No.2
- 回答日時:
古典的理想気体の状態方程式 pV=nRT で,V を固定して T→0 としますと,
p→0 になってしまいます.
ボーズ粒子系だとそうはならないというわけです.
相互作用がなく,粒子数の決まった(個数 N)ボーズ粒子系ということで話をします.
通常,粒子は箱の中に入っているという設定です.
箱を一辺 L の立方体として,体積は
(1) V=L^3.
この中を自由に運動する粒子(質量 m)のエネルギーは
量子力学でよく知られているように
(2) ε(nx,ny,nz)
= (h/2π)^2 (2m)^(-1) (π/L)^2 (nx^2 + ny^2 + nz^2)
です.nx,ny,nz は自然数.
最低状態のエネルギーはε(111)です.
ボーズ粒子は同じ状態に何個でも入れますから,
T=0 では N 個全部がε(111)のエネルギーをもちます.
したがって,全内部エネルギー U は
(3) U = Nε(111)
です.
熱力学の公式から,圧力 p は
(4) p = - (∂F/∂V)_T
ですが(F = U -TS,S はエントロピー),T=0 では当然 F = U ですから,
今の場合は
(5) p = - dU/dV
ということになります.
あとは上の式からちょっと計算して p が出ますね.
(2)(3)から分かりますように,L が大きいほど U が小さい.
エネルギーが低い方にものごとは進みたがりますから,
L (つまり V も)は大きくなろうとします.
これが圧力の正体です.
(2)の L 依存性の説明が Mell-Lily さんの回答です.
長さ L の空間に粒子の位置を制限しますから,
不確定性関係 Δx・Δp ~ h から Δp ~ h/L で,
この運動量に伴う運動エネルギーが (1/2m)(Δp)^2 で,
これが数係数を除いて(2)になります.
ありがとうございます。
そうしますと、pはVの-5/3に比例すると思います。
これと同じように相対論的な粒子に対しても、計算すると、pは、-4/3に比例しますよね?
池内了さんの最近の著作(題名は忘れてしまいましたが)で、もっぱら次元解析をあつかったものがあるのですが、そこにこの話題が出ていて、
相対論的な場合の絶対温度0のもとでのボゾン系の圧力は体積に依存しなさそうなのですが、
池内さんが間違っているのでしょうか?
確かにいろいろ数値が間違っていたりしますけど^^;
No.3
- 回答日時:
siegmund です.
No.2 の回答は熱力学的極限,境界条件のあたりを間違えたような気がします.
ふつうの(非相対論的)ボゾンの有限温度の計算をしてみると,
ボーズ・アインシュタイン凝縮温度以下では圧力 p が体積 V によらないようです.
ただし,温度に依存し T^(5/2) の温度依存性をもつみたいです.
これが本当なら,絶対零度では圧力ゼロですね.
今,手元にボーズ凝縮の詳細を書いた本がありませんし,
自分の計算にもちょっと自信が持てないところがあります.
少し検討してからまた回答します.
最初の回答で専門家と書いちゃったのでそのままにしますが,
専門家で自信なしというのは全く情けない(^^;).
No.4ベストアンサー
- 回答日時:
siegmund です.
本を探したりしていろいろ検討しました.
No.2 の回答はどうも間違えたようです.
(2)(3)の式自体に間違いはないのですが,
統計力学では熱力学的極限をとらないといけません.
つまり,粒子の個数を N,体積を V として,
濃度 n = N/V を一定(ゼロあるいは無限大でないという意味)に保ちつつ,
N→∞,V→∞ の操作をします.
マクロな数(アボガドロ数のオーダー)の粒子を扱う上からも妥当ですし,
境界条件の違い(気体が直方体の箱に入っているか,球に入っているか)
による性質の違いも出なくなります.
この熱力学的極限をちょっとうっかりしました(お恥ずかしい).
で,No.2 の(3)から出てくる V 依存性は,上の熱力学的極限をとったときに
消えてしまう寄与です.
No.2 の(1)は波動関数の境界条件を立方体外部で波動関数がゼロという設定でやった場合ですが,
周期的境界条件ですと
ε(nx,ny,nz)
= (h/2π)^2 (2m)^(-1) (2π/L)^2 (nx^2 + ny^2 + nz^2)
で,nx,ny,nz は整数,になります.
最低エネルギーは ε(0,0,0) =0 で,L に依存しません(当然 V にも).
周期的境界条件の方だと,(幸い?)熱力学的極限で寄与がなくなる項が
最初から現れないことになっています
(ただし,どんな場合でもそうだというわけではありません).
これだと,当然 N 粒子系のエネルギーも体積によらずゼロですから,
圧力ゼロになります.
フェルミ粒子系ですと同じ状態に1個した粒子が入れませんから,
nx=ny=nz=0 以外の状態にもたくさん粒子が入っていることになり,
そちらからエネルギーの体積依存性(⇒有限の圧力)が出ることになります.
有限温度ですと,
ボーズ・アインシュタイン凝縮温度以下では圧力 p が体積 V によりません.
温度依存性は T^(5/2) で,有限温度から T→0 としてもやはり圧力はゼロになります.
なお,相互作用のない粒子系でエネルギーの p 依存性が p^2/2m であるときは
統計性(フェルミがボーズか)や温度によらずに
pV = (2/3)U を導くことができます.
もちろん,古典的理想気体でも成立していて,
pV = nRT = (2/3)×(3nRT/2)
です.
似たような議論は分散関係(エネルギーと波数の間の関係)が違う場合にも展開できます.
例えば,超相対論的分散関係 ε∝p ですと,
pV = (2/3)U の代わりに pV = (1/3)U を導くことができます.
この場合もボーズ・アインシュタイン凝縮が起こり,
凝縮温度以下では圧力 p は体積 V によりません.
ただし,温度依存性は微妙に違って,T^4 です.
この T^4 はシュテファン・ボルツマンの法則の T^4 と同じ起源です.
> 相対論的な場合の絶対温度0のもとでのボゾン系の圧力は体積に依存しなさそうなのですが、
上でも述べましたが,ボーズ・アインシュタイン凝縮温度以下では圧力は体積によりませんが,
温度依存性の方から T=0 では圧力ゼロになります.
普通のボーズ粒子の凝縮の話は,例えば,
「統計力学」(市村浩,裳華房)に割合詳しく載っています.
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