No.3ベストアンサー
- 回答日時:
図を付けるのを忘れたので、書き直した。
基本から学ぶには、面倒ですが、ボーアの原子模型の復習をして見ましょう。
1913年にニールス・ボーアは、原子核の回りの円形軌道を電子が回る水素原子のモデルを提案した。
電子の質量をm,電荷を-e、軌道半径をrとすると、電子と原子核の陽子が引き合うクーロン力と電子の遠心力が釣り合う条件は
e²/4πε₀r²=mv²/r_①
両辺にrをかけると
e²/4πε₀r=mv²_②
ド・ブロイの物質波の理論によると電子も波動性がありその波長λは
λ=h/p=h/mv_③
hは、量子力学の特有の物理定数のプランク定数である。6.626×10⁻³⁴[J s]
ボーアは軌道の一周の長さ2πrが波長の整数倍のnλの時だけに、安定した軌道となると考えた。
2πr=nλ_④
これを量子条件という。nを主量子数という。
④に③を入れると
2πr=nλ=n h/mv_⑤
これからvを求めると
v=n h/2πm r_⑥
⑥を①に入れると⑦となり、
e²/4πε₀r²=m(n h/2πm r)²/r_⑦
これからrを求めると
r =ε₀n²h²/πme²_⑧
主量子数がnの軌道半径rが得られた。
電子のクーロンポテンシャルUは
U=-e²/4πε₀r_⑨である。
電子の運動エネルギーKは⑩である。
K=mv²/2_⑩
⑨✕(-1)は②の左辺である。⑩✕2は②の右辺である。よって
-U=2K_⑪
K=-U/2_⑫
電子の全エネルギーE=K+Uは⑫を使うと
E=K+U=-U/2+U= U/2_⑬
⑬に⑨を入れると
E=U/2=-e²/8πε₀r=-e²/8πε₀(n²ε₀h²/πme²)
=-me⁴/(8ε₀²n²h²)_⑭
主量子数がnのエネルギーが得られた。
⑧より、軌道半径rはn²に比例するので、下図右のイメージ図が描ける。
⑭より、エネルギーレベルは-1/n²に比例するので、下図左のイメージ図が描ける。
n=2の軌道にいた電子が、n=1の軌道に落ちると、エネルギーがE₂からE₁に下がるので
差のE₂-E₁のエネルギーが光子のエネルギーhνとして放出される。
νは光子の振動数である。c=2.998 ✕10⁸[m/s]は光速である。
波長λ=c/ν_⑮である。
E₂-E₁= hν= hc/λ_⑯
主量子数nからn'に遷移が起きるときは
En-En'=hν= hc/λ_⑰
⑰に⑭のエネルギーを入れると
En-En'=(-me⁴/(8ε₀²n²h²)+me⁴/(8ε₀²n'²h²))
=(me⁴/(8ε₀²h²))(-1/n²+1/ n'²)=hc/λ_⑱
よって
1/λ = E n − E n ′/ h c = R (1/ n'²-1/n²)_⑲
ここで
R =(me⁴/(8c h³ε₀²) _⑳
である。Rをリュードベリ定数という。式⑲は水素原子の発光のスペクトルの実験式と一致し、実際に各物理定数を代入するとこのリュードベリ定数Rの値を見事再現し、ボーアの原子模型の理論の正しさが実証された。
その後の理論の発展で、電子の粒子モデルではなく、波動モデルを使ったシュレディンガーの波動方程式の解で、現在は、円軌道のイメージとは異なる波動関数のイメージが使われているが、ボーアのモデルが、理論の解明の基礎となったのである。
問題:水素原子の吸収線は102.6 nmである。光子が吸収されるときの振動数を求めなさい。また、原子のこの時の励起状態と基底状態の間のエネルギー差をジュールで求めなさい。
これを解くには、式⑮⑯を使う。
⑮は波長λ=c/νで、変形すればc=λνである。
この関係は、すべての波動について成り立つ基本公式で、1秒間の振動の回数がν回であるから、
波動は波長λのν個分進むので、1秒間に進む距離=速度cとなる。
λ=102.6[nm]とc=2.998 ✕10⁸[m/s]からνを求めると、
ν=c/λ= 2.998 ✕10⁸/ 1.026 * 10⁻⁷≒ 2.922 * 10¹⁵ [Hz]となる。
(注意ν=2.992 * 10¹⁵ [Hz]は間違い。)
励起状態と基底状態の間のエネルギー差は式⑯の
エネルギー差= E₂-E₁= hνの式⑯により、プランク定数h= 6.626 * 10 ⁻³⁴ [Js]を使って
hν=6.626 * 10 ⁻³⁴ [Js]✕ 2.922 * 10¹⁵ [Hz] ≒1.936✕10⁻¹⁸ [J]となる。
No.2
- 回答日時:
基本から学ぶには、面倒ですが、ボーアの原子模型の復習をして見ましょう。
1913年にニールス・ボーアは、原子核の回りの円形軌道を電子が回る水素原子のモデルを提案した。
電子の質量をm,電荷を-e、軌道半径をrとすると、電子と原子核の陽子が引き合うクーロン力と電子の遠心力が釣り合う条件は
e²/4πε₀r²=mv²/r_①
両辺にrをかけると
e²/4πε₀r=mv²_②
ド・ブロイの物質波の理論によると電子も波動性がありその波長λは
λ=h/p=h/mv_③
hは、量子力学の特有の物理定数のプランク定数である。6.626×10⁻³⁴J s
ボーアは軌道の一周の長さ2πrが波長の整数倍のnλの時だけに、安定した軌道となると考えた。
2πr=nλ_④
これを量子条件という。nを主量子数という。
④に③を入れると
2πr=nλ=n h/mv_⑤
これからvを求めると
v=n h/2πm r_⑥
⑥を①に入れると⑦となり、
e²/4πε₀r²=m(n h/2πm r)²/r_⑦
これからrを求めると
r =ε₀n²h²/πme²_⑧
主量子数がnの軌道半径rが得られた。
電子のクーロンポテンシャルUは
U=-e²/4πε₀r_⑨である。
電子の運動エネルギーKは⑩である。
K=mv²/2_⑩
⑨✕(-1)は②の左辺である。⑩✕2は②の右辺である。よって
-U=2K_⑪
K=-U/2_⑫
電子の全エネルギーE=K+Uは⑫を使うと
E=K+U=-U/2+U= U/2_⑬
⑬に⑨を入れると
E=U/2=-e²/8πε₀r=-e²/8πε₀(n²ε₀h²/πme²)
=-me⁴/(8ε₀²n²h²)_⑭
主量子数がnのエネルギーが得られた。
⑧より、軌道半径rはn²に比例するので、下図右のイメージ図が描ける。
⑭より、エネルギーレベルは-1/ n²に比例するので、下図左のイメージ図が描ける。
n=2の軌道にいた電子が、n=1の軌道に落ちると、エネルギーがE₂からE₁に下がるので
差のE₂-E₁のエネルギーが光子のエネルギーhνとして放出される。
νは光子の振動数である。c=2.998 ✕10⁸[m/s]は光速である。
波長λ=c/ν_⑮である。
E₂-E₁= hν= hc/λ_⑯
主量子数nからn'に遷移が起きるときは
En-En'=hν= hc/λ_⑰
⑰に⑭のエネルギーを入れると
En-En'=(-me⁴/(8ε₀²n²h²)+me⁴/(8ε₀²n'²h²))
=(me⁴/(8ε₀²h²))(-1/n²+1/ n'²)=hc/λ_⑱
よって
1/λ = E n − E n ′/ h c = R (1/ n'²-1/n²)_⑲
ここで
R =(me⁴/(8c h³ε₀²) _⑳
である。Rをリュードベリ定数という。式⑲は水素原子の発光のスペクトルの実験式と一致し、実際に各物理定数を代入するとこのリュードベリ定数Rの値を見事再現し、ボーアの原子模型の理論の正しさが実証された。
その後の理論の発展で、電子の粒子モデルではなく、波動モデルを使ったシュレディンガーの波動方程式の解で、現在は、円軌道のイメージとは異なる波動関数のイメージが使われているが、ボーアのモデルが、理論の解明の基礎となったのである。
問題:水素原子の吸収線は102.6 nmである。光子が吸収されるときの振動数を求めなさい。また、原子のこの時の励起状態と基底状態の間のエネルギー差をジュールで求めなさい。
これを解くには、式⑮⑯を使う。
⑮は波長λ=c/νで、変形すればc=λνである。
この関係は、すべての波動について成り立つ基本公式で、1秒間の振動の回数がν回であるから、
波動は波長λのν個分進むので、1秒間に進む距離=速度cとなる。
λ=102.6[nm]とc=2.998 ✕10⁸[m/s]からνを求めると、
ν=c/λ= 2.998 ✕10⁸/ 1.026 * 10⁻⁷≒ 2.922 * 10¹⁵ [Hz]となる。
励起状態と基底状態の間のエネルギー差は式⑯の
エネルギー差= E₂-E₁= hνの式⑯により、プランク定数h= 6.626 * 10 ⁻³⁴ [Js]を使って
hν=6.626 * 10 ⁻³⁴ [Js]✕ 2.922 * 10¹⁵ [Hz] ≒1.936✕10⁻¹⁸ [J]となる。
No.1
- 回答日時:
>光子が吸収されるときの振動数を求めなさい
光の速さが 2.998 * 10^8 [m/s] で、波長が 102.6 [nm] = 102.6 * 10^(-9) [m] = 1.026 * 10^(-7) [m] なので
ν = 2.998 * 10^8 / 1.026 * 10^(-7) ≒ 2.992 * 10^15 [Hz]
>原子のこの時の励起状態と基底状態の間のエネルギー差をジュールで求めなさい
そのエネルギーは、プランク定数 h を使って
E = hν = 6.626 * 10^(-34) [Js] * 2.992 * 10^15 [Hz] = 1.936 * 10^(-18) [J]
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