XがAに6000万円を貸し付け、A所有の甲土地(時価5000万円)とB所有の乙土地(時価2500万円)にそれぞれ第1順位の抵当権を設定しました。さらに、Aは無担保でYから2000万円を借り受けました。
その後、Xに対する債務の弁済期が到来してもAは返済できなかったのですが、抵当権を実行されては困るのでXに対して「甲土地を売ってその代金でとりあえずは返済する」と言いました。そして、Aは甲土地を3000万円でCに売却し、その3000万円をXに支払いました。所有権登記はCに移転し、抵当権抹消登記もしました。なお、Aは甲土地以外に目ぼしい財産はありません。
ここで、Yは詐害行為取消権を行使しようとしました。
この場合、Xを被告にする場合とCを被告にする場合の2種類が理論上は考えられると思うのですが、Cを被告にした場合、売買契約の取り消しと、何の返還を求めることになるのでしょうか。
詐害行為取消においては現物返還が原則で、それが不可能な場合は価格賠償ですよね。今回の場合、抵当権を復活させることはできないので、価格賠償になるのでしょうか?仮にそうだとすると、いくらの賠償になるのでしょうか?共同抵当の場合は割付してっていう判例もありますが、あれは両方とも自己所有の土地の場合ですし。
そもそも、Aの責任財産は甲土地の5000万円しかなく、それには被担保債権6000万円の抵当権がついていたのだから、Yが食ってかかれる責任財産は0なわけで、詐害行為取り消しの利益もないのではないでしょうか?
分かるかた、どなたかお願いします。
A 回答 (4件)
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No.4
- 回答日時:
Yは、XとCを共同被告として詐害行為取消権を行使できると考えます。
訴状の請求の趣旨としては、
1、XとCとの間でした売買契約は取り消す。
2、被告Cは、甲地につき所有権抹消手続きをせよ。
との判決を求める。
と言うような内容です。
請求原因のなかで重要なことは、「XとCは原告(Y)を詐害することを知り得ていた。」
と言う点が一番ですが、この証明が実務で甚だ困難です。
仮に、証明することができ勝訴したとすれば、甲地は抵当権の抹消されたA所有となるので、Yは甲地を強制競売で回収できます。
抵当権の回復登記はXとCとの関係なので、この訴訟では出てきません。
ですから別訴となりますが、原告のXが被告のAに対して抵当権の回復登記の請求原因が何であるかが重要です。
なお、法は、時価相場や被担保債権を考慮していないので、被担保債権が地価相場を上回っていることによって詐害行為取消権を認めていないわけではないので、詐害行為取消権の行使は可能であることは間違いないと思います。
No.3
- 回答日時:
詐害行為取消権の詐害行為がいかなる場合に認められるかが出題意図ではないかと思います。
まずはAに対する詐害行為取消権を論じます。ここでは、Aに対する債権弁済が詐害行為になるのかが論点です。
Yとしては弁済は原則として詐害行為にあたらないが、他の債権者を害する意思がある場合(偏波弁済)には詐害行為となり得ると主張することになるでしょう。判例も指摘します。
これに対しXは、抵当権設定がされていることから、他の債権者を害する意思がある場合(偏波弁済)には当たらないと主張することになるでしょう。
次にCに対する詐害行為取消権を論じます。ここでは、Cに対する甲土地の売却行為が詐害行為になるのかが論点です。
Yとしては不動産の時価を下回る価額での売却であるから、詐害行為に当たると主張することになるでしょう。
これに対しCは、担保価値を超える債権額を被担保債権とする抵当権設定がされていることから、甲土地の担保価値はすべてXに支配されており、詐害行為に当たらないと主張することになるでしょう。
ここまでは、そんなに難しくないと思います。しかし、レポート(答案もそうですが)では、こういう基本的な部分をきっちり書くことが重要です。
さて、上記を前提にして、さらに考察しましょう。
上記の議論を前提にすると、結論としてYの詐害行為取消権は認められないです。そうすると、Cは5000万円の価値のある不動産を3000万円で取得することになり、2000万円という利益を得ることになります。ここをどう考えるかです。
1つの考え方としては、Yの利益は害されない(責任財産の逸出がない)以上、詐害行為取消権を否定すべきという考え方があります。
2つめの考え方として、Bに着目して、Xの抵当権抹消によりBが甲不動産に代位できないという不利益が生ずるから詐害行為性を認めるという考え方があります。この場合は、甲不動産の売却と抵当権抹消を一体の行為とみることになるでしょう。
3つめの考え方としては、Bに着目して、Xの抵当権抹消によりBが甲不動産に代位できないという不利益が生ずるが、それは代位の問題であり、詐害行為取消権の問題ではない、という考え方があります。
4つめの考え方として、抵当権抹消により無担保債権が増加することを捉えて詐害行為とみる考え方もあり得るかもしれません。ただし、この考え方は苦しいと思います。
私見では、1の考え方を前提にして、3の考え方を取るが妥当だと思います。
No.2
- 回答日時:
>詐害行為取消においては現物返還が原則で、それが不可能な場合は価格賠償ですよね。
今回の場合、抵当権を復活させることはできないので、価格賠償になるのでしょうか?価格賠償になると考えるのが一般的、多数説です。ただし、現物返還、抵当権復活という考え方もあり得ます。あくまで設例でいえば、詐害行為といえないと考えます。
>そもそも、Aの責任財産は甲土地の5000万円しかなく、それには被担保債権6000万円の抵当権がついていたのだから、Yが食ってかかれる責任財産は0なわけで、詐害行為取り消しの利益もないのではないでしょうか?
一般論としては正しいと思います。詐害行為には当たらないと考えるのが多数説でしょう。
もっとも今回の質問の設例が、不自然なため、具体的な議論が難しいですね。
担保価値が5000万円ある不動産を3000万円で売却することは、財産隠しの目的であり得るでしょう。しかし、その結果、抵当権者であるXが抵当権の抹消に同意するというのが考えにくい設定です。そのため、議論が難しくなっています。
この回答への補足
抵当権を抹消したことについては、XとAは昔馴染みであったことから、Aが「とりあえず3000万円は用意できるから、それで抵当権を消してくれ。足りない部分はBの物上保証と保証で勘弁してくれ」と頼み込んだのをXが了承したという事情があります。上の質問では省きましたが、Bは物上保証のみならず、保証契約も締結しています。
なぜ3000万円で売却したかの理由は書かれていません。
No.1
- 回答日時:
詐害行為取消権の対象にならないものと思います。
ご承知と思われますが、詐害行為となるには、いくつかの要件があります。
その一つは、「債務者がした、一般財産の減少行為であること」が必要です。もうちょっと詳しく言うと、「その財産上の行為の結果、債務者の一般財産が減少し、債務を弁済するに足りなくなること」が必要です。
設例では、甲地には、YがAに対する債権を持つ以前に、Xのために(甲地の価格を上回る額の)抵当権が付いていたのですから、甲地は事実上無価値です。もともとYは甲地から返済を受けることは不可能でした。
それを売却したからと言って、「Yの権利を侵害するような、財産が減少が生じた」とは言えません。もともとマイナスだったのであって、売買によってマイナスになった(返済用財産がなくなった・減少した)のではありませんから。
したがって、AによるCへの売却は、詐害行為に該当しないものと判断します。単なる、Yのミスですね。
ちなみに、先日刑事判決がありませんでしたか?
記憶によると某ファンドの社長が、不動産担保ローン債権を別会社に移転した(登記もした)のが、財産隠しになるとして刑事訴追されていたのに対し、裁判所は、「某ファンドの債務がその分減っているから財産隠しにはあたらない」という判断をして、別な点だけ有罪とし、執行猶予を付けました。
刑事と民事は違いますが、プラスの財産を失う無償移転でも、それに伴ってもとからあった債務も減れば、財産隠しにはならないと思います。
この回答への補足
設問自体は、このような場合Yは誰にどのような主張をすることが考えられるか、それに対してどのような反論をすると考えられるか、というものです。
そもそも通らない主張をするのもどうかと思ったのですが、詐害行為取消以外には考えにくいですよね?まあ、設問が「主張することができるか」ではないのでいいのかもしれませんが。
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