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相という文法用語を耳にしました。
時に関することを言うものだそうです。
私はそれを時制として認識していたので、
その違いが分からなくなってしまいました。
時制と相の違いって?
教えてください。

A 回答 (1件)

 nananさん、こんにちは。



 「相」も「時制」も共に動詞類に関係する文法範疇です。

 まず、「時制」ですが、「時制(tense)」は、文中の行為・状態が起こった時間(time)を表わす言語形式です。
 「時制」を現在・過去・未来の3種類に分けるのは、伝統文法(ソシュール以前の共時・通時いずれにもわたる文法の総称)以来の一般的な考え方ですが、この3つの時制が言語形式上普遍的に示される、つまり、どの言語にも全てに共通するものではありません。各々の言語は、連続する時間を独自の方法で区切り、独自の時制体系を作っています。例えば、英語やドイツ語などのゲルマン語派(Germanic)・ロシア語やポーランド語などのスラブ語派(Slavic)の諸語では、過去(past)と非過去(過去以外の時制/non-past)の二つの時制が基本となっています。フランス語やスペイン語などのロマンス語派の場合、現在・過去・未来の3つの時制が伝統的に認められていますが、実際は過去・非過去・無時間(timeless)という時制にするほうが、妥当と思われます。日本語も本来ならば、過去・非過去の2つの時制と考えるべきものでしょう。時制が時間と大きく離れている言語の例として、アメリカ・インディアンの言語の一つ、ホピ(Hopi)語があります。ホピ語には3つの時制がありますが、その1は時間に無関係な一般的真理、その2は事実の報告、その3は不確実な事柄を述べるのに用いられます。「彼が来る」も「彼が来た」も事実の報告として述べる場合、同一の時制が用いられるのです。

 次に、「相(aspect)」は事柄の起こる時間の分布あるいは輪郭と関係します。
 「相」が最も密接な関わりを持つ概念は、「完了(completion)」と「継続(duration)」です。その他にも、瞬時相(momentary aspect)、反復相(iterative aspect)、習慣相(habitual aspect)、起動相(inchoative aspect)、終止相(terminate aspect)、結果相(effective aspect)など、様々な概念が考えられます。相が義務的な範疇であるロシア語では、動詞は必ず「完了相」と「未完了相」のどちらかに区別されます。動作の始め・終わり・結果に着目している場合には、完了相の動詞を用い、動作の持続的経過・反復あるいは普遍的・原則的なことを述べる場合には、未完了相の動詞を用います。例えば「読む」という動詞には「完了相の読む」と「未完了相の読む」というそれぞれ別個の2つの動詞があり、それぞれ時制・人称・性・数などによる語形変化の系列が異なります。ロシア語の場合は「屈折」と呼ばれる語形の変化によって「相」を表示しますが、それ以外の方法で「相」を表示する例に、英語が挙げられます。御存知のように、英語では、I have written(私は書いてしまった)、I am writing(私は書いているところだ)のように、統語的方法(助動詞など他の語の助けを借りて)によって完了相・持続相を示します。英語では「相」と「時制」が異なる形式(「時制」は主に語尾などの変化、つまり「屈折」によって。「相」は他の語の助けを借りて)によって表示されますが、印欧語の多くの言語では、両者は融合して一つの形態となって現れます。もともと印欧語の動詞では、「相」の概念が一義的であり、「時制」の概念がそれに付随しておリ、ギリシア語では6つの時制(と普通言われている)は、「相」と「時制」が融合している例です。また、アラビア語などのセム語族の大部分では、「相」が動詞の一義的な範疇であって、時制はやはり二義的です。
 
 ここまで、少し複雑に書いてきてしまいましたが、簡単に言ってしまうと、
(1)「時制」とは、時間を現在・過去・未来として区切る「時間の区切り方」である。
(2)「相」とは、時間を現在・過去・未来と区切った「時制」の中で、さらに「それが完了したのか(完了相)、あるいは継続中なのか(継続相)」という点に着目した考え方、であると言えます。

 お役に立てたでしょうか。

 では、失礼いたします。 
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