと同じように 人間は 神殿の中で人間の近くにいることに満足している神々(* すなわちその偶像)の製造者である。
  (『アスクレピオス』23および24参照)
  (アウグスティヌス:『神の国』vol.8 ch.23  著作集12 茂泉昭男訳)

 ▲ (同上) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 アスクレピオスよ エジプトが天界の似像であることを知らないのか。さらに もっと真実を言えば われわれの大地は全宇宙の神殿なのである。

 しかし〔未来〕全体を予知することが英知の者にふさわしいのだから あなたがたには次のことに当然ながら無知であるべきではないのだ。すなわち エジプトの人びとが 敬虔な精神と熱心な敬神とによって神に仕えたことが無益であったと思われる時がやがてやってくるということに。
  ((『アスクレピオス』24参照)
 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


     * ちなみに《神々の偶像は 人間がつくった》というのは 
     訳者註ならびに解説によると アリストテレスも言っている
     らしい(『政治学』1・2・7)。姿かたちよりも その思
     惟や振る舞いにかんして人間のありさまを投影したのだと。



 これにかんするアウグスティヌスの批評は 護教論的なところは極力省きしかも議論を出来るだけ端折ることにすれば つぎのごとく。
 ◆(アウグスティヌスのヘルメス評) ~~~~~~~~~~~~
 エジプト人ヘルメスは・・・こうした事柄(* 偶像の神々への崇拝)がやがて取り除かれる時の到来するのを知っていたので・・・歎き悲しんだのである。
 ・・・・
 〔* どうして知ったか? それは旧約聖書の〕預言者たちはそれらの事柄を予見し 歓喜をもってこう言っている。

   もしひとが神々を作るとしても みよ そうしたものは神々ではない。
        (エレミヤ書 16:20)

   主は言われる その日には わたしは地から偶像の名を取り除き 
  重ねて人に覚えられることのないようにする。
        (ゼカリア書13:2)

 聖なるイザヤはこのこととの関連で 特にエジプトについて

   エジプトのもろもろの偶像は み前に挙げられ エジプト人の心はかれ
  らの中に溶け去る。
         (イザヤ書19:1)

 等々と預言したのである。
   (『神の国』8・23・3)
 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  

 ヘルメス・トリスメギストスは 偶像崇拝に未練があったということのようです。
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この回答へのお礼

この質問を閉じるのを失念しておりました。
回答ありがとうございました。参考にさせて頂きます。

お礼日時:2013/10/10 00:31

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