
No.7ベストアンサー
- 回答日時:
直柄の瓢ってどんな物なんだろう、どんなふうに靡いているのかしらと、甚だしくも見たい知りたいと思いつのられる帝の姫宮は、御簾を持ち上げて、「そこの男よ、こちらに参りなさい」と「召しければ」…
この「思さる」は、「ゆかしく」という「行く」の形容詞化した語として、その対象を具体的に自発的に見たい知りたいという情意動詞に下接しているのですから、つまり強く自発性を発揮している構文中にあるのですから、なにより自発性用法であることは間違いありません。
この文章において、姫宮自身に「いみじうゆかしく」思い募る自発性が表現されていなければ、その後の七日七夜背負われての駆け落ち沙汰は説得力に乏しいものになるのですから。
その直後の、火焚屋の衛士に「こち寄れ」と「召しければ」の用法を見ても、「なされ」などの敬語のない平体表現に近く、それとのバランスからしてもその直前の「おぼされ」の敬語用法が平体表現に近くともバランスは崩れていないでしょう。
この箇所の主眼は、なにより深層の姫宮が実に<はしたなくも>、辺鄙な武蔵の国の俗習ごときに憧れて、いな東男の凛々しさに一目惚れして、駆け落ち出奔に至る記述にこそあるのですから、変に高レベルの敬語で記述されては如何にも白々しくなりましょう。
この件の話し手やそれを聞いて記している作者自身において、この「竹芝寺縁起」に浸りこんだかと思わせるほど熱心なだけに、ここで姫宮の意志の凄さに驚き憧れているが故に、このような平体に近い記述の中で、むしろこの姫宮に対する思い入れ故に敬意がそこはかとなく滲み出て来ている──その意味で、この「いみじうゆかしくおぼされければ」はまた、「おぼす」よりも自発的な記述であればこそ、遠くの距離をおいての記述としての敬意もまた高いと見るべきでしょう。
#6さんが紹介されている「全訳読解古語辞典」の引用、「ただし尊敬と自発は識別が微妙で、尊敬の例を自発と解することもできる」はもっともな指摘でしょうが、大切なの何より「自発」こそが基本だという点であり、あとはその文脈や文章全体の基調に添うことだと思われます。
この回答への補足
非常に説得力のある御説明、ありがとうございました。
これをベストアンサーとしたい…と思うのですが、更に反対意見があるかも知れないのでもう少し待ちます。
No.6
- 回答日時:
1995年第一版の三省堂の全訳読解古語辞典には「る」で、『(2)尊敬の用法は中古になって発達したもので、多くは他の尊敬語と一体になり経緯を表す。
和文では「おぼす」「仰す」とともに用いられ一語化した「おぼさる」「仰せらる」の形で用いられことが多い。中世になると単独で用いられるようになるが、個人的敬意より公的敬意の意が強くなる。院政期以降、、、』とあります。中古とは、更級日記の書かれた頃を含みます。1990年初版の旺文社の全訳古語辞典には「る」で、『(4)尊敬の意を表す。[源氏][更級] (4)(4)の尊敬の意で用いる「る」は「給う」に比べると敬意の度が低く、「、、れ給う」という形で尊敬に用いることはなかった。平安時代も末になると、尊敬の例が増えてくるが、それらの例を見ても、天皇・大臣といった人々の例は少ない。広く尊敬の意で用いるようになるのは中世以降である。また、他の尊敬語「おぼす」「おぼしめす」に付いた「る」が尊敬になるのは中世以降で、平安時代の用例では尊敬にはならない』とあります。平安時代に、更級日記は書かれています。
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この2つの辞書で、「おぼさる」の用例の解釈が少し違います。
辞書の編者の説の違いがあるのか、詳しいことは私は知りませんが、
1990年初版の旺文社の全訳古語辞典では「おぼさる」も自発と可能(主として否定形で使われる)との説明もあります。
1995年第一版の三省堂の全訳読解古語辞典では「おぼさる」も自発、可能、尊敬の用法が示され、更級日記の「いかなるひさごの、いかになびくらむと、いみじうゆかしくおぼされければ、御簾を押し上げて、」のところが例示されています。そして『尊敬の用例は平安時代末期からの用法で、最高級敬語であるが、敬意が薄れ、ふつうの敬語表現として中世以降多く用いられている。ただし尊敬と自発は識別が微妙で、尊敬の例を自発と解することもできる』と解説されています。
この回答への補足
「る」からの直接アプローチですね!
辞書によって説が異なりますか。
専門家の間でも意見が分かれるとなると…これは迷宮入りでしょうか。
No.5
- 回答日時:
三度失礼いたします。
中古では自発のみ、というのは誤りですね。中古の和文において「おぼす」は「おぼしめす」より敬意が低く、「思ひ給ふ」より敬意が高い語です。そのため、他の動詞などと重ねて敬意を強めるということがあるのです。また、確かに中古の和文においては「おぼさ/る」の「る」は自発を表すことが殆どです。が、中古で使われていなかったわけではありません。中古では中期ごろまでは単独で尊敬の意味を表すものは少なく、他の尊敬語と併せて使われていました。
こうした用法は、「竹取物語」や「大鏡」にも出てきています。
更級を、街頭箇所の前後含め読んでみましたが、私にはむしろ自発と解釈する必然性がない、と思えるのですが。
この回答への補足
更級日記は僕も読みましたが、該当箇所は、尊敬・自発どちらでも解釈可能であると思います。
それ以上の判断は僕には付けられないので、第三の意見を待とうと思います。
No.4
- 回答日時:
旺文社の「全訳古語辞典」には「他の尊敬語『おぼす』『おぼしめす』についた『る』が尊敬になるのは中世以降で、平安時代の用例では尊敬にはならない」とあります。
私も自発と解釈してまったく問題ないと思います。むしろ、この「る」を尊敬に解さなければならない積極的な根拠を探すほうが難しいと思われます。あえて多くは申しませんが、「帝の姫君だから」は尊敬とする根拠にはなりません。
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