年頭に今年は二つの長編小説を読もうと、なんとも身の程知らずの誓いをたててしまいました。
そのひとつがプルーストの「失われた時を求めて」で、なんとか
完読したいなと思っているのですが、いざ手に持ってみると
前途多難がありありとしてきます。
ある評論家の方は、風俗小説として読んでいけ、また一気読みせよ、
と言われているのですが、この方自身も初回完読に数年費やされているようなので
わたしの結果は目に見えてくるような気がします。(-_-;)
そこでお聞きしたかったのですが、
「失われた時を求めて」を完読された方は、どのようにして
読み進められたのでしょうか?読み進める上で何かいいアドバイスがあれば
教えていただきたく質問してみました。
また大半の方が、悔しくも途中で挫折の経験をお持ちだと思うのですが
その経験からのアドバイスなどもあれば教えていただければ
多少勇気をもって望めそうです(笑)
もし皆様方のアドバイスで、うまく読みこなせれば
誓いをたてたもう一冊の書、中里介山の「大菩薩峠」が待ち構えています。
ふう~
No.4ベストアンサー
- 回答日時:
NO.2です。
余計なお世話、と思いつつプルースト=難解、つまらないと(確かに一理あり)いうイメージ回復のために(笑)、少しでも、と思い、もうちょっとだけお話します。当時のブルジョア社会、確かに私たちには全く無縁なものです。不労所得で生活しているような病弱で軟弱で気弱で神経質で同性愛者で、というなんとも情けない男、プルーストの個人的な考えなんて読んで面白いだろうか、と誰もが思いますよね。
それでもこの作品は、今では読む人は少ないけれど、20世紀文学の金字塔とまで言われてきたのも事実です。
プルースト個人の体験はプルースト特有のもので、私たちには特殊なものなのですが、その特殊性が人間にとって普遍の歩みなのだ、ということをプルーストは訴えるために、細部にいたる描写を徹底的に掘り起こしているのだと思います。
例えば、有名なマドレーヌの一節がありますね。目の前に出されたマドレーヌの欠片の味わいが、かつてコンブレーで体験したマドレーヌの味わい(幼い頃レオニー叔母が菩提樹の花を煎じて出してくれたもの)と呼応して回想の原動力となり、その過去の事象が精緻に渡って描写されているという一説です。
いろいろな匂い、味、風景、手触り、名前、そういったものが個人特有の思い出に結びついて想起される、という経験は誰にでもあるものです。個人内部で色々な思いが錯綜したりしますよね。通常はぼんやりと考えるような一瞬の「何かの思い」ですぐに過ぎ去るものですが、プルーストの描写は人間の脳内宇宙を掘り起こすかのように、妥協なく徹底的に、ある意味暴力的に細かく掘り下げて行きます。
プルーストは抽象性を嫌います。抽象的なものではなく、細部描写を精緻に行い、それが絡まりあって成長し、結晶していくのですね。その過程が圧倒的語彙力と文章力で構成されています。
「失われた時を求めて」が20世紀文学の最高峰と詠われてきたのも、人間の普遍性を抽象性的なものではなく具体的に明確に書き出したからなのだと思います。
第一巻「スワン家の方へ」から始まり時間軸の1点が、最終巻「見出された時」で、ちょうどコンパスで円を書くように綺麗に閉じていきます。
もし、機会があれば・・・、その円が閉じる様を長い時間かけてでも体験してみて下さい。
そういう私は、トルストイも挫折したし、ジョイスも挫折しました。
エンターテイメント小説やミステリーが好きですし、世界の名作、と呼ばれるもので好んだのは、プルーストとアンドレ・ジイドくらいなものです。
この回答への補足
回答していただいた皆様へ
私事のため、お礼も締め切りも遅くなりましたことを
お詫び申し上げます。
ポイントの件ですが
三人の方から回答をいただいて、その内の二人の方に
ポイントを付けるのは、非常に理不尽な思いがありますが、やはりポイントを付けずに締め切るよりは、いいのかなあと思って付けさせていただきました。
皆様の回答はすべて記憶のとどめておきたいと思います。
有難うございました。また質問させていただく機会が有るかと思いますが、その節はまたよろしくお願いいたします。
再度の回答有難うございました。
お礼の返事が遅くなりましたこと、申し訳ありませんでした。
パソコンが不調のため、メーカー修理となるありさまで、気になっていたのですが
ご迷惑をおかけいたしまして、すみませんでした。
回答文を読ませていただいて、仰る通りだと思いました。
「失われた時を求めて」がわれわれを魅惑するものはなになのでしょうね。
一瞬にして消えてしまう、無意識的な記憶とか、その出来事に付随する
記憶などの全体像みたいなものをプルーストは、言葉にして残したかったのでしょうか。
そしてそれが幸せの原型であり、人生そのものなんだよ、と言っているのでしょうか
知人に言わせれば、プルーストは最終章の「見出された時」を書くために、延々と序章を
書いたので、「見出された時」をとりあえず読んでみたらどうかとアドバイスをしてくれますが
プルーストにとっては、記憶の断片が泉のごとく湧き出てきて、このような
大長編になっていったのかもしれませんね。
どこまで読み込んでいけるか、あまり自信はありませんが、
マドレーヌの一節はゆっくり味わいたいと思います。
プルーストに対して熱意の感じられた、くわしい解説有難うございました
No.3
- 回答日時:
最初に手をつけた時代は、幾つかの文学全集の収録部を読む形でしたので、「花咲く乙女たちのかげに」だけを、その後「囚われの女」「見出された時」「スワン家のほうへ」と、手に入ったもの順で、出版社も訳者もバラバラでした。
ようやく全巻が入手可能になった昨今では、最早そのようなファイトは失われて久しい状態です。
原文との整合性は分かりませんが、日本語としての個人的な親しみやすさといいますかリズム感では井上究一郎訳だった気がします。
長年置き去りにしている第3・4・6篇を含め、いつか通しで読めるならば…とは、さていつになるやらです。
ところで「大菩薩峠」の方は昨夏2ヶ月ほどで読了しました。四半世紀前に単行本版で読んだ際は一シーズン越えの四ヶ月余かかり、特に後半で苦戦しましたが、今回は熟読玩味とまでは行きませんが、かなり愉しみながらにして、もう終わってしまうのかと惜しんだほどです。文庫版なので巻末の解説や語句説明がとても参考になりました。
この回答への補足
確かに以前のプルーストの翻訳はバラバラでしたね。「失われた時を求めて」を初めて知ったのは
筑摩の文学大系の全集か何かだとだと思うのですが、そのころから、題名に惹かれて、
いつか読んでみたいなあ、思っていた本でした。個人の完訳が出版されているのを知ったのも
最近のことですし、文庫本一冊読むのにおたおたしている今の状態で、果たして読みきれるかどうか
とんでもない計画を立てたものだと、反省もしております。
おそらく「須磨源氏」になる可能性大だと思うのですが、乗りかかった船なので
行くとこまで行ってみようと思います。
「大菩薩峠」は二回目なのですね。うらやましいですね
この本も知名度はありますがそれに反して、あまり読まれていない本ですね。
青空文庫に収録されていましたので、すこし読んでみたのですが
どうも読みずらく、ご紹介していただいた文庫本で読んでみようかなと思います。
こちらのほうはプルーストより多少は自信があるのですが、回答者さまのように
四ヶ月余りで読めるかどうかははなはだ疑問です。(^_^;)
お礼と称して長々とつまらないことを書きこみまして失礼しました。
回答有難うございました。
あわせてお礼が遅くなりましたことをお詫びいたします。
私事で恐縮なのですが、以前から不調だったパソコンが、遂に起動しなくなり
メーカー修理というとんでもないことになりました。、気になっていたのですが、
なかなかお礼が書けずに、今となった次第です。
申し訳ありませんでした。
回答者さまとは一度同席させていただいたことがありました。
たしか吉本隆明さんに関する質問だったと思います。
ちょっと話がそれて申し訳ないのですが、あの時の回答は自分の思い入れだけで
書いたようなもので、今読んでみると、恥ずかしいものがあります。
質問者の方が二十歳前後の人でしたので、現在流布されている吉本像で判断せずに
実際に吉本さんの著作を読んでほしいなあ、という気持ちがありました。
吉本さんに批判的な人は、吉本隆明について書かれた書物だけを読んで批判している人が
圧倒的に多いと思ったからなんですね。とくに若い人などはです。
そしてこう言ったことが、「失われた時を求めて」を読もうかな、というきっかけにも
なりました。原書を読まず、それに関連した書物だけ読んでいても、なんの知識の支えにも
ならないなあ、ということですね。
しかし相手が相手だけに、いざ実行しようとしても、暗礁に乗り上げるのは当然の結果かも
知れません。
枠に収まらないようですので補足欄へと続きます
No.2
- 回答日時:
私は大学時代、プルースト研究会にいまして・・・、
プルースト研究で有名なある教授に誘われてマイナーなこの研究会に入り、その教授の解説を聞きながら読破しました。3年以上かかりましたよ。結局読み終わったのは卒業後です。
この本に関しては、一人で読み薦めるのは大変苦痛だと思います。一般の小説と違ってその「面白さ」を体験するにはある程度導きがないと絶対挫折するな、と私のような人間は思ってしまいます。
長大で、一見ダラダラとどうでもいいことが書き綴られておりますしね。
まずは抄訳、あるいは研究書などを一冊読んでみたらいかがでしょう。この本の読み方、魅力、それを少しでも掴むと原作がはるかに読みやすくなります。
海野 弘「プルーストの部屋」中公文庫
鈴木道彦 「プルーストを読む」 集英社新書
鈴木道彦訳「抄訳版 失われた時を求めて」集英社文庫
これらは今でも書店で簡単に手に入ると思います。
また、入手が難しいかもしれませんが、もしプルーストのファンになったら、この豪華本をどうぞ!(10,000円の価値あります)。
「プルーストの食卓―『失われた時を求めて』の味わい」
また、こんな本もあります。
「ロマネスク誕生 プルーストの文学をめぐる7章」
佐々木涼子 芸立出版
「ユリイカ 1987/12 臨時増刊 プルースト特集」
私は今でも夜、読む本がなくなると適当に抜粋してプルーストを読んでいます。取っ掛かりが難儀な小説ですが、もし機会があれば是非読まれることをお奨めします。
回答有難うございました。
お礼が遅くなりまして、申し訳ありませんでした。
「失われた時を求めて」を読破されたようですね。しかも三年以上の歳月をかけて。
読後の感慨も一入だっただろうと想像いたします。
もう今では出来ない相談ですが、ちょうど回答者さまが「失われた時を求めて」を
読まれていた年代に、夏休みの時間を利用して野間宏の「青年の環」という本を読んだ
記憶が甦ってきました。もう内容などあまり覚えていないのですが、読み終えたあとに
読んでいたときの凝縮された時間というのでしょうか、そんなものが一気に押し寄せてきて
しばらく茫然としていたことがありました。
おそらく回答者さまもそんな気持ちが襲ってきたのではないでしょうか。
「失われた時を求めて」などは、体力も持続力もある若い時に読んでおくべき
だったなあ、と後悔しています。その内容が把握できたかどうかは別にしてもですね。
もう今頃の歳になると、一部の小説などを除いては、特に純文学などは、面白く読めることは
まれになって来ました。
しかしそこに書籍がある以上その書籍のページを開いてみたいという、好奇心というか
強迫観念みたいなものがたえずあって、今回のような途方もない計画になったのかなあ、
と考えています。
ご紹介していただいたプルースト関連書籍一度書店で目を通して見たいなと思います。
やはり仰るように研究書を一冊でも先に読んでおいた方が、抵抗はすくないかもしれませんね。
鈴木道彦訳「抄訳版失われた時を求めて」は二冊ものと
三冊ものがあるようですね。これも書店で確認してみたいと思います。
鈴木道彦「プルーストを読む」は、以前にプルーストを読んでみようかな、と思った時に
購入して、読んだことがあると思います。訳者自らの本なので、わかりやすく解説されて
いたような記憶があります。
もし「失われた時を求めて」が完読できた暁には、ご紹介いただいた豪華本をぜひ購入して
みたいと思い、それまでの楽しみにとっておきたいと思います。
なにか今でも時折「失われた時を求めて」を読まれているのですね。
永遠を紡いでいる静寂の時間なのでしょうか。
すばらしい夜になりそうですね。
No.1
- 回答日時:
ある必要があって和訳を読み始め、早々に鈴木道彦の抄訳に切り替えましたが、それすらも飛ばし読んでしまいましたので、挫折というか、棄権経験者です。
当時のフランスの文化・習俗、特に、終焉を迎えようとしていた社交界の話題など、あまり日本人にはなじみがないものが多く、読み進める障害になりました。
また、プルースト独特なのでしょうか、ピリオドが少ない、つまりひとつひとつの文が非常に長い特徴があって、なかなかとっつきにくい面がありますが、これは慣れもあるかもしれません。
大づかみに雰囲気を捉えたい場合には、全訳よりは抄訳のほうが読みやすいように思われますが、自分は、当時の社会状況等を勉強してから読み始めたらよかったかなあと後悔しています。
※なお、翻訳については、人から指摘され、原書も確認したのですが、井上究一郎先生のものは、残念ながら若干誤訳が多いようです。鈴木道彦先生の訳をお勧めいたします。
私は完全に趣味で読み始めたわけではないのですが、
いつか完読したいとおもっており、その意味ではライフワークみたいになってしまうんじゃないかと思っています。
深夜にもかかわらず、アドバイスいただき、有難うございました。どのようにお礼文を書こうかと思案しているうちに日にちが立ってしまい、失礼致しました。
今年こそプルーストを読んでみようと考えたのは、回答者さまのように必要に迫られたものではなく、やはりどうしても一度は目を通しておいたほうがいいだろうな、という義務感みたいなものからなのです。
というのも、やはりプルーストが、その後の文学に与えた影響は計り知れないものがあるのだろうと思われますし、この作家を除いてその周辺の文学に触れても、これでいいのかなあという思いが常にありましたので、今回の途方もない計画になってしまったんだと思います。
鈴木道彦訳の抄訳版があるのは、以前から知っていたのですが、要約だけで済ましてしまうのも心許無いという、今思えば馬鹿げた考えに終始していたようです。
しかしフランス本国では、抄訳版で読まれているのが主流のようですし、抄訳版の方も検討してみたいと思います。抄訳版と言えども優に三冊分ぐらいありますよね。(^_^;)
当時のフランス文化、とにわけ社交界の舞台とか、爵位の、公爵,大公などは日本人にはなかなか理解できないところがありますよね。
やはり回答者さまの仰られるように、前知識として、当時のフランスの風俗とか社会状況を知っておく必要があるように思いました。
ましてこのような外形描写はわずかで、
後はいつ果てるともない延々とつづく内面描写がこの本の特徴であれば、それをいかに読みこなしていくかが最大の難所ですね。はたして持続できるかどうかですね。そういう意味で、評論家が言われた、一気に読むべきだの言葉は理解できるような気がしてきました。
やはり原書でも一文節が、これでもかというぐらい続いてゆくのでしょうね。(笑)
原書を読めるほどの知識はありませんので、翻訳に対するアドバイスは大変参考になりました。
たたこうした難解な書籍も翻訳者の苦労の末に今すぐにでも読めるわけですから、やはり一度は読んでおくべきだろうと思いますので、この機会に一度チャレンジしてみたいと思います。
経験に裏うちされた貴重なアドバイス、感謝いたします。
有難うございました。
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