No.2ベストアンサー
- 回答日時:
No.1に図を付けるのを忘れた。
AとBの二元合金の、A成分のモル分率をXA、B成分のモル分率をXBとする。
XA+XB=1である。AとBのそれぞれの自由エネルギーは、XAGAおよびXBGB
である。この合計はG= XAGA+XBGB_①である。
この二成分を混合して合金とした場合、合金の自由エネルギーは式①から変化する。変化については、次の3つを考慮することが必要である。
(1)A原子とA原子の結合AAの結合エネルギーをεAA、B原子同士の結合エネルギーをεBB、A原子とB原子の結合ABの結合エネルギーをεABとしたとき、
AAとBBの二つの結合を作るエネルギーはεAA+εBBである。
その代わりにABの結合を二つ作るエネルギーは2εABである。結合エネルギーはマイナスで、その絶対値が大きい程結合は強くなる。
もしεAA+εBB>2εAB_②のとき、したがってΔh=AA+εBB-2εAB>0のとき、AAとBBの二つの結合を作る代わりに、二つのAB結合を作る方が安定になるので、合金にしたとき、AB結合がふえる傾向にある。これは発熱反応でエンタルピーHは合金を形成する前より下がる。G=H-TSだから、Gは合金化により下がる。
逆にΔh=AA+εBB-2εAB>0_③ ならば、Gは合金化により上がる。
(2) Δh=AA+εBB-2εAB=0_④のとき、この合金(固溶体)を理想溶体という。
しかし、実際の合金では、Δh=0とは限らず、そのとき、ABの結合が生じる割合は
XA・XB_⑤に比例する。(A原子とB原子の両方が存在するとき、ABの結合が生じる。)
合金化した時のHの増加ΔHmixはΔh XAXBに比例する。
(1)で述べた傾向により、割合がゆがむ影響を無視できる場合、
ΔHmixは自由エネルギーG=H-TSの増加ΔG mixなる。
式⑤のXBによる変化の様子は、左下図のXA・XBのグラフで表される。
(3) AとBが合金になるとき、A原子とB原子が混合するときに、混合のエントロピーSの増加が生じる。1モルの合金の原子数はアボガドロ数Naであるから、
A原子の数はNA=Na×XA、B原子の数はNB=Na×XB_⑥である。
統計熱力学によれば、エントロピーはNA個のA原子とNB個のB原子を、結晶の格子位置に配置する配置方法の数をωとすると、次のボルツマンの式により与えられる。kはボルツマン定数である。
S =kln ω_⑦
二つの成分の混合前には、NA個のA原子をNA個の位置に配置し、NB個のB原子をNB個の位置に配置する配置方法は、NA!×NB!となるが、A原子と別のA原子の位置を入れ替えても、原子同士は区別できないので、異なる配置の数はNA!で割ったものになる。同様にNB!で割ると、配置方法の数ωは一通りしかない。よってS=0である。
二つの成分を混合したときの配置方法ωは、NA+NB個の原子をNA+NB個の位置に配置するので、
(NA+NB)!となるが、A原子と別のA原子の位置を入れ替えても、原子同士は区別できないので、異なる配置の数はNA!で割ったものになる。同様にNB!で割ると、配置方法の数ωは
ω=(NA+NB)!/ NA!NB!_⑧ となる。
これを式⑦に入れると
S=klnω
=kln((NA+NB)!/NA!NB!)=kln((NA+NB)!)-kln((NA)!)-kln((NB)!) _⑨
⑥を⑨に入れて、XA+XB=1を使うと
S = kln((Na!)-kln((NaXA)!)-kln((NaXB)!)_⑩
非常に大きな数Nに対する近似式、スターリングの公式
lnN!≒NlnN −N_⑪
を⑩に使って、XA+XB=1を使うと⑫となる。ここでkNa=Rを使う。Rは気体定数である。
S = kln((Na!)-kln((NaXA)!)-kln((NaXB)!)
= k(Naln(Na)−Na)-k(NaXA ln(NaXA)−NaXA)-k(NaXB ln(NaXB)−NaXB))
= kNa{(ln(Na)−1)-XA(ln(Na) ln(XA))+XA-XB(ln(Na)+ ln(XB))+XB)
= R{ln(Na) −1-XA (ln(Na)+ ln(XA)+XA-XB (ln(Na)+ ln(XB)+XB}
=-R(XA lnXA+XB lnXA)_⑫
XA,XBは1より小さいので、S>0である。混合によるエントロピー増加は
ΔSmix=-R(XAlnXA+XBlnXB) _⑬
G=H-TSだから、ΔSmixにより、GはTΔSmixだけ減少する。
ΔG= RT(XAlnXA+XBlnXB) _⑭
式⑭のXBによる変化の様子は、右下図のXAlnXA+XBlnXB のグラフで表される。
XB=xとすると、XA=1-xだから、グラフの式はxlogx+(1-x)log(1-x)である。
式①と⑭を合わせた理想固溶体の自由エネルギーは⑮となる。
G= XAGA+XBGB+RT(XAlnXA+XBlnXB) _⑮
式⑮のモル濃度による変化のグラフは上の図に示す。
ΔSmix=-R(XAlnXA+XBlnXB)の式⑬は、以上のように導かれたが、
その考え方は、なかなか理解がむつかしく、もしすべてのB原子をA原子で置き換えると、式⑬は
ΔSmix=-R(XAlnXA+XBlnXB)=-2RXAlnXA_⑯となる。もしA原子ばかりなら、ΔSmix=0となるから式⑯と矛盾するのではないかとギブスは考えた。これをギブスのパラドクスという。
現代の解釈では、A原子と別のA原子は区別がつかないので、これは矛盾ではない。
以上の理論は下記のインターネットのサイトを使った。
京都大学辻 伸泰教授の「合金の自由エネルギー」
www.tsujilab.mtl.kyoto-u.ac.jp/01TsujiLab/Education/MicrostructuresOfMaterials1/2013/01_text/2013_MM1.pdf
2.4.1 二元固溶体のギブス自由エネルギー を見て下さい。
No.1
- 回答日時:
AとBの二元合金の、A成分のモル分率をXA、B成分のモル分率をXBとする。
XA+XB=1である。AとBのそれぞれの自由エネルギーは、XAGAおよびXBGB
である。この合計はG= XAGA+XBGB_①である。
この二成分を混合して合金とした場合、合金の自由エネルギーは式①から変化する。変化については、次の3つを考慮することが必要である。
(1)A原子とA原子の結合AAの結合エネルギーをεAA、B原子同士の結合エネルギーをεBB、A原子とB原子の結合ABの結合エネルギーをεABとしたとき、
AAとBBの二つの結合を作るエネルギーはεAA+εBBである。
その代わりにABの結合を二つ作るエネルギーは2εABである。結合エネルギーはマイナスで、その絶対値が大きい程結合は強くなる。
もしεAA+εBB>2εAB_②のとき、したがってΔh=AA+εBB-2εAB>0のとき、AAとBBの二つの結合を作る代わりに、二つのAB結合を作る方が安定になるので、合金にしたとき、AB結合がふえる傾向にある。これは発熱反応でエンタルピーHは合金を形成する前より下がる。G=H-TSだから、Gは合金化により下がる。
逆にΔh=AA+εBB-2εAB>0_③ ならば、Gは合金化により上がる。
(2) Δh=AA+εBB-2εAB=0_④のとき、この合金(固溶体)を理想溶体という。
しかし、実際の合金では、Δh=0とは限らず、そのとき、ABの結合が生じる割合は
XA・XB_⑤に比例する。(A原子とB原子の両方が存在するとき、ABの結合が生じる。)
合金化した時のHの増加ΔHmixはΔh XAXBに比例する。
(1)で述べた傾向により、割合がゆがむ影響を無視できる場合、
ΔHmixは自由エネルギーG=H-TSの増加ΔG mixなる。
式⑤のXBによる変化の様子は、左下図のXA・XBのグラフで表される。
(3) AとBが合金になるとき、A原子とB原子が混合するときに、混合のエントロピーSの増加が生じる。1モルの合金の原子数はアボガドロ数Naであるから、
A原子の数はNA=Na×XA、B原子の数はNB=Na×XB_⑥である。
統計熱力学によれば、エントロピーはNA個のA原子とNB個のB原子を、結晶の格子位置に配置する配置方法の数をωとすると、次のボルツマンの式により与えられる。kはボルツマン定数である。
S =kln ω_⑦
二つの成分の混合前には、NA個のA原子をNA個の位置に配置し、NB個のB原子をNB個の位置に配置する配置方法は、NA!×NB!となるが、A原子と別のA原子の位置を入れ替えても、原子同士は区別できないので、異なる配置の数はNA!で割ったものになる。同様にNB!で割ると、配置方法の数ωは一通りしかない。よってS=0である。
二つの成分を混合したときの配置方法ωは、NA+NB個の原子をNA+NB個の位置に配置するので、
(NA+NB)!となるが、A原子と別のA原子の位置を入れ替えても、原子同士は区別できないので、異なる配置の数はNA!で割ったものになる。同様にNB!で割ると、配置方法の数ωは
ω=(NA+NB)!/ NA!NB!_⑧ となる。
これを式⑦に入れると
S=klnω
=kln((NA+NB)!/NA!NB!)=kln((NA+NB)!)-kln((NA)!)-kln((NB)!) _⑨
⑥を⑨に入れて、XA+XB=1を使うと
S = kln((Na!)-kln((NaXA)!)-kln((NaXB)!)_⑩
非常に大きな数Nに対する近似式、スターリングの公式
lnN!≒NlnN −N_⑪
を⑩に使って、XA+XB=1を使うと⑫となる。ここでkNa=Rを使う。Rは気体定数である。
S = kln((Na!)-kln((NaXA)!)-kln((NaXB)!)
= k(Naln(Na)−Na)-k(NaXA ln(NaXA)−NaXA)-k(NaXB ln(NaXB)−NaXB))
= kNa{(ln(Na)−1)-XA(ln(Na) ln(XA))+XA-XB(ln(Na)+ ln(XB))+XB)
= R{ln(Na) −1-XA (ln(Na)+ ln(XA)+XA-XB (ln(Na)+ ln(XB)+XB}
=-R(XA lnXA+XB lnXA)_⑫
XA,XBは1より小さいので、S>0である。混合によるエントロピー増加は
ΔSmix=-R(XAlnXA+XBlnXB) _⑬
G=H-TSだから、ΔSmixにより、GはTΔSmixだけ減少する。
ΔG= RT(XAlnXA+XBlnXB) _⑭
式⑭のXBによる変化の様子は、右下図のXAlnXA+XBlnXB のグラフで表される。
XB=xとすると、XA=1-xだから、グラフの式はxlogx+(1-x)log(1-x)である。
式①と⑭を合わせた理想固溶体の自由エネルギーは⑮となる。
G= XAGA+XBGB+RT(XAlnXA+XBlnXB) _⑮
式⑮のモル濃度による変化のグラフは上の図に示す。
ΔSmix=-R(XAlnXA+XBlnXB)の式⑬は、以上のように導かれたが、
その考え方は、なかなか理解がむつかしく、もしすべてのB原子をA原子で置き換えると、式⑬は
ΔSmix=-R(XAlnXA+XBlnXB)=-2RXAlnXA_⑯となる。もしA原子ばかりなら、ΔSmix=0となるから式⑯と矛盾するのではないかとギブスは考えた。これをギブスのパラドクスという。
現代の解釈では、A原子と別のA原子は区別がつかないので、これは矛盾ではない。
以上の理論は下記のインターネットのサイトを使った。
京都大学辻 伸泰教授の「合金の自由エネルギー」
www.tsujilab.mtl.kyoto-u.ac.jp/01TsujiLab/Education/MicrostructuresOfMaterials1/2013/01_text/2013_MM1.pdf
2.4.1 二元固溶体のギブス自由エネルギー を見て下さい。
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