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いつもお世話になっておりますが、今回もよろしくお願いします。
例えば、飛行機にエンジンが四基あるとします。そのうちの一基が故障してしまった場合、「エンジン一基を失った飛行機」と表現することがあります。ところでそれと同じ意味で「エンジン一基が失われた飛行機」という表現も存在します。つまり直前の助詞が異なるだけで「失った飛行機」と「失われた飛行機」は、能動態と受動態の違いがあるにもかかわらず、同じ意味をもつことになってしまいます。
さて質問ですが、「彼女を失いたくない」は「彼女が失われたくない」と書き換えても同じ意味になるのでしょうか。後者は非文のように思えますが、それは私の考えすぎでしょうか。
これらの根本的な違いは、名詞(最初の例文では「飛行機」)を修飾しているかどうかによって生ずるものなのでしょうか。外国人が書いた日本語を直してあげているうちに、すっかり混乱・迷走に陥って正常な思考が困難になっていますので、お伺いしております。
できましたら、文法理論に即してご説明いただければ幸いです。

A 回答 (14件中11~14件)

この「失(うしな)う」については、次のような事由から特殊な意味合いをもつ動詞なのだと捉えてはいかがでしょう。



1.自他動詞の意味合いの変遷と揺らぎ
1)「失(う)せる」
古語での原形にして自動詞の「失(う)す」は、江戸期頃からの口語形「失(う)せる」では「行く・去る・来る・居る」などの卑語表現として拡大したため、現代語として「失(う)せる」の本来の「存在していたものがなくなる/普通の状態がくずれて秩序や調和がなくなる」といった意味合いは殆ど死語に近くなり、その代用としての「失われる」にこのような意味での自動詞の役割が振られている傾向があります。
2)「失(うしな)う」
ヲ格を取る他動詞「失う」の場合も、(1)瞬間動詞であり、しかも(2)対格(ヲ格)に積極的に当人の意志で働きかける「殺す/壊して無くす/手に入れようとして取り逃がす」など意味合いはもはや大きく薄れ、(3)当人の意志を離れた不可抗な事態において「持っていたものを失くす/主体からヲ格の対象が切り離れる」意味でのみ用いられるようになった傾向があります。
3)受身形「失われる」
他動詞「失う」が瞬間動詞なので、その受身形は結果動詞として「結果が継続している」様態を示す意味が加味されたことで「失われている」状態を意味し、その結果、自動詞「失せる」の意味変化で希薄化した「存在していたものがなくなる/普通の状態がくずれて適当な状態ではなくなる」といった意味合いへとシフトされていったと見られます。

もちろん、それぞれの意味の変遷や相似性があるとしても、単純に同じ意味合いなのではなく、なお取るべき格の変化など構文上の差異があることへの留意を怠ってはならないでしょう。
次のその例文を上げてみます。
1)自動詞「失(う)せる」
その飛行機では、その第一エンジンの機能が失せた。
(主題格)、        (連体修飾)(主格)(述部)
「第一エンジンの機能が失せた(失せてしまった)飛行機」

2)他動詞「失(うしな)う」
その飛行機は、突然その第一エンジンが機能を失った。
 (主題格)、         (主格)  (対象格)(述部)
「突然に第一エンジンが機能を失った飛行機」

3)他動詞の受身形「失われる」
その飛行機では、第一エンジンでの機能が失われた。
(主題格)、     (対象格)   (主格) (述部)
「第一エンジンでの機能が失われた(ままの)飛行機」

2.他の類似動詞との相違
たとえば「JK123便は第一エンジンが突如異音と共に火を噴き<壊(こわ)れ>てしまった。」、「JK123便は激しい衝撃と共に第一エンジンが脱落し<無くなっ>てしまった。」、「翼の<折れた>飛行機」、「パイロットの<倒れた>操縦席」などの場合は、その受身形「壊される」「無くされる/失くされる」「折られる」「倒される」は、どれも置き換えが不自然になります。

ですから、飛行機エンジンの例のような物主動詞文と異なり、吾と彼女の関係のような生物主語や生物対格の構文においては、この「失う」の用例は単純にスライドできない次第です。
こういう場合には好悪表現や遠近距離表現、また遣り貰い表現などに言い方を移すことが望まれます。
例)私は彼女を失くしたくない。私にとっては彼女が失われるなどとは全く考えられないことだ。
私は彼女を手放したくない。彼女に居なくなられるのなどとは私にとってはとても耐えられないでしょう。
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この回答へのお礼

私の期待と想像を上回る本格的なご回答、ありがとうございました。
研究熱心な外国人もいますので、その人にとっては貴重な資料になり得るものと思います。

お礼日時:2013/07/10 01:31

失われた過去、失われた時代、失われた青春、失われた機能、というように、「失われた」のあとには、失ったもの自体が続くというのが通常の感覚というものです。

ですから、「失われた飛行機」という表現が間違いなのです。飛行機の全体構造は、そのままで、何も欠損しているわけではありません。飛行機全体が消え去ったわけではありません。
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この回答へのお礼

ご回答、ありがとうございました。
そうすると「国民の信頼が失われた内閣」という表現も、間違いになるのでしょうか。その場合でも、内閣自体は存在しています。

お礼日時:2013/07/07 16:00

ちょっと間違えておりました。



>つまり直前の助詞が異なるだけで「失った飛行機」と「失われた飛行機」は、能動態と受動態の違いがあるにもかかわらず、同じ意味をもつことになってしまいます。

まず、「(エンジンを)失った飛行機」と「(エンジンが)失われた飛行機」は同じ意味になります。
飛行機にエンジンがない状態を表す文として、前者は飛行機から見てエンジンがなくなってしまった、後者はエンジンを中心に見て、そこにあるべき(動いているべき)なのになくなってしまった、ということです。

>その場合「エンジンを失った飛行機」の
文における「飛行機」は何なのでしょうか。
まさか「飛行機がエンジンを失った飛行機」とは言わないでしょうし。

飛行機を連体修飾していることになります。
つまり、「エンジンを失った飛行機」自体が一つの主語になるのであって、「エンジンを失った」または「エンジンが失われた」というのは両方とも「飛行機」を修飾するものになります。なぜ能動なのか受動なのかは先に述べた通りです。

要するに、
「エンジンを失った飛行機が着陸した」
「エンジンが失われた飛行機が着陸した」
というようになります。どちらにしても文そのものの主体は飛行機なのです。


>さて質問ですが、「彼女を失いたくない」は「彼女が失われたくない」と書き換えても同じ意味になるのでしょうか。後者は非文のように思えますが、それは私の考えすぎでしょうか。

主体が私であると考えると同じ意味になります。
「彼女を失いたくない私」
「彼女が失われたくない私」
私にとって、彼女がいなくなってほしくない、という意味ですね。

ただ…
「彼女が失われたくない」というのは表現としてはおかしいような気もします。

この回答への補足

ここしばらく他の方と「論争」していましたが、やっと落ち着きましたので今回のご回答の整理を始めました。
そこでやっと気がついたのですが、「主体が私であると考えると同じ意味になります」で始まる段落は、下記の意味に理解していいのでしょうか。再度ご回答いただければ幸いです。
-----
「私は彼女が失われたくない」は非文ですが、「私」を修飾する表現に置き換えると同じ意味になります。
「彼女を失いたくない私」
「彼女が失われたくない私」
私にとって、彼女がいなくなってほしくない、という意味ですね。

補足日時:2013/07/17 15:21
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この回答へのお礼

再度のご回答、ありがとうございました。
これで私も納得できました。助かりました。

お礼日時:2013/07/07 14:10

重要なのが「失った」は「エンジン」そのもの、「失われた」はエンジンの「機能」と考えるのが合理的と思います。

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この回答へのお礼

ご回答、ありがとうございました。
お言葉ではありますが「エンジン一基の機能を失った飛行機」「エンジン一基が取り外されて失われた飛行機」という表現もあると思います。それについてはどうなのでしょうか。

お礼日時:2013/07/07 13:58

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