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市販のステアリン酸の1H-NMRを測定したのですが、α位の水素とΒ位の水素のピークが各々水素比H=2で出現しているのにもかかわらずエチレン鎖の水素比はαとΒを加えたH=34で出現しました。α位の水素とΒ位の水素のピークは各々固有のppmとは別にエチレン鎖のところにも同じ水素比で出現するものなんでしょうか?

A 回答 (3件)

こんにちは。



私が貴方の質問の意図を誤解していないか確認するために、ご質問を整理してみましょう。

1.α位とβ位の水素のシグナルは、積分強度比2Hで観察された。
2.α位とβ位、およびCOOH以外の部位の水素に基づくシグナルが34Hの積分強度比で観察された。

でよろしいでしょうか?

続いて確認ですが、ステアリン酸の構造を今回の質問の解説に使いやすいように書くと、

 CH3-(CH2)14-CH2-CH2-COOH

となります。この1H NMRスペクトルデータは、産業技術総合研究所のデータベース『SDBS』で検索可能です。ステアリン酸のCAS RN#は57-11-4ですので、これを用いてスペクトルデータを確認してください。

で、本題に戻りますが、NMRスペクトルの積分強度比というものは、測定条件によって本来の値から大きくずれてしまうことがあります。

その原因は様々です。測定時のパルス設定に問題があり、磁気的飽和を起こしているために正確な強度でシグナルが出ないためであったり、シムの狂いに基づくベースラインの歪み、さらにはフェイズのずれによる積分曲線の歪みなどが考えられます。

したがって、本来28Hのものが「見かけ上」34Hの積分強度比を持つシグナルとして観察されてしまうこともありえるのです。

これを防ぐためには、その原因を取り除かなくてはなりません。現段階では何が原因なのか分かりませんので、ひとつひとつ調査していく必要があります。まずは、シグナルの取り込み時間を十分に長く取ってみてください。一番簡単な方法は、測定のポイント数を増やすことです。日本で使用されている大抵の核磁気共鳴装置では、ポイント数を増やすと自動的にシグナル取り込み時間も長くなります。さらには、サンプル濃度を適度に薄くして、シム調製を時間をかけて行うことです。さらに、書き出し時のベースライン調整およびフェイズ調整にも十分に気を配ってください。

>α位の水素とΒ位の水素のピークは各々固有のppmとは別にエチレン鎖のところにも同じ水素比で出現するものなんでしょうか?

いいえ、出ません。それぞれの水素原子は、それぞれ1種類のシグナルしか与えません。

もし分からないことがあれば、補足質問をしてください。私以外にも答えてくれる人がいると思います。

参考URL:http://www.aist.go.jp/RIODB/SDBS/

この回答への補足

親切で適切な回答ありがとうございます。まずエチレン鎖の水素比はαとΒを加えたH=34と書きましたが、回答の構造式のとおり、これは誤記で本当はH=32です。
 アルキル鎖の水素比のことなんですが薬品メーカーのアルドリッチの公開しているNMRを見てみても、ステアリン酸のアルキル鎖はαとβの水素比を足したH=32ででていました。またアミンやハロゲン化アルキル等のαとβ位の水素のピークがアルキル鎖のピークとは異なる固有の所に出現する化合物のNMRを見ましても、やっぱりアルキル鎖の積分比は理論積分比より4つ多くでていました。
 薬品メーカーの公開しているNMRでさえ、このような結果になるのは、どうしてなのか分かりません。

補足日時:2004/07/21 13:06
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Fsanさんこんにちは.質問を見るのが遅くて既に解決されたかもしれませんが・・・.積分の精度を上げるのはなかなか難しいですよね.N

o.1の方が質問を整理されていて内容がそのとおりだったとすると,No.1の方の回答で充分ですが,少し付け加えますと,測定時にパルスとパルスの待ち時間を充分とって(5T1程度)磁化の回復を待って測定されてはいかがでしょうか.また,装置にある普通のシーケンスをそのまま実行すると,観測中心から測定幅の半分の値でフィルター幅が設定されると思います.そうすると観測幅の端の方のシグナルの積分値が小さくなる傾向にあります.そのような時はフィルター幅を観測幅と同じにして測定すると精度があがります.一度お試しください.
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>アルキル鎖の水素比のことなんですが薬品メーカーのアルドリッチの公開しているNMRを見てみても、ステアリン酸のアルキル鎖はαとβの水素比を足したH=32ででていました。



Aldrichのウェブカタログに掲載されているNMRスペクトルですね。確かにそのスペクトルでは、本来の28 Hよりも大きく見えます。このスペクトルは、シムの調整が不十分なためにベースラインが歪んでいますので、正確な積分値を読み取るのが難しくなっています。積分曲線の低磁場側を見ていただければ、ベースラインが歪んでドリフトしていることは一目瞭然です。

そもそも、このサンプルは濃すぎますね。おそらく13C測定用のサンプルで1Hも測定したのでしょう。この濃さでは積分強度比の誤差も大きくなってしまいます。

>薬品メーカーの公開しているNMRでさえ、

所詮は薬品メーカーですから、必ずしも完璧な条件でNMR測定をしているわけではありません。莫大な分析サンプルに追われたオペレーターが、なかばいい加減にサンプルを調製し、シム調整も書き出しもすべて自動で測定したものなのでしょう。参考になるのは化学シフトくらいなものだと考えておいて下さい。

積分強度比を正確に読み取りたいのならば、適度に薄いサンプルを用いることが大切です。この点に限っては、Aldrichのサンプル濃度は不適切です。

以下は、蛇足ですが、No.2の方が提示する方法も効果的ですね。パルスとパルスの待ち時間に関しては、varianではD1、JEOLではPD(だったと思う)というパラメータを調整してください。

もしも余裕があれば、あえてシグナル取り込み時間を短くすると同時に、パルスとパルスの待ち時間をゼロに設定した上で、適当なサンプルを測定してみてください。積分比が極端にずれるのを観察できると思います。

NMR装置の分厚いマニュアルに目を通すと、結構勉強になることが書いてあります。
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