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「A、Bで売買契約が成立し、買主Aの代金が未払いであるので、売主は
移転登記に応じないでいた場合(同時履行の抗弁)に、Aが契約の成立
をもって所有権が移転したとして物権的登記請求権を行使して登記請求
をした場合には、売主Bはこれを拒めるのか」

つまり、債権的効果としては、同時履行の抗弁により、登記に応じない場
合でも、物権の効力として登記を求められた場合には応じなければならな
いのかということです。

契約が成立すると、所有権は買主Aに移転していますので(176条)、所有
権に基づき登記を請求出来るかというのが、上記のいいたいことだと思わ
れます。

ところが、移転登記は当事者主義ですので、売主は代金が未払いであるこ
とを理由に登記を拒むと思います。
これが、単独で登記出来るものについては、所有権の効力によって登記で
きるようにも思いますが、相手方の協力が必要な場合には、物権的登記請
求権が考えられますが、これは上記のような事案を想定したものになってい
ないですものね。

従って、買主Aは代金を支払わなければ、売主に登記を求めることは出来な
いと考えてよいでしょうか?

A 回答 (1件)

結論から書けば、売買契約の当事者間の移転登記請求権は、代金債権との同時履行関係が肯定されているため、売主は、買主が代金を支払うまでは登記手続きを拒むことができる。



ではこの場合の、登記請求権の法的性質はどのように捉えるべきか?

同時履行の関係に立つという観点からは、売買契約の当事者間の移転登記請求権は、常に債権的請求権として構成した方が良いとも考えられるが、債権的請求権とすると10年で時効消滅することも認めることになる。これは、買主が代金を支払済みの場合を考えると不当であろう。そこで、買主への所有権移転を肯定しうる限り、売買契約当事者間でも物権的請求権としての登記請求権を肯定せざるを得ない。

しかし、それは無条件の物権的請求権でなく、代金全額が完済されていない場合には、
残額の支払いとの同時履行の抗弁権が付いた請求権である。その意味で、債権的請求権と物権的請求権の中間的な性質を持つことになる。そして、双方未履行で、買主に所有権が移転しているとは言いがたい場面では、登記請求権は債権的な性質を有するにとどまり、時効消滅も肯定すべきだろう。


なお、登記請求権の法的性質をどう捉えるかというのは難問であり、以前は登記請求権の法的性質を一元的に説明しようと苦心していたが、現在は多元的に説明されていて、どのような場合に登記請求権を認められるかを類型的に明らかにすべきだとの立場が有力。

以上、内田の民法から適当に引用。

以下、少し余計なことだが、補足として私見を述べる。

登記請求権は民法で直接定められた権利でなく、不動産登記法または実務上の要請から判例によって認められた権利。そのため、民法上どのように解釈するのか、あてはめるのかは、色々な議論の余地がある難しい話。そのため、統一的な論理は完成していないし、恐らく今後も完成しないだろう。

当然資格にもよるのでなんとも言えないが、受験生であれば、物権的登記請求権、債権的登記請求権、物権変動的登記請求権の3つがあって、どのような場合にどの登記請求権が生ずるのか、といった程度が分かっていれば十分と思うが。
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この回答へのお礼

いつも、懇切丁寧かつ論理明快な回答を有難うございます。
とても、参考になりました。
私は、物権的登記請求権について、誤解(或いは争いがある)があったようです。

物権的登記請求権として、新たに質問をさせていただきくことを考えております。
その節は、ご都合がよろしければ、宜しくお願いいたします。

お礼日時:2010/11/23 10:20

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