とっておきの手土産を教えて

クラシックの交響曲や協奏曲などで、「第1楽章」などの「楽章」についての質問です。
「楽章」は、ドイツ語では"der Satz"で、日本語の「楽章」はドイツ語から来たように思われます。
ところが、 英語では、「楽章」は "movement"で、フランス語も "le mouvement"です。
私は、"der Satz"と"movement"や"le mouvement"とは、「語源的」に全く違うように思います。
私の考えは、正しいですか?間違っていますか?
 もし、「語源的」に違っているとしたら、「ドイツ人」と「英米人・フランス人」の「楽章」に
ついての理解が異なっている可能性があると思いますが、そのように考えることは正しいですか。
 もし、「ドイツ人」と「英米人・フランス人」の「楽章」についての理解が異なっているとしたら、
それが、「ドイツ」と「英米・フランス」のクラシック音楽に何か影響があると考えられますか。
 以上について、ご存じの方、よろしくご教示の程、お願いいたします。(クラシックじじい)

A 回答 (1件)

英語ではmovement、フランス語ではmouvement、イタリア語ではmovimentoといい、


これらはみな、元は「動き」を意味します。
18世紀後半までは、文字通り、あくまでも音楽の中の「動き」の意味でしか使っていませんでした。

16世紀初頭から17世紀初めまでの器楽曲は、独立した複数の楽章からなっておらず、
続けて演奏される、異なるテンポの部分の連続でしたが、
やがて、舞曲形式の独立した楽章からなる組曲のようなものが出てきます。
これらの楽章の主な特徴の違いはテンポにあるということで、
movementという言葉は、「動き」つまり「テンポ」の違いという意味から転じて、
18世紀の終わりごろには、単に「楽章」という名称としての用法が出てきます。

ドイツ語のSatzは、複数の語からなるひとまとまりの「文」という意味で、
文法用語と関係がありますが、本来英語のputに当たる動詞、setzenの名詞形です。
たとえば「作曲する」というのは「音を置くこと」、つまり「Ton setzen」で、
「作曲」を表すドイツ語には、KompositionとTonsatzの二つの語があります。
そのため、このSatzという語は、ドイツの音楽理論では、
「楽章」以外の別の意味で使われる専門用語でもあります。
その意味は複数あり、内容がかなり専門的になるので書きませんが、
曲の小さな構成単位である数小節の楽節を定義する語として、
あるいは特定の作曲の様式を指す語として使われます。
しかしこのSatzという語も、movement同様、
各楽章の「作曲の仕方」(テンポも含め)が違うと意味から発して、
多楽章の作品中の、独立した各楽章を指す名称としての用法が別に生じたので、
そこに特別な意味が残っているわけではありません。

西洋のクラシック音楽では、古くから各国間に相互の交流、影響がありましたが、
18世紀以降、器楽における多楽章形式を確立したのは何と言ってもウィーン古典派で、
それ以降の西洋諸国の作曲家は、みなここに規範を置いたわけです。
各楽章の性格付けや楽章配置なども、一定の方法がヨーロッパ全体で共有されます。
ですので、「楽章」を表す言葉がmovementとSatzに分かれているということが、
「楽章」の理解や書法の違いに直接つながっているということはありません。
もし違いがあるとしても、それは、それぞれの国の音楽伝統や気質の違いということです。

近代以降は、たった一楽章しかない交響曲やソナタというものもあります。
そして、その一つの楽章中に、テンポや作曲様式の異なる複数の部分が含まれているとしても、
「一楽章の交響曲」、つまりSymphony in one movement(英)とかSymphnie in einem Satz(独)と呼びます。
つまりここでは、movementもSatzも、完全に「楽章」という意味でしかありません。

日本語の「楽章」は、英語やドイツ語の言葉の元の意味ということからいえば、
movementの訳でもSatzの訳でもありませんが、
単に「楽章」を意味するだけの用語としてmovementとSatzは使われているので、
「意訳」という意味ではどちらの語にも対応するものです。
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この回答へのお礼

Tastenkasten 様、
 懇切丁寧なご説明、どうも有難うございました。クラシックじじい。

お礼日時:2018/02/25 17:27

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