アジレント社の次のサイト、
http://www.chem-agilent.com/contents.php?id=1001 …
「水素炎イオン化検出器 (FID) は、ガスクロマトグラフィで用いられる標準的な検出器です。ほぼすべての有機化合物を検出できます。得られるクロマトグラムのピーク面積は、サンプルに含まれる成分の量に相関します。FID はきわめて感度が高く、9 桁という広いダイナミックレンジを備えています。唯一の短所は、サンプル成分が破壊されるという点です。」
の、
「得られるクロマトグラムのピーク面積は、サンプルに含まれる成分の量に相関します。」
というところですが、このFID検出器の信号でいう「成分の量」とは、「分子の数」に比例する量なのか、「質量」に比例する量なのか、そこが今私にとって問題となっています。すなわち、「分子量の大きい物質、『重い』分子でできた物質だとピーク面積が大きくなる」のか、それともピーク面積は「分子の数」にのみ依存するのかが、大きな問題となっています。どうなのでしょうか。よろしくご教授頂きたく、お願い致します。
No.1ベストアンサー
- 回答日時:
懐かしい質問で、正確な回答が出来るのが嬉しい。
FIDは物質の炭素を水素炎中でイオン化しそのイオン・プラズマによる電流の大きさを正確に検出します。
ですから各物質の炭素数にほぼ比例するピークが得られます。私は必ず内部標準を使いましたが、
外部標準で満足する奴もいます。中にはピーク面積と注入サンプル量で分子量を決めようとする
乱暴な奴がいます。例外は後述します。
アジレントさんがおっしゃる様に、その感度はほとんど質量分析に匹敵する究極的な検出器で、
GCの簡易な検出器はこれしかありません、9桁というのは元素分析用超微量天秤より二桁も
大きな精度です。だが欠点があります。
1)アジレントが書いている様に、サンプルは燃えてしまうので、GC/MSとつなげない。
2)無機物は全く感知されない。もちろんこれは利点でもあり、水など無視されるので、
テーリングさえ無ければ、水溶液でも構わないのです。だが気体混合物などは全く無理で、
昔ながらの熱伝導率検出器(TCD・Thermo conductive detector)がまだ生きています。
3)分子内に酸素、硫黄を含むと感度が落ちます、簡単なのでベンゾキノンで試すとよく分かります。
二硫化炭素もダメ、前者はピークが非常に小さく後者は全く出ない。理由は水素炎は二酸化炭素や
炭素硫化物を炭素プラズマにする能力が無いのです。
結論として、
>「分子量の大きい物質、『重い』分子でできた物質だとピーク面積が大きくなる」
は正しいが、上記の様な例外があるので気を付けて下さい。
ご回答、誠にありがとうございます。回答がなかなかつきませんでしたので、削除されるかと思って印刷しておきましたが、徒労に終わりそうでほっとしています。
>各物質の炭素数にほぼ比例するピークが得られます。
>>「分子量の大きい物質、『重い』分子でできた物質だとピーク面積が大きくなる」
>は正しいが、上記の様な例外がある
これらから推測してみましたが、例えば、
「ヘキサン(C6)とドデカン(C12)を、「物質量基準で」1:1で混合したものを測定したら、FIDのピーク面積比は、1:2となる」
という仮説は、成り立ちますか?
まず、私の理解が正しいかどうかを、確認させてください。
ご覧であれば、今一度ご回答を、よろしくお願い致します。
No.4
- 回答日時:
再度#1です、その場合非常に簡単か、無理か二つの可能性があります。
前回のお答えを書いているとき、「こいつは熱分析の分野じゃ無かろうか」と思いました。
ご存知の様に熱分析では温度をスキャンし雰囲気を酸素存在下にするか不活性雰囲気にするかで
分解のみと燃焼とさらに熱の収支が測定できます。さらに生じた気体成分を質量分析して初めの
試料の構造を推定します、自分でやったことはありませんが、同僚が行っていましたので、
かなり良く知っておりますし、助言もしました。
パイロらイザからのGC・FIDの場合、再現性と標準サンプルの有無が全てで、外部標準法
を採用します、添加物は無理だから。上記の二つについてご説明する必要は無いと思いますが、
標準サンプルは以前は確かにありました、それは私の知人が同じ研究所で作り、多分国家標準
になったはずです、ですがかなり旧いのでもう無いかも知れませんし、逆にポリマー屋さんが
販売するという形で残っているかも知れません。それ以上は高分子のプロでは無いので分かりません。
あとは再現性のみです、同じサンプルと云っても完全に同じ質量の試料を作ることは無理なので
ピークの比が変わらなければ標準サンプルで各発生物質の比を調べれば良いだけです、計算は
面倒ですが、標準サンプルがあればかなり正確な測定が可能です。
最悪ブタジエンとスチレン比が正確に分かっている標準サンプルが一つでもあれば、比例配分
という小学校レベルの標準になりますが、上記再現性が得られればそれでも構わないと思います。
ようやく全体が見えてきましたが、ご存知の様にGCにはヘッドスペース分析というものもあり、
これらなどはかなりアバウトに見えるのですが、ちゃんと使われて居ます。
その程度の精度で良いなら、上記の方法は充分役に立つでしょう。
私にはここまでが限界ですが、頭をフルに使ったのはしばらくぶりなので楽しかったです。
お礼が遅くなりました。
>最悪ブタジエンとスチレン比が正確に分かっている標準サンプルが一つでもあれば、比例配分という小学校レベルの標準になりますが、上記再現性が得られればそれでも構わないと思います。
この方法が、今回の場合適当かと思います。標準試料を用いて、行っております。
ANo.1の、
>FIDは物質の炭素を水素炎中でイオン化し そのイオン・プラズマによる電流の大きさを正確に検出します。
>ですから各物質の炭素数にほぼ比例するピークが得られます。私は必ず内部標準を使いましたが、 外部標準で満足する奴もいます。中にはピーク面積と注入サンプル量で分子量を決めようとする乱暴な奴がいます。例外は後述します。
が、大変参考になりました。ありがとうございました。
No.3
- 回答日時:
#1です、悲しい「最後の砦」で済みません。
1)外部標準はシリンジや他の外部環境をサンプルと同一にすると云う困難な作業があります。
外部標準が良いのは、内部標準がサンプル内の成分と反応したり、内部標準によりピークの形が
変形する恐れがあるのが一点、工業製品の様に莫大な数のサンプルは非常に正確な量作られるので、
ゆらぎが無く、面倒な内部標準添加を避けられるのが二点めになります。
2)内部標準が良いのは全てのピークが美しく分離すれば検量線が多少曲がっていても補完・内挿
から得られる値の精度は単に測定回数の統計的誤差の範囲に収まるので、精度も確度も再現性も
保証されます。ただし内部標準添加中に揮発試料が発生してそれが逃げると、サンプルも
検量線作成の機会にも非常に高度なテクニックが求められると云う事が起きます。
3)更に嫌なのが、今回示された試料の内容がポリマーである点で、これは余程分子量が
小さくないとそもそもGC・FIDが最も苦手とする分野で、外部標準でも、内部標準でも
標準サンプルを得難いのです。高分子は元々のモノマーとは性質が全く異なる事は御存知
でしょう。果たしてこの高分子がGCの上限200℃で充分な蒸気圧を持つのかさえ
分かりません。
この手のサンプルの精密なモノマー比率を求めるのはポリマー屋の「奥の手」で外には出ません。
都道府県の産業・工業試験所位しか技術が無いのです。そこでもこの成分は「旧すぎる」
つまり毎日持ち込まれた時代を過ぎているのです。
だがFIDで無くても良く、溶媒(四塩化炭素・クロロホルム・DMSO)に可溶なら高分解能
核磁気共鳴でCH部分とフェニル基部分ははっきり分かれるのでそこから小学校の算数で
求めることになります。
何の溶媒にも溶けないと非常に苦しいし、その場合GC・FIDでさえ注入不能になります。
悲観的で申し訳ありませんが、新興宗教では無いので「無理は無理」になります。
何度もお付き合いさせて申し訳ございません、またそれにも関わらずお付き合いを誠にありがとうございます。
外部標準・内部標準については、よく分かりました。
また、高分子試料のガスクロ分析に関して申し上げていなかったことがあります。今回客先で問題となっているガスクロの装置は、試料導入部がパイロライザー(熱分解装置)になっていて、固体のゴム試料をセットし、熱分解炉によって固体試料を分解気化させて、ガスクロ分析するというタイプのものです。ですので、溶液試料などと同様に、モノマー成分が(正確に言うと、スチレン単位からはスチレンそのものと、分解したトルエンが検出され、ブタジエン単位からはブタジエンそのものと、二量体のビニルシクロヘキセンが検出されます)分析できます。
ちょっと、前に申した単純な話ではなくなってきましたね、申し訳ございません。
上の私の話で、何かお気づきになったことがあれば、おっしゃってください。しかし、あくまでも本質問の趣旨は、
「FID検出器のピーク面積は、質量に比例するのか、物質量(分子の数)に比例するのか」
ということです。単純に、
「スチレン-ブタジエン共重合体注入→スチレンとブタジエンのみ検出」
となっていなかったのが、認識違いでした。申し訳ございませんでしたが、よろしくお願い致します。
No.2
- 回答日時:
#一です、レス有り難うございます。
>「ヘキサン(C6)とドデカン(C12)を、「物質量基準で」1:1で混合したものを測定したら、FIDのピーク面積比>は、1:2となる」
一見合理的に見えますが、それ程単純ではありません。本来は見えぬはずの水素の影響が現われるのです。
CとHの比率が特に分子量が小さいと無視出来ないのです、概算なら無視します。
ヘキサンとドデカンではGCの保持時間・retention timeがかなり異なります。通常分子量の大きな成分は
保持時間が長くなりますが、そのままではピーク形状が大きく変わるので、コンピュータソフトが両者とも
ピーク面積を同様な精度で測っている保証が無くなります、特につぶれたピークはベースラインからの高さ
が計算法に依存して変わります。それを防ぐ為にカラムオーブンを昇温すると分子量の大きなピークの
形状は美しくなりますが、逆に炭素数に比例するという利点が怪しくなってしまいます。
そのためこの例のヘキサンとドデカンの場合なら両者にはさまれるオクタンやノナン、デカンなどを内部
標準として既知量サンプルに加え両者の面積が期待とどれ程ずれるか見ます。大きくずれなければ
ほぼ炭素数と比例する感度が得られるとして良いのですが、ずれると常に内部標準を加えねばならない、
そのため私は常に八炭素のオクタンから炭素二十のエイコサンまで常に用意し、研究所内の需要に
対応しました。かなり面倒です。
詳細・厳密なご回答、誠に助かります。
二点お伺いしたいことが発生しました。
まず一点目は、「外部標準法ではなく内部標準法が必要」とのようですが、厳密には外部標準法ではアウトなのでしょうか。
二点目ですが、具体的に困っている問題として、スチレン-ブタジエンゴムの組成を、FIDで正確に求めるのに、どういう検量線を引いて定量するか、その方法を考えて、客先に責任ある回答をせねばならないのです。上司が頼りなく、私が「最後の砦」のような状態です…。
まず、
・スチレン:C8H8、分子量ざっと104。
・1,3-ブタジエン:C4H6、分子量ざっと54。
です。
客先では質量基準の組成が使われるようですので(「物質量」基準ではなく)、仮に、「質量基準で」正確にスチレン50 %-ブタジエン50 %のゴム試料があったとして、これをFIDのガスクロにかけた場合、出てくるスチレンとブタジエンのFIDのピーク面積は、
・「スチレン50 %、ブタジエン50 %」として出てくるのか。
・そうでなければ、(理論上では)どのような結果となるはずなのか。
を、ご教示願えますでしょうか。いろいろ考えていて、頭がこんがらがってきました。
doc_somday様が、私にとってまさしく「最後の砦」でございます。よろしくお付き合いを、お願い申し上げます。
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