
フォトン放出を伴う光学遷移について勉強しているのですが、時間とエネルギーの不確定性関係について質問があります。
1.この(Δt)(ΔE)>h/2πという関係式は"原理"では無いので、導出できると思うのですが、どのように導出されるのでしょうか?
2.現象としてどのように理解したらよいのでしょうか?
「t=0で系にある摂動が加わったときに、摂動が加わって以後のある時間t=τに遷移した結果が観測されたとして、その遷移が0~τの間にいつ起こったかが分からないから、遷移が起こった時間は不確定Δt(=τ)となる。」まずここまでの理解は合っているのでしょうか?
3.エネルギーの不確定性ΔEはどのようにとらえたらよいのでしょうか?例えば、2準位間(EνとEμ)の遷移だけを考えるとき、「状態はEνもしくはEμのどちらかであるから、ΔE=Eν-Eμである。」この考えは合っているでしょうか?
非相対論範囲での説明をよろしくお願いします。
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
snobberyさんが言っているように、エネルギーと時間に対する不確定性関係というのは、運動量と位置の不確定性関係とは概念的に全く無関係のものです。
そもそも量子力学には時間はパラメーターなので時間自体に不確定性はありません。一方エネルギーは、系に摂動を加えた場合には不確定性は議論することができます。
いろんな状況で似たような関係式が導出できるかもしれませんが、その意味は状況に応じて考える必要があると思います。よく見かける議論(たしかサクライの量子力学でもそうだったはず)は、フェルミの黄金則、つまり時間に依存する一次摂動の公式からエネルギーと時間の不確定性が導出されます。
δE×δt ≒ h
という関係式ですが、その場合のδEの定義は
δE=E_f-E_i
ですが、E_fは遷移後のエネルギー,E_iは摂動以前のエネルギーでこれはエネルギーの測定誤差ではありません。遷移が起こるエネルギー間の差です。そして時間
δtも時間の誤差ではなく、δt=t_f-t_iで摂動をかけ始める時刻t_iとその後観測時刻としてt_fまでまつと言う意味の時刻です。どちらも誤差ではありません。
私の理解では、この不確定性の意味は、系に揺すぶり(摂動)をかけると状態は乱されていろんなエネルギーの状態に遷移しますが、時間をかけてまってやれば次第に落ち着き、系は元のエネルギーと同じエネルギーをもった状態に集中してきますということです。
そもそもエネルギーと時間が演算子でないにしても共役な関係にある事からこのような関係式はいろんな状況ででてきます。例えば
exp(iEt/h)
は定常状態の波動関数の時間依存性。時間に依存する物理量をフーリエ展開で表すと
f(t)=∫dw exp(iwt) F(w)
となります。次元解析だけからwはエネルギーに関係した量になることは自明で、あとはどういう意味のエネルギーかという解釈だけです。そしてこの物理量が時刻t=0でだけ値を持つ、衝撃波のようなものなら
f(t)=δ(t)ですが、そのときはF(w)=1となるので、ある意味不確定性関係
「δ関数的時間依存性をもつ波はいろんなwが混ざっていてエネルギーは不確定」
というような言い方になります。
つまり状況毎に意味は異なるにせよ、不確定性関係に似たものがでて来るということはよくあることです。
ありがとうございます。少しずつですが、分かってきた気がします。
不確定性関係とスペクトルの幅の問題も解決できました。
加えて、位相を絡めて説明されている記述についても上記を理解した上で再度読んでみたところ、大方解決できました。
本当にありがとうございました。
No.5
- 回答日時:
#3のKENZOUです。
ご質問の意味がよくつかめませんでした。そこで以下は間接的なアドバイスとなります。
1.量子力学での観測値は状態関数Ψ(t)の期待値で、期待値というのは”何回”も”独立”に観測した結果の平均値ということですね(←このあたりの事情はテキストP99図3.3で説明されています。またP19も参照ください)。
今の系の場合、系の状態ベクトルΨ(t)はt=0でψ(1)とψ(2)が均等に混ざった状態にありますが、時刻の経過につれてψ(2)の混ざリ具合が周期的に変化し、周期的にt=2πm/(ω2-ω1)の時には系は初期状態ベクトルΨ(0)と平行になるということで、この瞬間の意味は特別なものがあるとは思いませんが、、、
2.テキストに書かれているように系の時間発展によるズレと思います。
>期待値からのズレ
とは何の期待値のことでしょうか。Ψ(0)の期待値のことでしょうか。それであればそうだと思います。そしてズレは系の時間発展に伴うものです。
3.自然幅はテキストの書かれているようにEとt(励起準位の寿命)との不確定性関係によって決まるエネルギーの不確定さδEですね。これは言ってしまえば1.で言った”観測”のバラツキ幅で、多数回観測した結果、いくら精度を向上してもエネルギー観測値のバラツキをこの範囲内より狭くすることはできない、ということですね。したがって、連続か不連続かとなると不連続な連続値ということにでもなるのでしょうか。
以上、ボロがでまくっているかも知れませんので(爆)、これ以上のことはご自分で考究してみてださい。
お礼が遅れてしまった申し訳ないです。
KENZOUさんのおかげで、テキストについて質問させていただいた点はおおかた解決しました。ありがとうございました。
不確定性関係についてはもう少し考究してみたいと思います。
No.4
- 回答日時:
そうです。
時間はパラメーターですね。多くの量子力学の教科書には(Δp)(Δx)>h/2πから、(Δt)(ΔE)>h/2πが導けることが記載されています。物理的な解釈では、(Δt)(ΔE)は(Δp)(Δx)とは同じように解釈はできません。そのことは、ランダウを初め、多くの教科書に触れられています。しかし、しかし計算として具体的に、(Δt)(ΔE)>h/2πをどのように導くのかを質問者さんは問題にしているのではないかと思います。計算で言えば、Δはどちらかと言えば、偏差ではなく、標準偏差に近い概念です。アインシュタン・ボーア論争も確かにそうですけれども、「(Δt)(ΔE)>h/2πを具体的に導出する」という質問者さんの意図から、No1の解答をさせていただいているのです。、[E,t]=i(h/2π)とが成り立つので、、結局はロバートソンの不等式を導くことに帰着すると言う意味です。No.3
- 回答日時:
>それでは何故エネルギーと時間は不確定性関係の表式で表せるのか?
このご質問してatomicmoleculeさんの詳細なご回答がありますので、以下は蛇足となりますが。。。
x軸方向に運動する質量mの粒子を考えます。x軸上の2点x、x+Δxを速度vで通過する際、同時にその粒子の運動量を測定したとします。運動量の(原理的)測定誤差Δpは不確定性原理によりΔp≒hbar/Δxとなります。また、粒子のエネルギーはE=p^2/2mと表されますから、エネルギー測定値も運動量測定値の不確定さが反映され、結局ΔE≒pΔp/mとなります。粒子が上の2点を通過する時間をΔtとしますと、Δt=Δx/v=Δx/(p/m)≒Δx・Δp/ΔEとなります。これからΔt・ΔE≒Δx・Δp≒hbarがでてきます。
2つのエネルギー準位E1、E2(E2>E1)間の輻射を考えますとν=(E2-E1)/hですね。ところでエネルギー準位(E2-E1)の測定誤差をΔEとしますとΔν=ΔE/h。ここで先ほどのΔt・ΔE≒hbarと一緒にするとΔν=1/(2πΔt)となります。つまり、観測時間を伸ばすほどスペクトルの周波数はシャープに出てくるということになります。
清水明著「新版量子論の基礎」(サイエンス社)にもエネルギーと時間の不確定性の話が載っていますので図書館等で一度参照してみられたらいかがでしょうか。
(余談)
ボーアは相対論では時刻tも座標と同じ資格で扱うことができるから、△t・△E≒が原理的に成り立つはずと考え、アインシュタインとの論争を繰り返したという歴史的な話はここに(↓)詳しく載っていますのでご参考までに。
http://www005.upp.so-net.ne.jp/yoshida_n/kairo.htm
科学と技術の諸相の「アインシュタイン/ボーア論争の勝者」
毎回ありがとうございます。偶然ながら、そのテキストも手元にありますので、質問を加えさせていただきます。
1.P99に「(ω2-ω1)t=2πmを満たす時刻以外では、|Ψ(t)>は大部分の時間は|Ψ(0)>では平行ではなくなる」と書いてありますが、(ω2-ω1)t=2πmを満たさないとき、つまりΨ(t)がΨ(0)に平行でないときに観測を行うのと、平行であるときに観測を行うのとでは何が異なるのでしょうか?現象として、Ψ(0)の状態ベクトルに平行になる瞬間に何か意味はあるのでしょうか?
2.P194の「hbar/(E2-E1)程度の時間が経たないと、状態の変化が顕著にはならない」という記述は、「hbar/(E2-E1)程度の時間が経たないと、測定値の期待値からのズレが、(量子論に本質的な)確率的なズレなのか、系の時間発展によるズレなのかの判断がつかない。」という解釈でよろしいのでしょうか?
3.スペクトルの自然幅の中身(?)は連続値としてとらえてよろしいのでしょうか?
分からないことだらけで申し訳ありませんが、よろしくお願いします。
No.1
- 回答日時:
>(Δt)(ΔE)>h/2πという関係式は"原理"では無いので、導出できると思うのですが、
「不確定性原理」という原理ですが・・・?
(Δt)(ΔE)>h/2πという関係式を、実際に導出することは、ご自分でしてください。ご存じのように、[E,t]=i(h/2π)となりますので、結局はロバートソンの不等式(下記URL)を導けばよいことになります。この不等式を導くことがポイントになります。
参考URL:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8D%E7%A2%BA% …
この回答への補足
早速の返答ありがとうございます。
ランダウ、シッフ、桜井のテキストで確認しましたが、あくまでもエネルギーと時間に対しては"原理"という言葉は使わずに"不確定性関係"と言うにとどめているように思います。
仮に、これが"原理"と呼ばれていているとしても、それは座標と運動量の不確定性原理とは明らかに違うように思います。座標と運動量は両立できない二つの観測量という量子力学の大前提であり、何よりも先にまず無条件に受け入れなければならないのに対して、エネルギーと時間は、時間がq-数の演算子ではなく、単なるパラメーターであるし、任意の時刻においてエネルギーは測定できるので、両立しえると思います。
それでは何故エネルギーと時間は不確定性関係の表式で表せるのか?そこが今回の質問で分からないと思った点です。(申し訳ありません。「"原理"では無い」という言葉が間違っていたら、そこは抜きにして、説明をよろしくお願いします。)
いろいろなテキストを眺めてみても、私の勉強不足のため「位相、重ね合わせ、系の寿命、相関の強さ・・・」という用語が出てきて、いまいち端的に「これこれこうだから」と説明がつかなくなっているので、今回書き込んだ次第です。
よろしくお願いします。
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