これ何て呼びますか

ゲノム解読の意味が分からなくて困っています。

(1)ゲノムは「ある生物の遺伝子の全体」というような意味だと思いますが、それでほぼ正しいでしょうか。

(2)遺伝子は「生物の形質を子孫に伝える働きをするひとまとまりになった塩基対群」というような意味だと思いますが、それでほぼ正しいでしょうか。

(3)遺伝子はヒトのDNAの中に約3万個あるとお聞きしましたが、だいたいその程度の数あるのでしょうか。

(4)(1)~(3)が全て正しいとすると、「ヒトのゲノム」と「ヒトの全塩基対」とは、全く別のものであることになるように思うのですがそれで正しいでしょうか。つまり、「ヒトの全塩基対」の中のごく僅かの部分(つまり、遺伝情報を有する約3万カ所の部分)のみを「ヒトゲノム」と言うように思うのですがそれで正しいでしょうか。

よろしくお願いします。

A 回答 (4件)

ゲノムや遺伝子という言葉の使い方はかなり人によって曖昧ですので、ここでは、ひとつの一般的な定義を示します。



(1)ゲノムは「ある生物の遺伝子の全体」というような意味だと思いますが、それでほぼ正しいでしょうか。

生物は単細胞生物や多細胞生物がありますが、その細胞の核というところに、染色体というものがあります。ここにDNAがあります。DNAはアデノシン(A)、グアノシン(G)、シチジン(C)、チミジン(T)が結合して連なったものです。この細胞に含まれる膨大な長さの「DNA全体」をゲノムということもあります。

一方、細胞に含まれる膨大な長さのDNA全体の中で、ヒトのDNAでいえば約3万個の遺伝子が点在しています。
この約3万個の遺伝子の総体をゲノムと考えている人もいます。


(2)遺伝子は「生物の形質を子孫に伝える働きをするひとまとまりになった塩基対群」というような意味だと思いますが、それでほぼ正しいでしょうか。

遺伝子とは、意味としてはそれで正しいと思います。

もうすこし具体的には、細胞に含まれる膨大な長さのDNA全体の中で、ヒトのDNAでいえば約3万個の遺伝子が点在しています。

それぞれの遺伝子は、エキソンとイントロンという部分に分かれていて、RNAに転写されたのちに、最終的には、エキソンのみがつながった(イントロンが飛ばされた)メッセンジャーRNAとなり、ここから蛋白質が合成されます。実際に、細胞の中で働くのは蛋白質であり、ヒトでいえば約3万個の遺伝子があるので、単純に言うと、約3万個の蛋白質があって細胞内で働いていると言うことです。
一般には、「遺伝子」の配列というと、エキソンのみがつながった(イントロンが飛ばされた)メッセンジャーRNAの配列をいうことが多いです。だいたい平均的なその長さは、A,T,G,Cが500~5000個つながっているというくらいです。

これらが、せいぜい約3万個しかないわけですから、細胞に含まれる膨大な長さのDNA全体で言うとごく一部を占めているにすぎません。


(3)遺伝子はヒトのDNAの中に約3万個あるとお聞きしましたが、だいたいその程度の数あるのでしょうか。

そのようにいわれています。

(4)(1)~(3)が全て正しいとすると、「ヒトのゲノム」と「ヒトの全塩基対」とは、全く別のものであることになるように思うのですがそれで正しいでしょうか。つまり、「ヒトの全塩基対」の中のごく僅かの部分(つまり、遺伝情報を有する約3万カ所の部分)のみを「ヒトゲノム」と言うように思うのですがそれで正しいでしょうか。

(1)で「DNA全体」をゲノムと考えると、「ヒトのゲノム」equal「ヒトの全塩基対」ですし、

(1)で「遺伝子全体」をゲノムと考えると、「ヒトのゲノム」not equal「ヒトの全塩基対」です。


ただし、DNA全体の中でも、エキソン、イントロン以外のたとえばプロモーーと呼ばれる遺伝子の発現を調節する領域も大事ですし、最近では、DNAのメチル化などの修飾やテロメラーゼによる染色体DNA末端の伸長によって、DNA全体の構造変化などがおきて遺伝子発現が制御されていると言うこともわかってきていて、蛋白質をコードしている「遺伝子」自体の配列以外の重要性もわかってきているので、やはり、その重要性も加味して、「DNA全体」をゲノムと考えるべきではないかと思います。
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この回答へのお礼

私のような素人にたいへんご懇切なご説明を頂き、有り難うございます。御礼の申し上げようもありません。

ご説明の内容よく分かりました。また、baba-san様のお考えもご教示いただき、エキソン、イントロンなど私がこれまでに接したことのない新しいこともたくさん教えていただくなど、最新のかつ未知の世界へお導きいただいたように存じます。重ねて御礼申し上げます。

有り難うございました。

お礼日時:2006/01/27 14:07

付け加えて、無駄話をしますが、



実際のところゲノムがタンパク質(あるいは機能的RNA)をコードしている領域のみで構成されているヒトはいないわけですが、もしそういうものがあったとしたら、

・動原体やテロメアも持たないことになり、複製も分裂もできない。

・そういう領域は除外するという条件をつけても、染色体の構造が著しく異なることになり、おそらく現存のヒトと交配すると、雑種致死や、雑種不妊がおこる。これは定義から言って別種ということになるので、もはや「ヒト」ゲノムとは言えない。
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この回答へのお礼

子孫を作るという点からは、30億の塩基対がどの人もほぼ同じでなければならないのでしょうね。私のような素人にもそのように思えます。しかも、遺伝子の部分の塩基対配列もとんでもなく突飛な配列は多分許されないのだと思います。

また、動原体、テロメアなど新しい言葉も教えていただきました。厚く御礼申し上げます。

有り難うございました。

お礼日時:2006/01/27 14:24

これが参考になりますかな。



http://oshiete1.goo.ne.jp/kotaeru.php3?q=1445461

4)は正しくないです。
生物ありのままの姿で、子孫に伝えられる遺伝物質のひとそろいがゲノムですから、意味のあるところもないところもゲノムです。
いわゆる「遺伝子以外」の部分を失った状態で、生存、生殖する人類がいれば話は別かもしれませんが

また、そこで「遺伝子」と言っているのは基本的にはタンパク質をコードしているDNA配列をさしています。
しかし、それ以外の部分に機能が全くないかというとそうではないと言うことがわかってきています。
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この回答へのお礼

そうなんですね。「「遺伝子以外」の部分を失った状態で、生存、生殖する人類」なんていないですよね。素人がこんなことを言って申し訳ありませんが、一般のマスコミのゲノム解読や遺伝子に関する報道は変だと思います。

でも、ご専門の方にそのようにご教示いただいて、たいへんはっきりしました。

有り難うございました。

お礼日時:2006/01/27 14:14

遺伝子は遺伝情報の最小単位とのことで、


DNAは、人間の場合でいえば、その遺伝情報を塩基配列として記録している物質のことです。
DNAの代わりにRNAに遺伝情報を記録している生物もいます。

例えばある1つのたんぱく質を作り出す塩基配列をコードしているDNAがあるとします。
そのDNAをさらに2つに分割してしまうとそれは遺伝子としての役割を果たさなくなりますが、DNAではあります。

ゲノムは、生物を形作るのに必要な遺伝子のセット、
またはそれを含むDNA全体あるいはそのDNAの全塩基配列を指すようで、
ゲノムの定義は他に比べてかなり曖昧ですね。

実際に遺伝情報としての意味をなさない部分も生物にとっては必要なので、
DNA全体あるいはその全塩基配列をゲノムと呼んで差し支えないと思います。

そのような意味をなさない部分は、生物が克服してきたレトロウィルス(AIDSもレトロウィルスの1つ)
の塩基配列の残骸だという説もありますし、学術的にみても重要な部分なので、
ゲノムを全て解読したというのは、そういう部分も含めて全て解読できたということなのでしょう。

遺伝子の数は分からなかったのですが、ヒトゲノムの塩基対は約30億対あるようです。

後半は推測みたいになってしまった部分もありますが、お役に立ちましたでしょうか?
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この回答へのお礼

たいへんよく分かりました。

一般のマスコミなどの「遺伝子を解読した」という報道にいつもと言ってよいほどくっついている「DNAのうち遺伝子以外の部分はヒトの遺伝には無用」的な解説がなぜなのか不思議でならなかったのですが、「遺伝情報としての意味をなさない部分も生物にとっては必要」というご指摘により、それを払拭していただきました。遺伝子以外の部分もヒトの生存には必要なんですよね。それでないとおかしいと思います。

有り難うございました。

お礼日時:2006/01/27 12:00

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