No.10
- 回答日時:
え~とですね。
トルクコンバータは確かにクラッチのような働きもしていますが、実はもう一つ働きがあって、これがフルードカップリング(流体継ぎ手)ではなく、トルクコンバーターと呼ばれる理由なんです。そのもうひつの役割というのはトルクの増大作用というものです。トルクコンバーターでエンジン側の回転数がトランスミッション側よりも高いときはエンジンが発生しているトルク(回そうとする力)よりもトランスミッション側ののトルクのほうが大きくなるのです。この働きは発進加速などでトランスミッション側の回転数が低くエンジン側の回転数が高い状態では見かけ上、エンジンが発生するトルクが大きくなったの同じで同じギア比であれば加速力が大きくなるのです。
これにはトルクコンバーター内部の仕組みが関わっているのですが、トルクコンバーターが流体(この場合はATF)を仲立ちにして動力を伝える仕組みだということはご存知ですよね?実際にどうなっているかというと、エンジン側につながるポンプインペラーで内部のATFを送り出して、それと向かい合わせにあるタービンランナーで受け止めるということで力を伝えています。ちょうど扇風機を二つ向かい合わせておいて、片方の扇風機だけ電源を入れたときに反対側の扇風機も回るのと同じです。ただし、扇風機では風はそのままどこかへ行ってしまいますが、トルクコンバータではそれでは困りますので、タービンランナーを出たATFまたポンプインペラーに戻すようになっています。ここで肝心なのが、ポンプインペラーに戻すときに流れの方向を変えて、ポンプインペラーの羽尾を加速する方向にして戻してやることなのです。ポンプインペラーが高速で回転していて、タービンランナーが停止している時を考えると、タービンランナーから出てきたATFは速い速度のままで戻ってきて、大きなエネルギーを持っているので、適切な角度でポンプインペラーの羽根に当ててやればポンプインペラーはエンジンからの力+戻ってきたオイルの力で回されることになり、エンジンが発せしているトルクより大きなトルクで回されることになります。この、戻す角度を変えるための羽根がステーターと呼ばれるもので、これがあるのがトルクコンバーターの特徴です。
さて、遠心クラッチにはこのようなトルクの増大作用はありませんので、同じように加速を得るためにはより多くの変速段数を必要とすることになるわけです。ATにおけるトルクコンバーターは単にクラッチの代わりではなくより広い回転範囲でトランスミッションに十分なトルクを伝える役目も果たしているので単純に自動クラッチと置き換えることはできないのです。トルクコンバータ自体が一つの変速機としての役割を果たしているのです。
自動クラッチを使ったATやセミATもありますが、それらはCVT(無段変速機・スクーター等はこれです)やマニュアル車と同じトランスミッションを使用しています。例えばいすゞ自動車が使っていたNAVI5などではマニュアル車と同等なクラッチとトランスミッションを使用してクラッチと変速操作をアクチュエーターとコンピューターで制御して自動化したものですし、国産初のCVT搭載の自動車であるスバルの軽自動車ではパウダークラッチ(密閉された容器の中にエンジン側とトランスミッション側にそれぞれ小さな隙間を持たせた鉄製のローターを設け(接触していない)てその間に鉄粉を入れた構造で、外部から電磁石の力でローター部分を磁化させることでローター同士の間に鉄粉が入り込み摩擦が生まれて動力を伝える仕組み)とベルト式のCVTを使ったものでした。
自動クラッチを使った方式にも利点はあるのですが、変速時のショックやクラッチ自体は消耗部品であるなどの理由で現在主流ではありません。また、遠心クラッチはクラッチのミートポイントがエンジンの回転数で決まってしまいますし、細かな制御がしにくいので小型のもの限られるでしょう。
乗員の数や積み荷などで大きく重量が変化する自動車には不向きです。
トルコンのトルク増幅機能について別の所で質問させていただきました。やはり、大昔のAT(トルコンのない)に乗ったことがないので、トルコンのトルク増幅機能のありがたみがいまいちつかみきれていませんが、機械工学の観点から、その機能がない分、多くのギア比や小刻みのギアチェンジが必要になってくるかもしれません。
No.8
- 回答日時:
>車に遠心クラッチを応用できない理由 >非常に不便だと感じる
トルコン式のATが発明され普及した後に、遠心クラッチ同様に摩擦式クラッチ(パウダークラッチや乾式・湿式多板)のATが出てきました。ところが、これらはクリープが無く、トルコンATに慣れてしまった人達には不便だったのです。それ為、メーカでは摩擦クラッチを半クラッチ状態にしてクリープを発生させるようにしました。しかしトルコンの流体クラッチのような滑らかさに及ばず、半クラッチを多用する事による不具合も多発してトルコン式に変更されて行きました。現在摩擦式クラッチのDCTも一部の車ではトルコンを採用したものが出てきています。半クラッチ多用による不具合の発生は摩擦式では避けられないという事だと思います。クリープは燃費を悪化させますし、アクセルを踏まないのに勝手に動き出すのは不便と感じる人もいますが、多くの人は便利だと思っています。最初にクリープのある摩擦式クラッチのATが出て普及、その後トルコンATが出る。という順序だとクリープの評価は違っていたかも知れません。
免許を取ったのが、90年代後半。よって、すでにある種完成された技術のATしか知りませんでした。技術的な紆余曲折があったのでしょうね。私の父がよく言っていました。クリープをなくせないのはなぜか?クリープ現象を悪者にして考えていましたが、発想が変わりました。「クリープ現象をなくしてしまえ」という発想はギア車乗りの発想なんですね。
No.7
- 回答日時:
クリープは、スムースに発進させる為のものです。
昔のスバル初期のECVTに、乘った事がありますが、まるで初心者の半クラッチみたいで、発進するたびに、ギクシャクしてましたよ。素人考えは、面白くて、いいなぁと。トルコンじゃないAT車に乗ったことがないので、あまり想像できませんが、そうなんでしょうね。経験したことのないことをどれだけ想像力を働かせて理解につなげるか。勉強になりました。
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初期のCVTにはクリープ現象がなかったという件、詳しく知りたいです。トルコンを介していれば、クリープ現象は起きるはずですが・・・。
皆様、ご回答ありがとうございました。要点の整理をさせていただきます。
①クリープ現象がなくせない理由。クリープ現象は現象という言葉からもトルコンを介している以上なくせないが、他の機構デュアルクラッチ等を用いてなくすことも可能。しかしながら、動力がつながっていないことにより、アクセルを多用せねばならず、渋滞や駐車時に却って操作が面倒になるだけでなく、最近多い踏み間違い事故等の誘発につながる。
②遠心クラッチ。機構としては、高出力に対応できない。また、厳密に言えばクリープ現象が起きており、100%防ぐことはできない。
③初期のCVT。パウダークラッチというものを採用しており。トルコンは使用されておらず。よってクリープ現象が起こらなかった。
やはり、意図的にクリープ現象を起こしているという件、非常に目からうろこでした。事故の原因と考えていましたが、逆に事故を防ぐためのものだと理解しました。