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素朴な疑問です。X線回折のブラッグの条件「2dsinθ = nλ」ですが、
これは入射角(θ1)と反射角(θ2)が同じ角度(θ1=θ2)になるときに起こります。

しかし、入射角(θ1)と反射角(θ2)が必ずしも同じではないとき(θ1≠θ2)にも、
回折現象は起こらないもののでしょうか?

というのも、このときの回折X線はトムソン散乱と呼ばれるものなので、
現象としては、物質にX線を照射したとき、物質中の電子がX線の振動電場によって
双極子的な振動が誘起され、それによって照射されたX線と同じ振動数のX線電磁波が、
電子から周囲の空間に放射(散乱)されることであると教科書には書いてあります。

つまり、電子から周囲の空間の全方位にX線電磁波が放射(散乱)されるということは、
もはや入射角(θ1)と反射角(θ2)には無関係に(θ1≠θ2)、波長が整数倍になる
行路差さえ確保されれば、強めあう回折条件を満たすことも可能ではないかと思いました。

しかし、天下無敵のブラッグの条件ですから、そんなことはまずあり得ないのは百も承知です。
しかしながら、その場合、この考え方はどのように否定されるべきなのでしょう?

A 回答 (1件)

まず第1に、X線回折は反射ではありません。


質問文中に書かれているように、照射された全原子からのトムソン散乱を重ね合わせた干渉の結果で、干渉条件を満たす全ての方向に回折X線は出ます。この干渉条件はラウエの条件といわれるもので、ラウエの条件をある一つの原子面について書き直したのがブラッグの式です。ですから干渉条件を満たす原子面が複数ある場合、同じ入射X線、結晶に対して複数のブラッグの式が存在します。

第2に、X線回折の場合の角θの取り方は考えている干渉条件を満たす原子面に対してとります。そして、弾性散乱を考えるかぎり必ず入射角と反射角は一致します。

回折X線の生じる方向は逆格子をならっていれば、エワルドの作図で示すことができます。入射X線の波数ベクトルの終点を逆格子の原点に置き、同じベクトルの始点を中心とする半径1/λ(逆格子の定義によっては2π/λ)の球を描きます。この球はエワルド球と呼ばれます。ラウエの干渉条件は散乱ベクトル(※)が逆格子ベクトル(※)に一致することですから、回折X線はエワルド球の上にあるすべての逆格子点の方向に出ます。

(※)入射X線の波数ベクトルをk、回折X線の波数ベクトルをk'としたとき、ベクトルΔk=k'-kを散乱ベクトルという。任意の逆格子ベクトルG(hkl)は(hkl)面に直交しその大きさは(hkl)面の面間隔の逆数(またはその2π倍)に等しい。ラウエの条件はΔk=G(hkl)と表される。
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この回答へのお礼

ご返答、ありがとうございました。

> 干渉条件を満たす全ての方向に回折X線は出ます。この干渉条件はラウエの条件といわれるもので、
> ラウエの条件をある一つの原子面について書き直したのがブラッグの式です。

なるほど、そうですね。ブラッグの式はラウエの条件の一部分でしたね。
ブラックの式ではなく、むしろラウエ条件の方で考えた方が、
理解する場合は正確ということでしょう。
今回は、大変参考になるアドバイス、ありがとうございました。

お礼日時:2007/01/29 09:55

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