ブラッグの式の説明でよく見る図で散乱角(回折角?)はθで表されていますが、ブラッグの式の説明では光路差がちょうど波長の整数倍となって強め合っている場合を図示しているだけであり、実際にはθ以外の角度にも散乱しているという認識であっているでしょうか?
また、ブラッグの式の図では入射角と散乱角が等しいような書き方がされていますが、様々な方向に散乱しているとしても入射角と散乱角が等しくなるときのみブラッグの式が成り立つためにあのような書き方をされているのでしょうか?
ブラッグの式のθは散乱角を示していますが、入射角でもいいんではないかと不思議に思っています。
もう一つお願いします。
X線散乱法では広角散乱と小角散乱に分けられていますが、小角と広角の違いは散乱角の違いであり、ある角度で入射したX線の散乱角が小さい部分を見るのが小角、散乱角が大きい部分を見るのが広角で正しいでしょうか?
例えば一つの試料に対してX線を入射した際に小角と広角を同時に測定する場合はどのように測定しているのでしょうか?
A 回答 (2件)
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No.2
- 回答日時:
内容から見て大学生以上だと思いますので、X線の回折を考える場合、ブラッグの式の図をベースにするのはなるべく早く止めて、ラウエ関数と、ラウエの条件・エワルドの作図をもとに回折を考えるようにしてください。
ブラッグの条件は非常にわかりやすく便利なので使うのは一向にかまわないのですが、ブラッグの式の説明の図でX線回折を理解しようとするとご質問のような混乱や誤解を引き起こす元になります。>ブラッグの式の説明では光路差がちょうど波長の整数倍となって強め合っている場合を図示しているだけであり、
そのとおりです。
>実際にはθ以外の角度にも散乱しているという認識であっているでしょうか?
おおよそ正しいですが、ただ、その内容は少々面倒で、いくつかのレベルに別れます。
(1) X線が照射された各原子からの散乱という意味では、各原子からはありとあらゆる方向に散乱X線が放出されています。この意味で正しいです。
(2) この各原子からの散乱光を束ねると、強め合う方向とそうではない方向があります。ブラッグの式はこの内の特に顕著な極大の方向を示しているもので、実際の回折X線は極大のまわりに広がって分布していて(ラウエ関数)、極大以外の方向の散乱強度も厳密には0ではありません。結晶サイズが非常に小さい場合には、この拡がりはかなり大きいこともあります。したがって、この意味では正しいです。
しかし、通常は結晶サイズが十分に大きいので、極大のごく近傍以外はバックグランドに埋もれてしまうので、現実的な観点からは正しくありません。
(3) 単色の特性X線を使った回折の場合。単色X線でも、一つの単結晶でたまたま二つ以上の格子面が回折条件を満たす場合があります(ラウエの条件により、エワルド球と交差するすべての逆格子点の方向に回折線は生じうる)。この場合はそれぞれの回折面に対して別々の図を用意する必要があり、この意味で正しいです。
ですが、必ず二つ以上の面が回折条件を満たすわけではないので、
「どんな場合であれ必ず」θ以外の角度にも散乱している「格子面がある」
という意味であれば、この場合それは誤りです。
(4) ラウエ法のような白色X線を使う回折の場合。この場合は各格子面がブラックの法則を満たすような波長のX線を選んで回折しますので、消滅則で消える面、限界球を越える高指数の面をのぞいてすべての格子面から四方八方に回折線が一つの単結晶でも同時に生じます。ブラッグの式を説明する図は一つの図で一つの格子面の状況しかあらわしませんので、生じる回折線の全てに一つづつ図を用意する必要があります。この意味でも正しいです。
>小角と広角の違いは散乱角の違いであり、
まあ、そうなんですが、広角はおもに原子サイズレベルの周期性(つまり主に結晶)を対象としますが、小角は主に周期を持たない散乱体の形状や大きさなどの問題にしますので、その解析方法などの取り扱いは自ずから大きく異なったものになります。なので、液体や気体からの散乱の場合は、角度域的には広角のレンジですが、取り扱いとしては小角の手法になります。
>例えば一つの試料に対してX線を入射した際に小角と広角を同時に測定する場合はどのように測定しているのでしょうか?
実物は知りませんが、広角カメラのまん中にダイレクトをスルーする穴を開けて、それを小角カメラに導けばいいのでは?小角は経路とカメラを真空に引く必要があるので、広角と一体化させた場合は、広角カメラも同時に真空に引くことになると思います。
なるほど。わかりやすい説明ありがとうございました。
ラウエの条件等については完全にスルーしていました。もう一度見直してみたいと思います。
今後実験でX線散乱を取り入れていこうと思っているので、引き続き勉強を続けてみます。
非常に助かりましたありがとうございました。
No.1
- 回答日時:
>ブラッグの式の説明でよく見る図で散乱角(回折角?)はθで表されていますが、ブラッグの式の説明では光路差がちょうど波長の整数倍となって強め合っている場合を図示しているだけであり、実際にはθ以外の角度にも散乱しているという認識であっているでしょうか
まず、用語の確認。
ブラッグの式で出てくるθは散乱角ではありません。散乱角とは入射光と散乱光の波数ベクトルのなす角のことであり、ブラックの条件を満たす場合は散乱角の大きさは2θとなります。
ブラック条件を満たさない角への散乱はあるのか、と問われれば"あります"。
ただし、その方向への散乱光は結晶内の他の散乱体からの散乱光と位相差が2πの整数倍とならないためトータルではほとんど打ち消しあっている、というのが実情です。
>また、ブラッグの式の図では入射角と散乱角が等しいような書き方がされていますが、様々な方向に散乱しているとしても入射角と散乱角が等しくなるときのみブラッグの式が成り立つためにあのような書き方をされているのでしょうか?
上に書いたように、ブラックの条件を満たさない散乱方向については散乱光同士が打ち消しあってしまうため非常に弱くなります。
>ブラッグの式のθは散乱角を示していますが、入射角でもいいんではないかと不思議に思っています。
これは最初に書いたように、ブラックの条件を満たす時に散乱角が2θとなるようにしています。
実際に測定で決定される値は散乱角であるためそのほうが都合がよいのです。
鏡での反射であれば最初から面の向きが分かっているためその面の垂線となす角である入射角が直接得られるのですが、X線回折測定ではそもそも結晶の面の向きなどわからないため入射角を調べるすべがないのです。
>X線散乱法では広角散乱と小角散乱に分けられていますが、小角と広角の違いは散乱角の違いであり、ある角度で入射したX線の散乱角が小さい部分を見るのが小角、散乱角が大きい部分を見るのが広角で正しいでしょうか?
その理解でよいと思います。
ただし、小角散乱と広角散乱では調べる対象が異なることが多い。
>例えば一つの試料に対してX線を入射した際に小角と広角を同時に測定する場合はどのように測定しているのでしょうか?
程度による。
小角散乱はどうしても入射光がそのまま突き抜けている成分を除去する必要があるのですがそれを行ったうえでかなりの小角部分を見ようとするとどうしてもカメラ長を大きくとる必要が出てくるでしょう。同じカメラ長で広角散乱をとろうとすると測定器をかなり大きくする必要があります。
例えば球晶の成長を観察する、といったかなりスケールのものを観察しようとするとカメラ長は数mもしくはそれ以上になることもあります。同じカメラ長で広角散乱を見ようとすると測定器がとてつもなく大きくなり非現実的です。
ご丁寧な説明ありがとうございました。
θは回折角でしたね。なぜ2θの値を使うのかやっとわかりました。
助かりましたありがとうございました。
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