準・究極の選択

債権者代位権に関して質問させてください。
債権者代位訴訟が提起され、その旨の告知を受けた債務者は、代位された債権について処分権を失い、債権者は、目的たる債権について管理権を取得することになるとされます(非訟事件手続法76条2項参照)。
そこで、すでに債権者代位訴訟が提起された後に、他の債権者が債権者代位訴訟を提起することは可能なのでしょうか。
最初に債権者代位訴訟を提起した債権者にすでに管理権が移転していることからすれば、他の債権者が別途代位訴訟を提起することは不可能なように思えます(また、記憶違いでなければ、この場合は共同訴訟参加によるべきと教わったような気もします)。
しかし、自分が見た解説では最判45.6.2を根拠に、他の債権者も代位訴訟を提起できるとしています。自分が持っている資料では、最判45.6.2を確認できませんでした。
どなたか教えてください。よろしくお願いします。

A 回答 (3件)

風邪引いて寝込んでたものでして、と言い訳をしてみたり。

実はまだ治っておりませんが。
決して忘れているわけでも忘れたフリをしているわけでもありませんということをお伝えするために、未完成なのですが、途中まで回答しておきます。

最初に本題からすると余り重要でない話を一つ。
>特に共同訴訟的補助参加が解釈によって明確に認められているにもかかわらず、
>なぜ立法に踏み切られないのか
平成8年の全面改正の際に、「判決の効力が及ぶ第三者がする補助参加については、法45条2項の規定を適用しない」という明文の規定を置くことを検討したが見送りになったという経緯があります(司法協会刊 民事訴訟方講義案(再訂版)P.316参照)。
例えば寄託者のために目的物を預かる受寄者は「判決の効力が及ぶ第三者」であっても固有の利益を有しないので共同訴訟的補助参加を認める必要はないなどという話があります。
結局、要件として「判決の効力が及ぶ」というのが適正かどうか検討の余地がまだまだあるということのようです(要件の明文化が困難というのは、有斐閣の新民事訴訟法講義に記述があります。)。


では本題の方へ。
正直言うとちょっと甘く見ていたのですが、結構横断的な知識の必要な問題なので、見通しを付けるために問題を前提からきちんと整理し直してみました。司法試験の論文でもこのレベルの問題は出ないんじゃないですか?ってくらい(債権者代位訴訟の問題なんてせいぜい当事者適格と二重起訴くらいで済むレベルだと思います。)。

判例通説では、債権者代位訴訟における代位債権者は、法定訴訟担当である。
債務者は、債権者代位訴訟の提起により、被代位債権について管理処分権を失う結果、当事者適格を失う。
債務者は、当事者適格を失った結果、別訴を提起することができない。
債務者は、当事者適格がないが訴訟参加することができる。代位訴訟の判決効の拡張を受けるので共同訴訟的補助参加になる。
債務者は、代位債権者の当事者適格を否定する目的であれば当事者適格を有し、独立当事者参加ができる。
ここまではいいでしょう。

さて問題は、別の債権者の立場はどうなるのかという議論ですが、これを二つに分けて考えてみます。
一つは、複数の債権者が共同して代位訴訟を提起する場合。
もう一つは、既に代位訴訟が提起されている場合に、それに関わっていない他の債権者が採りうる手段。

まずは複数の債権者が共同して代位訴訟を提起する場合からです。
これが類似必要的共同訴訟になるというのが通説(争いありますけど。)。おや?類似必要的共同訴訟における共同訴訟人は「個別の当事者適格を有する」んじゃないの?個別の当事者適格を有するからこそ、原始的に共同訴訟が可能であり、更に共同訴訟参加もできて当然じゃないの?共同訴訟人間における判決合一確定の要請は判決の効力の拡張を受ける者であることに由来するんだから、各債権者は判決の効力の拡張を受けるの?という疑問が出てきますね。ああ、話が面倒になりそうです。
類似必要的共同訴訟の要件論その他は本題ではないので、ここでは、複数の債権者が共同して代位訴訟を提起することは可能だし、その場合に類似必要的共同訴訟になると考えるのが通説ということだけ押さえておくことにします。後で必要に応じて触れます。


さてここからが本題の代位訴訟係属中に他の債権者による代位訴訟の提起は可能か?という議論です。
この議論の最初にして最大の問題は、他の債権者に当事者適格を認めることができるのかどうかということなのは既に判っています。

そして、判例通説の考え方からすれば、「被代位債権に対する代位債権者の管理処分権は、債務者の処分権に由来し、代位訴訟提起により債務者の処分権が喪失する限りは、他の債権者が管理処分権を得ることはできず、当事者適格を有することはない」と考えるのが理論的には素直であるということは言えます。こうなると、他の債権者は当事者適格を有しないということになり、債務者自身と同じく、補助参加か独立当事者参加を考えるしかないことになります。
なお、当事者適格を欠く者に共同訴訟参加を認める説も実はあるらしいのですが(新堂「新民事訴訟法 第4版」弘文堂P.754によれば桜井「共同訴訟的参加と当事者適格」に記述がある様子。)……すると参加と補助参加の区別はどうなるんでしょうねぇ?これまで考えると収拾が付かなさそうなので、理論上、共同訴訟参加の可能性が全くないとまでは言えないが、当事者適格がない以上は、やはり共同訴訟参加はできないと考えるべきであるとすべきでしょう。
そういうわけで、当事者適格がないから共同訴訟参加はできず、ただ、共同訴訟的補助参加あるいは独立当事者参加ができるということになります。

……つづく。

この回答への補足

東北関東大震災で被害を受けられたのでしょうか。心配です。
私はといえば、震災当日、6時間かけて歩いて帰宅し、そのまま倒れこみ、起きてすぐさまお礼を投稿したため、投稿時にはこのような大災害であることを認識していませんでした。
もし被災されていたのであればご回答どころではないと思います。
また、質問してから一カ月以上たつこともありますので、あと数日で締め切らせて頂こうと思います。
今回は本当に勉強になりました。長期間、本当にありがとうございました。
ご無事であることを心より祈っております。

補足日時:2011/03/23 17:01
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この回答へのお礼

ご回答ありがとうございます。
定期的にチェックしていたのですが、返答が遅れてしまいました。申し訳ありません。
お体の調子を崩されていたとのことですが、その後いかがでしょうか。

・共同訴訟的補助参加について
やはり「判決の効力が及ぶ」要件の議論が決着していない点に問題があるのですね。立法過程というのは普段の勉強であまり触れることがないものですが、どうしてもわからないことについて立法過程の議論を知ると一気に合点がいく、ということは本当によくあるものだなと再認識いたしました。

・複数の債権者が共同して代位訴訟を提起する場合
確かにおっしゃる通りの疑問を抱きます。
以下に思ったことをそのまま書き残してみました。あくまで独り言ですから回答がご面倒になる場合は無視してください。
この場合、管理処分権が分属するとでも考えるのでしょうか。しかし、この言い方では固有必要的共同訴訟のほうがしっくりくるような。しかも、判決の拡張を受けるのか否かは疑問が残ります(判決の拡張はないため「合一にのみ確定すべき場合」(40I)にはあたらないとしても、やはり合一確定は事実上要請されるのでしょうから、必要的共同訴訟が望ましいとは思います。しかし、なぜ類似必要的なのか。共同訴訟参加はできないわけですから、なおさら類似必要的と考えるのか疑問が残ります)。なぜ通説が類似必要的共同訴訟とするのか、非常に興味があります。

・他の債権者の代位訴訟係属中に代位訴訟を提起可能か
独立当事者参加を考えた場合、参加する債権者から、原告となっている債権者に対する請求はどのような内容になるのでしょうか。また、片面的独立当事者参加による場合、共同訴訟的補助参加と具体的にどう違うのかも気になるところです。独立当事者参加は難しくてわからないことばかりですが、これを機に勉強しなおしてみます。

正直、ここまで難しい問題とは思いませんでした。しかし、この質問を機に非常に民事訴訟法の勉強が面白くなってきました。ありがとうございます。
どうか引き続きよろしくお願いします。

お礼日時:2011/03/12 12:57

私なんかよりもあなたの方がよく解っているのでは?という気がしないでもありませんが。


ちょっと長い回答を書くゆとりがないので、即答できるところだけ回答しておきます。残りは時間を頂きたいので、締め切らずに少し気長に待ってもらえませんか?私自身、Q&Aサイトに四六時中貼り付いているほど暇人なわけでもありませんし、この話はうちにある基本書にはほとんど載っていないので、別の文献を当たる必要があるものですから。
誰か即答できる人がいるといいのですけれどね。


>判決効の拡張を受けない限り、共同訴訟的補助参加もできない
私は「基本的には」そう考えています。「できるとしたら」という書き方をしたのは、あくまでも仮定的な話だからです。1の場合は当事者適格を認めないのですから共同訴訟参加は要件を満たさないからできないということは論理必然的にはっきり言えます。しかし、あくまでも「当事者適格がない」ということから言えるのはそこまでにすぎません。ですから、当事者適格がない前提で「できるとしたら」ということなのです。
そして当事者適格以外の問題も考慮した上での「できるかどうか」は検討していませんが、2の方で書いたとおり、債権者代位訴訟における他の債権者は当該訴訟の判決によって事実上の利益不利益を受けるだけで判決自体の効力が及ぶわけではないと考える限り、同じ理屈で1の場合には共同訴訟的補助参加もできないということにはなります。しかし、これは前提自体があくまでも私の考えにすぎないので間違っている可能性は十分あります。あくまでも私がそう思っているだけなのです。
ただし一つ付け足しますが、「共同訴訟的補助参加」については「判決の効力が及ぶ者でなければならない」とは限らないという見解もあることには留意すべきです。判決の効力が及ぶから補助参加人の地位を強化する必要があるという単純な論理にはならないということです。そもそも共同訴訟的補助参加を認める明文の規定がないひとつの理由として「要件を明文化するのが困難である」という事情があるのですが、まさにその例なのです(突き詰めれば、単純に、訴訟ごとの補助参加人の地位の解釈問題として個別に決めれば良いのであって共同訴訟的補助参加という類型は不要であるという考え方にもなります。)。
つまり、仮に「判決の効力が及ぶ者ではない」という前提が正しいとしても、なお、共同訴訟的補助参加が可能であるという結論を導くことは不可能ではないということは注意を要します。

その他の部分はまた後日に。
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この回答へのお礼

お礼が遅くなり申し訳ありません。
本当に目から鱗が落ちるようなご回答で、大変勉強になっています。
特に共同訴訟的補助参加が解釈によって明確に認められているにもかかわらず、なぜ立法に踏み切られないのかと思い、釈然としないところがありましたので、今回のご回答により本当にすっきりとしましたた。
また、前回書き忘れてしまいましたが、共同訴訟参加の可否については、完全に自分の記憶違いだったようです。確かに当事者適格が認められない以上、共同訴訟参加ができないことは明白ですね。

前回はろくにお礼もせずに、一方的に自分の意見と質問をぶつけてしまい、失礼いたしました。
改めて、ご回答ありがとうございます。また、お時間をとらせてしまいまして、申し訳ありません。
どうかよろしくお願いします。

お礼日時:2011/02/20 11:17

また難しい問題ですねぇ。


最判昭和45年6月2日というのは、多分これでしょう。
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_2010031912 …
しかし、この判例は、債権者代位訴訟係属中に国税滞納処分に掛かる差押え債権についての取立て権の行使としての訴えが提起された場合に、国税徴収に優先権があるから債権者代位訴訟は棄却となるべきであるということにはならないという話なので、単純な同一債権についての債権者代位訴訟の競合とは事情が異なると思います。この判決から、もし順番が逆で優先権のある国税徴収のための訴訟が先に提起されていたとしても後訴となる債権者代位訴訟は不適法却下にならないと言えるのか?という疑問はやはり残ります。


正直この辺はよく判らないので一応、個人的意見はつけますけど、あくまでも独断と偏見に満ちた個人的意見です。

判例に従って債権者代位訴訟の代位者は法定訴訟担当であるというのを前提にしましょう。ここから検討すると流石に問題が複雑すぎますから。
債権者代位訴訟が提起されると、債務者にその告知を受けた債務者の処分権が喪失するというのは問題はないでしょう。この結果、債務者は代位訴訟の対象となっている債務について、当事者適格を失うというのが判例です(じゃあ、告知を受けなかったらどうなるのか?というのは問題ではあります。告知を受けなかったら処分権は喪失しないと考えるのが条文解釈上、素直ですし、それで実際に訴えが提起されたらそれは単なる二重起訴の問題として処理すればよいと思います。)。

さて問題は、債務者に当事者適格がないことによって他の債権者の当事者適格がどうなるのかということです。

1.債務者が当事者適格を失う以上、他の債権者が債権者代位権行使によって当事者適格を有することにはなり得ず、もはや別の代位訴訟を提起することはできない。
2.債務者に当事者適格がないとしてもそれは債務者自身の処分権の喪失が理由であって、他の債権者の代位権行使は、当該他の債権者自身の固有の権能であるから、債務者の当事者適格の有無は他の債権者の当事者適格の有無に影響せず、別の代位訴訟を提起することはできなくはない。

どちらがいいでしょうね?
もし1と考えるならば、他の債務者は当事者適格を有しないので共同訴訟参加もできません(ですから、「記憶違い」でしょう。)。できるとしたら、共同訴訟的補助参加です。
もし2と考えるならば、他の債務者は別訴提起が可能ということになりますが、この場合の別訴は二重起訴になってしまうのでそのままだと違法になります。そこで弁論の併合をするか固有の請求を立てて独立当事者参加するかというところになると思います。
そこで共同訴訟参加できるのかどうかは疑問があります。債権者代位訴訟で債務者が判決効の拡張を受けるのは間違いないのですが、他の債権者は判決効の拡張を受けるのではなくて、債務者が判決効の拡張を受けた結果として、事実上、利益不利益を受けるだけではないかと思うからです。仮に債権者代位訴訟ではなく、債務者自身が第三債務者を相手取った訴訟で敗訴したとして、その効力が債権者に及ぶわけもなく、単に、債務者自身の敗訴によって代位すべき債権が存在しないことが確定した結果として、債権者は債権者代位権を行使できないという不利益を受けるだけにすぎません。すると、この場合との比較で、債権者代位訴訟においても、他の債権者は、判決効の拡張を受けるわけではなく、単に、債務者の債権が存在しないことになった結果として債権者代位権を行使できなくなるに過ぎないのですから、判決効の拡張を受ける者ではないと考えるべきだと思います。すると、共同訴訟参加はできないと考えるべきだと思います。
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この回答へのお礼

ご回答ありがとうございます。
よろしければ、さらに質問させてください。

 1の考えに立った場合ですが、共同訴訟手補助参加とは、判決効の拡張を受けるが当事者適格を有しない者が、その手続保障を充足させるため、補助参加の要件を満たす場合に解釈上許される参加形態であると理解しています。
 そして、1の場合の他の債権者は、当事者適格がないために争うことができないだけですから、既判力の拡張を受けず事実上の利益不利益を受ける立場にすぎないと考えます。
 そうすると、判決効の拡張を受けない限り、共同訴訟的補助参加もできないこととなってしまうと思ったのですが、どのように考えたらいいのでしょうか。

 さらに、上の自分の考えに立って1,2のいずれの考え方がよいか考えてみました。
・1の場合
通常の補助参加しかできず、訴訟行為が制限される(民訴法45II)。
後の債権者は当事者適格を有しないことが確定的であり、第三債務者の法的地位の安定という面からみれば、優れている
・2の場合
当事者であるから訴訟行為に制限はない。
二重起訴の弊害も弁論の併合により解消できる。
判決効の拡張はないため、先の債権者代位訴訟の判決が確定した後も、争うことは不可能ではないことになる。しかし、その場合、民訴法115I(2)によって本人に拡張される既判力が、先の債権者代位訴訟の既判力と矛盾する恐れがある。第三債務者の法的地位の安定からも妥当でない。

 したがって、先に責任財産の保全に乗り出した先の債権者と比べて後の債権者が不利益を被ることとなるのはやむを得ないと考えられることから、法的安定性に優れ、かつ明確である1の考えが妥当と考えました。

 また、1の考えの場合に共同訴訟的補助参加が可能と考えた場合も、やはり法的安定性に優れる1の考えが妥当と考えます。

 あと、これはご回答とは関係のない質問なのですが、「既判力は及ばないが後に争えなくなる事実上の不利益がある」ということはよく聞くのですが、いまいち腑に落ちません。
 先行した訴訟がたとえば本人訴訟だったりして、あまりに稚拙な訴訟追行であった場合など、後の訴訟で争うことに十分な意義があると考えるからです。
 しかも、とある弁護士から「本人訴訟は確かに珍しいが全くないわけではない。」「既判力の矛盾が生じるぐらいよくある。」という話を聞いてしまったことがあるので余計にそう思ってしまうのです。
 この質問こそ稚拙な内容かもしれませんが、率直に疑問に思うところです。勉強していて、「事実上の不利益」を理由にする記述があると常に引っかかってしまいます。このことについてご意見を頂けないでしょうか。

よろしくお願いします。

お礼日時:2011/02/16 12:21

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